なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
私が叫び声をあげたくなった理由、というものを理解するためには、【星の欠片】というものが持つもう一つの意味を理解する必要がある。その意味と言うのが……。
「世界法則の雛形?」
「そう。今のこの世界で言うなら物理法則。それが今の世界を作っている、とする考え方とでも言うか……」
どうにもその辺りの話は、一度キリアがしていたらしいが……もう一度改めて。
この世界に【星の欠片】が顕現する時というのは、本来世界の滅びが近い時とされている。
それは、あやふやになったその世界において、世界を支える新たな柱を世界が求めているがゆえ。……言うなれば新たな世界樹として迎えるためであり、現状の
……つまり、【星の欠片】というものに目覚めるというのは、すなわちその世界の柱として身を捧げることと、ほぼ同義だと言ってしまえるわけで。
言うなれば、その世界の運営権を任されるようなもの。……全うな精神の持ち主であれば、そんなのお断りだとなって然るべきであろう。
「……そうなんですか?」
「そうなんだよ!なにが悲しくて世界の運営、なんぞ任されにゃならんのだ!!」
マシュが首を傾げているが……まぁ、実情を知らない彼女には無理もない。
なのでそこら辺の解説もしていくことにするわけだが……まず始めに、ここでいう世界の運営とはすなわち
「……なんだかちょっと雲行きが怪しくなってきたけど?」
「最初っから怪しいわい!……同じ作者の作品でも、一方は優しい世界だけどもう片方は厳しい世界、みたいな違いがあったりするでしょう?」
例えるのならば、キングゲイナーとイデオンみたいなものか。
この二つの作品は監督が同じという共通点を持つが、その実内容的には真逆に近いモノである。……いやまぁ、重いところは相応に重かったりするんだけど、レベルが違うというか。*2
ともあれ、同じ人間から創出されたものであるにも関わらず、全く別のベクトルの作品が出てくる、ということはわりと頻繁に起き得る事象である、ということができるのは確かだろう。
さっきまでの人格云々の話と絡めるのなら、鬱気味の時と躁気味の時では出力されるものが違って当然、とでも言うべきか。*3
だがしかし、これを世界運営する神様に当て嵌めてしまうと、途端にとんでもないことになってくる。
その世界を運営する神様の主義趣向によっては、世界は容易く滅びかけたりハッピーエンド一直線になったりしてしまう、というわけだ。
なので、本来柱となるような存在というのは、あまり世界に干渉しない者を選ぶ方がよい、ということになる。
アニメやドラマとしてならば許容されるものも、実際に自分達が巻き込まれるとなれば勘弁してくれ、となるのも仕方ない……みたいな感じか。
ともかく、世界の運営……方向性を監督する存在のお気持ち一つで世界が塗り変わる可能性があるのは間違いなく。
そういう意味で、【星の欠片】に目覚める者は前提として
「そういう意味で、現状の物理法則基準の世界はわりと上手くできてるんだよ。善にも悪にも傾きすぎず、未来演算も恐らく最低限。……これほど上手く世界を回している存在ってのも、中々見ないと思うよ私」
「ええと、現状は問題がない、のですか?」
暗にバランスが悪い、とでも言いたげなマシュであるが……これもまぁ、さっきまでの私の暴走を見ていれば答えを得ることは容易い。
その裡にブレーキとなる反転感情を持たない存在というのは、容易く行き着くところまで行ってしまう。
善意から悲劇を全て無くしたとしても、自身の手の届かない範囲にある悲劇が起因となった場合には弱くなってしまうし。
悪意蔓延る世の中なんて、それこそ破綻が見える世界でしかないだろう。
人の精神と言うもの自体が混沌を是とするモノであるのだから、世界もまた混沌を保たなければ、そのうち精神の均衡を乱してしまうのは目に見えている。
……そのバランス感覚というのは、一朝一夕で身に付くものではない。
人によってベストな塩梅は違う以上、世界という規模でそれを操作するとなれば、その負担はまさしく命を奪って余りあるものになってしまうことだろう。
「……だからこそ、私達みたいなのが丁度いいのよねぇ」
「え?……あ」
「【永獄致死】の良いところ。……ブラック勤務にとっても強いのよね」
キリアの呟きに、マシュが得心したように声を漏らす。……【永獄致死】という現象は、その実全ての負担を最大値にしてしまうモノだが──最大値が続いてしまうのであれば、それは最早波も飛沫もない平坦なもの。真実最悪の状況に見えるにも関わらず、実際に受けている方からすればもはやぬるま湯でしかないのである。
