なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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旅は道連れ世は情け、つまりは人のためでなく

「ふーん、曰く付きの列車、ねぇ?」

「なにか起こるだろう、っていうその予想は確実性のあるものなのか?」

「まぁ、逆になにも起きない方が不気味……みたいなところはあるかなぁ」

「まぁ、これだけあれこれ揃っていては……のぅ?」

 

 

 さて、愉快な仲間達を召集して半刻ほど。

 しっかりと情報共有をはたした私たちは、これからどうするのか?ということを話し合っていたわけだけど……人員は確かに潤ったものの、それで全てが解決するのかと言われればノー。

 そもそも誰がなんのためにこれを起こしているのか?……というところからして不可解であるため、正直いつも通りに後手に回るしかないのでありましたとさ。

 

 

「誰かって……そんなの、このゲームの運営じゃないのか?」

「忘れたのかいキリト、このゲームってSAOのカーディナルシステムを元にして作られてるってこと」

「げ。……そういえば、茅場が関わってたんだっけ」

「いわゆる神ってやつもな。……よくよく考えたら厄物以外の何物でもねーな、これ」

 

 

 まぁ、『The world』の開発スタッフとかが混じってないだけマシなんだろうが、なんてことをぼやくハセヲ君だが……正直地獄が多少緩和されただけで地獄なことに変わりはないので、あんまり比較の意味がないというか。

 

 ……ともかく、このゲームの運営……というか制作者は、私たちと同じ『逆憑依』──それもその中で最も奇怪な成立原理を持つとされる【複合憑依】である茅場晶彦……もといドクターウエスト……もとい檀黎斗。

 問題児三体融合な存在である以上、彼らが主犯であると見てもそうおかしくはなさそうなのだが……同時に、『tri-qualia』がSAOのような『カーディナルシステム』……勝手に自身を拡張し成長しメンテナンスしていくゲームシステムを採用している以上、これは()()()()()()()()()()()()()、という風に考えることも可能なのである。

 

 ついでに言うなら、本格的なデータの改変は受け付けずとも、『提案』という形ならある程度クエストなどの方向性を調整できる……みたいな話も聞かされているため、完全な第三者がなにかをしたと言う可能性も微妙に捨てきれない。

 

 要するに、現状ではこれ、と言いきれる物証も根拠も無いため、誰を責め立てることもできないというわけである。……そりゃまぁ、後手に回るのも仕方ないというか。

 なので、キリトちゃんなら心意システム*1とか、ハセヲ君なら憑神(アバター)*2とか、そういう規格外システムを使えたりしないかなー、なんて淡い期待もなくはなかったのだけれど……。

 

 

「……いや、あれ使えたらヤバいだろ。そもそもあれ、原理的にはナーヴギアとかアミュスフィアとか、人の精神を読み取るまでに進化したHMDが必須みたいなもんだし」

「俺はまぁ、向こうが変わらず近付いてこねーし」

「……逆にスケィスはなにしてんのよ、それ」

 

 

 まぁうん、使えるわけがないよねー、みたいな?

 キリトちゃんの方は──極論を言うとナーヴギア持ってるアスナさんなら使えなくもないのかもしれないが、当の彼女はニコニコ笑っているだけで確認し辛い感じ。

 ハセヲ君の方は──うーん、なんと言っていいやら。

 彼の感覚的には、憑神であるスケィスは変わらず彼と繋がっているようだが……逆を言えば繋がっているだけ。少なくとも表に出てくる気はなさそうだった。

 いやまぁ、最強(Xth)フォームまで進化させといてなに言ってるの?的な感想もなくはないんだけどね?

 でもまぁ、憑神なしならちょっと手数が多い、程度で済まされそうな感じがあるのも確かと言うか。

 ブルーノちゃん……もといアンチノミーさん見てればわかるけど、このゲームの職業ってわりとなんでもありみたいなところがあるし。

 

 そういうわけで、分かりやすくチート級な二人は、そこまでの力は発揮できないとのこと。

 ならば電子生命体であるアグモン君ならば、きっと凄いことができるのでは?……なんて風に思ったけど。

 

 

「ボクがその辺り凄くなるの、オメガモンになってからだから……」*3

「あ、あー。ウォーグレイモンだと単純に強いだけ、ってことになるのかー……」

「それで十分だと思うが?」

「発案者を探りたかったってところを思うと、正直戦力ばっか加算されてもなぁ、というか……」

「そういうものか……」

 

