なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
悩んだ結果、どっちみちこっちにできることはほとんどない、ということで【別けるもの】を使うことを決めた私。
さーちゃんすーちゃんには悪いが、列車が止まるまでそっちで頑張って貰おう。……え?他の面々?……ガンバ!
なんか『鬼ー!悪魔ー!!ちひろー!!!』とかなんとか喚いている声が聞こえる気がするけどスルーだスルー。……あといい加減緑の事務員さんは解放してもろて。
ともかく、次元遮断を行える【別けるもの】の効果により、私たちは一時の安息を
「……セレスティアルスター?」
「唐突にどうした?グレーな格ゲーのオリジナル技か?」
「……いや、その返しもどうなん?」*1
安息を
うん、そういう方向への扉ってのは、わりとどこにでも転がってるもんだよね恐ろしいよね。……なんの話だ?
まぁともかく。
そんな変なことを口走った私に、反応したのはモモンガさんだったわけだけど。……こっちもこっちでなんか変なこと口走ってるな?そもそもその辺りの演出が流行ったのって結構前では?
……お互いに不幸にしかならなさそうな話題にしかならなかったので、とりあえず場を流して。
「みんなどんな感じ?精神に異常を感じたりはしない?」
「お主らのさっきのやり取りの方が大概アレじゃと感じられるくらいには、特に問題はないかのぅ」
「我も同じく。……いやまぁ、なんか変な断絶感というか切断感というか、そういうふわふわとした感じにはなっておるのだが」
「どうしたのハク?なんか変だぞ?」
「あー……【顕象】相手だとそうなるのね。ごめんね、次回からは気を付ける様にするよ」
「……いや待て、この感覚の理由を知っておるのかお主?」
改めて、結界内に残っている面々に、現在の状態を確かめる私。
一応、内部に入ってくる一種の怪電波は遮断したため、先ほどまでの蓄積はその内抜けていくとは思うのだけれど、次元跳躍効果があったら洒落にならないのでその辺りの確認も兼ねて、だ。
……まぁ、見る限りその辺りの不調を抱えたままの人は居なさそうなのだが、唯一ハクさんだけが、先ほどとは別種の違和感を感じているようだった。
で、その理由になんとなくだが心当たりがあった私は、先んじて謝罪を述べておくことに。……無論、彼女からはその辺りの説明を求められたのだけれど……。
「ええと、【顕象】の本質的な話って知ってるよね?」
「本質?……ええと」
「本来の【顕象】は、周囲に集まった『自身の性質と合致する気質を吸引し続ける』ってやつなんだけど。……これ、ハクさんみたいな理知的なタイプでも、一応やってるらしいんだよね」
「……ふむ?」
その理由と言うのが、本来の【顕象】の性質にあった。
元々【顕象】というのは、言い方は悪いが『逆憑依』のなり損ない、みたいなものである。
その中身に『この世界の人』という核を持たず・ないし持てず、そうして空いた
無論、なんでもかんでも無差別に吸い込み続けるわけではなく、その時外皮として形成されたもの──即ちキャラの虚像に合わせたモノを吸い寄せ続けるもの、というのが本来の【顕象】の性質である。
そのタイプの【顕象】は核が出来上がっておらず、外皮の持つ性質をなぞるように動くが……周囲の気質を吸い込み続けるため、際限なくその存在が膨れ上がる、という危険性を孕む。
そのため、基本的には【顕象】というのは討伐対象になる……というか、互助会の方ではそういうタイプのモノを明確に【
以前から何度か言っているように、こちらと明確に会話を交わせるタイプの【顕象】というのは、そうして無差別に気質を吸い込むモノとは別物扱いされているのだ。
彼ら彼女らの場合、なんらかの要因で空いた
そのため、彼らは周囲を無闇矢鱈に攻撃しようとする必要がなく、安定した存在としてこの世界で行動できているわけである。
……穴云々の話から、なんとなく『BLEACH』の
……まぁともかく、理性のない【顕象】が世界に空いた穴のようなもの、ということになるのは覚えておくといいだろう。
で、それを踏まえての話なのだけれど。
どうやら安定している【顕象】達も、ほんの少しながら周囲の気質を集めている、というのは変わらないらしい。
それが災害を引き起こすような規模ではなく、日々自然に失われる程度の気質を集めているだけなので、問題にならないだけで。
……言い方を変えると、ハクさんみたいな安定したタイプは、日々微々たるモノながら経験値を別途加算されている、みたいな感じというか。
「で、これって
「……ん、いや待て。なんだかとても嫌な予感がするんだけど?」
「あ、『逆憑依』組には関係ないから安心して。流石にこれで
「待てぃ!?今ので我にもなんとなく理解できたぞ!?貴様、この結界
「いやー、ははは。……『逆憑依』くらいの繋がりだと大丈夫なんだけど……【顕象】だとちょっと引っ掛かるみたいだねぇ」
「笑い事かぁ!?」
「……?ハクはなにを叫んでるんだぁ?」
「危うく殺されかけた、と言っておるようなものかのぅ」
「わぁ、そりゃ怒るに決まってるよ」
次元遮断と言っても、どうしても遮れないモノもある。
それが、いわゆる肉体と精神・もしくは肉体と魂との繋がり、というわけなのだが。実際に肉の体のある『逆憑依』とは違い、【顕象】のそれは仮想の肉体とでも言うべきモノ。……つまりは
なので、本来次元遮断では影響を受けないはずの肉体との精神との繋がりが乱され、結果として『なんかふわふわする』という異変を訴えることとなった、と。……微細な経験値でありつつ、自身の存在を保つための最低限の吸引行為であるため、そこが滞ると酸欠に近いことになる、みたいな感じだろうか?
