なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「にしても……魔列車をモデリングの参考元にする、なんてねぇ」
「まぁ、言われてみると確かに、となったんですよね。あれは元々魔列車そのものではなく、別種の存在であるイマジンが
深々とため息を吐くすーちゃんに、思わず苦笑を返す私たち。
今回の案件を持ち込んだ誰かは、この列車の内装を完全に再現するため、そのデータを欲したわけなのだろうが……。
あの列車はイマジンと融合してからそれなりの時間が経過している上に、脱出の際コナン君が(流星ブレードで)ボロボロにしてしまっているため、『実際に現物を確認して作る』ということが不可能となっている。
それゆえ、その時のデータが含まれているであろう魔列車の方に望みをかけた、ということになるようだ。
……うん、まぁ確かに話の整合性は取れている。
どっからその情報を仕入れたんだ、って部分を除けば、だが。
「……あーでも、よくよく考えると一つ、情報が漏れそうなルートもなくはないかなー」
「その言い草だと、なにか心当たりでもあるの?」
「うん。あの時のことを現地で見てて、かつ情報商材的なものを取り扱っている人が一組ほど」
「ぬ?そんなやつおったかの……あー」
で、そこで当時のあれこれを思い出し……一つ、漏洩ではなく
……確かに、なりきり郷側では別に、あの事件に関わった人物に口止めとかはされていない。
顛末こそ確かに突飛なものになったが、それ以外の部分に関しては寧ろ単なる心霊現象の区分になってしまうので、そこまで厳重に秘匿する必要がないのだ。
……そういうのに関しては、寧ろ一般からこっちの方に話が持ち込まれることもあるしね。ウルキオラ君とか。
なので、
そうして唸る私の様子に、今回のメンバーの中では唯一、あの事件の当事者でもあったミラちゃんが怪訝そうな様子を見せるけど……私の述べた条件に当てはまる人物が一人、あの時の同行者に存在したことを思い出したらしい彼女が、「ならまぁ、あり得る話ではあるかのぅ」などと頷き始めたのである。
……さて、それでは誰が魔列車などの情報を漏洩した……もとい、
『あー?……魔列車の話ぃ?』
「そうそう。誰かに聞かれたりとかした?特にこう……
『あー……そういや、去年の夏頃だったか?若ぇ姉ちゃんっぽい声色の電話が、突然うちに掛かってきた覚えがあるような……?』
「なるほど?……その電話の内容って覚えてる?」
『確か……心霊現象の話を集めてるルポライター……みたいな感じの自己紹介だったか?……んで、あの列車って心霊現象付きだったろ?だからまぁ、心当たりはあるなぁ、って思わず呟いちまって……』
「向こうがそこに食い付いてきたから話した、みたいな?」
『まぁ、んな感じ。お話しして頂ければお礼の方も弾みますので……みたいな話になったから、どうせ本筋までは話せねぇし……みたいな感じで、ちょっと』
「……んー、思ってたのとはちょっと違う感じ……?」
電話機越しに声を発しているのは、その喋り口調からわかる通り……皆さんご存知坂田銀時こと銀ちゃん。
そう、あの時のことを話してしまいそうな人物というのは、様々な仕事を頼まれればこなしてみせる『よろず屋』である彼のことだったのである。
……当初、私は彼がお金やら食べ物やらを貰い、その結果として洗いざらいあの時のことを話してしまったのではないか?……と考えていたのだけれど。
この分だと、流石にそこまで迂闊だったわけではない様子。……まぁでも、そりゃそうか、という気持ちの私である。
だって話を聞いてる限り、相手側は(その実態は不明だけど)電話口の様子を聞いている分には、
そりゃ、完全に部外者相手に細かいところまで話すわけはないわなー、というか。
あと、郷の中の電話に掛けてきてる辺り、正規のルートを──この場合はゆかりんから──回ってきたと判断してしまうのも、無理はないと言えるだろう。
『ああでも、列車の話自体はしたから、調べようと思えば調べられたんじゃねぇか?実際、あの列車にそういう噂が生まれたのって、バレンタインよりも前だっつー話だったろ?』
「あーうん、裏切った妻やら間男やらを巻き込んだ幽霊列車……みたいな話は、あの列車が廃線になった辺りで生まれたものだからね」
だがしかし、あの列車に纏わる怪談話に関しては、私たちがあの列車に乗り込むよりも前──具体的にはクリスマス以降には既に生まれていたものである。
その怪談話がエメと結び付くかどうか?……というところには疑問符が付くが、噂の流行し始めとエメの廃線時期が重なっていることを知れば、自然と両者を結び付けてしまうような思考になる、というのもわからないでもない。
