なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・誕生日を祝おう!・3

「しかしまぁ……なんという『ぼくのかんがえたさいきょうののうりょく』感……」

「おおっと、発案者として一応訂正させて貰おう。これに関しては『ぼくのかんがえたさいじゃくののうりょく』が正解だ。世の中の能力が高みを目指すものである以上、その驕りを掬うのはやはり最弱方面だからネ!」

「うーん、この懲りてない感……」

 

 

 まぁひねくれものだという自覚はあるよ、うん!

 ……とまぁ、そんな感じに【星の欠片】というものの説明を改めて終えた私。

 

 これらの能力を考えた時の私は、いわゆる高二病状態だったわけで。……そういった観点からも、世間一般的な能力に対しての対応、という点には結構頭を使っているというか、小賢しい理屈を使っている感じはあるだろう。

 ……まぁ、今となってはそれを受ける側にいるわけで、当時の俺を殴りたい気分でいっぱいなんだけどね!

 

 そんな感じで胸のうちをぶちまけたあとは、ちゃんと休憩することに。……ここでいう休憩とは、好き勝手遊ぶことではなくしっかりと体を休めることである。

 

 

「遊びの時間、って意味での休憩と、オーバーワークした体を休めるための休憩を混同してるって人、わりあい多いからねー」

「あー、夏コミの原稿中に『無理!スマブラするっ!』ってなってるやつとかッスね?」

「なにその微妙に生々しい例え」

 

 

 いやまぁ、確かにそれであってるのだが。

 一つのことに集中していたのを、()()()()()()()()()()()()()()()──原稿中のスマブラというのは、まさにそういう類いのモノである。

 無論、単に思考が煮詰まっているだけなのであれば、そういう気分転換がベストなこともままあるわけであるが……本来、休憩というのは過負荷を与えられた身体を休めるための時間である。

 これがどういうことかというと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということになる。

 ……要するに、『休憩になってない』というツッコミなわけで。

 

 そういう意味で、休憩時間に遊んだり調べものをしたり、というのは本来非推奨なのだ。精神的な負担の解消も必要とされるため、半ばなあなあに済まされている節はあるが。

 

 まぁともかく、今私たちがやらなければいけないのは、身体を休める方の休憩。精神の充足は一先ず後回しにし、疲れた体を一時静止することが求められるわけだ。

 

 

「ほら、週末折角の休みなのに寝て過ごした、みたいなやつあるじゃん?あれ、日々の休憩の仕方のミスの現れ」

「ちゃんと適宜体を休めていれば、休みの日に寝て過ごす羽目にはならない……ってことッスか?でもそれって言うは易し行うは難しの筆頭だと思うんッスけど」

「だぁねぇ、大体休む暇もなく働かされるからねぇ」

 

 

 現代日本人働きすぎ問題、というか。

 これを解消するにはそれこそ社会全体で一斉に休む、くらいしかないのだが、今の世界でそれができるかと言えばノーだろう。

 他者を出し抜こうとして、他者より疲労耐性の高い人が勝手に働く……なんてパターンを排除しきれないだろうし。

 

 人が無数に居る以上、それぞれに合った形式というのは、それこそ千差万別になる。それを完全に完璧に遂行させる、というのはまさに絵に描いた餅でしかない。

 結局、世の中の問題のほとんどは、完璧なんてあり得ないのにそれを求めずにはいられない、人間の浅ましさにあるのだろうなぁ……などとちょっとそれっぽいことを述べつつ、私は目蓋を閉じて疲労感に身を任せるのだった。

 

 

 

 

 

 

「──わぁっ!!?」

「ひゃぁっ!!?」

 

 

 思わず飛び起きた私は、寝ていた私を覗き込んでいたらしい誰かと額をぶつけ、思わず悶絶することに。……すっごい音したけど今!?

 痛みに涙目になりながら、改めて額をぶつけた相手に視線を合わせれば……、

 

 

「お、おやマシュ、一体どうしたんだい?」

「せ、せんぱいを探していたのです。先ほど発見して、起こそうと近寄ったのですが……ご覧の通り、額を……」

「あー……そりゃタイミングの悪い……」

 

 

 そこにへたり込んでいたのは、額を押さえて「痛いでしゅ……」と呻くマシュ。

 話を聞くにどうやら私を探していたらしく、見事発見したのち近寄った結果、こうして正面衝突する結果になったようだった。

 ……言い換えると不幸な事故だった、ということになるわけで、どちらからともなく謝罪を交わし、改めて向かい合って座り直すことに。

 

 ──周囲はまだ明るく、時刻的には三時頃といったところ。

 トレーニング用に開けた草原のようになっているこの階層は、ほぼ外と同じように太陽が登り、沈むように設計されている。

 それに合わせてそよそよと吹く風も実装されており、全体的に陽気な午後、といった様相を醸し出していた。

 

 のどかな景色に目を細めつつ、改めてマシュに問い掛ける私。

 

 

「そういや、私を探してたっていったけど……?」

「あ、はい。ですがその前に、せんぱいは先ほどまでなにに魘されていらっしゃったのでしょう?」

 

 

