なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
報告初手の二人──ハセヲ君とキリトちゃんからの話によって、どうやらこの電脳列車の乗客層は、あの時のそれとは大分違いそうだ……ということを改めて把握した私たち。
そうなってくると、あの時の再現というには正直微妙なのかも知れない、なんて気分になってくるわけなのでした。
「そりゃまた、なんで?」
「外にいた撮り鉄の人みたいに、いわゆる乗り鉄みたいな人の割合が増えてそうだって話になるから、かな。……言うなれば、あの時彼処にいた富裕層に、当てはまる人がここには居ない・もしくは少ないみたいな感じ?」
確かに、あの時私たちが乗ったエメにいた他の乗客達は、あくまでもあの幽霊列車が再現し作り出したたものでしかなかった。
……のだが、そもそもの話として、あれ自体も『再現』は『再現』に違いないのである。
つまり、あの列車がまだ普通に運行していた時には、あの場に居た人達のような富裕層が乗り込んでいた可能性が高い、ということになるわけで。
そうなってくると、その時よりも遥かに乗車のハードルが低いこの電脳列車において、その客層が変化しているというのは容易に想像できることだと言える。
……まぁつまり、単純な再現にはならないだろうということ。それゆえ、これから起こるだろうことも私たちが思っているようなそれとは、些か赴きを異にしたものになりかねない、というわけである。
「なるほど。……じゃあ、そこら辺が変わってくるてして、俺達は一体どうすりゃいいんだ?」
「さぁ?」
「……おい?」
「いや、別にふざけてるってわけじゃなくてだね?」
なので、そうなるとどうなるのかとか、それじゃあどういう対処をしていけばいいのか?……みたいな疑問が湧いてくるだろうということは予測できるのだけれど、だからと言ってそれらの疑問に対する答えがこちらにあるか、と言われれば首を左右に振らなきゃいけなくなるわけで。
……なんでそうなるかと言うと、こちら側があれこれと動いているのは、『ここまでお膳立てされていて、なにも起こらないはずがない』というある種の予測からのものだから、という理由があったりする。
要するに、確証や予告状もないままに状況証拠だけで『怪盗が来る!』と騒いでいる無能警察みたいなものなわけで。……そりゃ、そんな状態で取れる対策など高が知れているだろう。
今までの『怪盗』対策を繰り返すとか、とりあえず警戒し続けるとか、そういう無駄だったり徒労だったりする可能席のある行為を繰り返すくらいしか、こちらにできることはないのである。
で、なんでそうなるのか?……ってところに着目してみると、さっきから言っている通り『状況証拠のみで動いているから』、という至極当然の答えが返ってきてしまうわけで。
……でもまぁ、それも仕方のない話。
基本的に私たちの問題への対処の仕方というのは、原則
「
変えられる余地のない未来というのは、すなわちそこで全てが切れる場所──断崖絶壁のようなものである、とも捉えられる。
基本的に未来視というのは、それによってよりよい未来を選択できるようにする、というのが本義であるところがある。
そこから察するに、てこでも動かない未来というのは、得てして人を絶望させるだけのものでしかないのだ。──未来視は外れる方が優秀、みたいな感じか。
ともかく、下手に事象を確定させてしまうような未来視は、本来の未来視の用途からして不適切である、というのは確かな話。
……まぁ、『
話を戻すと。
私たちの持っている予測の手段というのは、あくまでも予測という枠を飛び出さないもの。……それが
99.9パーセント起こることでも、それ0.01パーセントの確率で起こらないことでもあり、その起こらない確率こそが
「そういう意味で、私たちは『問題が起きそう』って時点で行動を起こすしかないのよね。だって、確実なことはなんにも言えないくせに、仮にそれが起きた時の被害の規模だけなら、幾らでも算出できちゃうんだから」
「あー……時空管理局の苦悩、みたいな?」
「そうそう」
と、ここでキリトちゃんから例えに出されたのが、『リリカルなのは』シリーズにおける警察ポジションの組織、時空管理局。