 

 あーうん。そういえばアグモン君がそういう特殊な能力を獲得するのって、ジョグレス進化してオメガモンやその派生になってから──すなわちロイヤルナイツになってから。

 デジタル世界の守護者として覚醒してからが彼の真骨頂であることを思えば、彼もまたハセヲ君のように最強フォーム止まり、ということになるのだった。

 

 ……いやまぁ、BBちゃんがここではフルスペックには程遠い辺り、実際はその辺りの能力が使える状況でもなにかしらの制限を受ける、みたいな可能性もなくはないだろうけど。

 

 

「……そうなの?」

「まぁ、私たちみたいなただのプレイヤーならいざ知らず、BBちゃんは元々電子の世界の住人だからねぇ。……そういう意味で、この世界に存在を許されているのはウォーグレイモンまで、なんて可能性も普通にあると思うよ?」

「なるほど?」

 

 

 再現度の話にも通じるところだが、機械やプログラムというのは、基本それらが完品でなければ動かない、みたいな部分がある。

 部位などの機能制御をブロック化して動かしているとかでもない限り、不完全な状態では電気やプログラムがまともに走らず機能しない……みたいな話である。

 

 そうして考えてみると……BBちゃんやアグモンみたいな電子生命体は、人と同じような振る舞いを見せるもののその本質はプログラム。……プログラムで心や魂を再現している、という時点で大概ではあるが、だからこそ余計に汚染や破損に弱い、と見なすこともできる。

 実際、BBちゃんが原作で生まれる切っ掛けとなったのは、自身がAI……電子生命体であることに理由があった。自身のキャパシティを越えたものを取り扱うには、彼らは少し縛られ過ぎているのである。

 そういう意味では、進化という形でキャパシティを広げることのできるデジモン達は、かなり完成された電子生命体である、ということができそうだが……その辺りは長くなるのでここでは置いておくとして。

 

 ともかく、本来彼らを再現するとなれば、そこに掛かる制約は私たち普通の『逆憑依』が機械系のアイテムを持ち込む時に掛かるそれと同じ、だと思われる。

 つまり、他のなににおいてもそれを再現することを優先されるか、全く再現されないため持ち込めないか、の二つ。

 この内、例としてあげた二人は『再現されていない』などということは一切ないだろう。つまり彼らは、なににおいても自身の根幹となるプログラムの再現を優先されているはず。

 ……そんな人物の内の片割れ、BBちゃんが全力を出せないと言うのだから、彼女の不調の理由が『tri-qualia』の方にある、と考えるのはごく普通のことだといえるだろう。

 

 そういうわけで、もし仮にここにガブモン君が居たとしても、アグモン君がジョグレス進化をすることはできないし。なんなら、他二人も原作でのチート技能を使うことはできない、なんて可能性が浮上してくるわけなのだったとさ。

 

 

「……む、となるとわしは?わしはどうなんじゃ?」

「んー……精霊王の加護がきちんと機能することはない、みたいな?」

「むぅ……ちょっとでも使える時点で大助かりじゃが、なんとも歯がゆいのぅ」

 

 

 で、ミラちゃんが横合いから口を出してきたけど……本来、ミラちゃんの『精霊王の加護』は彼女がネトゲ時代に会得したものではなく、ネトゲそのもの・またはそれに酷似した世界に転移・ないし転生した結果、そこで出会った精霊王に認められたことで得たもの。

 ……そういう意味で、本来現実で使えずネトゲ世界で使えるようになる、という時点で少しおかしかったりするのだが……その辺りはどちらかと言えば、この世界が一部の人を保護している、みたいな現象の方を当てはめるべきかもしれない。ほら、侑子とかの方。

 

 ()()()()()()()()()()()()者の場合、まるで保存するかのような過保護を見せる……というのがその現象の本質だが、ミラちゃんの場合は保存までいかないけど能力向上部分は働く……みたいな?

