なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「結局そのまま暫くふて寝してたせいで、あっさり正月を迎えちゃったのよねぇ」
「未だかつてなく残念すぎる年越しだわこんなの……」
なんやかんやで年越しの蕎麦も食べ損ねたし。
……みたいな感じで、代わりに朝御飯として雑煮を食べている私である。
年末の騒動はそのまま流れ、普通に年越しを迎えたわけなのだけれど……あのあと、酒飲み達が暴走したりすることはなかったそうだ。
じゃああの時私がやってたことって、いわゆる骨折り損のくたびれ儲けってやつなんじゃ?……と思われるかもしれないが、どうやらあそこで善悪の私達二人が暴れまわったことにより、住民達の抱えていたストレスの解消や、集まっていた負念を払うのに役立った、みたいなところもなくはなかったようで……。
「……まぁうん、一応事態の解決を考えてはいたんだよね、あの二人も。──単に私の胃とか精神とかの安寧を全部無視ってた、てだけで」
「それはつまり、お主も普段から後先考えなければ、もうちとショートカットできる……みたいなことになるのかの?」
「その結果が健康とトレードオフなら、正直勘弁して欲しいかな……」
たまたま雑煮を食べに来ていたミラちゃんが、ふうむと一つ声を漏らすが……正直な話、
いやまぁ、以前までの私は、【虚無】を使いすぎると実質死ぬようなものだって思ってたから、余計に心労が祟ってたってやつでもあるんだけども。
……使わなきゃやってられない事態が時々やって来るのは、どうにかして欲しいなーと思わないでもない私です()
実際、今までも要所要所で私がやらないとどうにもならない事態、みたいなものが頻発してたわけだしねぇ。
……え?それ以外の、特段必要性のなさそうな状況でも使ってたような気がする?いやいや、あれも一応必要に迫られてだよ。
少なくとも、姿形を好き勝手に変えられる人……なんてものがほとんどいない以上、それができる私にお鉢が回ってくるのは半ば必然的なものなわけだし。
「そう考えてみると、単純にこの世界ってクソゲーなのでは……?」
「そこにお気づきになりましたか」*1
「せんぱいを諭さないでください、わりと洒落になってません……」
思わず、こんな不安定な世界なら滅んでも良いのでは?……みたいな気分が沸いてくるが、実際にそれで滅ぼされても困るからか、マシュからのやわーいツッコミが飛んでくるのであった。
……まぁ、この世界は確かにクソかもしれんが、滅ぼすまで行きたくないのも確か(ほぼ確実にそのあとの世界の新生を任されるのが私)なので、渋々引き下がるのであった。
閑話休題、年末の騒動もこうして終わりを迎えた以上、ある程度は気持ちを切り替えて新年に望まねばならない、というのが現状なのだけれど……。
「……やる気が欠片ほども起きねぇ」
「せんぱいがはぐれメタルのようにどろどろに!?」*2
「いや、これはいわゆる猫液体というやつではないか?」*3
「その姿、もしや我が友李徴子ではないか?」*4
「誰だ今の?!」
「無論吾だ」
「なんだパオちゃんか……」
「なるほど猫科繋がり……」
正月が明けて暫くすると、多分『あのお方』からの要請が来るだろうから、気持ちを切り替えようにも切り替え辛い感じがあるというか。
……いやほら、休み明けの学校とか仕事とか行きたくない感凄いでしょ?まさしくあれ。
更には、それにあわせてあれこれトラブルが舞い込んでくる可能性もあって、正直なにもかも見なかったことにして寝てしまいたい気分がガンガンなのである。
まぁ、そうして現実逃避したとしても、なんにも後回しできないのも確かなので、どうにかして向き合わなければならないのだが。
とりあえず今真っ先に向き合う必要性があるのは……『あのお方』との面会、だろうか?
「以前会いに行くのは嫌だ、みたいなこと言ってなかったかしら貴女?」
「あの時はまだ、私はおこぼれで【虚無】を使えてるだけ、って思ってたからねぇ……その状況で『あのお方』に面会したとしても、単に不純物扱いされて分解されるのが関の山、みたいなもんだったし」
不思議そうに首を傾げるクリスの様子に、はぁとため息を返す私。
……確かに、キリアが里帰りする時には絶対付いていかない、と強行姿勢を取っていた私だが、あの時と今とでは状況がまるで違う。
当時の私はまだ自分を単なる不正利用者として認識してきたため、そんな状態で『あのお方』の前に行くのは自分から首を差し出すようなもの。
じゃあ今はどうなのか、というと。……寧ろ会わない方が恐ろしい、というのが正直なところなのである。
「そりゃまた、なんでだってばよ?」
「私の知らないところで、私が【星の欠片】使いとして認定されてるからよ。……いきなり変な属性付与されたようなものだから、ちゃんと使い方とか諸注意とか聞いとかないと、今までの感覚で能力使ったら爆発した、なんてことにもなりかねないし」
「そっかー。新しくだいばくはつおぼえちゃったんだなー」
「んー、間違いでもないかもしれないけど誤解を招く表現……」
そんな私の様子に、お正月にも関わらずいつものようにラーメンを啜っていたナルト君が声をあげる。……ああいや、よく見たらお餅が入ってるから、力うどんならぬ力ラーメン、ってやつなのかも知れな……ラーメンに餅ってどうなの(困惑)*6
……ま、まぁともかく。こうして疑問を呈された以上、答える必要があるのも確かな話。
なので真面目に答えると……今までの私は、【虚無】という力を使ってあれこれと行動をしていた。
だがしかし、それゆえに【星の欠片】の基本原理として、そのうちキリアに統合されるか消え去るかが半ば決まってしまっていた。
なので、その危険性や心配を無くすため、キリアが『あのお方』に掛け合って、私用に新しく【星の欠片】を新設してくれたわけである。
……いや、そんなに簡単に新設できるものなの?……みたいな疑問もあるだろうが、感覚的には新しい元素を作るようなもの。手間暇は掛かれど出来なくはない……というのは、ニホニウムなどの人工元素のことを思えば納得できないこともない、かもしれない。*7
とはいえ、新しい元素……もとい新しい【星の欠片】である。
それでなにができるのか、というのは完成時点ではわからないのも確かな話。今までと同じノリで使っていたら、思わぬ落とし穴があった……なんて可能性も普通に予測できるので、詳しい検査というか調査が必要だ、というのもまた、なんとなくわかる話ではないだろうか?
「……?同じことができるんなら、特に問題は無いんじゃねーの?」
「似たような性質を持つからと言って、全ての面で同じ性質かと言われると微妙ってことよ。溶ける温度とか主な性質とかは同じなのに、人体に有害な性質があったりしたら、それを今まで使っていたものの代用にしようとは思わないでしょ?」
「あー、なるほどだってばよ」
例えば、単に素晴らしい技術とだけ思われていて、子供の知育玩具として発売されたこともあったのに、後に遺伝子を傷付けることがわかって管理が厳重になった核関連の技術のように。
今、傍目にだけ今までと同じだからと言って、その危険性までもが同じかどうかというのはわからない。
それを確認するためにも、私は『あのお方』に会わなければならない、ということになるのであった。……心底嫌だけどね。