なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・増えて良いのか騎士王は

「……さて、あれこれ語ったけど……」

「アンリエッタを増やすのが良さそう、ってのは確かなんだよね」

 

 

 はてさて、あれこれ語ってみたものの、実際はやるべきこと、というものは既に答えが出ている。

 それが、アルトリアを増やして、他二人を補佐にすること。先程は、その場合アルトリアが王として相応しい部分を示す必要がある、と難色を示したものの……増やし方如何によっては、その辺りをクリアすることも難しくはない。

 

 

「と、言いますと?」

(キーア)方式の分身を使うのさ。アンリエッタは複数のアルトリアをその概念に持つ存在。ゆえに、一部のそれを核にして分身を生み出せば、一先ず王として立つには申し分ない人格になるはずさ」

 

 

 その方法と言うのが、彼女の中のアルトリア成分を抽出し、それを元に分身を作り上げるというもの。

 彼女の中には『アルトリア・キャスター』以外のあらゆるアルトリアの要素が詰まっている。……なんでキャスターの彼女だけ居ないのか、というのはその部分をアンリエッタ要素が満たしているからだ、だと思われるがまぁその辺りは一先ず置いておくとして。

 

 ともあれ、聖剣の彼女と聖槍の彼女、その二者をベースに分身を作れば、恐らくかなり理想的な人格として出力されると思われる。……多少の()として、オルタ方面とかも少し混ぜれば磐石だろうか?

 その彼女を二人で支えるとなれば、普通の貴族達は恐らくそのまま王に付いてくることだろう。

 そうなれば、あとは薄暗い部分の掃除だけで事足りる。

 

 問題があるとすれば、実際はあまり長期間使える手段ではない、ということだろうか?

 

 

「と、言うと?」

「人間の通常時の人格は、数多のそれを纏めあげたモノ……みたいな話をしたけど、これって要するに人工的に多重人格を作ろうとしているのと大差ないんだよね」

 

 

 私の分身の説明で何度か語ったが、これらの人格はなにかしらの『概念』を核に作り上げたもの。その概念の中でも一番わかりやすいのが『感情』である。

 

 怒りを司る部分、悲しみを司る部分、喜びを司る部分……そういった強い感情を元に組み上げられたそれらは、それゆえにそれらの『感情』に強く縛られている、とも言える。

 無論、怒りの中の喜びの感情、喜びの中の悲しみの感情……というように、一つの感情を示すにも他の感情の介入があることは否めず、ゆえにその感情にのみ凝り固まり続ける……なんてことは普通有り得ない。

 が、『感情』を核にして人格を作る場合、その有り得ないことが容易に起きてしまう。……なので、私が分身を作る際は、そもそもに()()()()()()()()()()()()()()を選択していたりするわけで。

 

 

「それが善とか悪とか、ってわけでね?まぁ要するに、()()()考えると人として真っ当に動かすのなら、どれか一つだけの感情に支配されている……ってのはよろしくないんだよ」

「そこでわざわざ()()()、なんて言葉を付ける辺り、今回はそうじゃないと?」

「今回は、っていうか()()()()って言うべきかな?」

「……貴女以外は?」

 

 

 首を傾げるクリスに対し、『私以外は』という部分を強調しながら主張する私。……より正確に言えば【星の欠片】使い以外、というべきなのだが。

 

 何度か主張するように、【星の欠片】とは自身を微細存在に割断するモノである。……のだが、それと同じくらい重要なものとして、『無限概念である』というものがある。

 酸素原子などのような『原子』には、ほとんど個体差というものはない。……ほとんど、というのは同位体の例があるからだが……まぁ、同じ原子を区別する、ということができないのは確かな話である。

 無限概念である【星の欠片】の場合も似たようなもの。細かな自分が集まって大きな自分になる、という形式上、()()()()()()()()というのはごく自然なことなのである。並行世界の自分がずっと触れあえる位置にいる、みたいな感じか。

 

 そういうわけなので、私達のような【星の欠片】は、自己同一性が結構曖昧なのである。

 目の前に居る自分と同じものに嫌悪を抱かないというか、フラクトライトをコピーされても自壊しないというか。……橙子さんみたいな?*1

 まぁともかく、わりと雑に自分をコピーしても、そこに違和を抱いたり不和を重ねたり、ということがないのである。なにせ、そもそもにして無量のコピーのようなもの。複製されようがされまいが、どれもが私であり私でしかないので。

 

 

「一種の群体生物、みたいな?……まぁだから、例え人格レベルの割断を行ったとしても、『こっちの私は善人ー』『じゃあ私は悪人ー』みたいな感じで、特に争うこともなく役割分担できるのよね」

「……ツッコミたいところは色々あるけど、それで?それがアルトリアの話とどう関係してくる……あ、」

「……気付いたみたいだけど話を続けるよ。普通、自分がコピーである、と言うことを知らされるのは、己の存在意義を揺るがされるのと同じこと。そういうのを減らすため、互いに差異を設け別の人格として構築する……という面もなくはないわけよ、この『核入り分身』ってのは」

 

 

