なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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束の間の休息、それからバター

「……で、そうこうしている内に一日が終わっちゃったんだよねぇ」

「な、なるほど。以前の列車旅も、一日では終わりませんでしたしね……」

 

 

 ところ変わって我が家のリビング。

 

 一先ず一日目が終わりそうだ、ということでログアウトした私たちは、明日またログインして捜索の続きをしよう、と約束をしあって各々の家に戻ってきていたのだった。

 ……で、アスナさんとミラちゃんに関しては、キリアの方とそのままこっちに来た、という形となっている。

 無論、キリアに関しては既に吸収済みだ。……吸収って書き方、なんかすっごいワルの敵がやって来そうな感じがするな?*1いやまぁ、実態としては単なる再統合なんだけども。

 

 

「ええと、お邪魔しても良かったのかな……?マシュちゃん、バレンタインの準備で大変なんでしょ?」

「い、いえ。そちらは毎日堅実に進めていく予定ですので、お構い無く。……それに、お二方が遊びに来てくださったことは、純粋に嬉しい部分もありますので……」

「ぬ?嬉しい……とは?」

私が向こうに居た(キリアの)時のこと、他の人の視点から聞いてみたいんだってさ」

 

 

 で、招かれた二人はどうやらマシュと女子会する予定、らしい。内容は私が互助会に潜入中の話、だとか。

 ……まぁ、夜になったら報告とかは多少してたけど、全部が全部語ってたわけでもないし、その辺りの細かい話が聞きたいんだそうで。

 というわけなので、夕食後のそっちの話は私は不参加である。……私が参加すると、聞かれたくない話とか止められかねないからダメでしゅ、だってさ。

 

 まぁうん、わりと長いこと向こうに居たし、その間には色々起きてたし、語りたくないような恥ずかしいミスもあったし、仕方ないと言えば仕方ないんだけどね?

 ……なんで、今日の夜はゆかりん達とやけ酒でもしようかな、なんてことを思う私なのでしたとさ。

 

 

 

 

 

 

 というわけで、明けて次の日。

 なにを聞いたのやら、つやつやぴかぴかしているマシュに別れを告げ、再び別行動を開始した私たち。

 そうしてやって来ました、なんだか久しぶりな気がする互助会の施設にて。

 

 

「……なんでこんなことになっているのでしょう?」

「まぁ、久方ぶりの来訪……ともなれば、聞きたいことが色々ある、という人間も多いということだろう。よかったな、大人気だぞ?」

「嬉しくありません……」

 

 

 久しぶりにキリアの姿でこっちに来た、ということもあってか、私は互助会の人々に色々見て貰いたい、とあちこち連れ回されていたのでした。

 それもそのはず、こっちでこの姿の時、私がやっていたのはみんなの問題を解決すること。……いわば教師とかカウンセラーの類いであったため、長いこと来てなかったこともあってその辺りの相談が貯まりに貯まっていたのである。

 

 

「……先に言ってくれれば良かったじゃないですか」

「いや、クモコさんもここまでみんなの不満が貯まってるとは思わなかったんすよ」

 

 

 そうしてもみくちゃにされている私が睨むのは、先んじてモモンガさんに連絡をしてくれている(予定の)クモコさん。

 

 ……いやね、彼女って元ビーストでしょ?そういう厄物っぽさがあさひさんに被るかも?……ってんで、裏方を頼んでたのよね、あのあと。

 で、そのせいで微妙に記憶から飛んでて……で、あの時喫茶店を出る前に、ショートメールが来たのよね、『あのー、一つお伺いしたいんッスけど、クモコさんはいつまで影の実力者ムーブしとけば宜しいんで……?』みたいな感じで。*2

 

 それでまぁ、『あっ』って思い出したのち、じゃあクモコさんに向こうへの許可取り頼んどこう、っていう話になって。『いや、人使い荒すぎッスよ!?いやまあ、やりますけどね?やんないと大変そうだし!』みたいな返事を受けて、よっしゃこれで明日はそのまま向こうにゴーだ、的な話になったんだけど……。

