なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・出会えなかったものも出会ってみたり

「さて、シルにはこのまま反省して貰うと致しまして……」

「わー!そんな殺生なー!」

「うるさいですよ。……さて、改めまして……初めまして、ということになるのでしょうか?私はビジュー、キーア・ビジュー・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ。宜しくお願い致しますね」

「あ、はい。これはご丁寧に……」

 

 

 なんか知らんけど、私を放置して挨拶し始めるのはどうかと思うんだよね!?

 ……みたいな私の主張は華麗にスルーされ、ビジューちゃんとみんなの自己紹介が始まってしまったのであった、酷くない?

 

 まぁ、実際には記憶の中だけに残る、自分(キーア)の従者であるマシュのことが気になった……みたいなところも強かったみたいだが。

 

 

「……ふーむ」

「え、えと。どうされましたか、ビジューさん?」

「いえ、なにも。問題が解決したのなら、色々とはっきりした方が良いのではシル()

生憎と私の気持ち一つで決められるほど単純ではないんですよ、ビジュー様()

「ままならないものですね……」

「……あの、せんぱいとなにを……?」

「ああいえ、こちらの話ですのでお気になさらず。……ええと、それで確か貴女が……?」

「お初にお目に掛かるわね、異国のお姫様。……いえ、姫ではないのだったかしら?私は次元の魔女、魔女でも侑子でも、好きに呼びなさい。貴女は特別よ」

「は、はぁ。それでは魔女様と」

 

 

 で、マシュの挨拶が終われば、流れるように他の面々とも挨拶が進んでいく。

 ドローンから干渉用の姿を投影した侑子は、()()()()()()()であるビジューちゃんを興味深そうにしげしげと眺めていたし。

 ()()()()()()()()()()()ダンブルドア(オスマン)氏の生まれ故郷、という事実に暫く溶けていたミラちゃんは、ようやく気を取り直したのか、ビジューちゃんの私と同じ顔にこれまた一瞬呆けていたりもしたし。

 

 その他の面々もまぁ、初見の対応は似たようなもの。

 ……見せ掛けだけではなくしっかりと中身までお嬢様、という感じのビジューちゃんの姿に、どうにも違和感を拭えないような感じなのであった。

 まぁ、パオちゃんに関してだけは、滅茶苦茶いつも通りだったのだが。

 

 

「えーいつも通り?吾のなにを知ってるっていうんだよー?」

「敬うべき、()()()タメ口……と言わんばかりに、ビジュー様にポーズを強要してツーショット撮ってる時点でいつも通りでは?」

「おお、確かに」

 

 

 ……ね?

 ともあれ、一通り挨拶も終わり、()()()()()()()()()()()()()()()

 それはナルト君でもなければれんげちゃんでもなく、かようちゃんでもなければエー君でもない。

 私と同じように正座をして──彼女は自分からやった──なんとも渋い……否や申し訳なさそうな表情を浮かべているその人とは。

 

 

「……姫様、もう気にしてませんので立っていただけませんか?」

「いいえ、私は反省を続けねばなりません。なにより、戻る予定がすっかり忘れていた……などという体たらくなのですから、本来であれば王位を返上しこの場で切腹するのが筋というもの……」

「いや止めてくださいね!?それ自動的に私に全てが流れてくる奴ですからね!?」

「……ということもあり、己の責任を取ることもできない無様な王族なのです……」

「……うーん、これは面倒臭い状況……」

 

 

 その人と言うのが、なにを隠そう本来であればこの場で政を執り行っていなければならない重鎮──使い魔にして友であるとある妖精が行方不明なこともあり、帰るに帰れないままのアンリエッタ(アルトリア)なのであった。

 ……いやまぁ、名目上は従者足るマーリンが居なくなったままなので、彼の捜索が終わるまで帰れない……というのが理由なんだけど。

 以前こちらの不安定な状態を平定する際、彼女にたまには城に戻るタイミングを……みたいなことを言っていたのを覚えている人がいれば、彼女があのあと結局一度も戻っていないということがどういうことなのか、なんとなーく当たりが付くというものではないだろうか?

