なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「うーん、これはゆゆしき自体ね……」
「まさかまさかの五条さんも行方不明ッスかー……」
思わず困った、と唸る私たち。
夏油君が居なくなったのだから、その捜索は五条さんに任せるべきだろう……みたいな軽い気持ちで行われた連絡は、『現在電波の届かない場所に……』のアナウンスと共に荼毘に伏した。
そう、なんとも恐ろしいことに、五条さんまでもが行方不明なのだ。……なんというかこう、嫌な予感がバリバリするというか?
「うーん、夏油君が実は
「もしくは途中で変化した、か。……なんにせよ、それが真実だとすると不味いことになるわね。……まさかとは思うけど、渋谷事変みたいなことにならない?」*2
「うわぁ、想像しただけで悪寒がするッスよ……」
なにせ夏油君、わりと闇落ち系のキャラなのでこういう事態の時に心配がなによりも勝るタイプなのである。
……いやまぁ、普通なら原作でのあれこれを最新話まで記録しているため、そういう単純な原作なぞりは起きないはずなんだけど……。
彼の場合は中身が変わって変化したタイプも兼任しているので、変わった時の危険性は他の人の比ではないのだ。
そも彼の術式である『呪霊操術』自体がわりと厄物なので、余計にというか。
……なので、その辺りも兼ねて五条さんには彼を気にしていて貰っていたんだけど……こうなってくると悪手だったかなー、みたいな気持ちにもなってくるというか。
私たち『逆憑依』は、今の知識を持った彼ら、みたいな存在である。なので、原作で一度失った相手なら、もう二度と……みたいな気持ちも強かろう、という考えだったわけなのだが。……よくよく考えれば中身が
……無いとは思いたいけど、いつの間にか
しかし、こちらに相手の所在地を探る手段はない。
それをしたいのなら、一番手っ取り早いのは私が元に戻ること、ということになってしまうわけで。
「……じゃあ、とりあえず戻るッスか?
「そうだね、早い方が良いと思う。……思うんだけど」
「私の場合、なりきり郷まで戻らないといけないんですよね……」
なんだけど。
……私以外のメンバーはいいんだけど、他ならぬ私がここだとログインできないんだよね。
で、ログインしないと融合もできない……ってわけじゃないんだけど、遠方でログインして合流、って形を取らないのなら結局なりきり郷に戻るしかないわけで。
うん、ここで問題なのが、わりと遠いんだよね、ここからなりきり郷って。んで更に問題なのが、今日に限ってゆかりんがおやすみだ、ってことだろう。
ゆかりんがわりと働き過ぎな方に分類される、というのは皆さんご存知かと思われる。ゆかりんルームだのなんだの茶化しているが、基本的に彼女があそこに缶詰め状態なのは間違いないし。
ともすれば結構な頻度でそこで寝泊まりしてる、ともなれば『いや家に帰れよ』とお叱りの言葉も飛び出そうというもの。
……そういうわけで、ある時(具体的には一度休みなさいと言い付けた辺り)から彼女を無理矢理にでも休ませる日、というのが制定されたのである、大体一月に一回ほど。
……いやまぁ、言いたいことはわかる。
月に一回じゃなく、ちゃんと週に二度くらいは休め、っていうのはわかる。……んだけども、彼女の能力や性格上、例え休みの日でもなにかあれば『なんなのよー!?』と言いながら、それでも仕事に出てくるのは確実。
要するに、休みが休みにならないパターンがわりと多いのである。なので、週二日の休みに加え、『本当になんにもしない、その日は朝から晩までずっと寝て過ごす』日というものを制定したのだ。それが、月一度の『ゆかりん完全おやすみデー』。
……まぁ、これに関しては本来半日寝てないと調子が出ないはずのゆかりんが、休みの日も平日と変わらない睡眠時間で活動してしまう悪癖があるから、みたいなところもあるのだが。
ともかく、この『ゆかりん完全おやすみデー』は、なにかしらのイベント事が行われる場合、その一週間前くらいに定められる変動型の休日である。
振り替えとか代替とかはなく、他の休みと被れば一緒に処理されるようになっているのは……ゆかりんがそこは譲れないと駄々を捏ねたから、というのは内緒の話。
……今回の場合、バレンタイン当日とか確実に酷いことになるでしょう……という理由から、その一週間前が該当日となっている。
「つまり今日ですね。……なので、スキマで向こうに帰る、みたいな方法は使えません」
「うわぁ、ッス」
