なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……よぉし、あれこれ考えても仕方あるまい!ぶっつけ本番じゃーい!」
「MA☆TTE!?」
まぁ正直?取れる手段なんてそう多くないので、思い付いた手段を採用するしかないんだけども。
……とばかりに声をあげた私に、ビジューちゃんが『他に!他になにか手段はないのですか!?』と聞いてきたのも今は昔。
「……自分が二人いる、というのは少々不思議な気分ですね」
「というか、この姿で大丈夫なのですか?その……色々と違うような気が……?」
「んー、ダメかなーダメだよねー?でもねー、あの構成要素で纏めるとこうなっちゃうんだよねー」
あと、出来る限り問題を最小限にしようとした結果、みたいな?
……なんてことを呟く私の前に居るのは、片方はいつも通りの姿のアルトリア。……なのだが、少々常日頃の覇気が抜け、通常のリリィに近付いたような気配になっているのであった。
で、それとは対称的なのがもう片方。……こっちは
……うーん、これはどうだろう、前提時点で懸念していたことが形になったりしてたり……?
「──ああ、なるほど。確かに、この姿の私を見れば、貴女が懸念することは理解できます」
「ええと、すみません。もしかして貴女は……」
「いいえ、マシュ。貴女の心配は無用なモノだと先に申し上げておきましょう。私はランサーのアルトリアを基幹とした存在。……獅子王ではありませんので、ご心配なく」
「ああ、そりゃ良かった……」
そうして難しい顔をしている私に、彼女は穏やかな笑みを浮かべながら、そう否定の言葉を口にする。
……先程は説明を省いたが、アルトリアの要素を持つアンリエッタを分裂させるに当たって懸念となるものは、もう一つ存在していた。
それが、先程彼女が口にした『獅子王』──ゲーム内第一部第六章『神聖円卓領域キャメロット』におけるボスのことである。
彼女はアルトリアが辿る可能性のある末路の一つであり、最果ての塔の端末である聖槍・ロンゴミニアドを使い続けたことによって、意識まで女神に変成した存在である。
その存在規模はまさに神霊級であり、またロンゴミニアドと空想樹の関連性を思えば、実際はプレイヤーが思っているより遥かにおかしな性能をしていてもおかしくない存在である。
なにせ、作中では彼女の事を打倒しきれていないのだから。
「とある方が彼女に人間性を取り戻させたことで、一先ず戦いは終わりましたが……逆を言えばそれだけなのです。私達は確かに彼女に挑みましたが、真実彼女を打ち倒すことはできていなかった」
「……まぁ、あのあとの
マシュの言葉に、小さく苦笑を浮かべるアルトリア……だとごっちゃになるので、とりあえずは獅子王と呼ぶが。……いやだって今『私』っつったしこの人。
ともかく、獅子王が微妙な顔をしているのは、彼女の中ではあの一連の流れは勝ち逃げされた、と認識しているがゆえだろう。
あのあとアーケード版の方に顔を出しているみたいな辺り、神霊級の存在になったことでわりとワケわからんことしている可能性もあるが……ともかく。*1
獅子王というのは、やっていることだけを見ると人類悪一歩手前みたいな存在である。
これからやって来る驚異に対してはどうしようもないので、善き人間だけを保存しそれを越えようとした……というそれは、そこに愛があればまさしく人類悪として成立しかねないものであった。
……まぁ、実際には人類悪ではなかったし、別の世界に似たようなことをしようとした者が居る辺り、ある意味では二番煎じ感もなくはなかったが……ともあれ、終始彼女が本気を出していたかどうかは、曖昧なところがあるというのも確かだろう。
これは、彼女の目的がそもそも戦うことではなかった、というところが大きい。
「え?でも戦ったんだろう?作中では」
「まぁね。でも、彼女が本来しようとしていたことは、どこまで行っても守ること──失われるものを繋ぎ止めるためのものだった。ゆえに、それ以外の全てはある意味些事だったのさ」
「……耳の痛い話ですね」
ある意味では、オルタの方のアルジュナに似ている、とも言えるか。
まぁともかく、守るべきモノを壊滅させていては元も子もないので、幾つかの手加減……というとあれだが、無意識のうちの遠慮のようなものがあった可能性は、無いともあるとも言い切れまい。
