なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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私は虚空に貴方を見る

 はてさて、マシュポジに付いたミラちゃんが、そのせいで本来のミラちゃんポジションとして扱えなくなっているのでは?……みたいな話をしながら進んでいた私たちですが。

 それはそれとして、問題はまだまだ山積みだということを、改めて認識し直していたのでした。

 

 

「……鈴木黒雲斎さんとその秘書さんのポジションの人、出てくると思う?」

「どうかのぅ……というか、その辺りを考え始めると怪盗とやらの方が出てきそうな気がするしのぅ」

「あー、確かに。……それをミラちゃんが言うってことは、出てくるのがそっちの関係者になる、って可能性もあるね?」

「九賢者二人目の登場人物があやつ、というのはちとどうかと思うがのぅ……」*1

 

 

 食堂車へと足を運んでいた私たち二人は、その内装があの時と完璧に同じであることを確認し、どちらからともなくため息を吐いていた。

 

 ……うん、ここまでちゃんと再現されてるとなると、こっちの再現行動を誘っていると見ても、そうおかしくなさそうだというか。

 はたまた、これまでも何度か述べている通り、こちらが逸って再現し過ぎてしまうことを待っているのかも?……みたいな予測が立ってしまってもおかしくないというか。

 まぁ要するに、こちらを動揺させるような状況を用意して、行動のミスを誘っているのでは?……という感じの疑惑が大きくなってしまったわけなのである。

 

 で、それをする必要性的なものになりそうなことの一つに──あの時はついぞ出現させられなかった『怪盗』の存在があるのでは?……みたいな珍妙な説が持ち上がったというわけなのだ。

 ……いや、なんでそこで怪盗?みたいなことを思う人も居るかも知れないが、よくよく思い返してみて頂きたい。

 

 確かに、あの時のコナン君が確信したように──一人の『逆憑依』のレベルというのは、それが一人の頑張りである以上は必ず限界がある──つまり、『逆憑依』に到達できる再現度には限度がある、というのは明白な事実。

 それを回避・ないし突破するためには【継ぎ接ぎ】や【複合憑依】などの、自分そのものを拡張していくようなシステムを併用していくしかない、というのが現在の私たちの常識だ。

 

 ……だがしかし、だがしかしである。

 確かに、コナン君のレベルが幾ら上がろうと、それで『犯人や犯行現場をその場で生み出す』レベルの因果干渉は行えない……というのは確かな話だが。

 ──それがイコール、彼の存在によって『怪盗』などの犯人と定義されるものが()()()()()()、ということと同義とはならない。

 

 それらのものが現れやすい・発生しやすい空気感とでも言うべきものを、彼がそこにあるというだけで発生させること自体は、問題なくできてしまうはずなのだ。

 なにせそれは、『探偵がそこにいる』という事実自体が作り上げる空気。それを聞いたモノ達が『探偵』という存在に対して抱く幻想によって現れる、ある種の共通幻覚のようなものなのだから。

 

 さらに、そうして出来上がった空気が、現実という幻想を排斥してしまう場所ではなく──ある種の幻想を抱いたままでいられる、電脳世界の上にあったのであれば。

 ……少し背を押してやれば、その空気から『怪盗』のような犯人達が生じる可能性というのは、決してゼロではないということになるのではないだろうか?

 

 雑に言ってしまうと、あの時生まれなかった『怪盗』を生み直すというのが、黒幕の目的なのでは?……などという説に到達するに至ってしまったわけだ。

 ……え?酒でも飲んで酔っぱらったのかお前らって?うーん否定できねー。

 

 正直、現在の状況を思えば『最終的にできなくもないなー』くらいの、発生確率的にも一パーセント未満の説として扱うのも微妙なくらいのものなので、私たちとしてもこれが正解……などと胸を張って言えるようなものではなかったりするし。

 ……相手側の尻尾が掴めないので血迷った、などと言われても反論しきれない感じというか。

 そうなると酔っぱらってるんだろ、というツッコミも甘んじて受けるしかないというかね?

 

 

「そういうわけなので、テレビの前で私たちをご覧になっているそこの少年少女諸君!もし答えがわかったのならば、画面の下に表示されている電話番号に連絡してきてほしい!」*2

「……いや、唐突に虚空へと戯言を語り始めるとか、ついに本格的に壊れたのかお主?」

「失敬な!一応これも対策の一環だよ!こっちを見てる奴がいたら『きさま!見ているなッ!!』ってするための!」

「……いや、幾らなんでも回りくどすぎるわ!!」

 

 

 なお、そこら辺も含めて黒幕へのアプローチだよ、と取り繕ってみたものの、結局事態が好転したりはしませんでしたとさ。残念なことに。

 

 

 

 

 

 

「お、みんな戻ってきたねー」

「んじゃまぁ、それぞれの成果の報告をお願いするとするかのぅ」

 

 

 それからまた数十分後。

 集合場所であるドトウさん(マッキー)の部屋にて、一足先に戻っていた私たちは、他の面々が探索を終えて帰ってくるのを待っていたのだった。

 で、みんなが集まり直したのを見て、各々の探索結果を聞くことになったのだけれど……。

 

 

「他の乗客は普通の人達ばかりだった、と?」

「確かこの列車、現実の方はキーア達以外全部偽物だったんだろ?」

「そうなると、再現的にも微妙なんじゃないか?」

 

 

 まず始めに報告を始めたのはハセヲ・キリトペア。

 彼らは乗客達の間に流れている噂や、乗客達がどういう思惑でこの列車に乗ったのか。

 それから、彼らがあの時と同じように、この列車そのものが作り出した幻覚ではないのか?……みたいなことを調べていたらしいのだが。

 その結果判明したのは、現状乗り合わせている客達に関しては白である、ということなのだった。

 

