なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……ふむ、もぬけの殻、か」
「こっちの資料も、関係するところは文字が抜けてるの」
突然駆け込んで来たアスナさんに連れられ、現場へと向かった私たち。
そこで私たちが見たのは、中に誰も居ない部屋と、入り口の扉の裏側に取り付けられた謎の機械。……どうやらこの機械を使い、訪ねて来た人間に自分が中で作業をしている、とアピールをしていたらしい。
つまり、夏油君も黒!……かも?みたいな話になってくるわけで。
なにせこの機械、わざわざネジで止めてあるのである。……つまり、これを設置するだけの余裕があった、ということ。
なんなら音声吹き込みの手間も考えれば、自分で用意して付けた、と考えた方がよっぽど筋が通るのである。
資料の方も、似たようなもの。
魔列車関連の文章のみ白飛びしている、というのはよく分からないが……なにかしらの術式で情報を消した、のだと見ればそれができそうな人間なんてそう居ないことがわかるだろう。
そう、状況証拠的には、夏油君が魔列車の情報を持ってどこかに行ってしまった、ということになるのだ。
そしてそれを現状に照らし合わせると……、
「今回の騒動について、なにかしらの形で関わっている可能性が高い?」
「そういうことになりますね」
「んー、確か夏油さんって、元の作品だと敵方のキャラクターなんッスよね?……これ、ヤバイんじゃないんッスか?」
「……仮にそうじゃとしても、向こうもお主には言われたくないと思っておるじゃろうがのぅ」
「ぶふっ!?ななな、なんでそこでクモコさんの話題になるんッスか!?」
「いや、だってのぅ?その論理で行くと、
「……あ゛」
「ははは……いや、いいんだ気にしないでくれ。私は確かに主人公ではあるが、同時に向こうの世界における厄災のようなもの、という評は決して間違いではないのだからな」
夏油君が今回の再現に、なにかしらの形で関わっている可能性が高い……という話になるのだけれど。
そこでクモコさんがもう一歩先に進んだこと──それこそ、今回の騒動の主犯格なのではないか?ということを述べようとして撃沈。
……いやまぁ、ここのリーダーであるモモンガさんに飛び火するような発言、というのも確かなのだが。
すっかり馴染んでいるとはいえ、元々クモコさんの原型となったのはビーストの類い。
その時点で割りとアウトなのに、それに加えて『それが負けた際に生み出した次世代型』だとか『モモンガさんと同じくヤバイ系主人公なクモ型生物だった』とか、アウト要素積み積みなのがここのクモコさんなので、『どの口が言うんだ』感マシマシ、みたいな?
……まぁ、クモ主人公さんに関しては、なんだかんだと世界を救った面もあるのでまだマシかもしれないが。
ともかく。
原作において悪役だと宜しくない、というのなら互助会メンバーは
なので、その辺りの話は一先ず置いておいて、あくまでも今はっきりと確信を持って宣言できることのみを見ていこう、という話になったのだった。
「そうなると……夏油傑が居なくなったこと、魔列車の報告書が見れなくなっていること……この二点が、余計な情報のないまっさらな事実、ということになるな」
「両者に因果関係があるかは断定できない、ってことだね。……そういえばモモンガさん、連絡の方は?」
「何度か試みているが、なんとも。……念話は相手の所在不明でタイムアウト、私用のスマホは電源が入っていない……という感じだな」
「うーむ、状況だけ見ると怪しさがうなぎ登りじゃのぅ」
そうして纏められたのは、夏油君が行方不明状態であることと、魔列車関連の資料がなくなったことの二つ。
この内、夏油君の所在に関しては探ってはいるもののヒットせず、といった感じになっているようだった。
……では資料の方は、というと。
「さっきキリアちゃんも言ってたけど、魔列車関連の文章だけ
「白飛び?……ええと、修正ペンとかで消したとか、その部分の資料が破られてるとかではなくッスか?」
「そうです。まるでそこの部分の文字がなにかに食べられたかのように、ぽっかりと空白になっているのです」
何度か私が述べている通り、
そう、クモコさんが驚愕したように、重要な部分が破り取られているとか、はたまた読めないように文字が消されたり潰されたりしているわけではなく、だ。
その様は、まさになにかに食べられたか、はたまた文字自体が意思を持って逃げ出したか、みたいなことを連想してしまうような、あまりにも綺麗で痕跡のないもの。
ともすれば、端からそこに資料などなかったのではないか?……と勘違いしてしまってもおかしくないような様相なのである。まぁ、実際にはその前後に別の文章が存在しているため、明らかに浮いている部分となってしまっているのだが。スペースには広すぎる、というか。
「ふぅむ、文字喰いというと、どこぞの
