なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・誕生日を祝おう!・1

「──と、言うわけなのです!」

「……いや、いきなりなにを言うとん自分?前後が吹っ飛んどるからなーんもわからへんのやけど?」

 

 

 はてさて、色々あったバレンタインからはや数日。

 今日も今日とて書き入れ時なラットハウスでは、たまたまお昼を食べに来たタマモクロスが、休憩中のマシュに絡まれている姿があったのだった。

 

 タマモからのツッコミにマシュはというと、「では、もう一度最初から説明しますね!」と言いながら、どこからともなくフリップを取り出してくる。

 そんな彼女の姿を見ながら、脳内では「もう一度もなにも、そもそもなんにも説明されてへんのやけどなー」と考えているタマモ。無論口には出さない。だってそんなこと言い出したら、これからの話が余計に長くなるのは目に見えているからね!

 

 ……ともかく、こうなった彼女が止まらないということは、流石のタマモも把握済み。

 ゆえにできうる限り大人しく話を聞くことで、余計な時間の浪費を可能な限り削っていく方向にシフトしたのであった。

 

 

「ではまず、せんぱいの素晴らしさを五百万文字で纏めましたので、これを全七章形式で順に……」

「いや待ちぃな色々と」

 

 

 ──なお、シフトしたからといって相手がそれを汲んでくれるとは限らない、とも付け加えておく。

 

 

 

 

 

 

「……ええとつまり?先日バレンタインを渡した直後であれやけど、キーアの誕生日がすぐ近くにあるからまた別のものを贈りたいから知恵を貸してほしい……っちゅーことで間違いないか?」

「はい、そういうことになりますね。……その、お家の方では基本纏めて渡されていたらしく、一時期チョコレートに恨みまで抱いてたとかなんとか……」

「本来他の人らがプレゼント貰う場面で、それが全部チョコになるっちゅーことやからなー、そら嫌やろね……」

 

 

 あのあと「冗談です、正しくはこちら」と出し直されたフリップにより、現在の状況を確認し直したタマモ。

 そうしてマシュが説明したところによれば、どうやら彼女は自身の先輩であるキーアへの贈り物をどうするか?……ということを悩んでいるのであった。

 

 タマモとしてはキーアの誕生日が今月だということを初めて知ったため、今一ピンと来ていない部分があるが……それはそれとして、バレンタインに程近いので誕生日が一纏めにされることがあった、という彼女のエピソードには素直に「可哀想に」という思いを抱いたり。

 ……ともあれ、基本的に誕生日を単体で祝われたことがない、というのが世間一般的に不幸な部類に入る、ということは間違いあるまい。

 

 

「……不幸だ?」

「上条さん、不幸に反応して出てこないでください」

「あ、いやすまん。……いやでも、誕生日と記念日が混ぜて祝われる悲しみ、というのは上条さんにも共感できますのことよー」

「ほんまかー?」

 

 

 で、不幸というワードを過敏に聞き付けたのが、みんなご存知アンラッキーボーイ・上条当麻。

 彼は店内で給仕を行いつつ、マシュ達の会話に首を突っ込んでくる。……どうやら、貧乏くじ仲間として共感やらなにやらを感じている、ということになるらしい。

 

 

「つい先日は、どうにも御自身の無力さを改めて実感したとかで、どうにもタイミングの合わない日が続いていますから。……どうにか、ちゃんと体を休めて欲しいんです」

「無力感、ねぇ」

「ええと、確か……()()()にボコられたとか?」

「ぶふっ!?むむむ、娘!?あの人経産婦だったんぼごぇっ!?」

「養子!養子ですから!!」

 

 

 とはいえ、自分一人の考えでは煮詰まってしまっていることも確かだったため、上条を邪険にするようなことはせず、そのまま会話を続けるマシュ。

 ……だったのだが、彼女が何故今回特に頭を悩ませているのか、という部分に話が差し掛かった結果、今現在郷内部を駆け巡る噂が話題に上ることに。

 

 ──なりきり郷最高戦力である虚無の魔王を下したのは、その娘……。

 センセーショナルな見出しのそのニュースを、タマモもどこかで耳にしていたようで。思わず溢したその言葉に上条が過剰反応し、結果として彼は大盾に押し潰される羽目になったのであった。

 

 

「……ふ、不幸だ」

 

 

 

 

 

 

「──養子という体の同僚、なぁ?実際それ、本当に同僚やったんか?」

 

 

 なんやあれこれ変なところがあったみたいやけど。……などとタマモは疑問を溢すが、その辺りの仔細を知らないマシュでは答えるに答えられない。

 名乗った名前や容姿などから、キーアは相手が自分の同僚(養子)である、と確信したようだが……同時に、彼女と同じく『オリジナル』である相手が──それも、設定の根幹が世に出ていないキーアの黒歴史みたいなものになっているというのが、はたして本当に相手がその同僚なのか?……ということの判別を難しくしているのも確かなのであった。

 そも、バレンタインの日以来キーアとはあまり顔を合わせられていないマシュである。……確かめるタイミングがない、というのも間違いない話で。

 

 

「んー、確か【星の欠片】ってのは人の観測限界を遥かに下回る世界にあるものを基幹とする、んだったよな?」

「はい、そうなりますね」

「……じゃあ、あれこれ言うだけ無駄だな。周囲には端から確認できないんだから、キーアの証言は間違ってないと断定しても特に問題はないだろ。……っていうか、今回の本題はこれではないだろ、と上条さんはツッコミを入れるわけでだな?」

「……確かに、そうでした。せんぱいが疲れていらっしゃるのはその養子さんのせいですが、すぐにすぐ解決できる話でもないのも確かな話です」

「……ん、っちゅーことは相手の喜ぶプレゼント選び、ってやつに話が戻るんやけど……」

 

 

 ぶっちゃけ、キーアってなに渡したら喜ぶん?