つまり、今日に限って移動手段が、地道に最寄りの交通機関を頼るしかない……ということになってしまっているわけで。
……なんというか、悉くタイミングの悪さを感じざるを得ない私であるのだった。
「……まぁ、愚痴っていても仕方ありませんね。どなたか先にログインして、キーアにこの事を伝えて頂けますか?」
「あ、じゃあクモコさんがやるッスよ。流石にアスナさんのには負けるっすけど、クモコさんのHMDも中々高性能にカスタマイズされてきてるので!」
「……無線も繋がってないのにゲームができるって部分は、正直私のよりおかしい気がするなー」
いやまぁ、アスナさんのそれは変身アイテムにもなる時点で大概ッスからね?……などと言いながらクモコさんはHMDを取り出し、流れるようにログイン。
そのまま、向こうの面々にこちらでの報告をし始めたのだけれど……。
「……はい、……はい?……ええと、もう一度言って貰えるッスか?……はい……はい……ううん、ちょっとクモコさん横になっていいッスか?正直キャパを越えてるッス……」
「……?なんだか、ちょっと様子が変だね、クモコちゃん」
「変というか、突然横になるのは最早不審者の類いではないかのぅ……?」
向こうに合流したらしいクモコさんは、最初のうちはこちらの情報を伝えていたのだけれど。
途中から向こうの話を聞くターンに移行し、そのままどんどんと衰弱……雑な言い方をするなら萎え始めた感じに。
いや、一体なにが?……と首を捻る私たちの前で、遂には地面に横になってしまった彼女。
……ゲーム中にHMDを外すのは良くないのだが、彼女ともなればそこら辺は大丈夫だろう、と頷きあった私たちは、意を決して彼女のHMDをそっと剥ぎ取り。
「……あーうん、問題ないみたいッス、五条さんも、夏油さんも」
「「「「……は?」」」」
もうどうにでもなーれ、みたいな感じに目の据わったクモコさんが発した言葉に、思わず顔を見合わせることとなったのでした。
なにがなにやらと首を捻りながら、とりあえず戻らないことには始まらないので、モモンガさんに別れを告げ新幹線に飛び乗り暫く。
帰ってきたなりきり郷に感慨を抱く間もなく、トップの居ないゆかりんルームを突っ切って遊戯室へ。
そこでキーアと融合を果たした私は……さっきのクモコさんの態度の理由を知り、思いっきり脱力していたのであった。
「……あ、その様子だと戻ってきた感じ?じゃあ、わざわざ説明はいらないよねー」
「……ちょっと、一応説明はした方がいいのではないですか?彼女は良いとしても、他にわかっていない人もいるのでしょうし。いやまぁ、説明したくないのは山々なんですが……」
「……えっと、この子達は……」
「うむ、食堂車でパンフレットを落とした娘子達じゃのぅ。……むむ?そういえば何故こやつらと一緒におるんじゃ、お主ら?」
「あーうん、それに関しては私から説明を。実はね……」
遅れてログインしてきた(今日もこっちに泊まるつもりらしく、一緒に移動してきた為ログインタイミングが遅れた)二人、ミラちゃんとアスナさんが目を丸くしている。
それもそのはず、そこにこちらの集団に紛れて立っていたのは、食堂車で愉しげに話をしていた少女二人。
……どことなーくどこかで見たことのある気がするこの二人が、何故ここにいるのか?
いやまぁ、ぶっちゃけてしまうと見た目だけなら『リコリス・リコイル』の主役二人、
具体的には、千束の方の髪の色が
あとは、たきなの方もなんか、所々の意匠が
……まぁ、そんな感じで『似てるけどコスプレかなー』みたいな感じで流されていたのだった。
特に、あのパンフレットの内容的に
要するに、そんな感じにほんのり漂う違和感から、私たちは彼女達二人を単なる『ゲーム内でなりきりアバターを入手した一般プレイヤー』と
……さて、ここまで言えばなんとなーく予測が付いている人が居るかと思われるが、もう一つ。
彼女達が
この違和感は『キャラとして再現されていない』ことへのそれではなく、
……要するに、ふと見ると確かに少女達のキャッキャッウフフなのだが、よくよく見てみるとなんかこう……
さて、では種明かし。
たまには別の場所で、
「……え、いやちょ、もしかして……?!」
「そう、この超絶可愛い美少女の中身は!……なんと五条さんでしたー!」
「……まぁ、それでわかると思うけど。私の方は夏油傑だよ、言いたくはなかったんだけどね」
「……なん、じゃと……!?」
この最強コンビ、何故かJK生活を満喫していたのであった。
……いやなんでだよ(真顔)