なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まぁほら、まるっきり勘違いだったってわけでもないんだし、ねっ?気を落とさないで、ねっ?」
「死にたい……【永獄致死】的なあれじゃなく、消えてしまいたい的な意味で死にたい……」
「せんぱい大丈夫なんでしゅか、本当なんでしゅかぁ……」
「ああよしよし、怖かったねーマシュ」
なんじゃこの状況(困惑)。
……恐らくはこの現場を見た人は、皆おんなじ感覚を抱くことかと思われるが……その疑問については私こそが問い掛けたい気分である。
いやマジで、なんでこのタイミングで帰って来たのこの人。
もうちょっと早く帰って来てくれれば、私も変に拗れさすようなことを言わずに済んだのに……と思ったのだが、どうやらことはそう簡単な話ではないようで。
「許可を貰ってた……?」
「大変だったのよー?わざわざ貴女用に別枠申請する必要があったんだもの」
こちらに苦笑いを向けてくるキリアの言うところによれば、前回の私の危惧は、しかして全くの見当違いとも言い辛いものであったらしく。
……各【星の欠片】は一つにつき一つの存在しかあてはめられない、というのは間違いのない本当の話であり。
それゆえ、同じ【虚無】を扱う私とキリアは、基本的にどちらかが──主に後からそれに触れた私が、消え去る運命にあった。
とは言っても、それは誰かから強制されてそうなるわけではなく、【星の欠片】というものの性質ゆえに自然とそうなる、というのが正解で。
……まぁ、大雑把に言ってしまうと、【星の欠片】という技能は能力として
「重い?」
「根本的には現象みたいなもの、って風に理解するのが早いと思うわけだけど……まぁ要するに、一つの人間を現象に分解する、って感覚が正解なのよね」
例えとして挙げるのならば……『月姫』シリーズに登場する死徒の一つ、『タタリ』が近いと言えようか。*1
あれは、永遠を目指す一つの答えとして、自身を霊子という最小単位──意思などないものとして再構成しつつ、特定の場所に『人の不安を抽出した噂から形を得る』という現象を巻き起こすモノとなった、ある種世界に染み付いた影のようなものであるが。
我ら【星の欠片】のそれは、ある意味でそれに近いものがある。
違うことと言えば、周囲の人々の不安によって目覚めるのではなく、そもそも目覚めることなぞあるはずがない……ということだろうか?
ともかく、世界の法則そのものに自身を変じさせる、とでも言うべきその異能は、翻ってそれ以外の可能性というものを否定してしまう。
……端的に言うと、【星の欠片】に目覚めてしまった時点で、それまでに納めていたあらゆる技能は霧散してしまうのである。
ポケモンとかで例えるのならば、わざの欄に並べられた他のわざを全て忘れる代わりに、ただ一つだけ覚えられるわざ、とでもいうべきか。
本来の技能欄である四つの枠を専有し、それ以後の新しい技能の入れ換えも否定する……みたいな感じ?*2
「というか、実際【星の欠片】に目覚める余地のない人が、無理矢理目覚めようとして単なる現象と化すっていうの、結構な頻度で見掛けることだからねぇ」
「……こっわっ!?」
「そういう意味では、
そう、キリアが言うように、その危険性は私にだって迫っていた。
私はキリアではなく、そしてキリアしか【虚無】に適合する存在はいない。
確かに『逆憑依』はどこかから本人そのものを憑依させる、わりと意味不明なものである。
……だが、その原理が想像通りのモノであるのなら、私……いなや俺に憑依するはずだったのは、本来キリアであったはずなのだ。
例えキーアとして別の存在を定義したとして、その原理が【星の欠片】の実在なくして成立し得ないモノである以上、結局【虚無】が使えるのはキリア以外にあり得ない。
……そういう設定として生み出されている以上、それを守って居ないのであれば、それは憑依でもなんでもないのである。
一応、私がキリアのかつての人の時の姿でした、なんて解釈を取れればどうにかなるかもしれないが……まぁうん、その辺りも実は設定があるので、あり得ない話でしかないというか。
