なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・遠いその星の貴女のことを

「……せめてダンブルドア先生くらいには挨拶していったら?」

「いやー、あの人には地球でも会おうと思えば会えるし、敢えてこっちで会う必要性もないかなーというか……」

「……よくよく考えたら、なんであの人向こうに行けてるの?」

 

 

 呆れたような顔をしたルイズが、それでも先ほどまでの発言に対しある程度の正当性を見たのか、代わりと言わんばかりに提案をしてくるのだが……正直、あの人普通に向こう(地球)に遊びに来てたりするので、あんまりこっちで会うことに特別感がないというか。

 ……的なことを言うと、彼女は頭上に疑問符を大量生産していたのであった。そこに関しては私にもよくわからん。

 

 あと、名前が出た時点でうちのメンバーのうちの一人がゲーミングして昇天したけど、もう相手するのもめんどいのでスルーである。……お前はデジちゃんか、くらいのツッコミはしておくが。

 他のみんなも慣れたもの、という感じなのだが、流石に新人達は『!?』と困惑顔を晒していたけども。まぁうん、ミラちゃんはうちの居候ってわけでもないし、関わることもそう多く無いだろうから慣れてとしか言えないや、私。

 

 話を戻して。

 今回私たちがこちらに来たのは他でもない、単に新年の挨拶を関係各所にしよう、という理由によるもの。

 ゆえに、やることやったらさっさと帰る心積もりなので、できれば早急に他の場所に向かいたいのである。

 

 

「そういうわけですので、ルイズには悪いのですが、私たちはさっさと他のところに行こうと思います」

「あら懐かしいビジューモード」

「……からかわないでください。一応騒動を起こさないように、と気を付けた結果なのですよ?」

 

 

 こちらの言動が変わったことに、ルイズが面白そうな顔を見せるが……以前、初めてこの世界にやって来た時と違い、今の私の言動は強制されたものではなくこちらが進んでやっているもの。

 その理由は今口にした通り、周囲に無用な騒動を巻き起こさないためである。

 

 キーアという存在はキリアから派生したものであり、キリアもまた、その根幹となる部分にはルイズの──『ゼロの使い魔』を下敷きにした部分がある。

 それゆえ、この世界は私にとって相性が悪い……否や、()()()()()()()

 それが意味することは一つ。定められた役目以外の、素の私をこの世界で見せることは、すなわちこの世界の運行を左右するものである可能性が高い、ということである。

 

 

「……逆じゃないの?」

「私が原作ルイズみたいになる、ということですか?それは正しくこのビジューそのもののことですよ。この世界からの答えというのは、既に最初から示されている。──その上で、私はその軛を離れている。その意味がわかりますか?」

「え?えーと……」

「物語の──ひいては世界の破壊、ということですねせんぱい?」

「マシュの言う通り。私は既に世界からの答えを突っぱねている、という風に見なすことができます。ゆえに、世界は再度その要求を課す、ということができなくなっているのですよ」

 

 

 ルイズが首を傾げるが──マシュの言うように、既に私はこの世界から与えられた役割を、自身の分離に近い形で放棄している。

 本来、そんなことをすればその存在は世界からの圧力を受け、霧散するかこの世界に入れなくなるか、どちらかの対処を受けることになるのだが……そもそもの話、私のような【星の欠片】を世界が否定することはできない。

 滅びたあとの世界を再生するための機構でもあるそれを、星の免疫は素通ししてしまうのである。

 

 ただ、素通ししたからと言って問題がない、というわけではない。寧ろ問題は消えないままそこにこびりついているわけで、されどそのこびりつきはなにをやっても落ちないわけで。

 ……そうなってくると、世界が次にすることはそのこびりつきに対し、新たな意味を与えることとなる。

 言うなれば、それはこびりつきなどではなく、なにかしらの()()()()()()()()()()()、と再定義するわけだが……ここで問題なのは、その再定義はこびりつきに干渉することができない、ということ。

 言うなれば、そのこびりつきをこびりつきのまま活かさなければならない、というわけである。

 

 

「……???」

「そのこびりつきの上から張り紙を貼って隠したり、そのこびりつきになにかしらの線や色を加えて、別の絵にしたりはできない、ってことです。言うなれば、そのこびりつき自体には手を加えず、されどそれが()()()()()()()()()という事実を、明確に示さなければならない状態……みたいな感じでしょうか?」

 

 