「うちはその辺りの権利表記をしていませんので、少なくともそれが出ないうちは来ませんよ、それ」
「……言いたいことはわかるがメタすぎやしないか、それ」
で、その話を聞いて、モモンガさんは思わずとある存在を思い出したようだが……少なくともうちでは彼らが出る予定はないよ、と言うとなんとも微妙な顔をしていたのだった。*1
まぁ、あそこにあるものは結構ヤバイの多いからね、来ないなら来ないで平和でいいんじゃないかな。
……直接的に言ってなくても間接的に明言してるようなものなので、あれの話はこれくらいにして。
ともかく、魔列車周りの情報が、報告書内部から不自然な消え方をしているということは事実。
なので、今の私たちにはあれがどういう存在だったのか、ということがわからない状態と言うことになるのだけれど。
「……うーん、でも正直、魔列車のことって普通に
「というか、あの列車にどこまで関わってるのか?……みたいなのも謎じゃないッスか?まさかネットワーク内にイマジンとかを再現した、ってわけでもないでしょうし……」
「言われてみれば……確かに、ここで魔列車の情報が得られなかったとして、なんの問題があるのか?……という疑問はあるな」
みんなでううむ、と唸ることに。
……そう、確かにここにあったはずの報告書は、読むことどころか想像することすらできないが。
そも、私たちはその全てが『原作のある』存在。……つまり、ここで確認できなくても『ファイナルファンタジー』シリーズの攻略サイトでも確認すれば、基本的な魔列車の情報は一通り確認することができるのである。
ついでに、『tri-qualia』内に魔列車が発生するか?……という点でも、微妙だと首を傾げざるをえないだろう。
確かに、あのゲームは一般のゲームと違い、とても特別かつ特殊な存在ではある。……あるのだが、今のところあれそのものがオカルトの産物、なんてことは一切ない。オカルトめいたことを発生させているのは、あくまでもオカルト的な下地を持つ私たち『逆憑依』が関わったから、というところが大きい。
つまり、『tri-qualia』でイマジンやら魔列車やらを再現したとして、そこに現れるのは中身のない形だけの似姿、端的に言うと単なる演出以外の何物でもないのである。
無論、そこに【兆し】などが関わってくれば話は別だろうが……【兆し】の集まる場、という面から見ても『tri-qualia』が特段重要な場所、ということもない。
いやまぁ、キリトちゃんみたいにあのゲームに関わった結果、変化した人も居るには居るが……あれは『ネットゲーム』に関わりの深いキャラクターだったからこそ起こったことだろう。
それを踏まえて見ると、魔列車もイマジンも、共にそう言ったモノに関わりがあるとは言い辛い。
関わっている人間的にも、バグスターならなんとか*2……みたいな感じだろうか?……まぁ、電王人気であちこちでずっぱりだったイマジンだと、いつの間にやら電脳適性とか獲得しててもおかしくはないのだが。
ともあれ。
ここで語られる魔列車とは、その全貌を別角度から推察できるもの。含まれている要素を含め、必要な考察要素は埋まっていると考えられるため、ここで資料が見付からなかったからなんだ、と言われると反論し辛いのである。
「一応、反論としてはあの魔列車は普通のそれと大幅に違う点があるので、そこを隠したかった……みたいな理由も考えられますが……」
「それならそれで、イマジン側から考察していけば答えにたどり着きそうではあるよね」
……とまぁ、こんな感じ。
あの時得られた情報に間違いがないのであれば、あれはイマジンが魔列車の姿を得たもの、というのが真実。
単なる【顕象】ではなかったのだとしても、なんらかの類似要素で纏められるのが基本である以上……せいぜい、混ざっても聖杯とかその辺りだろう、というのは容易に予測できる。
なので、私たちはこの報告書の欠けについては、今回の騒動とは別口のモノである、と結論付けたのであった。
「と、いうと?」
「たまたま夏油さんの行方不明と重なっただけ、みたいな感じかな?……なんにせよ、今私達が優先すべきなのは夏油さんの行方の方、なんじゃないかなって思うよ」
「ふむ……まぁ確かに。自分がまだ部屋の中に居る、とごまかしながら外出している以上、他人に言いにくい理由で外に出ていることだけは確実だからな」
「そうなると……余り頼りたくはありませんが、同郷ならぬ同作の縁で辿って貰うのが一番、という感じでしょうか?」
「ん、その言いぶり……もしかして、あの人ッスか?」
「そう、その人です」
ゆえに、一先ず報告書については置いておいて。
夏油君の身柄を押さえるため、彼の行き先とかに当たりを付けられそうな人物に連絡を取る私。……だったのだけれど。
「……出ませんね」
「「「えーっ!?」」」
その人物──五条さんもまた行方不明であるということを、私はその時初めて知り得たのでありました。