なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「うう……私はナメクジ……いやそれだとナメクジに失礼……」
「ジメジメっぷりは似たようなもんッスねー」
さめざめと泣きつつ、クモコさんからのツッコミを享受する私。
そうや、私はクソゴミなんや、もっと罵ってくれ……的なテンションなのだが、さっきから何度もやっているためクモコさんは大分食傷気味である。
……むぅ、私が意気消沈してるのは、別にネタでもギャグでもないのだが。
ともあれ、伝わらない謝罪ほど無意味なものもないので、ほどほどにして休憩に戻る私である。
「にしても……なんか嫌な予感がする、とか言ってたッスけど、なにを感じ取ったんッスか?」
「え?そこ深掘りしちゃう?……ええと、なんというかこう……『なんでそうなった!?』的な言葉が飛び出てきそうになったというか……」
「なんでそうなった、ッスか。……んー、実は郷の中に道満が現れたとか?」
「あり得ないと流せないような話をするのやめない?」
そうして休んでいる最中、話の肴として彼女が選んだのが、最初の方に私が口走った『予感』についてのこと。
実際わりと当たる方なのが私の勘なので、その辺りが気になったらしい。
でもこう、私的にはあんまり触れるべきじゃないというか、触れると引き寄せられる類いのトラブルの香りがするというかで、正直できれば忘れておきたかったりもしたのだが……まぁ、話すこともないので仕方なく付き合うことに。
……した結果、クモコさんの口から飛び出した説に、思わず眉間に皺を寄せて唸る羽目になった私である。
なにせ道満の話である。
あの男、確かに原作においてはオリチャー発動するRTA走者めいたやられ方をしていたが、その実そういう移り気なところがないと、主人公側の勝ち筋が潰れていた可能性がひしひしとするのだ。
夏の陽気にやられて水着化した伊吹童子が、わりと人類悪に列挙されかねない思想だったことを見るに、あの場面でのルートを急遽変更しなければ、ほとんど自軍の手札がない状況下でビーストと相対する羽目になっていた、というのは容易に想像できる。
つまり、彼の能力そのものは、こちらが侮っている以上に遥かに高いのだ。やらかすから低めに見られるだけなのであって。
ゆえに、いつの間にか彼がここにいる、なんていうのは冗談にならない洒落、ということになってしまうのだ。
確かにゆかりんは強い方だが、それは原作ほどの無法でもないし、原作も思ったほど無法ではない……みたいな隙もあるわけだし。
「あー、言われてみるとそうなんッスね。実際、ゲームの中とはいえ滅茶苦茶こっちを押してたッスしね、道満」
「うむ、甘く見てると足元掬われるってやつだね。……まぁ、そういう意味では
「あっち、って言うと……」
「ユゥイの方。どうなってるのか、ってのは実際に会って確かめないとわからないけど……ほぼ確実に【星の欠片】ではあるだろうから、真っ当な遮断手段は全部抜けてくるよ」
そして、意外と気の抜けない相手である道満より、遥かに危険人物なのがユゥイである。
……とはいえ、これはあくまでも元義的な意味での彼女の話。あの時相対した彼女の様子を思えば、それから外れているということは容易に想像できる。
なお、この場合の『元義』というのは、私がなりきりをやっていたスレ内での設定の話である。
「……その辺り聞いててもさっぱりなんで、もう少し詳しく説明して貰えないッスか?」
「いいよー。……ええと、スレの方のユゥイは、正確には『ユゥイ・アーベント』って言うんだけどね?」
……とはいえ、この辺りの詳細な違い、というものを正しく認識しているのは、私とそこでキャラのなりきりをしていた、一部の人達のみ。
マシュにしたって『私がキーアというキャラをやっている』くらいのことしか知らない以上、それを説明することができるのは私だけ、ということになるわけで。
口下手な私に説明させるのかよ、的な気持ちもなくはないけど、やらなきゃ伝わらないのも確かなので、頑張って説明しようとする私なのであった。
──と、いうわけで、ユゥイについてなんだけど。
スレの中・なりきりキャラとしてのユゥイの正式名称は『ユゥイ・アーベント』という。……養子にしたわりに名字が変わってない?母子別姓ってやつよ、うん。
こちらの彼女はわりと野性的というかがさつというか、まぁともかく敬語とかを使うタイプではなかった。……似たようなキャラを挙げるとすれば、『fate/apocrypha』のモードレッドみたいな感じだろうか?