とはいえ、その状態でもこっちを普通に圧倒してくる辺り、流石は神霊級と言うべきなのだが。……『最果ての塔』の管理者がグランドランサーの資格、なんて噂もあるし、その実力は未だ未知数なのは間違いないだろう。*2
そういうわけで、彼女が顕現する可能性というのは、できれば避けたかったわけなのである。
一応、アプリでの記憶も持っているのであれば、こちらで無用なことをするつもりはない、と言えなくもなさそうなのだが……。
「……
「?……せんぱい、獅子王さんはなにを……?」
「こっちの話。……でもまぁ、その言いぶりだとそのつもりはないと?」
「……何度も言わせないでください。私はあくまでも
(えー……)
彼女の様子はこんな感じ。……遠回しにそんなことする気はないよ、と言っているのはわかるのだが、あまりに遠回し過ぎてなんというか肩の力が抜けるというか……。
まぁ、変に掘り起こしてしまう必要もない、というのも確かな話。彼女自身が違うと言うのだから、そういうことにしておくのが一番丸いのは確かだろう。
……というか、問題はまだまだ山積みなのだし。
「……はっ!?そそそうでした!このままだと私がいきなり大きくなってばーんでどーんで!?」
「落ち着きなさい、私。……この姿をしていても、確かに私は貴女と同じアンリエッタ。であれば、こちらの魔法で姿をごまかす、ということも可能です」
「あ、なるほど」
そのうちの一つ、どう見ても姉と妹、もっと言えば母と娘ほど姿の違う彼女達をどうごまかすのか?……という話については、元がアンリエッタなのでその属性を受け継いでいる、という獅子王の言によりなんとかなりそう、という話に。
……ただまぁ、豊富なアルトリア成分に比べアンリエッタ成分は一人分、わけたことで魔法の腕前が下がってしまっている……という話でもあったのだが。
「具体的には私がドット、彼女がライン相当になっている……という感じでしょうか」
「元の私がトライアングルなので、そう考えると確かに腕が落ちていますね……」
「そんな綺麗に別れることある?」
アンリエッタとしての属性が強いリリィ側が、その分魔法力を持っていったのだろう……とは獅子王の言だが、こういうところからもあの『分身』の扱い辛さを思い知る私である。……比率が同一でない辺り、【星の欠片】相手に使うのとはわけが違いすぎる、というか。
ともかく、どうにかなると言うのであれば問題はないだろう、と次の話に行きかけて……。
「……ん?ちょっと待ちなさい、確か『フェイス・チェンジ』って、風と水を複合したスクウェアスペルだったはずだけど?」
「ふぅむ?ということは変装とかは無理、ってことかのぅ?」
と、ルイズが疑問を呈することに。
これに獅子王はしまった、という顔をするでもなく。
「そこ関してはご心配なく。『変化』を使いますので」
「……それ、先住魔法よね?なんで姫様が使えるのよ?」
「それは無論、
「……はい?」
先住魔法──エルフや妖精達にしか使えない魔法を彼女が使える、などという珍妙な言葉によって否定される。
無論、ハルケギニアの常識を知るルイズは首を傾げるわけだが……なるほど、アルトリアなら使えてもおかしくない、という話には一定の説得力があるだろう。
「なんでよ?」
「アルトリアは概念受胎によって、竜の因子を持っているからね。作中で変身していたのはシルフィード……
「……あー、どこで覚えるのか、って部分はともかく、教われば普通に使える可能性はあるのね……」
そう、この変化の魔法、作中では使っていたのはシルフィード……風竜の子供であった。
つまり、エルフや妖精などの区分に竜が含まれている、というわけである。……キャスターの要素がないのを、ここで補ってくるとは……みたいな感じというか。
「となると、あとは……」
「何度か私がこっちに戻ってくるようにする必要がある、くらいですかね?」
そうなってくるとあとの問題は、彼女をこちらに放置しすぎない……ということだろうか。
今現在は安定しているが、分身を遠方で放置しすぎるとその暴走を招く可能性がある。
特に彼女は獅子王、聖剣相当のリリィから長期間離すのは、その安定性を欠く結果となることは、容易に想像できてしまう。
ゆえに、一定の頻度で彼女に里帰りをするように申し付ける必要がある、ということになるのだが……。
「……どのくらいの頻度が良いのでしょうか?」
「んー……」
何分、その辺りのノウハウは皆無に等しい。
ゆえに、どれくらいで彼女達が制御不能になるのか、というのは今のところ不明としか言いようがないのであった。
うーん、早まった感!