なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「では、次は私達の報告と言うことだな!」
「おっと、次はアンチノミーさんとアスナさんか。……冷静に考えると、どういう組み合わせなのこれ?」
「私達のグループを、単純に二つに割った結果……かな?」
はてさて、一つ目のグループからの報告が想像以上に長くなってしまったが、ここからは確認の速度を上げなければ。
……というわけで、次の報告者となったのはアンチノミーさんとアスナさんの二人。冷静に考えてみると、接点が欠片も思い付かない類いの二人である。……いやまぁ、前回の騒動に対してのポジション合わせ、という面では銀ちゃん達よろず屋グループに割り振られている……というのは知っているわけなのだが。
「よくよく考えてみると、最終的には五人組だし、あの時点で列車に乗ってたのは三人だし……で、要素だけで当てはめようとすると実は人数にズレが生じてるんだよね」
「ん?それが一体……ってああ、一人あぶれちゃうけど、誰があぶれてるのかわかんないんだね、これって」
アスナさんの言う通り、あぶれた一人が誰なのか?……というのが、微妙に判別し辛いのである。
多分、あぶれた一人が割り振られているのは、あの時微妙にポジションの浮いていたあさひさんなのだろうと思われる。……思われるのだが、じゃあ逆に『彼女に該当しそうなのは誰だろう?』と考えると、そっちもそっちで『誰?』となるのだ。
普通の──アイドルとしての芹沢あさひを当てはめるのなら、それは恐らくアスナさんが一番近い、ということになるのだろう。
が、あのあさひさんは正確には芹沢あさひではなく、ミラルーツが地上で人と交流するために作ったのだと思われる、いわゆる『白い娘』の類型──いわば化身である。
……化身を『アバター』と読むのなら、同じ名前を持つ『
あさひさんという姿が、ある種の偽物である──その龍の平穏な面を象徴していると見るのなら、荒ぶる神との
要するに、あさひさんというキャラクター自体が、色々と解釈を生みやすいせいで当てはまる人物が多すぎるのである。
それはもう、同じやり方で他の人々も当てはめられるんじゃ?と疑ってしまう程度には、だ。
「……別に、誰が当てはまっても構わないのではないだろうか?先程の話を聞く限り、再現が起こる可能性はそう大きくもないのだろう?」
「いやまぁ、そりゃそうなんだけどね?……あさひさんのポジションは結構特殊だから、仮に当てはめられてるならあれこれと忙しそうだなぁ、みたいな?」
「……む?彼女の役にされると、なにか不都合があるのか?」
「不都合というか……あの事件内での話に限定すると、普通に最高戦力の一人になってるというか……」
と、ここでアンチノミーさんからのツッコミが。
先ほどキリトちゃん達の話を聞いていた時に話していたように、実際にトラブルが再現されるかどうかは微妙なところがあるのだから、誰が誰に該当するのかというのはそこまで気にしなくてもいいのではないか?……というツッコミだ。
確かに、現状における事件の再現確率というのは、それほど高い数値を示しているわけではない。
それでも、ここで言う確率とは降水確率のようなものであり、ゼロだからといって雨が降らないわけではなく*1、そういう意味で警戒は必要……という話だったわけだが。
それはそれとして、仮にあさひさんのポジションに当てはまる人物が居るのであれば、それは結構重要なポジションになる可能性が高いのである。
何故かと言えば、彼女は再現度こそ高くないものの、そのスペック的には普通に上位者に含まれる人物だから、だ。
「ミラルーツと芹沢あさひ。なりきり郷にいるあさひさんは、どっちのなりきりとしてもそこまで再現度が高いわけじゃあない。……けど、本来の彼女がなりきりしていたのは、あくまでミラルーツの方。──端的に言うと、創世神クラスのなりきりなら、例え再現度が一パーセントとかでも、出力自体は並の『逆憑依』達より高い、なんて可能性は普通に高いんだよ」
何度も言うように、あさひさんの姿はなりきりの結果ではなく、
それがなにを意味するのかと言うと、彼女はミラルーツの再現体ながら、
実際、彼女はあの事件の時にはワイバーンに変化したこともあったし、クリスマスの時にはメリュジーヌの代役を務めたこともあった。
……つまり、全体的な再現度としては高くないものの、再現対象であるミラルーツそのものの力量が大きすぎるため、例え一欠片の再現度であってもその戦闘力は並の『逆憑依』を大きく越すものになってしまっており、その有り余るパワーで無理矢理変身している、と理解する方が近いのである。
ゆえに、仮に彼女のポジションに立たされることになった場合──その人物に求められる働きというのが、こちらの想像している以上に重くなる、という可能性が非常に高いのである。
「……ゑ?」
「あの事件の中だけでも、さっきも言った『ワイバーンに変化しての魔列車への突撃』なんてものがあった。……目立つのがそれくらいってだけで、こっちの見ていない裏で馬車馬のように働いていた可能性は、わりと高いんだよね」
一人だけ周囲の人間関係に配慮する必要がないからか、例えば戻ってこない私とバソの様子を見に来たりだとか、はたまた最終戦においてワイバーンに変化して私の足になるとか、結構要所要所で働いていた、というのがあさひさんのあの時のポジションである。
で、働いていると言いつつ、彼女の潜在能力的なものからその働きを考察すると──実は全部片手間だったのでは、みたいな予測が立ってしまうわけで。
要するに、仮にあさひさんポジションに放り込まれてしまうと、
彼女基準では低いけど、絶対値で見てみると普通の人には到底満たせない基準になっている……みたいな?