髪の色も黒色・かつポニーテールと、あの時見た彼女とは全くの別物。ゆえに、彼女を見てこちらの彼女を連想することなど、普通はあり得ないことだろう。
「で、元となった方──
「……続柄はどうなってるんッスか?」
「ん?赤の他人」
「なるほど、ごちゃごちゃなんスねー」
で、彼女の存在の元ネタ──私の
……キリアと違って名字がちゃんとあるんだなって?いや、キリアの名字を出したことがないだけであって、向こうにも名字はちゃんとあるからね?
……まぁそれはともかく、こっちのユゥイは、見た目も性格も喋り方も、ほぼあの時現れた彼女と同じ。
違うことがあるとすれば、それはこちらを『母』と呼んできたことくらいのものだろう。元々のキリアとユゥイには血縁関係はないわけだし。
で、こっちのユゥイは元々キリアと同じタイミングで設定を考えていたこともあり、彼女と同じように【星の欠片】が与えられている。
キリアの
「世界にあるとされる四つの愛、
「そうそう。基督教的に定義される愛の形だね」
これは、その当時『神の愛』という概念に触れた私が、それよりも凄いものを生み出して見せるぜー!……的な中学生的テンションにより生み出した能力であり、その本質は『全ての愛を網羅している』ということころにある。
要するに、誰しもがなにかしらの愛を抱いている、ということを根拠にした形での【星の欠片】の創出、という感じだろうか?
……なお、自己愛が含まれていないのは、基督教の本来の理念的には『自己愛はわざわざ明記するものではない』みたいな部分があったりするとかしないとかだが、長くなるのでここでは説明しない。話が逸れるしね。
ともあれ、世界にある四つの愛、そのどれもを語れる最小単位として創出されたこの【星の欠片】は、つまるところ精神活動を行うあらゆる生物全てに含まれているもの、と見なすこともできる。
普遍的な生き物は、大抵その『愛』に従って生きているからだ。
「家族愛と性愛はわかりやすいよね。それと、人と関わるようなタイプの生き物なら、友愛についてもそれを抱いていることがわかりやすい。んで、神の愛はあまねく命ある全てへの愛だから言わずもがな、ってやつだね」
「まぁ、そう言われると確かに……ってやつッスね」
そんな風に誰もが持つ愛を、更に細かく見て『どれとしても扱える(但し多量に集めた場合)』ようにしたものが、【散三恋歌】。
言うなれば愛の最小単位であり、それゆえに逆説的に
それはつまり、そこから【星の欠片】の持つ共通原理、『一欠片でも自身の要素があるのなら、そこに自身を顕現させられる』という性質により──、
「やろうと思えば、ユゥイはそこらの木々の中からすら現れることができる、ってわけ。……まぁ、それはキリアにしても同じことなんだけど」
「こわー……」
それこそ、なんの障害も無いかの如く、いきなり私達の目の前に現れてもおかしくないのだ。……というか、極まってくるといきなり目の前の人間が彼女になる、なんて現れ方もできてしまったりする。
……まぁ、そのレベルの現れ方は、それこそ今の世界が本気で滅びの間際、みたいな状況でなければ難しいだろうが。
「ええと?」
「エヴァンゲリオンで『ATフィールドは人の心の壁』みたいな話があったでしょ?で、それが無くなると人は形を保てなくなる、みたいな」
世界の滅びの時、やってくるのは『今そこにある生き物達の無意味化』である。
その生き物がその形・その意識である必要性の霧消とも言えるそれが起きた時、世界は確かに滅びを迎えたといえるだろう。
……もっと雑に言うのなら、個人と世界の境界線が消えた・ないし消えかけている状況でもない限り、【星の欠片】の持つ『他者からの顕現』は機能しない、という感じだろうか。【星の欠片】の優先度よりそこにいる生命の優先度の方が高い、みたいな?
その辺りは個々の生命体の我の強さ、みたいな部分も関わってくるので、そこら辺そこまで主張の強くない木々くらいなら幾らでもゲート代わりに代替できてしまう、というか。
……なので、【星の欠片】の影響を極力抑えたいのなら、生活圏内に樹木を植えないというのが一番早かったりするのだった。
「……無理では?」
「そう、無理。……というか、死にたい人みたいな意志薄弱者も、程度によっては上書きできる相手になる可能性があるから、出てくるのを完全に防ぎたいなら
「……あ、なるほど。そこでキリアさんなんッスね?」
「
無論、そんなことをすると色々問題があるので、究極的な対処は相手にそれをさせないこと──この場合だと
実際、キリアより小さいのってもう『あの人』しかいないからね。
……え?「だからって私をこき使うのどうなの?」って言ってる?あーあーきこえなーい。