なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
魔法少女は慌てない・挫けない・砕けない……多分
「
「……そのネタ別の場所でやってなかった?」
「メタい話はいいから」
なんというか、久しぶりにゆっくりしてるなー。
なんて思いながらゆかりんルームで、ぐだぐだとだらけていたのだけれど。
……突然ゆかりんが何かの資料を手に、プルプルと震えだしたのである。
ふむ、五条さんにはしっかりお土産渡したし、侑子にだってお酒持っていったし。報告書はしっかり提出したし。
……つまり、私に問題はないってわけね。
じゃあノープロブレム。
気にせずジェレミアさんが焼いたオレンジパイに、優雅に舌鼓を打つことにしましょう。
「こらぁっ!私は関係ありません、なんて顔してるんじゃないわよー!」
「えー?この間の出張も戻ってきてからのハロウィンも、どっちもさっくり終わらせたのにまだ何かあるのー?」
「あるに決まってるでしょー!!貴方の連れ帰ってきたキャタピーよキャタピー!!」
「…………ごめんお腹痛くなってきたから帰るね」
「逃げるなー!
「敵前逃亡も時には必要だって二代目も言ってたんだい!!」*3
「……お二方、どうか落ち着かれますよう」
ゆかりんの口から飛び出した言葉に、持っていたパイを皿に戻して帰ろうとするが、なんか突然主人公みたいな台詞で呼び止められてしまった。……ので、同じく主人公の言葉で返すも、冷静にジェレミアさんに呼び止められて、仕方なくソファーに座り直す。
……正直CP君の名前が出てきた時点で、何もかも放り出して帰りたい気分満々なんだけど。
そうはゆかりんが卸さない、ということらしい。……なんだよう、彼女また何かやらかしたのかよう。
「どうもこうも、『マジカル聖裁キリアちゃん』ちゃんが大人気御礼で……ちょっと?どうしたの貴方?」
「死にたい、もしくは貝になりたい……」
「は?いやちょ、なに?なんなの?『マジカル聖裁キリアちゃん』が
「うわあああああああああああああその名前を出すなあああああああああああああああっ!!!!!!??」
「え、ええっ???」
次に彼女の口から飛び出した言葉に、
なんで……どうして……あんなものが世界に生まれて、
本気で胃痛で血を吐きそうになりながら、しばらく悶え苦しむ私と、そんな私を見て困惑し続けるゆかりんなのでした。
「えっと、つまりは何?この間の報告書の謎の魔法少女キリアちゃん*5は、貴方がキャタピーさんの力で
「……はい、その通りです……」
まさか正直に書くわけにもいかず、報告書の内容をごまかした(とは言うものの、あの場で状況をしっかり把握できていたのは私とCP君、それから何故か認識阻害がうまく効いてなかった、ツァンちゃんくらいのものだが)事が、後々響いてくるとは思わなかった私である。
ゆかりんはさっきから、私とアニメのキリアちゃんを交互に見ては「え、マジで?」「……あーでも、面影あるような……?」みたいな事を呟いている。
一通り確認した彼女は、ジト目でこちらを見たのち、告げた。
「あのね、こういうおも……重要な事は、ちゃんと前もって説明して貰わないと。そのせいで迷惑被るのは私なんだからね?」
「……はい、反省して────今面白そうって言い掛けなかった?」
「イッテナイワヨ?」
「嘘つけぇ!!?目を逸らすなこっちを見ろ八雲紫ぃっ!!?」
「ええい、面白いのは事実でしょうにっ!!」
「ああああ言ったな貴様口にしてはいけないことを口にしたな貴様ぁっ!!?」
「はいはい、落ち着いて下さい二人共」
ゆかりんが今、人の悩みの種を面白そうって言ったぁっ!!
みたいな感じに待ったを掛けたジェレミアさんに抗議するも、「社会人としての報告の義務を怠った、キーア様にも責任がございますよ?」と返されてはぐうの音も出ない。
……隠蔽体質はよくない、ってことですね。トホホ……。
「……で、その、魔法少女がどうしたってんですか。なんか問題になってるみたいなこと言ってましたが」
「もう、拗ねないの、子供じゃないんだから。……でもうーん、なんかおかしなことになっちゃったわねぇ」
「ええ……今の時点でもうお腹いっぱいなのに、まだなにかあるの……?」
既に満身創痍のボロボロ状態なんだけど、まだ私をいじめるような新情報があるんですかい……?