 その条件とやらはわからないが……なんとなーくかようちゃん辺りは侑子パターンになりそうな気がする辺り、一応予想くらいはできている私である。……まぁ、ここで語るようなものでもないので、ここでは流すが。

 

 ともかく、彼女がこの世界に相性がいいのは、それなりの理由があるだろうということ。そして、それがあったとしても『精霊王の加護』の完全励起までは許可されない……という世知辛さがわかったところで。

 はて、そういうのに当てはまらない【顕象】──クモコさんとハクさんはどうなるのか?……という疑問が湧き上がってくるわけで。

 

 

「そこんところどうなん?」

「まぁ、上限は似たようなもんッスよ?正確には、擬似カーディナルシステムのメンテナンス機能に引っ掛かって、この世界に悪影響を及ぼしそうな域の技能はそもそも発動できなくなっている……みたいな?」

「我も似たようなものだな。悪意の集積は我の元々持ち合わせる技能ではあるが、ここでは精々ヘイト集中くらいの機能しかないわ」

 

 

 で、その辺りが気になったので聞いてみたところ、返ってきたのはこちらもまた世知辛い感じの言葉。……あーうん、そりゃそうか……みたいな感じである。

 確かに、この世界はカーディナルシステムのような、自己拡張・自己進化・自己増殖を行うことができるプログラムに支配された世界。

 となれば、自分という存在を脅かしかねないシステムなど、端から認めないとかされても仕方ないわけである。

 

 ……まぁ、そう考えるとスケィスの異質さが目立ってくるわけなのだが。話的に、彼の方から自重してるって感じみたいだからね。

 

 

「んー、雑に言うと既にオメガモンになってる状態でそこにいる……みたいな感じなのかな?だから、例えシステムがあれこれと対策しようとしても、そもそもシステム外の存在だから抑えきれない……と?」

 

 

 カーディナルシステムは確かに優秀ではあるが、スケィスはそもそもシステムをぶち壊しながらやってくるタイプの脅威である。……コンピューターウイルスの強化版みたいなものなので、それ専用の対策プログラムじゃない片手間の対策でどうにかできるようなものじゃない……みたいな?

 まぁ、出てくるだけで周囲のネット環境を不安定にするようなギガデータでもあるので、そりゃまぁ普通に対処するのは無理だろうなぁというか。

 

 ……一応、他の面々も一部はこれに相当、ないし越えてくるような大分厄い能力が使えたりするわけだが、ハセヲ君の場合はどうやら『既にいる』という点で他とはまた違う、ということになるらしい。

 

 

「……つまりハセヲ君に呼んで貰うのが早い……?」

「おう、それでAIDAとか湧き始めたら責任取るんだろうなお前?」

「その時は責任取って『welcome to the world』させて頂く所存で……」

「責任取るってボスになれ、って意味じゃねーんだよ!?」

 

 

 なお、当のハセヲ君は全くその気がなかったので、この案はお流れになるのでしたとさ。……まぁ、仕方ないね。

 

 

*1
初出は『アクセル・ワールド』で、そちらでは『インカーネイト・システム』とも呼ばれる。イメージ制御系という、人の意思を読み取って操作を補助するシステムのバグ、ないし意図的な仕様。言ってしまえば、強い意思でデータを書き換える、というような感じのもの。そういう意味では『憑神(アバター)』などに近い面もなくはないかも知れない(あちらも人の感情を集積した結果、擬似的な神格に至るとかなんとかな技能らしい、という話があるので)。言ってしまえば、本来心など入り込む余地のない電子の世界に、それらを取り込みデータの限界を越える為のもの、ということになるか

*2
『.hack//G.U.』シリーズにおける特殊プログラムの一種。ゲーム内ゲームである『The world』の世界観の元となっているネット叙事詩『黄昏の碑文』内に描かれている『禍々しき波』、その八つの相を象った存在である『八相』。それを碑文、という形でPCボディ内に有しているのが碑文PCである。碑文それぞれに該当する意思や素質などがあり、それに適合しなければ憑神を使うことはできない。仮に使えるようになれば、ゲームの仕様を逸脱したイリーガルで強力な技能を使用することができる。元々『The world』自体がネット世界に一種の神を作り出すことを目的としていた部分もあり、これら碑文PCもその為の巫女や神官のような意味合いを持つのだとかなんとか

*3
オメガモン以降は明らかにチート級だが、この前段階のウォーグレイモンやメタルガルルモンは、あくまでデジタルモンスターというカテゴリの中で戦闘力が高い、というような感じ。明らかに生命体としては逸脱した能力を持ち合わせるようになるのは、俗に超究極体と呼ばれるような存在になってから

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