なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「マジかよ……運営黒かよ……」
「まぁ、どこまで黒かはわからないけど……少なくともこうなる、ってことを認知してるのは確かだね」
寧ろ、下手するとこの状況を売りにしてる可能性すらあるというか?
……とまぁ、急遽部屋に戻ってきた私たちは、運営がある程度状況を認知していること、及びそれを放置していることに気が付いてしまったのであった。
その驚きとか、はたまた懐疑感というか。……まぁともかく、『マジかよ』と抱く思いは皆同一。
ゆえに私たちは、これからどうしようかと頭を捻ることになるのでありました。
「……知ってて放置してる、ってことになると……」
「ある程度はなにかが起こるだろう、と黙認してるってことになるね?」
「対策を講じないのは……」
「興味がないのか、はたまた大したことは起こらないと高を括っているか。……まぁなんにせよ、監視はしてるかもしれないってのは確かかな」
あちこちを飛び交う、私たちの予想。
直接的な対策を行っていないことから黙認・ないしある程度は予測を終えており『対処をする必要がない』と認識しているか、はたまたそれとは別の対応か。
……ともかく、まぁ八割黒だとわかったとして、それが即向こうが悪、かと言われるとそれはまた別の話。
だって、正直これでなにをする気なんだ?……と言われると、ちょっとなにも思い付かないからね!
「そうなんだよなー……辛うじて想像付くのは、そろそろ向こうが浮遊城を作る気になった、とかなんだが……」
「ってことは茅場さん?……でもまぁ、ねぇ?」
「あー、そうだな。……これに関しちゃ、向こうがなにもできねぇのはホントのことだかんな」
むぅ、と皆で唸っているように。
確かに、運営的にはこのゲーム、『tri-qualia』を更に発展させ、行く行くは彼らがそれぞれに目指したものである、『浮遊城』『ライダーゲーム』を作り出さなければならないのだろう。
……が、それは彼らを【複合憑依】にした何者かの思惑により、それらをそのまま出力することは叶わなくなっている。
なにせ、彼らは【複合憑依】──確かに最大出力は単純な『逆憑依』に遥かに勝るものの、その出力は
三者のなにかしらの相性を起点にしなければそも成立せず、仮に成立したとして、それが彼らの望む方向に進むものとは限らない。──同じ場所に付いているのではなく、別々の三方向に付いているのなら。……精々、できてガメラみたいな回転飛行だろう。*1
それに、そもそも『tri-qualia』自体が、人の操作をほぼ受け付けないものである、というのも彼らが全部悪い、と言い切れない理由となっていた。
そう、何度も言うように、現状の『tri-qualia』において、運営側ができることはあくまでも『更新プランの提案』に留まる。
それが魅力的であれば、『tri-qualia』側も積極的に取り入れてくれるが……そうでなければ突っぱねられるだけ。
プログラム構築の時に、なにかしらの裏コマンドでも設定しておけば、もしかしたらそれを使ってどうにかすることもできるかもしれないが……。
「作ってるのがあの二人、って時点で……ねぇ?」
「んー?あの二人が作ってると、なにか問題があるのかー?」
「簡単な話だよ、アグモンちゃん。よーく考えてみて?仮にそういう裏コマンドを作るとして──それ、
「……あ、わかった!二人で作ってるから、片方が細工したらもう片方が解除しちゃうんだね!」
「正解!……まぁ、我の強い二人だからこその問題、だよね」
アスナさんとアグモンの問答を聞けばわかるように、そんなモノを作るとして──彼らがそれを共有しようとするか、という問題があるのである。
なにせ、ゲーム制作者として纏められている二人ではあるが……それぞれ、ゲームに対してのスタンスは真逆に近い。
そんな二人が協力してゲームを作っている、ということは最早奇跡に近い話であり──ならば、大筋以外の部分では互いの裏を掻こうとバチバチにやり合っていても、全然おかしくないのだ。
片方がバックドア*2を仕掛ければ、もう片方がそれを削除しながら別の裏道を作り、それに気付いたもう片方がそれを破壊しつつ自分のためのプログラムを組んだり……。
まぁそんな感じで、最終的に『いい加減にするのであーる!一寸の薫製にも五分の魂!』などと言われながら、渋々そこら辺の暗躍を諦めた、なんてことは容易に想像できてしまうのだ。……いや、なんでウェスト博士がストッパーになっとんねん。*3
……ともかく、そういう裏道を作るには、あの二人の方針が違いすぎる……という点が問題になるのは確かな話。
