なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……ってことは、相手は直接銀ちゃんに連絡してきたってこと……?」
「いやまぁ、そりゃできなくはないでしょうけど……実質的に無理じゃない?ヒントとか一切ないのよ?」
ポツリと漏らした私の言葉に、懐疑的な様子を見せるゆかりん。
携帯電話番号ならばいざ知らず、相手方が連絡した先は銀ちゃんのところの固定電話。
……本来固定電話は五~八桁、市外局番を入れても十桁、国際電話想定の場合は先頭の零が『+』と国番号に置き換わるので総計十一桁に先頭が『+』、という形になっている。*1
対し、なりきり郷内の固定電話は特殊な仕様になっており、
……つまりこれがどういうことかというと。
「外から掛けると市外局番まで加算されるから最大十八桁、海外から掛けようとするとさらに国番号やらも加算されるから、驚異の二十桁よ、二十桁!」
「数字の組み合わせとしては、単純に考えると十四桁なら10^14通り、他は10^18通りと10^20通りだねぇ」
まぁ、正確にはもう少し少なくなるとは思うのだけれど。
実際、『
とはいえ、単純な総当たりで考えると、全く未知の巨大数を当てずっぽうで正解させる、というのがどれほど無茶なことかというのはすぐに理解できるはず。
例え機械に解析を任せたとしても、それが莫大な時間を要する作業になるのは目に見えているのだ。
そういう意味で、ゆかりんはそんなことできるわけない、と声をあげたわけなのだけれど……。
「相手側は多分過去視技能持ち、もしくはそれに類似したことができる仲間がいる、って思うわけなんだけど……」
「……?まぁ、さっきの話でそんなこと言ってたわね?」
「じゃあ、
「……あーなるほど、天文学的な数字を解き明かしたんじゃなくて、最初から一つの答えを決め打ちしてきたってこと?」
「そういうこと」
私たちが『逆憑依』──創作の世界の人間達が
そう、ある程度の制約こそあれど、
ゆえに、なりきり郷に居る人達よりも高性能・高精度の未来視を行える人物が存在する、という可能性は決して零ではない。
ならば、そんな人物が相手側に存在してこちらのことを知り、その結果必要な情報・労力を確保するために連絡してきたとしても、そうおかしい話だとは言えないだろう。
「そもそもの話、夏油君のところにも差出人不明のメールが届いてるわけだしね」
「……あー、メールアドレスとかだとさらに、当てずっぽうで特定人物にたどり着くのは無理があるわよねぇ」
この論理の補強となるのが、夏油君の元に届いた差出人不明のメール。
これは電子メールであったわけなのだが、アドレスに課せられた命名規則というのは、電話番号のそれよりも遥かに複雑怪奇である。
その限界文字数は、アットマークを含めて二百五十五文字。……実際には自由に設定できるのは六十四文字まで、ということになるらしいが……それでも電話番号のそれとは比べ物にならないパターン数がある、というのは容易に窺い知れる。*3
なにせ、アドレスに使える文字というのは一部の記号と英数字。
雑に数えて四十種となり、それが桁の分だけ掛け合わされて行くとなれば……最終的には非常に頭の痛くなる巨大数になってしまうことだろう。
そんなものを総当たり方式で解読しようとすれば、それこそ天文学的な時間を必要とするはずだ。
前述の電話番号検索の件に掛かる労力も念頭におけば、なにかしらの技能で予めわかっていたのだろう、と解釈する方がよっぽど自然となるわけである。
……まぁ、一つだけ?