 本来【星の欠片】とは、余りに小さくか弱いものである。

 吹けば飛ぶようなものであり、それ単体ではなににもならないのは確かな話。

 ……なのだが、それが世界に対して焼き付いてしまっている場合は話が違ってくる。

 意味を与える、というのはすなわちなにかを加えること。されど【星の欠片】とは最小の単位。……要するに、なにを加えても【星の欠片】そのものの意味を変えることはできないのである。

 

 例えばそれが『0』である時、それに数字を書き加えて『(10)』や『(100)』、『(1000)』を作ることはできるだろう。

 その形を丸に見立て、パーセント()にしたり複数繋げて葡萄の絵にしたり……というようなことはできる。

 

 だがそれは、そこに書いてある『0』というもの、それそのものを変化させるものではない。

 あくまでその形になにかを書き加えることで別のものを想起させているだけで、最初からそこにあった『0』というものを変化させているわけではないのだ。

 そう、なによりも小さいという性質を持つ【星の欠片】は、その実なににも変えられない不変のもの、というわけなのである。

 

 

「あー、それより小さいものにするには、その小さいものにならなきゃいけない……ってのが【星の欠片】の共通原理だから、少なくとも他のそれよりも小さい現実という【星の欠片】には、絶対にできないことなのね」

「そういうことです。だから、【星の欠片】が自分より小さい【星の欠片】に対してできることというのは、その形に合わせて自分を変えることだけなのですよね」

 

 

 自分の中に入った不純物……とは言っても、言うなれば本来()()()()()()()分解物──含まれてはいても取り出すことのできないそれをどうするのか。

 その答えは、()()があっても問題ない形に、()()()()()変化すること。

 それを問題ないものであると、自分の方の認識を変えることである。

 

 

「聞いたことありませんか?体の中に鉄の欠片とかが入ったのにも関わらず、何年も支障無く生き続ける人が居るって話を」

「釘とか銃弾とかが、体の中の重要な臓器を傷付けることなく、ふとある時に気が付くまでずっとそこにある……みたいな?」

 

 

 分かりやすく言うのであれば──『ブラックジャック』におけるカルシウムの鞘に包まれたメス、みたいなものか。*1

 体内に危険なものが紛れ込んだとしても、人間というのは意外とそのまま動き続けられるものである。……痛みや苦しみのようなサインがない限り、それに気が付かないということはわりとあることなのだ。

 流石に、かの作品のそれのようになにかがコーティング材の用を為してくれる、ということは早々無いみたいだが──あり得ない、と切って捨てられないのが人間の体の神秘である。

 

 そして、その原理はこの()()にも当てはまる。

 錬金術的な全と一、一と全の考え方だ。マクロなものはミクロに、ミクロなものはマクロに照応できるとされるそれは、世界もまた一つの人体のようなものだ、と世の真理を詳らかにする。

 

 その論理に従うのであれば──世界もまた、私という不純物を()()()()()()()()()()と定義し直すのは道理。

 そしてその定義のし直しとは──メスをカルシウムで包むが如く、というわけである。

 

 

「それがビジューちゃん()であり、それができなくなった以上取ることができる手段というのは、もう一つの方──()()()()()()()()()()()ことだけ、というわけなのです」

「……俄には信じがたいんだけど、それで?その結果どうなるのよ?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……ん?」

「私のことを主人公として新しく再構成される、です。……さっきの話との違いは、私を物語に詰め込もうとするのではなく、私に合わせて物語を変えようとしている、ということでしょうか。……まぁ、滅んでもいないのに滅んだあとみたいなことになる、っていう風にとって貰っても構いませんが?」

「……問題しかないじゃないの!?」

 

 

 まぁ、そうなるのは私とこの世界の相性の良さがゆえ、となるわけだが。

 ともかく、下手に私が私のままで居ると、世界の側が勝手に屈服していく……というのがここでの問題。

 なので、自分からもう一回殻を被り直して、問題をごまかしているというのが、今の私の状態というわけなのであります。

 

 いやー、問題しかないねー()

 

 

*1
『ブラックジャック』のエピソードの一つ、『ときには真珠のように』における描写から。医療ミスにより、ブラックジャックの体内に取り残された医療用のメスは、七年もの間彼の体内に放置されたままであったにも関わらず、彼の内臓を傷付けることはなかった。その理由は、体内のメスを骨から染みだしたカルシウムが、真珠のようにコーティングしていた為であった。なお、現実世界にもコーティングはされていないながら、体の中に残ったハサミや金属片などが、患者の内臓を傷付けることなく長期間放置されている……というようなことが起きていたりする。現実は小説より奇なり、ということか

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