なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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ややこしくしていっても人は付いてこない

 結局、役職被りについては多分大丈夫だろう、と話し合った私たち。

 その理由は、そもそも私自体があの時に一人二役していた、というところが大きい。

 

 

「根本的に【星の欠片】って群体生物*1的なノリだからね。そんな私が、キーアとキリアで役割を持ってたのがあの時の状態なんだから、逆説的に役職が被ってたってことにもなるわけで……」

「ややこしい話になっとるのぅ……」

「まぁ、今さらって話だな」

「キーアがややこしいのは、それこそ出会った最初の方からだからなぁ」

 

 

 そこ二人、うるさい。

 ……とまぁ、そんな感じにあれこれと揶揄されつつ、まぁなんとかなるやろみたいな感じでスタートした調査であるわけだが。

 

 

「……そういえば」

「ん?なんじゃ藪から棒に」

 

 

 隣を歩くミラちゃんを見ながら、ふと思ったことを口にする私。

 今現在、私の横にマシュは居ない。……いやまぁ、現在の彼女はリアルでチョコ作りに精を出しているだろうから、当たり前と言えば当たり前の話なのだけれど……。

 

 

「さっき私とミラちゃんであの時の私&マシュなのかも、みたいなこと言ってたじゃない?」

「むぅ?……まぁ、そんなことも言っておったかのぅ」

 

 

 この列車に乗ってすぐ、再現関連のあれこれが起こるのならば、それに伴って空いた枠を埋めるモノが現れる可能性……というものについて言及していたと思う。

 で、この穴埋めについてだが、基本的には(黒幕が居ると仮定するのならば)相手側の利になるもの、と思っておくのが普通である。

 埋めるのが相手側の手によって生まれたものということになるため、最大限こちらに都合の良い状態であったとしても『こっちの利を生まない』ものである可能性が高い、とでも言うべきか。

 

 これだけだとわかりにくいのでもう少し詳しく説明すると、そもそもこの再現という現象自体がこの列車ありきのものであるため、場所に関する優先権が向こうの方にあり──【兆し】のような形で穴埋めをする場合、向こうの勢力(敵側)のキャラクターとして設定されてしまう……みたいな感じか。

 

 え?まだわかりにくい?……んー、空いてるスペースに人を補充することができるんだけど、この列車は向こうの持ち物なので、先に相手側に補充する権利がある……みたいな?

 いやまぁ、実際には空いてるスペースには『当てはまる職業』みたいなモノがあって、相手が穴埋めに使えるコマは『なんにでも当てはまる』もの、みたいな感じであり、優先権は向こうにあると言いつつ『ピッタリ合う』コマなら先んじてこちらが埋められる、みたいなルールもあったりするのだけれど。

 

 

「……余計わかり辛くなっておらんか?」

「いやー、すぐに思い付くような、簡単かつ類似してるケースが思い付かないというか……」

 

 

 特定の職業の人が仲間に居なければ、相手側が適当な人員で埋められる自由枠……くらいの認識で良いような気もするが。

 ともかく、さっきまでの当てはめ云々は、人員を埋められなかった部分が『相手の自由枠』にならないようにしてた、くらいの話。

 なので、ポジション被りは実質的に穴埋めに使えるんじゃ?……みたいな屁理屈を捏ねていたわけである。

 それが功を奏するかどうかはまぁ、実際にその時になってみないとわからないので置いておくとして。

 

 話を戻すと、『私&マシュ』という枠は、現状『私&ミラちゃん』というメンバーで埋められている……というのが現在の状況である。

 が、こうなってくると実は困ったことが一つ出てくるのである。

 

 

「む?それは一体……?」

「マシュってまぁ、基本的にはずっと()()()()なんだよね。徹頭徹尾、どこまでも。……いや、正確に言うと()()()()()()()()()()()()()()()()()って言うべきかもしれないけど」

「……いや、なにか違うのかのぅ、その二つは?」

「全然違うよー?だってずっと()()()()だと、マシュも()()()()()()()()()()()()()()()()可能性があるってことになるから」

「……む」

 

 

 そう、マシュは基本的に善側──言うなれば物語の正義の側から動かない。

 そのせんぱいである私は、ちょうどこの事件でのキリアのように、()()()()()()()()()()()なんてパターンがあるけれど……彼女にはそれがない。

 彼女の立ち位置は常に正しく、そしてそれがぶれることはない。

 

 それになんの関係が?……と思われるかもしれないが、どうか思い出して頂きたい。今現在、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということを。

 

 

「……わし、じゃのぅ」

「そ、ミラちゃん。……なんだけど、そうなってくると困ったことになるんだよねー」

「あー……もしかして?」

 

 

 そう、今のミラちゃんはマシュのポジションとして扱われている。が、それゆえに彼女だけは、役職被りが起こせない状態になっているのである。

 ……いや、それでは正確ではない。言いたいことを正確に述べるのであれば、次のようになる。

 