 

 

「その結果がこれですよ、これ。……なんで他の人にバラしちゃったんですか?」

「いや、クモコさんもバラす気はなかったんッスよ?実際こんな感じになるのは目に見えてたッスし、それであれこれ言われるのもなー、みたいな感じもなくはなかったッスし。……ただほら、こういう時鼻の利く人、いるじゃないッスか」

「その通りだ我が華よ!」

「うわでた」

「ね?」

 

 

 ね、じゃないんだよこのおバカ。*3

 ……的な言葉は私の口からは発せられなかった。なにせそれより前に私の視界に入り込んだ変態──もとい水銀さんの対処に追われることとなったからだ。

 

 そう、水銀さん。見た目とか能力の一部とかは確かに本人のモノだが、主義主張や好きなものなどに中の人の方針が反映されている、特殊な『逆憑依』──【泥身】の一人。

 そんな彼は、本来の彼が命を捧ぐ()の代わりに、別の()──雑に言えば(キリア)に忠誠?を誓っている。

 いやまぁ、単なる忠誠かと言われると微妙なんだけど、(かしず)いていることは確かなので云々かんぬん。

 

 ……ともかく、彼の付近で私の話をすれば、たちどころにその話が周囲に広まってしまう、というのも仕方のない話。

 なのでまぁ、落ち度があるとすれば互助会にこの姿で来る羽目になったことそのもの、みたいな話になるのでありましたとさ。

 

 

「……む、言っておくが、あちらの姿だからといって私の追及が止むとは思わないでくれたまえ。私は()にこそ傅く者。それが表裏一体であるのなら、表を焼き尽くすことも厭わないのだからね」

「軽い口調で戦争起こそうとするの止めて貰えませんか?」

 

 

 この世界線だとどう考えても怪獣大戦争みたいなもんでしょ、それ。

 ……と、勃発しかねないマシュVS水銀、などという対戦カードに白目を剥きつつ、はぁとため息を吐く私。*4

 とりあえず、周囲の人の話を片付けないうちには、資料を探すとかそういうことをする余裕はないだろう。

 そう悟った私は、変わらずニヤニヤしている水銀さんを『前が見えねぇ』状態にしつつ*5、みんなの問題を片付けるために腕捲りをしたのだった。

 

 

 

 

 

 

「ああまったく、ようやく終わりました……」

「お疲れさま、というべきかな?」

「おっとモモンガさん、お邪魔してます」

 

 

 数時間後。

 次から次へとやって来る人々の、お悩み相談やら指導依頼やらを捌ききった私は、椅子の背もたれに体を預け、大きく反りをしていたのだった。

 休憩する間もなく話を聞き続けていたので、体のあちこちがバキバキになっていたため、それを解すためである。

 

 で、そうして一時の休憩を堪能している時に現れたのが、コーヒー片手に転移してきたモモンガさんだった、というわけなのだった。

 無論、このコーヒーは彼が飲むためのものでなく、彼が私のために淹れてくれたものである。……死者の王が淹れてくれたコーヒーとか、凄く苦そう。

 

 

「ははは。まぁ、眠気覚ましには丁度いいかも知れんな。……それにしてもすまないな、うちの面々の面倒を押し付けた形になって」

「まぁ、モモンガさんは指導役にはあまり向いていませんし、仕方がありませんね」

「……事実なのはわかっているが、改めて言語化されるとなんとも言えない気分になるな……」

 

 

 笑うモモンガさんからコーヒーを受けとり、そのまま一口。……期待通りの苦味に小さく頷きつつ、苦すぎたためミルクと砂糖を投入する私である。いやほら、とりあえず淹れて貰ったモノなんだし、最初くらいはなにも入れずに楽しむべきかなー、みたいな?

