なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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対星戦闘・リザルト

「滅茶苦茶嫌な予感がするッスから、できれば隠れたままでいたかったんッスけど……このままだと全滅!どう考えてもゲームオーバー!流石にそれは寝覚めが悪いってレベルじゃないので、ゆえあって助太刀するッス!!」

「……!ビーストの遺児!」

 

 

 突如空から降ってきたクモコさんは、こちらに気を取られていたユゥイに奇襲を仕掛ける。

 その奇襲は成功──したとは言い辛く、彼女の攻撃はユゥイの腕に止められてしまう。だがしかし……。

 

 

「!拮抗している!?」

「そりゃそうよっ、私ら【星の欠片】は本体性能クソザコだからね!」

「これでクソザコなんスか!?クモコさんわりといっぱいいっぱいなんッスけどぉー!?」

「あれーっ!?」

 

 

 受け止めた側のユゥイの表情は、決して余裕があるようには見えない。……それもそのはず、想定通りであれば彼女は私と同じ【星の欠片】、その性質上本体スペックは一般人にすら押し負けるクソザコのはず。

 ゆえに、クモコさんでも普通に戦える……はずなのだが、思ったより戦力は拮抗している様子。

 思わず私が困惑してしまっても、仕方のない状態なのであった。

 

 

「──なるほど、これがビーストの……遺児とはいえ、その性質は健在、ということですか」

「わー!なんかこう明かさなくてもいいことペラペラ喋ってくるんッスけどこの人!?クモコさんにはその気はないから、そこら辺明言されても困るだけ、なんッスよぉっ!!」

「ちぃっ!」

 

 

 とはいえ、クモコさんが元々ビーストだった……というと語弊はあるが、ビーストから生まれたモノである、ということは間違いない。

 親から受け継いだ形質は例え電脳空間でも健在らしく、彼女は唐突に下半身から蜘蛛の体を生やし、ユゥイへと再度の奇襲を行う。

 人の体からでは想像できない攻撃に、ユゥイは反撃しきれず吹き飛ばされ、そうして彼女の意識が逸れた隙に、

 

 

「とりあえず吹っ飛べ!!」

「ンンソソンン、これは些か不味いことになりましたかな?」

「すまん!助かった!」

 

 

 この場を封鎖していた道満に一撃を与え、空間を逆掌握。

 その勢いのまま、みんなをログアウトさせに掛かり、

 

 

「!キーアさん危ない!」

「んぇ?」

 

 

 その隙を付いて、ユゥイから飛んできた攻撃に、私は反応できず。──だって、それは明らかに私を■すつもりのもので、そんなことを彼女がするとは思えず。

 ゆえに、それを庇うように飛び出してきたクモコさんは、私の代わりにそれを受け止め。

 

 

「──痛み分け、ということにしておきます。またいつか、迎えにあがりますわ、お母さま」

「待っ、」

 

 

 そうしてクモコさんから()()()を引き抜いたユゥイは、そのまま闇に溶けるようにして、そこから消え去ってしまう。

 辺りを見れば、あれだけ騒いでいた道満の姿もいつの間にか消え。

 

 ───私は、()()()()()()()クモコさんを前に、呆然と立ち尽くすことしかできなかったのであった。

 

 

 

 

 

 

「──貴女以外の【星の欠片】、ねぇ」

 

 

 ──全てが終わった三月の頭。

 丁寧に認められた報告書を読みながら、八雲紫は小さくため息を吐いた。

 

 本来、こちらの世界に出てくるはずのないもの、【星の欠片】。

 その性質がかの人物(キーア)の想像した通りのモノであれば、それの顕現はすなわち世界の滅びと同じ。……理由はそれだけではないが、それだけで十分だと言えるのも間違いなく、ゆえに彼女は再度ため息を吐く。

 

 ──報告によれば、件の少女の名前は『ユゥイ』。

 本来は()()()()()()()()()人物であり、また先の創作者・キーアとは親と娘の関係として設定されていた。

 とはいえ、キーア自身が生んだ子ではなく、とある場所で拾った戦災孤児であり、姿形は彼女とは似ても似つかない、とも記されていたわけなのだが。

 

 ……本来の彼女は、巨大な二つの武器を振り回すパワーファイターの類いであり、先の戦闘のような戦い方は一度もしたことがないとのこと。

 だが、だからといってそれが別人であったり、はたまた【継ぎ接ぎ】であったり、とするのは早計とのこと。

 その理由は、彼女の元ネタとなったモノがあり、そちらの戦い方と完璧に同じだったから、だそうで。

 

 そちらも名前は『ユゥイ』であり、こちらは明確に【星の欠片】の一つ。かつ、彼女に設定されていたのは──、

 

 

「──【散三恋歌(EPAS)】。あまねく愛の集合、愛という概念の根幹……ねぇ?」

 

 

 周囲の愛、それそのもの。

 愛することではなく、()()()()()()()()

 かつその頭文字が示すように、性愛(eros)友愛(philia)神の愛(agape)家族愛(storge)の四つの愛、全てに精通するというそれ。

 ……なるほど、魔導王(モモンガ)の耐性を貫通するわけである。

 これはあらゆる愛・その全てに繋がる概念であり、色欲に強くとも家族愛・友愛というものに強く縛られている彼の元義的には、寧ろ素通りしてしかるべきもの。

 というか、これを耐えられるモノは真実いない、と言い換えてもいいかもしれない。

 なにせ神の愛すら含んでいる。この世界に神の愛を受けていないモノはなく、ゆえにそれを拒むことは不可能に近い。

 そも、彼女は【星の欠片】である。──隙間をすり抜ける小さな愛など、どうやって防げばいいというのか。

 