 ──そんな、ある種当たり前の質問に対し、それを発したタマモ以外の二名は、小さく首を傾げたのであった。

 

 

「……おい」

「あっ、いえ、その、違うのです!……ええと、せんぱいは基本手的になんでも喜んでくださるタイプの方ですので……」

「あーダメなやつ、ダメなやつですよそれは。なんでも喜ぶとか、贈る側としては滅茶苦茶困るタイプのやつですよそれは」

「か、上条さん……」

 

 

 タマモの呆れたような一言に、マシュは慌てて首を左右に振るが、傍らの上条は逆に難しい顔でむむむ、と唸っている。

 ──そう。この世の中で『なんでも嬉しい』などという戯言は、即ち『なんでもよくない』のとほぼ同義であるのだ。

 

 贈り物とは、相手の心に残るようにと贈るもの。

 それが()()()()()()()()?……という部分に差はあれど、総じて相手のためにあるのが贈り物、という基本原則は変わらない。

 それが『なんでも喜んでくれる』相手の場合、どうなるのか?……()()()()()()()()()()()()()()、ということになってしまうのだ。

 

 

「全てを愛している、というのはとても耳心地のよい言葉に思えますが。……その実他者との差が全くない、ということでもありますものね。それは相手側から見れば、その愛の大きさが見えないということと同義。……自分から見る分にはマシでも、相手から見たら最低と罵られても仕方ありませんわね」

「そうなんですよ!せんぱいはなんというか……ええと、にぶちんなんです!!」

「にぶちんて」

「なんという語彙の低さ……ええと、すみませんねお客さん。なんか話に巻き込んじゃったみたいで」

「いいえ、構わないわ。私としても興味深い話だったから」

 

 

 なんでも喜ぶということが、どれほど罪深いのか。

 ──そんな当たり前のことを分かりやすく説明してくれたのは、どうやら外からやって来た一般人のお客様であったが。……どうもこの人、わりと話せる人の様子。

 そう悟った一行は黒髪の綺麗な彼女を交え、あれこれと話し合いを進めていくのであった──。

 

 

 

 

 

 

「……?どうしたんッスかキーアさん?なんか凄い顔になってるッスけど」

「…………なんでかしらねー、凄まじく面倒事の気配がするのよねー」

 

 

 同日別所。

 このままではよくないので自己鍛練&削れたクモコさんの経験値稼ぎ直しを兼ね、地下のトレーニング施設にやって来ていた私とクモコさんの二人。

 

 朝からぶっ通しで鍛練をし続けていたため、いい加減休憩しようという話になった私は、懐かしの蜘蛛フォルムのクモコさんと一緒にお茶などを嗜んでいたわけなのだけれど。

 ……なんだろう、背筋にとんでもない悪寒が走ったんだけど?なに?なんか良くないことが起こる前触れだったりする???

 いわゆる虫の知らせ的感覚だが、意外とこれがバカにできないため困る私なのであった。

 まぁ、気にしすぎてもあれなので、この場では流したのだが。

 

 ともあれ、深呼吸して心を落ち着けたのち、改めてクモコさんを観察する私。

 

 

「……調子はどんな感じ?」

「んー、変身機能がほぼ損壊してる感じッスねー。いや、一応あの地味子系響スタイルは大丈夫そうッスけど、逆を言うと今まで伸ばしてたスキルツリーは大抵おじゃんッス」

「わァ……ァ……」

「泣いちゃったッス」

 

 

 試しに尋ねてみた結果は、あそこまで成長したクモコさんからすればまさに壊滅的。……思わず自分の不甲斐なさに涙がでてくるが、クモコさんは気にしないで欲しいッスとけらけら笑う。

 

 

「あのまま伸ばしてたら、多分また()になってたと思うッスから、ある意味取られて清々してるッスよ、寧ろ」

「……そうなん?」

「そうッス。どうにも元を断ちきれぬまま成長するのがそもそもアウト、みたいな感じだったようで……」

「んー、その辺りも相手がキリアだったせい、なのかな?」

 

 

 どうやら、順調に見えた前回の成長も、その実じわじわと良くないものが溢れかけていたようで。……あの時彼女も口走っていたが、『そのつもりはない』というのは()()()()()()()()()()ことの裏返しでもある。

 そう考えると、ユゥイに獣の根幹を奪われた現状は、寧ろよかったのだと言えなくもないわけなのだが……。

 

 

「……いや無理!結果論過ぎて自己正当化とか烏滸がましい!!」

「あー、また始まったッス……」

 

 

 そんなわけあるか、と私の中のキリア(善性)が大暴走!

 もう今すぐ自分の腹をかっ捌いて詫びを入れたくて仕方ないのだが、さっきから同じやり取りを何度もしているため、クモコさんからは「ヤメロー!!」と大層不評なのであった。

 ……うわー!!後生だから死なせてくれー!!

 

 

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