なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まぁ確かに、私たちはデータの提供が主な仕事でした。……確認作業に呼ばれることもありましたが、基本的には部外者でしたね」
「一応、簡単な調度品製作とかは頼まれたよー?──まぁ、その時使わされたプログラムが変じゃなかったか、と言われるとちょっと返答に困るんだけど」
二人の仕事は主に魔列車という元データの提供であり、それ以上のことについてはちょっとした調度品の製作に留まる──。
そんな感じのことを聞かされた私は、その時現場指揮をしていた人物とか居なかったのか、と質問を返したのだけれど。
「他にも並行して進めているプロジェクトがあるとかで、あくまでも動画越しに会話しただけだったんですよね」
「それにしたって向こうは真っ暗……サウンドオンリー?みたいな感じだったから、人相とかはとてもとても」
「なるほど、エヴァスタイル……」*1
「……いや、完結したの最近じゃし伝わりはすると思うが、なんかこう別の例え方はなかったのかのぅ……?」
二人に指示を与えてきた人物は、あくまで画面越し──自身の姿を見せずにそれを行っていたため、それが誰なのかはわからないとのことなのであった。
……一応、声が加工されたりはしていなかったらしく、そこから恐らく女性だろう、みたいなことはわかったらしいのだが……。
「今の私達みたいに、アバターによって姿が変わっていたら……」
「声もあてにならない、か。……というか、そこを考慮すると、仮に姿が見えてたとしてもまっったく参考にならない、ってことになるよね」
「確かに……」
二人の声を聞いて、私たちが違和感を覚えなかったように。
このゲーム内で運営製アバターを利用している場合、そこから発せられる声というのは
……つまり、さーちゃんは夏油君の声ではないし、すーちゃんも五条さんの声ではないのである。
いやまぁ、見た目女の子なのにも関わらず、そこから男の声がしたら中身が外見と別……ってのはすぐにバレてしまうので、そりゃそうだとしか言えないわけなんだけども。
でも、現状相手側が運営・ないしそれに擬態できるレベルのプログラマーなどであると仮定すると、相手の人物像の手懸かりが欠片ほども得られていない、という話になってしまうわけでして。
……要するに、真相に迫ったように見えて、実質振り出しに戻ってしまったのである。
「……うーん。とりあえず、首謀者はこの列車を作った人、っていうのはほぼ確定なんだよね?」
「まぁ、現状一番怪しいしね。……怪しいだけで、なにをしたいのかはまっったくわかんないんだけど」
「じゃあ、やっぱり終着駅までこの列車に乗り続ける、くらいしかないんじゃないかな?対応が後手に回っちゃうのは、もういつものことだって諦めることにして」
「むぅ、それくらいしかない、かのぅ」
そうして唸る私たちだったが、アスナさんがみんなを代表して声をあげる。
確かに、私たちの事件への対処って『それが起きてから』の後手対応が基本。……言い換えるといつもと変わらないということなので、一々悩むのもどうなの?と言われると納得せざるを得ないところがあるというか。
……なにかが起きる、という確信があるのになにもできないというのはなんともむず痒いが、辿れるもの全部辿ってこれなのだから諦めも肝心、ということか。
「……まぁ、仕方ないか。とりあえず、銀ちゃんにもうちょっと詳しく話を聞くくらいはしてくるけど、それ以外は素直に列車に同乗する、ってことでいいかな?」
「ま、できることやってこれなんだから、仕方ないよな。……とりあえず、注意しておくべきことの再確認くらいはしておくか?」
はぁ、とため息を吐きながら、これからの予定を話すために意識を切り替える私。
それに同調してくるキリトちゃんに頷き返しながら、話題は流れて行くのだった……。
「はぁ、私が
「そういえこと。……だからまぁ、現状で調べられる最後の部分。銀ちゃんに電話してきたのが誰なのかをゆかりん知ってないかなー、って聞きに来たってわけ」
「ふむ、なるほどなるほど」
さて、手詰まり感を覚えつつ、とりあえず列車には乗っておこう……と結論を出した日の次の日。
お休みが終了し、再び平常営業に戻ったゆかりんのもとを訪ねた私は、そこで彼女に噂の人物──銀ちゃんに連絡してきた謎のルポライターとやらの正体について、一つ問いかけを行っていたのだった。
このなりきり郷は、ここの人間にしか解決できない事件というものが発生した時、それを請け負う仕事も行っている。
そしてその時依頼自体を受け、それを適切な相手に振り分けるのはゆかりんの仕事なのだ。