単一の惑星のみを担当しているのではなく、銀河全体……どころか、その名前の通り時空──時間と空間の壁を越えた、文字通り次元の全てを担当している、ないし
その名前や作中に目に見える行動などから、二次創作ではたまにあらぬ糾弾を受けたりしている組織だが……彼らの居る世界の背景を思えば、彼らの行動が一概に悪いとは言えなくなってくるのだ。
彼らがその舞台とする世界──『リリカルなのは』の世界には、ロストロギアと呼ばれる特殊な器物の存在が確認されている。*3
作中の具体例としてあげられるのは、手にしたものの望みを叶えるとされる不思議な二十一の宝石達・ジュエルシードや。
周辺の生き物達の魔力を喰らってページを埋めることで、持ち主にあまりにも莫大な力を与えるとされる闇の書のような、とにかく聞いてるだけで『ヤバい』となるようなモノ達。
なんでそんなものばかりなのか、と言われれば……そもそものロストロギアの定義に、その理由があった。
そう、これらのロストロギアは、
それは物品だけに留まらず、知識や技術に関してもそれが滅んだ世界の
──ゆえに、基本的に作中でロストロギアとして語られる場合、基本的には
ロストロギアが生み出された世界というのは、基本的に現行の時空管理局の存在する世界よりも技術的に進んでいた、とされるモノが多い。
そんな世界が、その技術や物品によって滅んだ……というのだから、現行世界からしてみれば厄物以外の何物でもないというのは、すぐに察せられることだろう。
つまりはまぁ、そういうこと。
こっちの世界に当てはめるのなら、オーパーツやアーティファクトが、本当に世界を左右する力を持っているようなもの。
しかも、次元という広大な世界を見ることになる以上、例えそれらの発生確率が一パーセントに満たないものであれ、実数としては星の数ほどになる可能性というのは十分にあり。
こちらが見付けられず、もしそれを悪用する者に見付かってしまえば──最悪、この世界の終わりを招くこととなる。……そりゃまぁ、躍起になって回収しようとするのもわからなくはない、というか。
あとついでに付け加えると、この世界観においては時間と空間の壁を越え、次元という形で管理を行っていると述べたが。
……それも次元の全てを見通せている、というわけではなく、あくまで今の世界の技術を用いれば、時間と空間の壁は越えられるという程度のものでしかない。
つまり、中心部から遠く離れた辺境にロストロギアがあったとして、それを知ることができるのは事が起きようとしている、もしくは事が起きたその直前ということになる。
……事前回収は余程運が良くなければ不可能、場当たり的対処を続けなければいけないというのも大概問題だが。
それに加え、時間と空間の壁を越えられるような技術力より、なお遥かに優れた世界が
要するに、そういうこと。
事前に所在を知ることができない以上、対処する人員は極限の『かもしれない』捜査を強いられることとなる。寧ろ、事が起こっている分には所在がわかりやすくなった、なんて感想を抱きかねないほど、徒労ばかりの職務であろう。
──砂漠の中のダイヤを探すような苦労が、見渡す世界全てに広がり続けているのだから。
とまぁ、長々と語ったが、彼らと私たちの類似点については、なんとなくわかったかと思われる。
流石にロストロギア級の被害をもたらすことはないだろうが……『逆憑依』周りの事件が、放っておくと深刻な被害をもたらすモノであるのは明白。
されど、それがどこにあるのかとか、それが実際に起こるのかということを確定することはできない。そのほとんどが『起きてから』しか対処できないことばかりだ。
とはいえ、それで『捜査なんてしなくていい』なんて話にはならないだろう。その徒労感を抱えたまま、起きる
だから時々、ちょっと先走り過ぎた行動をしてしまうこともあるが……それで失敗しても、できればお目こぼしが欲しい……みたいなお願いをしたくなる、そんな世知辛い思いを感じて欲しい。そう思って、この説明をしたんだ。
「じゃあ、次の報告を聞こうか」
「……あれ?なんか体よくごまかされたような?」
「いや、ごまかしてはないからね?ごまかしては」
首を傾げるキリトちゃんに苦笑を返しつつ、とりあえず次の人の報告を聞く体勢に移る私なのでありました。……いや、ごまかしてないからね?ホントだよ?
決して長話しすぎてちょっと気まずくなった、とかじゃないからね?ホントに。