 あとは、対峙した場所も悪かった。

 先の騒動が起きたのは、電脳空間の中。……大抵の存在が本領を発揮できず、かつ発揮できる者達も事前の毒に襲われたような状態で、どうしてまともな戦闘になろうものか。

 ──そういう意味で()()()()()()()()()()()()、と寧ろ胸を張ってもいいくらいの話のはず、なのだが。

 

 

(……まぁ、割り切れたものじゃないわよね)

 

 

 ちらり、と紫は部屋の一角に視線を向ける。

 そこには、今回の報告書を持ってきたキーアが──、

 

 

 

 

 

 

 ──心臓が早鐘を打つ、というのはまさにこういうことを言うのだろう。

 ここは確かに電脳空間である。そこでの死は、どこぞのゲームのように現実のそれを脅かすことはない。

 

 だがしかし、だがしかしである。

 ここで今心臓を穿たれているのは、【顕象】であるクモコさん。──私たちとは繋がり方が違う彼女が、はたして私たちと同じように考えてもよいものだろうか?

 そも、これを行ったのはユゥイである。私と同じ【星の欠片】である。

 その攻撃は、ともすれば憑神(アバター)のそれと同義にまで高めることも可能であり、かつ先ほどなにかを奪っていったのを見れば最低でも意識不明、最悪の場合は──、

 

 

「おい、落ち着け。貴様まで後を追う気か?」

「……はく、さん」

 

 

 呼吸が上手くできない、頭が上手く回らない。

 私のせい/カット/今から相手を追い掛け/カット/とにかく今は避難を/カット/カット/カット/カット。

 涌き出ては消えていく思考は纏まりがなく、視界は今にも黒く沈んでしまいそう。

 そうして震える私に、努めて冷静な声で問い掛けてくるのは、周囲を確認したのちこちらへやって来たハクさん。

 

 ……()()()()■■■さんがどうなったのか、と知らせるかのようなその言葉に、私の思考は一瞬沸騰し──それから瞬時に下降する。

 その権利は私になく、今私がするべきなのは無様な敗北を期した自身への叱責であろう。

 ゆえに、私は改めて、■■■さんの■■を視界に入れる。

 ──どう見ても■■。助からない、助けられないとわかるその姿。表情にはこちらを庇った時の勇敢さと、それから『これは耐えられない』と悟った諦感・困惑・恐怖が入り交じったもので固まっている。

 そこに命の息吹は感じられず、やはり彼女は、

 

 

「──うぷっ」

 

 

 吐き気が奥から込み上げてくる。

 私たち『逆憑依』としての特性が、電脳空間だというのに口の中を満たす酸っぱさを如実に脳へと叩き込んでくる。

 ──お前が間違ったのに、お前が■したようなモノなのに、罪悪感なんてものを感じて逃れようとしていると、こちらを責め立ててくる。

 

 

「──」

 

 

 誰かが傍らで腕をあげ、下ろした気配がする。

 なにをするつもりだったかはわからないが、それは恐らく私への叱責か、はたまた……「──死ぬかと思ったッス!!!?」……はい?

 

 突然の大声に、思わずきょとんとした顔で周囲を見渡す私。

 しかし、周囲に私たち以外の人影はない。……いやしかし、でも今の声は。

 

 思わず困惑する私に、再度その声は告げる。

 

 

「うわっ、みんな凄い顔ッス。やー、今回は流石のクモコさんも死ぬかと思ったッスよー」

「クモコ、さん?」

 

 

 私は、その声を聞いて──、

 

 

 

 

 

 

(……まぁ、割り切れたものじゃないわよね)

 

 

 ちらり、と紫は部屋の一角に視線を向ける。

 そこには、今回の報告書を持ってきたキーアが──、

 

 

「──だってよクモコさん、上半身が!!」

「安いもんッス、クモコさんの上半身くらい……」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()クモコさんに、沈痛な眼差しを向けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、全部引き抜かれるのは阻止した、ということですか」

 

 

 どこか遠い場所。

 テーブルの上で脈動する丸いなにかを見ながら、ユゥイは小さくごちる。

 あの時ビーストの遺児から抜き取ったのは、獣の根幹とでも呼ぶべきモノだったが──その実、件の遺児は自身の本質を別所に逃がしていた。

 それは、彼女があの蜘蛛の姿をしていたからこそ可能だったこと。進化・クラスチェンジ・卵生回帰──呼び方はまぁ、なんでもいい。

 ともかく、彼女はこちらが求めていたものを囮にして、まんまと逃げ仰せていたのだ。

 

 

「──流石はビーストの遺児、抜け目がないということですね」

「ンンンンン、どうされますかな?再度襲撃に向かわれるなど?」

「……いいえ、こちらとしては()()が手に入っただけで十分です。それ以上は高望みのし過ぎ、ですね」

「……ンンソソン。ではこのまま拠点に?」

「ええ、そのように。──サンプルも入手しましたし、()()()みますか道満?かつて貴方が届かなかったものに」

「──ンンンンン、御冗談を!拙僧は一流を志しておりますれば、()()()()()()()()()()で満足するつもりなぞ、毛頭御座いませぬゆえ……」

「……まぁ、貴方がいいのなら構いませんが。それとその笑い方、私の前では止めるようにと言ったつもりですが?」

「ソソソソソ、そんな殺生な、とでも返しておきましょう」

(……やっぱりイラッとしますね、この胡散臭い陰陽師)

 

 

 

 

 

 

 それらを知って、彼女はただ一つ、こう述べた。

 

 

「──あら、始まってしまうのね」

 

 

 と。

 

 

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