つまり、これまでの話を要約すると。
本来、キーアという存在は虚構も虚構、呼び出す先のないモノであり、それが憑依の対象として選出されることは有り得ない。
……にも関わらず、今の私はこうしてキーアとして此処にある。
それこそが、今の私の貴重性、ということになるようで……。
「うん、あのお方直々に『技能被り?無いはずの存在の適用?……なるほどなるほど、そんな面白……愉快……大変なことに見舞われている人がいらっしゃるのであれば、私も新たな子を認める準備をしなければならない、ということになりますね』ってお言葉を賜ってね?」*4
「……ああうん、なるほど。そりゃ無事だわ私」
「ええと、勝手にそっちだけで納得しないで欲しいんだが?」
その貴重性があのお方に認められ、私は存在の消失という最悪の未来を迎えることを免れた、ということになるようで。
思わず、腰が抜けたようにへろへろと座り込んだが、なんというか一生分のエネルギーを消費させられた気がして、暫く立ちたくねーという気分になってしまっていたのだった。
そんな私の様子に、意味わからんとばかりに声をあげるのがクリス。
……まぁ確かに、こっちにしかわからん感じの話しかしてなかったので、彼女が蚊帳の外になるのも仕方のない話。
とはいえ、ここまで巻き込んでしまった以上、ちゃんと解説しないといけない、というのも確かなので、放心していたマシュも呼び寄せて、改めて解説を行うことに。
「ええと、『あのお方』のことについては、どれくらい知ってるんだっけ?」
「貴女達の上司みたいな人ってことと、【星の欠片】とやらのトップに当たるモノを持つ……みたいなこと?」
「ああうん、私達的には
「……ええ、それが貴女達がなんでもできる理由、だものね」
まず始めに、『あのお方』について。
便宜上『彼女』と呼ぶが、彼女は私達【星の欠片】の元締めに当たる存在である。
なによりも小さく、弱く細かいものを目指す【星の欠片】における極点──
それこそが彼女であり、それゆえに彼女の能力……現象による影響というのは、受けていないモノなどあり得ない、と言い換えてもいいほどに広範に渡って存在していると言える。
彼女という現象を用いれば、あらゆる現象をきっちり計算できる……と言えば、その影響範囲の広さについてはすぐに理解することができるだろう。
……まぁ、普通に式内に無限とか頻出するので、それで理解できたと言い張るにはちょっと無理があるような気もするが。
ともあれ、【星の欠片】の基本原理──小さすぎるからこそどんなものにでも含まれている可能性を否定しきれないそれは、意思を特別示していないだけで、あまねく全てが彼女に見守られている……という風に言い換えても、そうおかしなことではないわけで。
……要するに、最初に私が鏡の前で驚いていた時点で、彼女は私の貴重性と言うものに注目していた、ということになるらしいのだ。
「まぁ、最初はちょっとおかしいな?……みたいな感じだったみたいだけどね。あれよあれ、まど神様がアプリ世界を見付けて観察してた、みたいな感じ?」
「上から見下ろしてるのか、下から見上げているのかっていう違いはあるけどね。……【虚無】の目覚めを知り、ふと視線を向けた先にあったそれは
私達【星の欠片】は、その存在が大きければ大きいほど、自身の中に他の【星の欠片】を服有してしまう。
原子が組み合わさって分子になるように、分子が集まって物質が形作られるように。大きなものとは、必然それを構成する小さな粒、とでも言うべきものを持ち合わせている。
それは【星の欠片】でも変わらず、その原理に従わないのはなによりも小さな『あのお方』だけ。
ゆえに彼女は全てを見ているし、全てを愛しているし、全てを言祝いでいる。
だから、たまたまを重ねて生まれた、私という奇跡もまた、生かしてみようという気になった。
「そう、私もいつの間にか世界一つを任せるに足る存在、みたいな扱いをされてるってわけなんだよクソァッ!!」
「え、ええ?!何故そこで悪態を!!?」
──まぁ、良いことばっかりじゃないんで、思わず声を荒げたくなったわけなんですけどね!