なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
何度やっても慣れないこと
「うーむ……」
はてさて、正月の騒動からしばらく時間が経ち、今は二月の頭。
え?前回ので終わり?そのあとどうなったの?……などと思われる方もいらっしゃるかも知れないが、あれに関しては意外なことにそこまで問題なく状況が回っている、ということをここに宣言させて頂きたく。
いやホントに。向こうとこっちの時間のズレが、上手いこと噛み合ったのか顔見せするのも一週間に一度程度、その時間自体も長くて一時間程度で済むという簡単具合でね?
まぁなんというか、これから長期間になってどうなるか、みたいな部分はあるものの……どうにかなるんじゃないかなー、なんて呑気な感想が出てくるのも仕方がないわけでして。
ともあれ、ハルケギニアに関してはそんな感じ。
事態の収集に目処も立ったし、お参り的なものもしたしで特にやることなくなったな?……となった私たちは、意気揚々とこっちに戻ってきたのでしたとさ。
で、話を現在に戻して。二月のこの時期になってくると、とある一つのイベントごとが私達に襲い掛かってくるのが必定、というわけでして。
「都合こうなってから二回目のバレンタインかー……」
「それと、せんぱいのお誕生日ですね。不肖マシュ・キリエライト、全力でせんぱいのお誕生日をお祝いする所存です!」
「ああうん、期待して待ってるねー」
「お任せください!さてと、それまでにあれこれ覚えないと。ふんふーん♪」
そう、それこそがバレンタイン、すなわち恋人達のお祭り騒ぎである。
……いやまぁ、私とマシュは恋人とかではないわけなのだが、彼女が張り切るのは目に見えてるのでうんまぁ、うん。
……まぁその、私のあれこれは先月のあれこれで片付いたようなものだが、マシュ側の事情が片付いていない以上はそういうのは……ね?
あとまぁ、元を正せば同性なのにその辺りいいのか、みたいな部分もあるというか。……それに関しては今も同じ?それはそう。
ともかく、明確に恋仲になるにはまだ色々ある、ということもあり、本来であればそこまで張り切る必要はないのでは?……みたいな気持ちもなくはないのだが、女性達がこの日に張り切らないのもあれやろ、みたいなあれもあって、微妙に立ち位置を決めかねている私なのである。
「おやおやぁ?せんぱいってば、今年もまた店屋物で済ませようなんてダメダメなことを考えていらっしゃいますぅ~?」
「おおっとBBちゃん、今日はそっちなのね」
「そりゃもう、私だってアピールくらいはしておかないといけませんので☆……まぁなんだか周回遅れにされているような悪寒もするのですが!私もなにか薄暗い事情とか背負っとけば良かったですぅ~↓」
「……いや、BBちゃんだとその辺り洒落にならないから、止めてねマジで?」
そんな私に背後から声を掛けてくるのは、いつぞやかぶりに
相も変わらず触れるホログラム……ソリッドビジョン?みたいにそこにある彼女は、今回お菓子作りに挑戦しようとしているとのこと。……まぁ要するにバレンタイン向けにあれこれやってる、というわけだが。
ただ、彼女的にはマシュが色々先んじている()こともあり、わりと焦りみたいなものもあるとかなんとかで、自分も原作の『BB』みたいに色々抱えてれば良かったかな?……なんてことを言い出したため、思わずちょっとお叱りモードになってしまう私なのであった。
「……まぁ、不謹慎だったのは確かですね、すみませんでした。……だけど私、せんぱいがマシュさんにばっかり構ってること、わりと拗ねてるんですよ?」
「いやまぁ、ほら……その、BBちゃんは寧ろ頼れる後輩、的なあれというか……」
「えー!?なになにー?BBちゃん頼れるスーパー後輩好き好き愛してるぅー、ですかせんぱいー?やーん、BBちゃん褒められ過ぎてビックリしちゃいますぅ~♡」
「誰もそこまで言ってない」
「……だからって拳骨する必要はないじゃないですか……っ」
いやまぁ、そこは突然大声をあげ始めたBBちゃんが悪いというか。
……ともかく、別に彼女を構っていないわけではない。マシュの方があれこれ事情を抱えているため、どうしても優先度が高くなっているというだけの話。
なのでまぁ、手の掛からない……と言うと互いに失礼かもしれないが、それくらいBBちゃんについては信頼してるんだよ、と述べれば、彼女はにんまりと笑って、
「──はい、私は貴女の頼れる後輩にして、電子の海を統べるウルトラスーパーハイスペックAI・BBちゃんですので!これからも存分に、私を頼って堕落してくださいね、せ・ん・ぱ・い?」
──と告げてくるのだった。
「……これはあれかの?わしはお主に『爆ぜて!キーアー!!』って言えば良いのかのぅ?」
「それは向こうに実際にいらっしゃる赤い人に言ってあげてください」
「……それもそうじゃのぅ」
どこからともなく「なんでさ!?」という料理の鉄人の言葉が聞こえてきた気がしたが、多分幻聴である。*1