 彼らは普通にこの列車の話を聞いてやって来た一般のプレイヤーであり、その話と言うのも『バレンタインイベントである』ということや、『この列車の元となっているのは、かつてリアルで有名であった、今は廃線となっている豪華クルーズトレインである』ということなどの、極々基本的なモノに留まっていたらしい。

 

 ……まぁ、一部の情報通とか電車好きとかは、リアルでのこの列車に纏わる噂──『オーナーが経営難を苦に自殺した』ということを知っていた者も居たそうだが……それも確証があるという人間はおらず、あくまで噂として知っているという程度に留まっていたらしいのだが。

 

 

「……不気味に思って乗るのを止める、みたいな人は?」

「いいや?寧ろ一種の心霊スポット的な受け止められ方をしてたな」

「案内の方にも書いてあったけど、『オーナーの許諾あり』って文面から眉唾みたいな感じになってる……みたいな空気だったな」

「あー……そりゃまぁ、死者の冒涜なんぞしないだろう、って気分にはなるか」

 

 

 で、その噂を知っていてなおこの列車に乗り込む人がいるというのは、どうやらこの列車の乗車前に貰えるパンフレットにその理由があったらしい。

 ……そう、このパンフレット、なんとあのオーナーさんのインタビューなどが載っているのである。それも写真とか交えて。

 

 そりゃまぁ、こんなものが用意されているのだから、所詮は噂でしかない『オーナー死亡説』なんぞ、カップル達を吊り橋効果に誘う一種のスパイス的なものとしてしか受け止められるわけがない。

 ……というか、下手するとそういうのを狙って運営側が意図的に流した噂だ、なんて受け取られ方をする可能性の方が高いだろう。

 

 あとついでに、元々のクルーズトレイン・エメが豪華寝台列車であった、というところもその勘違いに拍車を掛けていると言えた。

 

 

「と、言うと?」

「鹿児島から北海道まで、日本を縦断していると言っても過言ではない運行距離からも、なんとなく察せられるだろうけど……すっごく高かったんだよね、あれ」

 

 

 不思議そうに首を傾げるキリトちゃんに返したのは、この列車と元となったエメの乗車賃について。

 最長二週間という長旅になることもあり、出発点から終着点まで余さず乗り込むとなると、その乗車賃はかなり馬鹿にならない金額になるのである。……普通のクルーズトレインでも一泊三十~五十万くらいする、と言われればなんとなーくその金額がどうなるのか、ということも予測できるのではないだろうか?*3

 

 

「……高ぇ!?」

「うんうん。まぁ一応、エメに関しては簡易乗車プラン的な、比較的お安めのやつもあったんだけどね?……それでもまぁ、こんな感じなわけで」

「……やっぱ高ぇ!?」

 

 

 チケット代金を見せられたハセヲ君が、マジかよと言わんばかりに声をあげる。

 ……まぁうん、一泊しないプランでもお一人様十なん万とかになるんだから、そりゃまぁ悲鳴染みた声を出してしまうのも宜なるかな、というか。

 

 このことが意味するのは、要するに実際のエメに乗ったことがある、という人間が希少な部類になるということ。

 

 一部の好事家(こうずか)・もとい電車オタクなどが記念に乗る……みたいなことはあるだろうが、それにしたって一区画分の移動が精々だろう。

 豪華列車に乗って豪華な昼食や夕食を楽しんだ、くらいの話で終わってしまうそれは、そこで流れていた噂などに関わる余裕のない・もしくは関わる前に終わってしまう旅。

 言うなればクルーズトレインを楽しむことそのものにはノイズとなるものであるため、わざわざ確認しなかったという者を生みやすいということである。

 

 わかりやすく言うなら、そもそも乗車賃が高いので普通の人は乗ったこと自体がなく。

 仮に乗ったことのある人でも、流石にフルタイムで乗車していた、という人は少数。……そうなると他のことにかかずらっている暇がないため、単なる噂話に気を取られている暇がない。

 ……つまり、その時の乗車賃とは比べ物にもならないほど安くなった今になって、ようやく乗ることができるようになったという人の方が大半なのである。

 そりゃまぁ、実際に乗ったことのある私たちとは噂に対しての感性がずれるのも仕方のない話、というか?

 

 

「……お安くなったとは聞きましたけど、そんなに違ったんですねぇ」

「こっちはテンバイヤーから買わなかったら、普通に十万でお釣りが出るくらいだからねぇ」

 

 

 当日乗車プランで十なん万だったのが、その半分以下になっているのだから安いなんてもんじゃない……というか、下手するとテンバイヤーから買っても元のに比べりゃ遥かに安い、なんてことになっているのだから、そりゃまぁそうもなるよなぁ。

 ……なんてことをドトウさん(マッキー)と話す私なのでした。

 

 

*1
『賢者の弟子を名乗る賢者』における登場人物、『奇縁のラストラーダ』のこと。とある事情により、作中においては『怪盗』として過ごすこととなっている人物。ミラ的には出てくるのなら順番的にあっちだろう、と思っている人物がいるが、そっちはそっちで名前繋がりでややこしいことになりそうなのでどうだろう、とも思っているとかなんとか

*2
テレホンショッピングなどでよく言われるもの。この令和の世でも、変わらずテレビで似たような光景が見られるのは驚くべきか

*3
動くスイートルームみたいなものなので、モノによっては普通にこのくらいの金額になる。なので、もし二週間も止まればその十四倍となり……高ければ七百万とかになる。コワ~……

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