なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「───ンンソソンン。拙僧の列車は如何でしたかな?美しい旅でしたかな?夢のような旅でしたかな?そうであれば、それに勝る喜びはございませぬ」*1
「……色々ツッコミたいところはたくさんあるけど、なんでここに居るのかな、君は」
「……ンン、ンンンンン!なんでとは御無体な。拙僧がここに現れる
終着駅で私たちを迎えた、神妙不可侵にて、胡散臭いお坊。*2
特に捻ることもなく、そこにいたのはキャスター・リンボこと蘆屋道満だったわけなのだが。……その語り口からして彼だと確信できるにも関わらず、私たちは微妙な違和感を覚えていた。
──そう、確かに口調はリンボのそれなのだ。
それらの特徴は間違いなく、彼がリンボであると示している。……にも関わらず、私たちがそれを認めきれていないのは──。
「──貴様、なにを
「────ンンンン、食ったとは人聞きの悪い。そも、それを貴殿が問い掛けるのは些か筋違い、というものではございませぬかな?ええ、異界の魔導王・死を手繰る者・矮小なる臆病者・人形の山の大将──鈴木悟殿?」
「……今の私はモモンガだ。それ以上でもそれ以下でもない……だが、今のやり取りで確信したぞ」
人の姿ながら、周囲を威圧するような殺気を漏らすモモンガさん。しかし目の前の
一片足りとも堪えた様子を見せぬその相手は、代わりにこちらを煽るような言葉を投げ掛けてくる。
……もし、ここに居るのが以前の互助会に溢れていた、自身の今を見誤った者であれば、そのまま激昂しかねない言葉であったが。
自身の現状を正しく理解しているモモンガさんには、その類いの煽りは効かず。代わりに、相手の存在に対し、ある種の確信を抱いた言葉を吐き出した。
──そう、この状況にて、相手のことをきちんと理解できるのは、恐らくモモンガさんだけ。なにせ、他の人はその記憶を
ゆえに、モモンガさんは語る。目の前の相手が、一体何者なのかを。
「
「──ンンンンン、ンンンンンンンンン!然り!然り然り然り!見事、御明察にて!!とはいえ些か情報が不足している様子。では改めまして、ご説明をば!」
胡散臭いお坊の姿をした彼──キョウスケ・ナンブは、その端正な顔を愉快げに歪め、然り然りと声を挙げる。
「──人類愛無き者に、人類悪の資格なし。ンンン、まさに至言、まさに金言。拙僧、誠に感服致しますれば!……愛とはなんぞ、と疑念を抱くもまた道理。然りとて拙僧の中にはそういうものは──
そうして笑うお坊は、「こうして、手に入れてみた次第にて」とこちらを見る。
そこには愛を知る者・愛を求めた者の魂が含まれており──。
「では改めまして自己紹介をば!拙僧は正しく貴殿らの語る通り、【
高らかに高らかに、自身の誕生を言祝ぐように、朗々と語る男は。
「長い」
「ンンンンンンンンンンーっ!!?」
「「「「「えーっ!!?」」」」」
──突然現れた少女にドロップキックをされ、綺麗に吹っ飛ばれて行くのであった。……シリアスが死んだ!?
「貴方はいっつも話が長いのよ。もう少し要点を纏めて話す癖を付けたらどうかしら?」
「ンンソソン、これは手厳しい。久方ぶりの逢瀬に有りますれば、丁寧に事を積み重ねるのもまた一つの道理かと」
「
「ンソソソソソ、これ以上拙僧の楽しみを奪うのは止めていただきたいものですなぁ」
「じゃ、そこで大人しく見てなさい。それくらいなら許してあげるから」
「──では、そのように」
突然現れた少女は吹っ飛ばされた道満を見下ろしながら、嗜虐的な笑みを浮かべている。
その様子に道満──便宜上そう呼ぶ──は苦笑いを浮かべながら、恭しく彼女の側へと立ち直す。
その姿は、どこか
だが……どうだろう?