まぁそんなわけなので、ハクさんからすれば知らぬ間に窒息させられかけてた、みたいなことになるわけで。
……こうして私が彼女にされるがままになっているのは、ちょっとした罪滅ぼし的な意味もなくはないのでしたとさ。……うん、マジでごめんね!
そんなわけで、一波乱ありつつも天岩戸*3的対処を行うこととなった私たち。
ハクさんに関しては今さら結界の解除もできないので、明らかに相手が干渉できないようなルート──具体的には二十六次元より上の次元──を迂回させて繋ぐ、という変則的な対処を行うことで解決し。*4
そうして、列車が終点に到着するまでを待ち続けていたのだけれど。
「……そろそろ、かな?」
車窓から見える景色の流れる速度が徐々に落ち始めたことに、そろそろ目的地だろうかと確認しあう私たちであった。
結界内の面々は、最初酷い目にあったハクさんと
やはり例のアレは次元跳躍まではやっておらず、かつ蓄積した分のものも時間経過で抜けていくもの、ということなのだろう。
それに安堵をしつつ、改めて
彼女は先ほどからずっと顔を両手で覆い、「死にたい……消えたい……」と溢し続けている。
……どうやらさっきのアレ、人の理性の枷を外すモノであって、洗脳的なモノとは微妙に違うらしい。雑に言うと『やってたことの記憶がある』、というべきか。
「……これ、人によっては本当に死にかねないのでは?」
「ううむ、その危険性はなくもないかも……」
「よかった……わしそういうのと縁がなくてよかった……!!」
「そこでそういう反応をするのはどうかと思うがな……」
なので、彼女はさっきモモンガさんに襲い掛かったことを覚えており、それについて滅茶苦茶後悔している、ということになるようだ。
……まぁ、アスナさ……げふんげふん。他の乗客とかと違って
……まぁともかく。
これに関しては黒幕が悪い、と責任転嫁できるものなので、その方向で彼女をモモンガさんに慰めて貰うとして。
これから私たちがすべきこと、というのを改めて会議する私たちであった。
「で、実際終点に誰が待ってると思う?」
「うーむ、性質的にはビーストとかの関与を疑うが……」
「ビーストⅢ/L、即ちカーマちゃんってこと?……いやでも、そこってここの世界だと既に埋まってるよ?」
その中で、首謀者として候補に上がったのが愛を司る獣、即ちカーマだったのだが。……うーん、彼女が原作で当てはめられていたナンバーは既に埋まっているというか、そのあとに残ったものがこの列車に同乗してるしなー、というか。
そう、この世界の偽獣・ビーストⅢi/Lの遺児であるクモコさんがこっちに居る以上、それの焼き直しになるようなカーマちゃんが現れるのか?……みたいな疑問があるというか。
そもそも獣冠ないやん、どうすんの?……みたいな感じというか。
とはいえ、この列車内に今蔓延している空気は、どうにも程度が違う感じがある。
ゲーム内で多少減っているとはいえ、モモンガさんの耐性もちょっと抜いてきそうとなれば、それをできるモノなど限られるでしょう、というか。
そうしてみんなで唸ってみるも、特に犯人像には思い至らず。
そのまま、外の景色はどんどんと遅くなっていく。……もう終点、ということになるらしい。
「……仕方ない、こうなったら当たって砕けろだ!」
「行き当たりばったりは常日頃、じゃしのぅ」
最終的に、もう全然わからないのでこのまま行こうぜ!ということになった私たち。
結界を解き、止まった列車から飛び降りた私たちが目にしたのは。
「───ンソソソン。これはこれは皆様方、無事たどり着けたようでなによりで」
「…………は?」
──こちらに愉しげな笑みを向ける、怪しげなお坊なのであった。