本当に勘弁して欲しいんだけど、みたいな感じにゆかりんを見詰めていると、彼女は苦笑いを浮かべたまま、こちらに視線を向けてきて。
「……仮面ライダーが居ても、なりきり郷にはいわゆる
「へ?……あれ、居なかったっけ?」
「能力が後付けであるというのを範疇に含めるのなら、フレイムヘイズにアークナイツ組、マシュとか他にも当て嵌まる人物は居ないこともないけど。……単なる魔法少女、ってなると意外と居ないのよね」
……ゆかりんの口ぶりから察するに、能力を付与されたタイプの人達に関わるなにか、ということのようだけど。
うーん?相手に与える、という意味では一応ヘスティア様が引っ掛かる、のかな?
でもあの人……神?はそもそも試そうともしてないから、恩恵刻めるのかもわかんないんだっけ……?
他に思い付くのだと
……
というか、近年になって代償なしに能力付与みたいなのも増えてきたけど、大体そういう超常能力ってヤバめの負荷と隣合わせなものだし、危なくないものを探したほうが早い気もするような……。
「そういう意味で一番簡単なのは
「デュエリスト申告してるなりきり組の一部だけが使えるんだっけ?」
「そうそう。……正確には『真のデュエリスト』である事が条件らしいのだけど、デュエリストの思考形態とか真面目に考えてたら発狂するってことで、真っ当に研究している人は居ないわね」
「ふーむ……あ、黒子
「黒子
「ちゃんの方。
「あー、とある系ってこと?……少なくとも今のところは見たことないわねぇ」
ふむ。……とある組がこっちで能力を使えるのか、みたいな懸念は、そもそも居ないので確かめようが無いと。
いやまぁ、型月組が居るんだから多分どうにか……そういえばこっちに居るのは大体サーヴァントで、唯一魔術師なライネスも、なにかしらの魔術を使ってるところは見たことないような?
うーん他には……パイセンは特殊事例なんで考慮からは外すとして。
えっと、アル君が錬金術を……使ってたっけ?実際に使ってるところは見たことないような?
というか彼の錬金術って、国土錬成陣ないとダメなんじゃあ?……いやでも鎧の姿で動いてるしなぁ……?
五条さんは一応使えてるけど、呪術は呪術で才能ありきな感じだし。
侑子とかハセヲ君とかアグモンとかの辺りは電子の世界だからこそ、みたいな感じだったし。
天子ちゃんもまぁ、本人由来だから他者付与には引っ掛からない、か。……そもそも東方系は全部対象外かも?
……うーん、言われてみると(一部の代償重い系を除く)魔法少女って、かなり条件の緩い部類の技能なんだなぁ。……なんか話がずれてるわね、これ。
「まぁ、再現度云々で引っ掛かるからって部分も含めて、何かしらの技術の開発にも関わりにくいのよね、そういうのって。……仮面ライダーもまぁ、わりと代償重いの多かったりするから、安易に開発ー、ともなりにくいし」
「ふむ……。……まぁ、一般人が使おうとすると死ぬやつとかもあるしねぇ」
「そうそう。まぁ、そっち方面の活用法なんて基本キナ臭いやつだから、上もあんまり積極的ではなかったんだけど」
「けど?」
ふむ、付与系の技術が公になれば、なりきりとは関係ない場所で、安定した能力の運用ができるかも知れない……みたいな?
……今の所は全部ワンオフななりきり組に頼る形にしか成り得ないからこそ、その辺りの研究は座礁に乗り上げているけれど、もしそれらとは関係なく能力運用できるのなら──みたいな?
あの人避けの護符とやらも、再現できそうな部分を四苦八苦しながら作ったモノ(だけど失敗作)とか聞いたし。
なりきり組の能力を本人たち以外が云々って、やっぱり難しいんだなぁとちょっと感心しつつ、ゆかりんに次を促す。
「……ようやっと本題に戻れるけど。ほとんど発見例のない魔法少女が見付かった、ていうのは結構騒ぎになったわけよ。もしかしたらあれは、何かしらの能力付与によって変身した一般人なのでは?みたいな話が上がるくらいには」
「……あんまり間違ってないだけになんとも言えないんだけど」
「いいから最期まで聞く。……ところがまぁ、
「…………胃が痛くなってきたんだけど、聞かなきゃダメ?」
「だぁめ。……で、一応発見例は少ないとはいえ、魔法少女は居ないこともなかったし、研究もちょびっとはしてたんだけど。……ここに来て
「…………話をしたい、とか?」
「ハイ正解!今回のお上からのご注文は『謎の魔法少女キリアちゃん』の捜索!見付かったわねさぁ行きましょうか!!」
「いやーっ!!絶対いやーっ!!!!」
「拒否権などないわーっ!!さっさと着替えてこーいっ!」
「あっちょ、スキマはひど、ゆ、ゆかりんのはくじょうものーっ!!!」
そうしてスキマにボッシュートされる直前に見たゆかりんの顔は、いまだかつてないレベルのニコニコ顔だったのでしたとさ。