 

「ミラちゃんはミラちゃんだけど。……今この状況下においては、()()()()()()()()()()()()()()()()()って感じかな?」*2

「……わし、途中で寝返っておるようなものじゃからのぅ」

 

 

 彼女は間違いなく召喚術士・ミラだが、少なくともマシュの役割(ポジション)を得ている間は、この騒動に登場するミラの立ち位置を兼任できない。

 何故ならば、彼女は一度明確にこちらへと敵対行動を行っていたから。……要するに、マシュならば絶対にできない行動を取ってしまっているのである。

 もっとわかりやすく言うのなら、あの時マシュとミラちゃんが戦ってたことあったよね?……みたいな感じか。

 

 つまり、あの事件におけるマシュとミラちゃんのポジションは、その仕様上一人でどちらもこなす、ということができないものになっている。

 そのため、ミラちゃんはミラちゃんだと言うのにこの事件の再演においては()()()()()()()()()()()()、ということになってしまうのだった。……そこはかとないコンマイ語感!

 

 

「雑に言うなら、わし以外に『召喚術士・ミラ』役の人物が必要じゃということじゃろ?」

「うん。で、ミラちゃんがここにいる以上──」

「わしよりわしらしい者はおらぬから、必定埋められぬスペースとなる……と」

 

 

 で、これがなにを引き起こすのかと言うと。

 今ミラちゃんが言った通り、こちらに埋める手段がないために、ほぼ確実に相手の自由枠になってしまうのだ。*3……最良の状態でこちらに被害をもたらさないだけの無害枠になることが、半ば確定してしまったわけである。

 

 

「んー……まぁ、いつぞやかの山の神とかの時の再現でなくて良かった、と言うべきかのぅ」

「あっちにはマシュは居ないから、微妙に当てはまらないけどね」

 

 

 一応、あの時の事件におけるミラちゃんは初回登場メンバー。……顔見せこそが仕事であったため、別に味方として運用できなくてもそんなに困らない……というのは救いだろうか?

 

 彼女の言う通り、これが仮に山の神──乙事主みたいな巨大イノシシ討伐戦の時の再現だったならば、明確に居ないと困る枠であるミラちゃんが向こうの手駒になっている、というのはこれ以上ないマイナスポイントだったろうが……。

 まぁ、その想定に意味はない、というのも確かな話。あの戦闘ではマシュは居なかったので、ポジション被りのしようがないし。

 

 ともかく、これまでの情報から導き出されるのは、今回の案件においてミラちゃんはほぼ壁役運用だろう、ということ。

 折角精霊王の加護が有効化されているにも関わらず、攻撃役としての運用はできませんということになる。

 ……そうなると、彼女が精霊王の加護(それ)を本格的に試せるようになるのは、少なくともこの一件が終わってから、ということになってしまうわけで……。

 

 

「……どうにかしてさっさと終わらせたりできぬかの、これ」

「うーん、流石に無理じゃないかな?」

 

 

 そもそも事件が起こるかどうかは、この列車の運行が最後まで終了したあとでなければ断言できないわけだし。

 ……そんなことを呟けば、ミラちゃんは露骨に悲しげな表情を浮かべていたのだった。

 

 

*1
単に『群体』とも。生物学において、分裂や出芽などの無性生殖に該当する行為によって増殖した個体(≒細胞)が集まり、一つの生命体のようになっているもの。単細胞生物のような存在が集まっている形であり、現実においてはクラゲやサンゴなどが該当する。個体として同種のものが集まっている形がほとんどだが、集まることでそれぞれが特殊な役割を割り振られていることも。その場合でも多細胞生物とは違い、最悪細胞一つ一つに分離させられても生きていくことができる

*2
遊戯王OCGで例えるのならば、『伝説の都 アトランティス』をその名前で指定することはできない、という感じか。このカードは自身の効果で常に名前が『海』になるようになっている為、指定する場合は本来『海』と宣言しなければならない。この場合に当てはめるのなら、現在ミラは名称が『マシュとして扱う』ようになっているため、『ミラ』という名前を指定できない状態となっている

*3
この場合は『(ネオスペーシアン)・マリン・ドルフィン』がわかりやすいか。このモンスターは『(ネオスペーシアン)・アクア・ドルフィン』としても扱う、という効果を持つ。この効果はカードの場所を問わないものである為、遊戯王OCGの根本的な制限である『同名カードは三枚まで』の制限に引っ掛かってしまう。その為、このカードを採用する場合は『アクア・ドルフィン』の方はデッキに二枚までしか入れられない、ということになる。今回の場合で言うのならば、現在のミラは『マシュとしても扱う』状態。つまりは『ミラは既にいる』ということになり、別個に『ミラ』を用意することも出来なくなっている、ということになる。その為、『なんにでも埋められる』という相手の枠のみが有効となる

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