「……ゑ???」
「今一番あさひさんのポジションに近いことが出来そうなのは……乗り物持ちってところが移動手段になりそう、って意味でアンチノミーさんになるんだよね。……で、ミラルーツの代わり、出来そう?イリアステル滅四星の一人、二律背反の名前を持つアンチノミーさん?」
「……はっはっはっ。求められればこなしてみせるさ(震え声)」
で、こうなる。
……なんかこう、微妙にお労しいことになってるアンチノミーさんの完成である。……どうしてこうなった?
「……真っ白になっちゃったアンチノミーさんについては、一先ず置いておくとして。いい加減、報告をさせて貰ってもいいかな、キーアちゃん?」
「おおっと、そうだったそうだった。ええと、アスナさん達は……」
「私達が調べたのは、主に運行計画についてね。この列車に車掌さんは乗ってなかったから、お問い合わせ窓口とか受付のお姉さんとかに話を聞いた形になるんだけど……」
いい加減話がずれていたので、軌道修正を図る私たちである。
で、そのためにアスナさんが先ほどからスルーされ続けていた、探索結果の報告に触れたわけなのだけれど……私たちが内装、キリトちゃん達が乗客達について調べていたのに対し、アスナさん達が調べていたのは運行する経路について、だったようだ。
「調べてみた結果、基本的にはキーアちゃん達の乗ってたそれと同じ経路を通る……みたいな感じになってるみたい」
「ふぅむ?……ってことは、経路沿いの風景全再現ってこと?」
「そういうことになるね。幽霊騒ぎとかが無いだけで、元々その列車が予定してた路線をそのまま再現した形になっている……みたいな?」
で、その調査結果によれば、どうやらこの列車がこれから行おうとしているのは、あの時私たちが列車に乗って通った線路、その全てということになるらしい。
端的に言えば、九州から出発して北海道を終点とする、一連の行程をネット内で再現する……ということになるか。
無論、それらの経路をフルCGで再現する、というのはそれはそれは大層手間と労力の掛かる話だと思われるのだが……そこは天下の『tri-qualia』、どうやら実際の路線映像からCGを自動生成するという、地味に高度な技術を使って手間隙をカットしているとのこと。
……まぁ、電車の中から出ることを想定していないからこそできること、みたいな面もあるみたいだが。
ともあれ、本来のエメが想定していた、本来のバレンタイン運行をそっくりそのまま再現する、という謳い文句に間違いはないようで、今のところそれが変化する兆しはないとのことだった。
「……つまり、『怪盗』は現れるってこと?」
「む?何故そのような結論になる?」
「イヤだってさ?
「む」
と、なると。
……あの時のことをそっくり再現する、というよりは本来の運行を再現する、という辺りにやっぱり『怪盗』は現れるのでは?……という疑惑が。
今のところ、この列車に『幽霊列車』の噂は流れていない。……いやまぁ、意図的にこちらに隠されている、という可能性もなくはないが。
となると、基本的には本来の予定をなぞっているだけ、と見るのが正解だろう。……で、その元々の運行計画というのは、クルーズトレイン・エメの最後の大舞台。
バレンタイン運行の成功と共に、この列車は『怪盗』に盗まれて消える……というのが、あの時オーナーさんの考えていた最後のはずだ。
それが忠実に再現されているとなれば。……変に前回の再現となると考えるよりは、『怪盗』が現れるという再現に振り切れる、という可能性は高いだろう。
「……ただ、その場合出てくるのって誰なの?……って話になるというか」
「あー、本当なら八雲のがそれをする、という予定じゃったんだったか?」
だがその場合、この企画に関与していないとゆかりんが言っていた以上、誰か他の『怪盗』役が必要になる、ということになる。
私たち『逆憑依』関連のそれではなく、単純にあの運行計画を再現しただけ、だというのであれば。……その『怪盗』とは、確りと中身のある、本当の意味での
「……もしかして、誰か別の人間がこの計画を利用しようとしている、とか?」
「あー、元々の別の人間が計画しておったのを、別の誰かがこれ幸いと利用しようとしておる……ということか」
……とはいえ、その単なる再現が、私たち『逆憑依』が関わることで、ややこしい話になっているのも事実。
これは、運営以外の誰かの思惑が重なっているのでは?……という疑いを私たちが持つのも、ある意味仕方のないことなのでありました。