ともあれ、今日はミラちゃんが遊びに来ていることもあり、彼女は家の中での一連の流れを見て、私を揶揄してくるのであった。……なので、その口に味見用のチョコレートを叩き込みつつ黙らせる作業が増えたりしたが、とりあえず問題はない。
……で、そんな感じで話ながら私がなにをしているのかというと。
「湯煎に掛けて溶かしたチョコを型に入れる……初歩的じゃが、まぁ確かに義理ならこんなものか」
「いや、マシュとかBBちゃんとかがおかしいだけだからね?義理にまでそこまで時間は掛けないでしょ普通」
まぁうん、バレンタインに向けての義理チョコの確保、というやつである。お世話になった人全員に渡すつもりなので、単純に量が多く今からやらないと間に合わない、みたいなやつだ。
いやまぁね?本当なら例年通り店屋物で済ませようかなー、と思っていたんだけども。……ああいう風にBBちゃんに言われてしまうと、私自身がまったく苦労してないのもあれかなー、みたいな気分になってきたというか。
まぁそういうわけで、とりあえず湯煎したチョコを成型する、くらいはしてみようかなーという気持ちになったわけなのです、はい。
で、遊びにきたミラちゃんはそれを見物してる……と。
「ミラちゃんは作らないの?」
「わしは渡す相手も限られておるし、それも義理ばかりじゃからのー。まぁ、自分用にチョコケーキとか作ってみてもいいかも知れぬが……どちらかと言えば他人が作ったものが欲しいのー」
「……それ、遠回しに私に作れって言ってない?言っとくけどその場合ミラちゃんあの二人に追い掛けられる羽目になると思うけど?」
「……今のは聞かなかったことにしておくれ」
「そうするー」
彼女も女性は女性なのだし、誰かに渡すとか無いのかなー?……と思って尋ねてみたが、渡す相手が少ないので今から張り切る必要はない、とわりと冷めた答えが返ってくる。
どころか、こちらに暗にケーキをねだるような発言までしてきたわけだが……それは自殺行為だぞ、と伝えれば即座に案を取り下げてくるのであった。
話を戻して。
ミラちゃんにもチョコを渡す相手がいる、ということに少しばかり驚きを感じる私だが、どうやら相手はモモンガさんなどの一部の男性のよう。
……ああなるほど、確かに義理だなと感じた私は、それ以上掘り下げることはしなかったのであった。
「……そういえば、ミラちゃんと出会ってから一年経つんだね、そろそろ」
「む。そういえばそうじゃのぅ、わしがお主と出会ったのは、そういえばこの時期じゃったのぅ」
代わりに話題にあげるのは、彼女との出会いがそろそろ一年を迎える、という事実について。
……思えば、彼女との出会いから私が『
「まぁ、そちらの組織とわしの組織が交流するきっかけになったのも、元を正せばわしとお主の出会いが根幹にあるからのぅ。そう言われてみれば、ある意味作為的なものを感じぬではないのぅ」
「実際は本当に単なる偶然、なんだけどね」
しみじみと当時を語る私たち。
あの時は幽霊列車騒動で、各々が調査とかをしに行ったのだったか。
それで金田一一の格好をした夏油君に出会って「あっ」ってなったり、ある意味属性の似ているミラちゃんに出会ってなんとなく意気投合したり……。
「ここにー、私が来た!!」
「面倒事はおかえりー」
「おかえりー」
「帰らないわよ!?」
そうな感じであれこれと話をしていたところ、特徴的な音と共に中空に開いたスキマから、謎のテンションのゆかりんがこんにちわ。
……どう考えても面倒事の気配だったので、そのままお帰りなさいという気分だったのだが、彼女は負けじとそこに留まっていたのであった。うーん、絶対面倒なやつですよこれは……。
「なにもそんなに嫌がらなくてもいいじゃないのよ……」
「じゃあ聞くけど、今からゆかりんが私たちに頼むことは面倒なこと?それとも簡単なこと?」
「……面倒なこと?」
「ほらやっぱり!」
そもそもの話、ゆかりんがわざわざ話を伝えに来る辺りでわりと切羽詰まった話なのは分かりきってるんだから、そりゃこっちも嫌がるってものでね?
……というようなことを彼女に告げたところ、彼女は「確かにそうだけどー、でもそんな私を死神かなにかみたいに言う必要性なくないー?!」などと泣き言を言っていたのであった。
まぁあれだ、それがトップの役目みたいなものなのだから、諦めてその風評を受け入れて頂きたいというか。
「いやよー!そんなのやー!!私はトップでいるより気楽にお酒飲んでたいのー!!」
「せやけどゆかりん、それは夢や」
「白昼夢とかその辺りの扱いされてるこれ!?」
「……あの、せんぱい?遊んでる場合ではないのでは……?」
「あっ、そそそそうよマシュちゃんありがとう!危うくこのまま有耶無耶にされるところだったわ!」
「ちっ、気が付いたか」
なお、そんなぐだぐだな流れは、うるさくしていた私たちを気にして様子を見にきたマシュの言葉によって、あっさりと断ち切られてしまったのであった。
……まぁ、ゆかりん