 

 ……まぁうん、ぶっちゃけてしまうと忘れてたんですよね、全員。

 向こうは向こうであれこれと起こることもあり、一つ壁を挟んだ別世界であるハルケギニアでするべきことがある、ということをみんなしてど忘れしていたのである。

 ……なのでまぁ、今回の初詣にはその辺りの穴埋めの意味も、あったりなかったりするわけでして。

 で、生真面目なアルトリアが忘れてしまっていた、という辺りにどうにも拭いきれない申し訳なさがあったようで、彼女はこの城に着くなり私よりも先に正座をし始めた、というわけなのでございます。

 

 ……さっきから、ビジューちゃんはもういいから、と彼女に立つことをお願いしているのだが、アルトリアはまだ反省が足りない、とばかりにずっと正座を続けているのだった。

 で、彼女がやっている以上、私も足を崩すわけには行かず……とまぁ、微妙に悪影響が出ているので、できればそろそろ反省は終わりにして欲しいところなんだけど……アルトリア分がなまじあるせいか、彼女は正座そのものをあまり苦にしていないようで、そこが認識の差になって私の足はボドボドダ!!()

 

 うん、まぁ確かに?

 ビジューちゃんに国のあれこれを任せきっていたのは確かだし、それによってこちらの悪さとかが跳ね上がっているのも確かである。

 ……が、しかしだ。そもそもの話、そんなことになってしまっているのはトリステインの権力構造の問題だ、とも言うことができる。

 王政を敷いている以上、権力が一極化するのは仕方がない、仕方がないが現状真の意味で王を継いでいるものが居ない以上、それをどうにかするのは国民全ての責任であり、

 

 

「つまりマザリーニ卿!説得手伝いたまえそんなところで隠れてなくていいから!!」

「ぬぅ!!こんな時に限って目敏く私をお見付けになるとは!!」

 

 

 なので、私だけ苦しいのは間違いなんだよ!……と主張するかのように、様子を見にやって来ていた鳥の骨もといマザリーニ卿を、これ幸いとばかりに巻き込む私なのであった。

 

 

 

 

 

 

 で、そのあとどうなったかというと。

 アルトリアはどう足掻いてもまだ戻ってくることはできない。かといって、現状の政治形態のままでは、代行であるビジューちゃんに負担が掛かりすぎる。

 ……となれば、ここは最後の手段に出るしかあるまい。

 そう、原作と変わらず喪に伏せたままの王妃様を、どうにかしてアルトリアが戻ってくるまでの間、トップとして動かすしかない。

 

 さてとなるとその王妃様をどうやって動かすか、という話になってくるのだが……王妃マリアンヌという人は、どうにも情報の少ない人物である。

 派生作品である『烈風(かぜ)の騎士姫』こそが彼女の主舞台であり、そちらでは男装をした若き日のカリーヌが彼女の護衛騎士となり、その性別を知らぬまま好いていく、というような話もあるのだが……。

 

 

「まぁそのほら、作者さんがね……」

「あー……」

 

 

 生憎、残っていたプロットなどを使って後に完成を見た本編と違い、外伝であった『烈風の騎士姫』は完全な絶筆。*1

 ……つまり、前王とマリアンヌが出会うこととなるだろう物語が、丸々すっぽり抜け落ちてしまっているのである。*2

 

 そのため、私たちが彼女について考察できるのは、本編において登場した僅かな出番から得られる情報のみ。

 それにしたって、王との間に子供がアンリエッタしか居ない、というところに疑問が挟まってくるのである。

 

 

「と、言うと?」

「ハルケギニアの情報レベルは中世のそれだから、女王の統治ってそれほど推奨されてないはずなんだよ」*3

 

 

 日本において、天皇の継承権は男系男子にしか認められていない。

 これが何故かと言うと、男子は他所に嫁ぐ、という形にはならないからなのだという。*4

 

 基本的に家を継ぐのは長男であり、次男以下の男子は家を出て、新しい家庭を作るというのが普通であった。

 そのため、家計という面で見る場合、直系のみが残り続けるという形になるわけである。男側の親を辿っていけば、必ず先祖にたどり着くというわけだ。

 

 これが女性側の継承権を認めてしまうと、ややこしいことになる。

 単純に親を辿るだけでは、元々王であった人物にたどり着くことができなくなるのだ。

 例えば、娘を他所の国の王室に嫁に出した場合、その娘と相手側の王子の間に息子が生まれた場合、直系を辿ると向こうの王室に行き着いてしまう。

 要するに、自分の本来の王家を子孫から辿ることができなくなってしまうわけである。

 