この世界にやって来て暫く、自身と同じような存在が跋扈していることを知り、情報収集に努めたモモンガだが、目の前の少女のような存在を、ついぞどこかで見掛けた覚えはない。
いや、正確には
真っ赤なツインテールで勝ち気な少女、などという属性は、それこそ類似例が幾らでも思い付くタイプの存在だろう。
それこそいわゆる石鹸枠──『落第騎士の英雄譚』のヒロイン、ステラ・ヴァーミリオンだとか、『緋弾のアリア』のヒロイン、神崎・H・アリアだとか、そういった類例には事欠かない属性である。
──にも関わらず、それらのどれとも合致しない。いや、正確には似ているところはあれど、まったく同じだとは思えない。
先ほど挙げたキャラクター達も、どことなく似ているとは思えるものの、それがそうである、という確信には至らない。──必ず、どこかに違和感を感じてしまう。
ならばつまり、彼女はそれらを纏めた者、【複合憑依】であると考えるのが自然なのだが……。
「──不愉快ね。不躾に淑女の秘密を探るのは、紳士の取るべき態度ではないと思うのだけれど?」
「──ぐあっ!?」
「モモンガ!?」
そうして思考していたモモンガは、突然眼窩を襲った
それはまさに灼熱の如き熱さで、自身がオーバーロードでなければ痛みに転げ回っていてもおかしくない、と確信させるだけのもの。
だがしかし、近寄って確認したミラの目には、彼になにかが起こっているとは確認できず。
「……まさか、リアルに貫通を?!」
「……?……ああ、なるほど。貴方達だと認識できないのね?安心しなさい、
ゆえに彼女は、目の前の少女の攻撃が、リアルに貫通したのだと認識したのだが。……当の少女は『そうではない』と告げ、かつ気にするほどの事でもない、と続ける。
そんな馬鹿な、だって彼はこれほどまでに魘されているのに……そう思いながら再度モモンガを見たミラは、そこでようやく彼がなにに魘されているのかを認知したのであった。
「……は、
人の体をしたモモンガの、その瞳の奥に見えるもの。──それは、創作などで『魅了されている』ということを示すモノ──ハートマーク。
それが彼の瞳孔に見えたことに驚愕するミラ。……字面こそ滑稽だが、これほど恐ろしいこともあるまい。なにせ彼はオーバーロード。
無論、『逆憑依』となったことで耐性は下がっている、と彼は述べていた。しかし、それでもその耐性を抜くことは容易なことではない。ましてや、
そもそれが熱を帯びる、なんてこともおかしいのだ。
なにからなにまでおかしい少女に、自然と警戒を強めるミラは、そこで他の面々が一切動いていないことに気が付いた。
一体なにをしているのか、そう思いながら仲間を見やれば。
ハクとアグモンの二人は未だ見たことがない程に警戒し、その姿はともすれば怯えているとすら解釈できるようなもので。
そしてもう一人、この場において一番頼りになるはずの相手、キーアはと言えば。
「────は?」
と、困惑の言葉を漏らした。
その声に反応した少女は、
「────ああ、
「……
恍惚とした声音で、その言葉を空気に落とす。
その波紋は周囲に広がり、こちらの意識を溶かすかのように精神を蝕み──、
「──全員撤退!」
「……はっ!?な、なんじゃ今のは……いやそれより、撤退!?撤退と言うたかキーア!?」
「そうだよ撤退!──無理!!少なくともこの状況は無理!!!」
切羽詰まった彼女の声に、消えかけていた精神は正気を取り戻す。
見れば、彼女は珍しく焦ったような表情を浮かべ、周囲の仲間に声を掛けている。
その声が気付けになったのか、ふらふらとしていたメンバーは皆一様に確りとした立ち姿に戻るが……それでも、気を抜けば足がふらついてしまう。
恐らく、目の前の少女がなにかをしているのだろうが……この酩酊のような状態異常の中では思考が定まらず、危機感が徐々に抜けていってしまう。
そんな彼女達の様子を見て、少女は艶やかに笑い。
「逃げる?──そんなこと、許すと思っているのですか、お母さま?」
再び、声の雫を落とすのであった。
STAR FALL
対星戦闘 用意
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