なので、件の電話に関しても、彼女を介して仕事が振り分けられているはずなのだけれど……。
「……んー、正直覚えがないのよねー」
「覚えがない、とな?」
「ああいえ、正確には覚えがないんじゃなくて
「……なるほど?」
どうにもゆかりんには、そんな電話を銀ちゃんに回した覚えがないとのこと。
これは、『心霊現象』という事象が大小真偽、それらを問わず世間にありふれているからこその問題なようで。
例えば、家でポルターガイストが起こった、という話があったとする。
これは人や生き物などの実体を持った存在
この言葉、素直に解釈するなら幽霊とか妖怪とか、こちら側に認識できない何者かということになるのだが……これ、実は音とか温度とかもその区分に含まれてしまうのである。
つまり、人の目で直接見れないもの。
それが原因でモノが動いているという場合でも、
温度差がある場所では風が吹く、というのは常識だが……それを知らない人には、何故か近くにあるものが独りでに動く場所、ということになってしまう。
……まぁ、流石にこの例はちょっと人を馬鹿にしている感じがあるが……しかし、冷静に正確にその事象が起きる理由を分析した時に、実は
例えばストーブの自然発火。周囲を違法な無線を使っているトラックが通り、
例えば橋の崩落。その上に居た人々の歩き方が
けれど、それらは『それが起きた理由』がわからない人に取っては、とても不思議なことでしかない。
結果、人の『未知を恐れる』性質により、幽霊だの妖怪だのの仕業として恐れられてしまう……というのは、遥か昔から繰り返されてきていること。
つまり、今でもそういう誤認通報めいたものは多いのだ。
「だから、お偉いさんの方で『明らかに違うもの』に関しては弾いて貰ってるのよね。……で、『心霊現象のルポライター』もまぁ、性質は違うけど弾かれる側のやつなのよ」
「……あー、基本ゴシップだもんね、そういうの」
で、その流れで『そういったものを追い掛けている人』、すなわちルポライターみたいな人も、基本的には話をお断りさせて貰う側の人に区分されるのだとか。
何故かと言えば、彼らは飯の種としてそれを探している、ということが多いから。……酷い言い方をすると『しつこい』のだ。
なりきり郷の性質上、心霊現象のみならず不可思議な現象との関わりはとても多い。
つまり、ここの存在を知っていれば記事のネタには困らない、ということでもある。
……下手すると年がら年中ずっと電話対応に悩まされる羽目になるので、最初からそういう人はお断りさせて貰っている、というわけなのだ。
「だから、たまーにどこからか聞き付けて電話してくる熱心な人もいるけど……そういう人には電話越しにちょちょいっと認識を弄らせて貰って、二度とうちに電話を掛けてこないようにしてるのよね」
「さらっと凄いこと言ってる件」
「別にうち、世界に混乱を撒き散らしたいわけではありませんもの。そういう火種になりそうなものは、早々に処理しておくのが筋だと思いませんこと?」
「コワ~……」
怖いってなによ、と不満げな表情を見せるゆかりんにごめんごめんと謝罪しつつ、改めて今の話を考察する私。
つまるところ、一部のまともな人を除けば、ルポライターもまたパパラッチ一歩手前なことが多い。
自分の足で調べて記事を書く、という行為そのものは問題ないが、それで金や講読者を稼ごうとすると、どうにも違法すれすれ、ないし違法な調査に手を付けてしまう人というのは少なくない。
……要するに、関わることに百害あって一利なし、みたいなパターンが多すぎるのだ。なので、基本的一律でお断り、という対処になってしまうと。
ゆえに、ゆかりんは銀ちゃんが言っていたような話を
基本的に受けるはずのない依頼なのだから、それが誰かの元にたどり着いている時点でおかしいのだ、と。
……そうなると、銀ちゃんが嘘を付いているのか?……という話になってしまうのだが、それは考え辛い。何故かと言えば、そんなことする意味が全くないからである。
いやだって、ねぇ?それを偽って、なにか益になることある?みたいな。
これはゆかりん側にも言えること。
これ以降件の人物がことあるごとに連絡してくる可能性が生まれた、ということを思えば隠し通す利点がなさすぎるのである。
「……つまり、これは電話をしてきた方が特殊だった、ってこと……?」
「うーん……一応、連絡したい相手の電話番号を知ってれば、直接連絡できるけど……」
でも、郷内の電話番号って外とは法則が違うし基本知る手段もないから、まず掛けられないと思うわよ?……と溢すゆかりん。
それに私は、
「……
「え?……あーうん、ここの電話番号って十四桁だから、当てずっぽうだとまず当てられないとは思うけど……」