 これが、血脈の保存という面から見た時の女系継承の否定理由である。要するに、女性から繋がる線を継承権と取ると、その範囲が広がりすぎてしまうのだ。

 天皇家の場合、特に神代から続いてきた血脈というところに意味が強く乗っているため、余計のこと認め辛いのだろう。

 イギリス王朝が時間を掛けて女系継承を国民達にも認めてさせて来たのとは逆、とでもいうか。*5

 

 閑話休題。

 女性の参政権などが叫ばれるようになったのは近代であり、そうではないハルケギニアにおいては、やはり日本的な男系継承の方が馴染み深いはず。

 ……なのにも関わらず、トリステインの王朝に残る王の血筋は、一人娘のアンリエッタのみ。

 例えばウェールズと彼女が結ばれてしまうと、残るのはアルビオンの血筋、ということになってしまうのである。

 

 ……いやまぁ、こちらの世界における王家の血とは、元を辿れば始祖ブリミルの血となるのだから、それはそれで問題ないのかもしれないが……そう考えると、一時期ゲルマニアに嫁がせようとしていたことに疑問が浮かび上がってくる。

 そちらは完全に向こうの血に染められることとなるため、残るのは傍流の血筋となってしまうのだから、血脈の保存という観点からすると言語道断もいいところのはずなのだ。

 

 その辺りから考えても、トリステインに王子が居ない、というのが奇妙に過ぎるのである。

 一説によれば、騎士姫側での描写から、実はマリアンヌと前王は愛の無い結婚であり、子を一人成した時点で役目を終えたとばかりに冷めてしまった、などという話もあったりするが……それにしては王の崩御のあと、カリンに連絡をしたというような話もなく。

 また、ゲルマニアにアンリエッタを嫁がせるのは、彼女なりに娘を愛していたからこその提案だった、などという話もあり*6……どうにも考察に必要な情報を欠いている、としか言い様がないのだ。

 

 つまり、王に愛を抱いていたのであれば、霊体でもいいから前王に合わせれば再起してくれるかもしれないが。

 もし王に愛を抱いていなければ、それは全くの逆効果かもしれない……そんな問題が出てきてしまい、一同頭を悩ませることとなってしまったのである。

 

 そのため、この問題についてはもう少し情報を集める必要がある、ということでその日は解散になったのであった。……正月がごりごり削れていきますね……(白目)

 

 

*1
こちらの刊行タイミングは2009年と2010年。氏が末期癌の延命治療中であることを世間に知らせたのが2011年7月15日であることを考えると、かなり末期の作品であることがわかる

*2
なんなら、前王の情報は故・アルビオン王の実弟であるということくらいしか判明していないレベル

*3
イギリスにおいて初の女王が誕生したのは十二世紀のこと。中世が十一~十六世紀のことなので、時代考証的には確かに女王が生まれてもおかしくない時節ということになる。なお、これは『長男が生まれなかった』ことから、長女に継承権を与えるしかなかった、というところが大きいことも留意しなければならない(そも、その時の女王は在位期間も短く、後に彼女の息子が王座を奪還することで女系継承に成功した、というところから『前例があるので否定できない』という面も大きかったのだとか)

*4
正確には、男系継承を続けて来たことによる血の正当性を担保するため、というところが大きい。つまるところ、最初から女王がずっと王権を保持する形、女系継承が続いていたのであれば、逆に男性側の継承が難しくなっていたはずである(血縁を辿る時、正当な継承権を持つのがどちらなのかを一々確認する必要がある為。継承権が片方の性別に限定されているのであれば、その性別の親を追っていけばすぐに前王達にたどり着ける)

*5
また、それだけの血脈の正当性があるということは、逆を言えば今のこの時代においてもまだ皇帝としての価値がある、ということでもある。男女平等はまだ若い考え方であり、そういう意味では天皇家の女系継承を認めるにはまだ古い考え方の人間が残りすぎている、すなわち天皇家という高貴な血にすり寄って利権を得ようとするものが居てもおかしくない、ということでもあるという話。その人達からしてみれば、女系継承とはその実『外から他の血を受け入れた』──すなわち自身(息子・ないしその親)が天皇家に影響を及ぼすことができるようになった、という形に等しいとも言える。流石に政権を握れるようになるわけではないが、それに伴って古い考え方の人々から覚えが良くなる、などの付随効果が期待できてしまうのは言うまでもない

*6
王の居ないこの国はやがて戦乱に包まれるだろうから、それに巻き込まれないように……というような意味合いだったとのこと。ここから考えてみると、王妃は国を守る気が無かった、という風にも読み取れてしまう

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