なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「せ、せんぱい!ご覧下さいせんぱい!まさかのキリアさんです!もうなりきりが生まれるだなんて、凄い人気ですね!」
「………」(こくり)
「……?せんぱい、今日はやけにお静かなのですね?」
「………」(こくり)
「……な、なんでしょう。今日のせんぱいは、やけに幼いというか、母性本能を擽られるというか……」
「えっと、大丈夫かな、マシュさん?」
「はわっ!?すすすすみません!ちょっとせんぱいも緊張されているみたいで!」
「………」(こくり)
「あははは、大丈夫ならいいんだ。じゃ、行こっか?」
「はいっ、本日は宜しくお願いします!」
……なぁにこれぇ。
表情には絶対出さないけど、正直状況の意味不明さに頭が痛くて仕方ない。
それもこれもぜーんぶ自分が悪い、って感じに責任が返ってくるので、文句を吐き出すことも儘ならないんだけどね!……クソァッ!!
(落ち着いてキーア、今日はスマイル、スマイルだよ)
(くそう、くそう……全部終わったら暫く有休いれて、全部投げ出してやるぅ……!)
脳内に響くCP君の言葉に呪詛を漏らしつつ、どうしてこんなわけのわからない状況になったのかを思い出す───。
「……着替えって、キリアの格好?……うわー、もう絶対やることはないと思ってたのに、またやるはめになるとか……厄日じゃん、絶対厄日じゃん……」
スキマによって部屋に送り返されたのち、タンスの前でしゃがみこんで頭を抱える私。
……よりにもよって?魔法少女の姿で?お偉いさんの前で?根掘り葉掘り聞かれる?ふざけんなトンだ羞恥プレイじゃねーかこんなもん!!?
やだよー、赤っ恥掻くの確定なのに外出るのやだよー……。
みたいな感じに唸っていると、響いてくる特徴的な足音。……この足音は──奴だ。
「おやキーア、今日はお早いお帰りぶぎゅるっ」*1
「前回は私に状況を確認する余裕がなかったから、後回しにしたけどー……そんな余裕なくなったからさぁ吐け今すぐ吐け『マジカル聖裁キリアちゃん』……ぐふっ、……や、奴はなんなんだっ」
「落ち着きなよキーア。僕としては見ててとても面白いけど、正直口の端から血を垂れ流しながら迫ってくる幼女とか、ホラー以外の何物でも……いや、吸血鬼的な感じに見えるからあり、かな?うんそれ採用、キリアちゃんの強化フォームに、ヴァンパイアモチーフのものを採用しよぶぎゅるっ」
「わかっててやってんだろ貴様ぁっ!!?」
はっはっはっはっ。創作意欲に燃えてるのは大いに結構。……モデルが私じゃなきゃなっ!!
CP君をぶんぶん振り回す内に、こちらの怒りも段々収まってきたので、いい加減に・ちゃんと・話を聞くために向かい合わせでベッドに座る。
……あんなに振り回してもピンピンしている辺り、流石のポケモンボディ、ということなのだろうか?
「で、キーアは何を聞きたいんだい?」
「全部よ全部、あのアニメの出どころも、どうして全国放送してるのかも全部っ」
で、聞くことはあの、名前を出すのも忌々しいアニメの事。
……私が視界に入れたのはあの一度きりだが、その一度でアレが『
まぁ、その後は私とは関係なくアニメは進んでいるみたいで、この間は序盤の大ボスなのか、ちょっといかつい感じの敵にゲストキャラと共に立ち向かっているのを、マシュが(いつの間にか発売されてた)グッズ片手に「
……いや違くて。ね、マシュが純粋に誰かを応援しているのなら、そりゃまぁ微笑ましいでしょう?私も後方先輩面で、うんうん頷いてたと思うのよその場合。
でもさぁ、自分が黒歴史扱いしているものに対して、熱の籠もった応援とかされてご覧よ?
……いたたまれなさで死にたくなる。
わかりやすく言えば、『画面の向こうでデンジャラス・ビーストを着ている
「いきなり死のうとしないで貰えるかな?流石にそれはびっくりするからさ」
「貴様にはわかるまい、この私の体を通して出る悲しみが!解った、私は生きていてはいけない人間なんだ!うわぁぁああああぁぁぁぁぁっ!!」*3
「……カブト君、ごー」
「
「へぶぁっ!?」
……はっ?私は一体何を……。
なんかこう、悍ましい想像の上に深い悲しみに包まれたような気が……?
まぁ、思い出せないので無理には思い出さないが。ストレスと付き合うには忘却は必須、キーア覚えた。……矛盾塊めいてるなこの台詞?*4
とりあえず、体当たりでこちらの気付けをしてくれたらしいカブト君を、感謝の意味も込めてなでなで。……なんか、順調にポケモントレーナーになってる気がする。今度
「で、話はもういいのかい?」
「へ?……あ、そうだった、別の話してたんだったっけ」
おおっと、カブト君を撫でてたら話がずれてしまった、軌道修正軌道修正、っと。
……で、何の話してたんだっけ?