総当たり方式でなおかつ、他の方法よりも早く答えにたどり着けるものがあったりするのだけど……
ともかく、必要とされる労力が、完全な当てずっぽうだとすると大きすぎるのは事実。
なので、相手側がそれを省略する術を持っている、ということは確実的になるのであった。
「……まぁ、それがわかったからと言って、別になにかできることがあるのかと言われるとノーなんだけどね……」
「寧ろこっちより先手を打てる要素が多いってことになるから、正直後手に回るしかないってことくらいしかわからなくない?」
「うーん地獄」
同時に、これから先の対処において、どう足掻いても後手を踏み続けるしかなくなってしまったとも言えるため、正直やる気がガリガリ削れて来ていたりするのだけれど……まぁ、仕方ないね。
そんなことを渋い顔で考えながら、ジェレミアさんの淹れてくれた紅茶を飲み干す私なのでありましたとさ。
「……面倒臭さが跳ね上がっておらぬか?」
「はっはっはっ。まぁ最初から向こうが一枚上手、ってのは変わってないから!もう開き直るしかないねマジで!」
「ええい、自棄っぱちになるでないわっ!!」
で、場所は再び列車の中。
ゆかりんとの会話の内容をメンバー達と共有した私は、正直成り行きに任せるしかねーなこれ!……と大笑いを浮かべていたのだった。自棄になって笑ってるだけだとも言う。
いやだって、ねぇ?
少なくとも相手方には五条さんや夏油君に、その姿と性質をごまかせるレベルの──すなわち運営が用意したものと同程度のアバターを用意できる人員が存在して。
その上、なりきり郷の先見達より遥かに程度の高い予知能力者まで居るかも?……となれば、もうこっちができることなんて『予知がなんぼのもんじゃーい』って力業で粉砕するくらいしかないというか。
それにしたって、私たちの中でネットゲームに
……ハクさんは微妙だが、他の面々は『逆憑依』の性質上フルダイブ状態になっているだけで、厳密にはネット環境に対応できているわけではないのである。
そこを踏まえると、相手側の行動にちゃんと対応できるのは、その実先の四人くらいしかいないのだ。……相手のやることの規模によっては、進化したアグモン君やスケィスを呼んだハセヲ君の二人にしか対応できない、なんてこともあり得るわけで。
「あーうん、今の私はアンダーワールド仕様ではないしね」
「俺も、キリトではあるけどちょっと違う方向に行っちゃってるからなぁ」
アスナさんとキリトちゃんの言う通り、彼女達は確かに原作はネットゲームを主題にしたものだけれど……あれこれと別の性質が混ざってしまっているうえ、そもそものキャラの土台が作品初期のもの──言い換えればネット世界で絶大な力を発揮できるようになった姿がベースになっていない。
精々ネトゲのトッププレイヤー程度のレベルとなっている彼女達は、明らかに無法なことができるアグモン君やハセヲ君と比べると、ちょっと戦力としての評価が落ちてしまっているのだ。
なので、相手のすることが無法──いわゆるチートの類いになってしまうと、途端に彼女達も他の『逆憑依』の面々と同程度の扱いになってしまうわけなのである。
……え?ハクさんとお前はどうしたって?
うーん、【顕象】であるハクさんは『逆憑依』に比べると制約面では薄いけど……。
「いや、下手に全開にすると我が行き着く先ネットハザードとかであろ?嫌としか言えぬが?」
「ですよねー」
なにが悲しゅうて、再び負の念の御柱とならねばならぬのか……とは彼女の言。
ハクさんは元々白面の者。その性質がネット世界でどこまで通用するかはわかったものではないが……仮に原作のそれに近付いてしまうのであれば、その時現れるのはビーストの類いであろう。
そりゃまぁ、できれば遠慮したいというのはわからないでもないというか。実際、ネット世界だと現実よりも力が出しやすいみたいだから、危ないのは目に見えてるし。
で、私の方なんだけど……一応、『
「この魔法の原理って、わりとヒュージスケール*4みたいなものじゃん?……こことの相性が良すぎて、相手をプロテアにしちゃいそうな感じがするんだよねー……」
「あー、そっちもある意味ビースト案件、ってことか」
どうにもやりすぎる予感しかしないので、封印がベストかなーという気分になっている私なのでしたとさ。悲しみ。