 ……まぁともかく、人が苦味に唸っているのを見てくつくつ笑っているモモンガさんに、小さく皮肉を返しつつ。

 ミルクと砂糖を放り込んで甘くしたコーヒーを、ちびちび飲む私である。

 

 他の面々は、資料と夏油君の探索中。

 夏油君に関しては、こっちに来た時に向こうから会いに来てもおかしくなかったのだが……なにやら自室で作業中とのことで、それが終わるのを待つ形となっていたのだが……まぁ、流石にこれだけ経てば終わってるだろう、と他の面々が呼びに行った形である。

 

 で、資料の方はモモンガさんに許可を貰わないと開けられない倉庫に入ってるとのことで、その許可を得たアスナさんが鍵を持って開けに行ってる最中で……まぁ、双方ともそう時間をおかずにここに来ることだろう。

 そういうわけなので、私はここでモモンガさんと仲良くお話タイム、というわけなのだ。

 

 

「ふむ……話すといっても、こちらは特に話題がないが?」

「ほうほう、ではこちらから話題提供を。──お休みを取る予定は、やはりバレンタイン直前ですか?」

「……ナンノコトダカワカラナイナ」

(この上なくわかりやすっ)

 

 

 で、ここで話題にすべきこととなると……やはり、彼がマッキーにとってのトレーナーさんである、ということだろう。

 となれば、彼も暫くすれば向こうに合流することになるのでは、と思うのも仕方のない話。

 それが早いのであれば、向こうで人手が足りないとなった時に手伝って貰えるのでは?……などと思っていたのだが、どうやらこの様子だとごまかすつもりらしい。

 

 まぁ、向こうでもこの姿、なんてことはないだろうし、彼もまたマッキー(ドトウさん)のように姿を変えるためのアバターを持っていたりするのだろう。

 ……単純にこの人にゲーム、というのがどうなんだろう的な感覚もなくはないが、キリトちゃんから骸骨みたいなプレイヤーがトッププレイヤーに居る、みたいなことを聞いたことはないし、ほどほどに遊んでいるだけなのかもしれない。

 

 みたいなことを考察しながら、にやにやと笑みを向ける私と、それを受けて気まずそうに顔を逸らすモモンガさん。

 そんな、奇妙な沈黙を破ったのは、

 

 

「──やられたわ!二人とも!」

「「!?」」

 

 

 突然部屋に入ってきた、アスナさんの大声なのであった。

 

 

*1
『チェンソーマン』の67話『最初のデビルハンター』より、デンジの台詞。正確には『マジかよ~!?すっげえワルの敵が使ってくるヤツじゃ~ん!!』。人形の悪魔の力により、人形にされてしまった人間達が意識を取り戻す(もしくは取り戻したように見える)も、体は言うことを聞かないのでそのまま襲い掛かってくる……という、言葉通りの『悪い奴がやって来る攻撃』を見た際の言葉。ノリが軽いので効いているようには思えない(実際はとても効いていた。いやまぁ不可抗力で殺したりはするのだが)

*2
『能ある鷹は爪を隠す』系の最上級。普段は頼りないが、いざという時は事態を解決する力を発揮する……という系統の内、力を発揮する際に自身の姿を隠すタイプのもの。謎のヒーロー的な『姿自体は周囲に見せる』タイプや、『戦場などにおいて影響だけ与える』タイプなどが存在する。近年ではそういうキャラを主人公にした作品も多い(逢沢大介氏の『陰の実力者になりたくて!』など)

*3
多分ウインクしながら肩を竦めている。いわゆるテペウさんみたいな

*4
原作的な意味はともかく、こっちだとわりといい勝負をする。いい勝負をする代わりに周囲は焦土と化す(白目)

*5
なお欠片も堪えていない模様




「……ふむ」
「ん?どしたの宿儺さん?それ今週のジャンプでしょ?なんかあった?」
「……いや、元の俺は随分自由だな、などと思っていただけだ」
「???」
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