ついでに言えば、彼らは個別の『逆憑依』ではなく三位一体の【複合憑依】、雑に言ってしまえば個別の出力は普通の『逆憑依』に劣るものである。
……いやまぁ、普通の『逆憑依』ってなんだよって言われると困るのだが。だってどう考えても彼ら、そこらの自分からモブやってる人達に比べたら、明らかに出力的に上だからね。こう、トップ層に比べると下ですよ、みたいな感じというか。
まぁ、そこら辺を含めたとしても、最終的な結論は変わらない。
互いがあってこそ、彼らはこの『tri-qualia』を作り上げることができた。それは裏を返せば、一人で干渉できる範囲には限りがあるということでもある。
さっきのバックドア云々の話を元にするのならば、本来の彼らなら互いに気付かれないようなプログラムを仕込む、なんてこともできたかもしれないが。
今の彼らが単体で打てるようなプログラムは、もう片方に簡単に露見してしまうもの。
「あとはまぁ、BBちゃんがそういうの探してたけど見付からなかった、とも言ってたからねぇ」
「あ、それならこの間ボクも探すの手伝ったよー、なんか変なものないか見付けてくださいね、って」
「おや、アグモンも?……じゃあまぁ、なんにもないってのは今のところ真実、ってことにしておいて良さそうだね」
それらを強く裏付けるのが、BBちゃん達の調査結果であった。
彼女は電子の世界に住まう上級AI、ここはまさしく自身の庭と言えるもの。更には彼女より無茶苦茶かもしれない、電子生命体であるアグモンの協力まであったとなれば、その調査結果に文句を付ける方がおかしいと言うものだ。
……言うものだが、それはそれとしてちょっと、ほんのちょっと不安もあったりする。
彼女達のような電子生命体は、そもそもがプログラムによって形作られた存在。
それゆえ、その形が成立している時点で、本物達と遜色ない能力を持っている、と言い換えてもよい存在だったりするのだが……。
「……あー、そういや機械とかプログラムとかは、ちゃんと一式揃ってないとまともに動かねぇってんで、普通の『逆憑依』とはちょっと違うんだっけか?」
「そうそう。多分アグモン君みたいに
ハセヲ君に説明するように、電子生命体や機械生命体は、本来全身がきちんと揃っていなければ生命体として活動できないはず、という物理的な制約がある。
ゆえに、彼らの場合は普通の『逆憑依』と違い、能力が
それゆえに、彼ら彼女らの現在の実力が、このゲームのプロテクトを本当に上回っているのか?……という疑念が生じるのである。
そもそもその辺り、当初からBBちゃん自身が明言していた。こちらでは、原作ほどのグレートデビルではない……みたいな形で。
いやまぁ、彼女の場合はその辺り、もうちょっとややこしい理由があったりするのだが……ともかく、成長し続けるプログラムとして、
「……アウラみたいに、人に近い人格を持った究極AIが生まれてもおかしくねぇ環境だ、ってことか?」
「コラボって形だけど……ロストグラウンドとかもあるしね、ここ」
今のところ、この世界の意思とでも言うべきものにあったことはないが……このゲームがシンギュラリティ、技術的特異点を迎える可能性というのは非常に高い。*4
寧ろ、既に迎えているのになんらかの事情でそれを発露させていない、なんて可能性も出てくるくらいのシステムがこのゲーム。
ゆえに、先の二人の更に上手に彼・ないし彼女が居たとしても、正直おかしくないのである。
なので、実は
この場合なら、運営以外の誰かが犯人という可能性も否定できなくなってくる。
あと、このゲーム自体が【顕象】になりつつあるのならば、先のAIDAサーバーめいた挙動もなんとなく説明できてしまう。──このゲーム自体が感覚増幅器として機能するのなら、その辺りはどうとでもできてしまうからだ。
「……まぁ、このままここで話していても埒が空かぬ、というのは確かな話であろう?ここは一つ、部隊を二手に分けぬか?」
「部隊って……いや、それより二手って?」
そうして私たちが唸っていると、ハクさんが声をあげた。
彼女が口にしたのは、犯人の目星を付けるために、メンバーを分けないかという提案。
片方はこのまま『tri-qualia』に残り、この列車の行く末を見届ける。そしてもう片方は──、
「本社に乗り込む。……ってまぁ、また大事になったものですね」
「ま、これが一番早いのは間違いないからのぅ」
ゲームの運営会社に突撃し、トップ達の身柄を……じゃなくて。
運営達になにか知っていることはないか、なにか隠していることはないか?……と詰問するため、一度ログアウトする。
それが、ハクさんが提示したもう一つのメンバーの役割なのであった。