……端的に言うと、無限概念なので世界全土を覆うのも余裕、その運営の際の過剰労働に対しても
まぁ要するに、世界運営ってそれこそ文字通り死ぬほどの激務だけど、常日頃死んでる【星の欠片】的には鼻歌気分の仕事、ってことになるわけ。
そりゃまぁ、世界樹扱いも已む無しである。もうそのために生まれてきたようなもんだもん、この技能。
……悲しみを見て誰かを依怙贔屓する必要もなく、喜びを見て共感する必要もなく。
ただ、無慈悲に世界を回す歯車でいることを
それができないのであれば、世界なんて運営すべきではない……っていう話は、微妙に脇に逸れているので流すとして。
ともあれ、善と悪のバランスを保ち、どちらかが大きく力を持ちすぎないようにする……という仕事をこなせることが、世界運営に求められる素質である以上、今の物理法則基準の世界が上手くやっている、ということは疑いようがなく。
──その世界が滅んだあとに迎えられるであろう世界が、それ以上の基準を求められることもまた必然、ということになるわけで。
「……うん、まぁ要するに。【星の欠片】そのものに目覚める条件も厳しいけど、実は世界一つを任せるに足るモノである、と認められるのにも結構な厳しさがあるんだよね……」
「はぁ、なるほど?……それと貴女の状況に、なんの関係が?」
「さっきから言ってる通り、キリアの持つ【虚無】って『あのお方』のそれの
「あ、あー……その、つまりせんぱいは……」
「うん、そのキリアから別のものとして確立したっていうけど、そのランクって多分
「うわぁ」
私達【星の欠片】は、上に行くほど価値が薄れていく。
そして、現実世界の物理法則を成り立たせている【星の欠片】は、恐らくは
無論、現実という【星の欠片】よりも下位に位置しながら、世界を任せるに足るレベルではない……というようなものも存在はしている。
……が、そんな彼らと底である『あのお方』との差と言うのは、それこそ天文学的な数値上の隔たりがあるはずで。
そんな彼女の一つ上であるキリアの、さらに一つ上──それが今の私の暫定位置となるということは、つまり私は世界運営を実際に任されておかしくない位置についてしまった、ということになるわけで。
「それだけじゃないんよ、私がキリアの一つ上ってことは、私より下は二人しか──キリアと『あのお方』しかいないってこと。……つまり、私より上の先輩方が、それこそ天文学的な数字分ひしめき合ってる、ってことでもあってだね?」
「あー、新人いびりが横行しかねない……みたいな?」
「いびりならまだいいよ!絶対可愛がられるんだよ!『そこに立つとは、随分と見込みのある存在なのだな』って感じで」
「それは……なんというか……」
ついでに言えば、私の今の位置は下から数えることができる位階。……逆を言えば、
基本的に【星の欠片】はその成立条件上、人格者が多くなるモノであるが……ゆえに猫可愛がりされる可能性というものは、相応どころかかなり高い、ということになってくるわけで。
それが引き起こす事態とは、つまりキリア以外の【星の欠片】達がこの現実にやってくること、となってしまう。
……一人だけの時点で大分手を焼いてた問題児が、それこそ数えきれないほどやってくるかも知れないという恐怖。
それが、当事者でない人達にどれほど伝わるものであろうか?
「感覚的には水着ジャンヌとシズルが一緒にやってくる感じというか、○○を名乗る不審者達が続々と沸いて出てくる感じというか……」*4
「……怖っ!!?」
うん、意外と伝えられそう(困惑)。
……いや、なんで居んのよ。どいつもこいつも月島かなにか?謝ればいいの?月島さんに?
などと混乱しつつ、説明としてはそんな感じ。
確かに、やがてキリアになるとかで自身の存在が霧散する、という可能性は失くなったかもしれないが、下手をすると世界一つを任される未来が待っているかも知れないうえに、なんなら今のままでも平行世界を観測できるようになって、私の思考能力がヤバい(こなみ)ことになりかねないし。
更には他所から『妹/姉/同僚/後輩/先輩』等々、色んな関係性を捏造?しながら現れる新たなインベーダー達が浸食してくる可能性までぶち上がったというのだから、そりゃもう私の胃がずんがずんがしてくるのも仕方ないわけでして。
「……そういうわけなので、キーアさんちょっと横になりますね……」*5
「完全に目が死んでる……」
語っていない話も含め、既にキャパオーバーな私は暫しのふて寝を敢行することとなったのでした。
もうどうにでもなれー☆(ヤケクソ)