 完全に同じ存在であれば、そこに存在意義の消失を伴う可能性がある。そのため、多重人格を作る形での分身というのは、本人そのものとは別の存在になるように調整をする必要があるわけで。

 ……そういうのを、()()()()()()()という形で分身させるこの方式は、どちらが本物なのか偽物なのか、という議論を発生させないという点では優れていると言える。

 実際どちらも本物なのだから、どっちがどうとか言う必要性がないのは素晴らしいことだろう。

 

 ──だが、優劣は競い合える。

 例えばヘンリー博士が求めたように、完全に悪の部分を切り離せてしまったのであれば、善だけの心は『自分こそが完璧な私だ』と確信することだろう。

 ……ここまで見てきた諸兄であれば、それは基本的に勘違いであるということに思い至るとは思うが……ともかく。

 完全な同一でない以上、スワンプマン問題は回避できるが、どちらが優秀なのかの言い合いは出来てしまうのは、今までのそれらとはまた別の問題を引き起こすことは容易に想像できてしまうはず。

 この場合であっても【星の欠片】は争う必要がないのだから、本当に私達って分身適性高いんだなー……なんてことを思わないでもないが、そこはそれ。普通の人にこの分身を使わせるのはわりとヤバイ、というのはなんとなく見えてきたのではないだろうか。

 

 

「例えばナルト君の使う影分身とかなら、そういう心配はないかもしれないけれど……そっちはそっちで使うのにチャクラが必要だったり、そのチャクラを全損するほどのダメージを受けると消えちゃったり……みたいな欠点があるからねー」

「そこら辺を欠点って言っちゃえるのは、多分姉ちゃんくらいのもんだってばよ……」

 

 

 分身、と言いつつもその実()()()()()()()()()()()()()()()()に近いこの手法は、分身が実体を持ち時には成長することすらできるが、逆を言えば『違う選択をした自分を他所から呼び寄せた』のに近いものであるため、ともすれば本体と分身との間で不和を生む可能性がある。

 ……自分同士の争いの無意味さをよく知る私達【星の欠片】ならまだしも、普通の人にこれが劇薬だというのはなんとなく理解できるのではないだろうか。

 まぁ、アルトリアの場合は別方向に拗れそう、みたいな部分もあるのだが。

 

 

「と、言うと?」

「この場合、出来上がるのは()()()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()。王としての自分に後悔を残していた面のあるアルトリアにとっては、『相手の方が素晴らしいのでは?』みたいな讓りあいになる可能性がねー……」

「あー……」

 

 

 この分身の副作用みたいなものである『人格の一個の人間としての確立』。

 それはすなわち、多重人格間での争いを誘発することにも繋がってしまうもの。……本来は人格同士が争う、なんてことは滅多に無いわけだが、それをほぼ百パーセントの確率で起こしてしまうこれは、そもそもにわりと禁術指定受けてもおかしくないものである。

 

 ……あるのだが、これがアンリエッタの場合だと微妙に話が違ってくる。

 彼女には複数のアルトリアが統合されており、かつそれらによってある程度安定した存在となっている。

 が、この分身はその安定を、一時的ながら崩すもの。……それゆえ、原作の彼女のルートを通っていない彼女、というある種の瑕疵を引き出してしまう恐れがあるのである。

 言うなればZEROの彼女、というべきか。王の選定のやり直しを願い、そのために聖杯を求めた脆い王。

 

 無論、それらは本来彼女自身が『間違った願い』だと悟り、追うことを止めるものではあるが……裡にその記憶が残っている、ということに違いはなく。

 こういう技を使ってしまうと、その不安定さが影響を及ぼしてしまうのである。

 

 まぁ、別に彼女以外に使わせても、別人格が姿と形を持つことに変わりはなく、使い方を誤ると──もとい長期間本人から分離したままにしておくと、自意識が成長しすぎて下克上企てたりするのは変わらないのだが。

 

 

「なにその危なすぎるあれ……」

私達(【星の欠片】)が使えるようにした分身だからね、そりゃまぁあれこれとヤバげな問題が転がっているのも仕方ないのさ」

 

 

 そして、現状ではその危ない技に頼り、かつ問題が起こらないように注意するしか手段がない、というのも確かなのだ。

 ……とまぁ、そんな感じに話を結ぶ私なのでありましたとさ。

 

 

*1
『フラクトライト』は『ソードアート・オンライン』内の用語の一つ。『Fluctuating Light』の略で、意味としては『揺れ動く光』。脳神経細胞内にある光量子であり、人の魂そのものともされるもの。これをコピーすることで人を電脳世界に人を文字通りコピーすることができるが、そのコピーされた人物は自身がコピーであることに気が付くと崩壊してしまう、という問題点があった(自己同一性の崩壊)。そのため、電脳世界に暮らすことのできるフラクトライトを作る……というのが、アリシゼーション編における主な目的である。なお、基本的に一方通行で帰還手段がない月の聖杯戦争において、自身の複製を送り込み事が終わったら死んでも構わない……などという、フラクトライト問題に喧嘩を売るかのような行為をしていたのが『fate/extra』における蒼崎橙子である

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