そういう意味で、銀ちゃんが相手の思考の取っ掛かりを作った、ということになってもおかしくはなさそうな空気なのであった。
『え゛。……い、いや、これに関しては俺悪くなくね……?』
「どうだろうねぇ?これからこっちに来る被害の規模云々によっては、銀ちゃんに法外な請求が行くかもだけど……まぁ、その時は覚悟しててね☆」
『えっちょっ待っ!?』
「……切りおったぞこいつ」
いやまぁ、流石に彼に全責任が行くかどうかは、今のところまだわからないけども。
でもまぁ、ちょっと迂闊だったことに間違いはないので、一応釘を刺しておく私なのでしたとさ。……横のミラちゃんが苦い顔してる?気にしない気にしない。
「まぁ、そんなわけで。……実態についてはまだ不明なところがあるけど、情報の取っ掛かりを得たのが銀ちゃんから、って可能性はかなり高い……みたいな感じかなぁ」
「今一断言できないのは?」
「その時どんな感じになったのかわかんないから、かな。……電話で話したって言ってたけど、相手の声が聞こえている以上は催眠とかも掛けられる可能性は普通にあるからね」
「あー……銀時が実際に起きたことを話してない、ということか?」
「記憶自体が間違ってたら、正直どうしようもないしね」
まぁ、その線は薄いとは思うのだけれど。
確かに、世の中には声のみを使って相手を催眠に掛ける、という能力を持つ者もいる。*1
だが、得てしてそういう能力というのは、必要な再現度が高いという共通点がある。
……そう考えて見ると、ここで出てくるにはちょっと必要性が薄いかなー、という気がしてくるのだ。そこまで強力な能力なら、もっと秘しておきたいというか、もうちょっと重要な場面で使いたいというか。
正直この場面で使うには宝の持ち腐れ感が凄いので、可能性としては存在するもののほぼ当たらないもの、と思っておく方が正解だと思われるのだった。
なのでまぁ、彼に幽霊列車の話を聞いて、そういうものが発生する下地になりそうな事件が実際に起こっていた……と繋げる方が自然だ、という話になるわけなのである。
「……ん?でもそれだと、結局傑にたどり着かなくなーい?だってほら、二つの話を紐付けられても、そこに居た当事者の情報に関しては、なーんにもないわけだし」
「そこに関しては、現場にたどり着けさえすればよかったんだと思いますよ?──過去再現、なんて便利なものもありますし」
「……あー」
そこに待ったを掛けるのが
二つの話を結び付けられるのはわかったが、そこから当事者にたどり着くには色々と情報が足りていない……という疑念は、しかし相手側が一つの能力を持ち合わせていれば、容易く越えられるものとなる。
それが、過去視などに代表される『過去再現』系の技能である。*2
「おかしいとは思ってたんだよね。この列車に乗った時、ふと感じた違和感。……ごく小さいものだったから、特に気にもしてなかったけど……
「……むむ?」
再現、と聞かされた時、貴方はどういうものを思い浮かべるだろうか?……普通なら、内装やら家具などの配置が元と同じもの、という風に思い浮かべるだろう。
間違っても、床や壁・調度品に付いた細かな傷まで再現してある、などという風には思わないはずだ。
それもそのはず、その辺りは別に拘らなくてもよい部分である。……いやまぁ、もう少し小さいもの……それこそ壺とかの調度品程度ならば、『再現』と言われてその域を期待するのはわかるのだが。
これがこと列車や家のような、大きなモノとなると──内装の再現が精々だろう、という思考になってしまう。
それは、そこまで再現する必要性と、掛かる労力が多すぎるがゆえのもの。端的に言ってしまえばほぼ
「それが、この列車においては再現されている。……一応見本となる魔列車があるとしても、その傷まで再現する必要性はないでしょう。だから恐らく、相手方は過去再現系の技能を持っていて、ついついいつもの癖で細かいところまで再現したんじゃないか?……って話になるんだよ」
つまり、これらの再現は
ゆえに、その人物が事件の現場にたどり着けさえすれば、そこで起こっていたこと・関わっていた人間を知ることは、十分可能なことだということになるのである。
「……ということは、そやつが今回の事件の犯人……?」
「いやまぁ、それは早計ってやつなんだけどね?単にこの列車を再現するために呼ばれただけの人、って可能性もあるし」
「あらー?」
なお、その人物が犯人だと限らないのは、さーちゃん達のアバターが『逆憑依』の制約を越えている──すなわち運営、ないしそれに近い権限を有する者だろうから、という事実が端的に示していたりするのだった。
……うん、もうちょっとだけ推理は続くんじゃ、これがな。