「今日の君情緒不安定過ぎやしないかい?アニメの話だろう?……なんで顔を手で覆ってるんだい?」
「思い出しとうなかった……」
「……頑張れキリア、負けるなキリア、マシュも応援してるぞー」
「うわあぁあああああああぁあ思い出さなくていいことまで思い出したぁああああ」
「うーん無限ループ」
「落ち着いたかい?」
「落ち着いたので下ろして貰えませんかね……?」
「君の落ち着いたは全然落ち着いてないってのはいい加減僕も理解したからね、話が終わるまでぶら下がっているといい」
「……私の扱いがなんかおかしくない?」
「自分の胸に手を当ててよーく考えてみるんだね、この扱いが本当に不当なのかを」
天井から糸でぐるぐる巻きにされて吊るされる……とかいう、人に対しての扱いではなくない?みたいな状態でぶらぶらしている私。
……いやまぁ、発狂してアイデアロール成功して、一時的狂気で自殺癖引いた相手に対する対処としては、ほぼ満点なんだけども。*5
やられてるのが私、という時点で一応抗議はせねばならんわけでですね?
「はいはい。で、アニメについてだけど──監督・僕、脚本・僕、キャラデザ・僕。……みたいな感じに、全部僕一人でやってるよ」
「……エグい」
「ははは。まぁ、優秀なアシスタントが居るからできてること、でもあるけどね。……君もなんとなーく気付いてるだろう?ゲストキャラが
CP君の言葉にむむむ、と唸る私。
……いやまぁ、おかしいとは思っていたのだ。
以前見掛けた、たったの一話。……その時点で、登場人物がほぼ
実際、あの話では信長的なモノを天子ちゃん的な人とキリアが協力して倒す、みたいなのが大筋で、その背景には金髪の大剣使いや、黒子装束の人。それからツンデレカード使いの姿もあった。
唯一居なかったのははるかさんくらいのもので、それ以外は版権も媒体も全然違うキャラクター達が、ほぼその姿のままで登場していたのだった。
……その時点で、真っ当なアニメではないのはよくわかる。いや、これが海外のドラマだったりすると、明らかに許諾とか取ってなさそうな、コスプレセイバーさんが出てきたりもするのだけども。……え?あれは非営利?そもそもファンメイド?*6
でもまぁ、アレを日本で作るとなると、色々不味いのはなんとなーくわかると思う。
こっちはグッズあるし、思いっきり営利目的だし。……個人作成も、CP君の口ぶりだと若干微妙だし。
一応、出てくる他作品キャラは、大本のキャラクターそのものではないらしいけど。……スポンサーに元の制作会社とかが居るみたいだから、予め了承とかは取ってるみたいだし。
ってな感じで、まぁ普通のアニメではないってのは、初っ端から察せられるわけである。
それと、キリアちゃんの立ち位置。これもまた絶妙と言うかなんと言うか……。
発想の大本があの一戦だからか、キリアちゃんは主役の癖に完全に『バッファー』なのである。
……わかりやすいかはわからないけど、例えるなら『ディケイド』でファイナルフォームライド*7するのが常にディケイド側、実際に敵を倒すのはその回のゲストライダー……みたいな?
要するに、色んなキャラクター達が(建前上は別人)多数登場し、彼らの盾となり剣となるのがキリアちゃんで、毎週ゲストキャラ達が切った張ったの大立ち回りをするクロスオーバーアニメ……みたいな感じなのが『マジカル聖裁キリアちゃん』なのである。
……よく知ってるな?マシュがキラキラお目々で語ってくれるんですよ(白目)
まぁ、マーベル映画とか人気だったし、クロスオーバーものにも一定のファンが居る、ということなんだろうなぁというか。
……マーベル映画をクロスオーバー扱いするのは違う?いやまぁ、見てない人間からすると違いがわからないというか。
「まぁそれは置いといて。……許諾とかちゃんと取ってるっぽいことと、スポンサーに入ってるとある会社。……それを見れば、お金を出してるのがどこなのか、というのはまぁ、すぐにわかるよねっていうか」
「まぁ、君の想像通りだよ。企画の発案と資金源は『tri-qualia』の運営会社。……ある意味あのゲームのアニメ化、みたいなものだよね」
「やっぱりかぁー」
がく、っと項垂れる私。
……あのゲーム、本当にろくなことしねーな?
示された事実に意気消沈しながら、CP君に続きを促す。
元々資料取りと言っていた通り、以前の写真撮影やらは自主制作アニメの資料のためのものだったのだが、どこからかそれを嗅ぎ付けてきた『tri-qualia』の運営を名乗るメールを受けて、全国放送のアニメとして制作がスタートしたのだとか。
……必要な許可とか設備とかアシスタントとかは、全部向こうが用意してくれたらしい。
CP君がしたことと言えば、大まかなプロットの提出くらいだったそうで。
「それからは毎週プログラムが勝手に作品を作ってくれてるみたいでね。僕も一視聴者として楽しませて貰ってるってわけさ」
「ふーむなるほど?じゃあ基本的には貰い事故みたいなものなのね、これって」
「うおわぁっ?ゆかりん突然出てくるの止めない?!」
なんて話を聞いていたら、突然目の前にスキマが開いて、ゆかりんが出てくるものだからびっくり。
そんなこちらの驚きは知らぬ、とばかりに彼女はCP君と挨拶を交わしたのち、こちらに振り返って。
「全国ネットに乗ってしまったから、はるかちゃんの目にも入っちゃったのね」
と、今回のそもそもの発端を口にするのだった。