 こう、脂汗など掻かれていましたが。

 そう語るマシュの顔を心配そうで、こちらがまたなにかしら抱え込んでいるのでは?……という心情をその顔色から読み取れてしまうかのようであった。

 ……確かに、この間のことを思えば、私がなにかしら思い詰めているのでは?……と受け取ってしまうのは、なにもおかしな話ではない。ないが……。

 

 

「あーうん、これはまた別の話というかだね……」

「せ・ん・ぱ・い?」

 

 

 あんまり人に言いふらすようなモノでもなかったため、ごまかすように言葉を濁す私。……なのだが、そんな態度を取ればマシュが頑なになるのも仕方のない話で。

 結果、私は自身がなにに魘されていたのか、恥ずかしながら開示する羽目になっていたのだった。

 

 

「ええと、笑わないで欲しいんだけど……」

「笑う?……ええとせんぱい、それはどういう……?」

「……やっぱり勘違いしてたみたいだけど、もう言うって決めたから続けるね?……ええとね、()()()()()()

「……ええと、せんぱい?行っていた、とはどこに……?」

「『あの人』のところ」

「わぁ………ァ」

 

 

 泣いちゃった。

 ……まぁうん、『あの人』のことについては何度か語ってるし、そこに呼び出しなんてされれば魘される、みたいなことも既に理解していることだろう。

 つまり、今のマシュ的には「せんぱいに思い出したくないことをわざわざ思い出させた」みたいな扱いになるわけで、そりゃまぁ泣きもするわなぁ、というか。

 

 ……いやうん、確かにまぁ、ちょっとというか大分というかかなりというか、『あの人』の呼び出しについては思い出すだけで震えるのは確かなんですけどね?

 寝てる間の呼び出しだから、拒否もできたもんじゃないし。

 なんなら横でキリア()が半笑いでずっとこっち見てきてたし、イラッとしたし。でもそうやってイラッとすると、下げてる頭の上の方から『もし?』と声が降ってくるんですよフフ怖い(震え)

 

 ……まぁ、こっちがなにか悪いことをしたわけではなかったので、そういう意味ではまだ気楽な方だったわけだが。

 これでお叱りのために呼び出された、とかだったら胃がねじくれ曲がってただろうし。

 そういうわけで、マシュが思っているほど重篤なトラウマってわけじゃないよー、とフォローする私である。

 

 

「……でも魘されてましたよね?」

「はははは、『あの人』の前に私が立ってるとか烏滸がまし過ぎて胃がががががが」

「わぁ……ァ……!」

「なんなんスかこのカオスな状況」

 

 

 なお、この不毛なやり取りは、ちょっと席を外していたクモコさんが戻ってくるまで、延々と繰り返されていたのであった。

 

 

 

 

 

 

「おほん。気を取り直して、マシュはなんで私を探してたの?」

「……はっ!そうでした、元々の目的をすっかりと……」

 

 

 数分後。

 ようやく正気を取り戻した私たちは、改めて先ほどの話には触れない……と取り決めをして、話を軌道修正することに成功していた。

 

 で、その『元の話』というのが、何故マシュは私を探していたのか?……というもの。

 家に帰れば会えるにも関わらず、わざわざ会いに来た辺り、なにかしら重要目な用事だとは思うのだが……。

 

 

「こほん。……ではせんぱい、こちらを」

「……?これは?」

「通りすがりの気のいいお方を巻き込み、ラットハウスの皆さんと一緒に考えて決めた、せんぱいへのお誕生日プレゼントですっ」

「お、おお?」

 

 

 そうして首を傾げる私に、改めて居住まいを正したマシュが渡して来たのは、人の頭くらいの大きさの一つの箱。

 丁寧に包装されたそれは、外観からも『贈り物である』ということが察せられる品物で、一瞬『なんの?』と思った私は、次に続いたマシュの言葉に思わず驚愕することに。

 

 いやだって、誕生日プレゼントである。

 小さい頃からバレンタインデーと混ぜられることがほとんどであったため、まともなプレゼントなど数えるほどしか貰ったことのない私への、どうやらみんなで考えて選んだ贈り物。……これが驚かずにいられるだろうか?

 思わず柄にもなく感動しつつ、開けていいかと訪ねる私。

 それにマシュは頷いて、箱を開き──、

 

 

「──宝石箱?」

「せんぱいが喜ぶものはなにか?……と問い掛けた時、それに答えられる方はいらっしゃいませんでした。なにせせんぱいは来るもの拒まずの姿勢。なにを差し上げても、ほとんど同じように喜ぶ、ということは容易に想像できていました。──そこで考えたのが、『ならば大量に贈ってみよう』というものでした」

 

 

 その中にあったのは、外の箱より一回り小さい宝石箱。

 開いたその中には、それぞれ贈った人間が作ったり考えて選んだりしたのだろう、大小様々なアクセサリーが所狭しと並んでいる。

 その中の一つ──マシュの大盾を模したイヤリングを手に取り、そのまま耳に装着。……重さはほとんどなく、付けていることの負担もまたない。

 

 

「……似合う?」

「ええ、よくお似合いです、せんぱい。──お誕生日おめでとうございます、それから──」

 

 

 ──私と出会ってくれて、ありがとう。

 見たことのないような、見惚れるような笑みと共に贈られた言葉に、私は思わず破顔してしまうのだった──。

 

 

 

 

 

 

 なお、宝石箱の中にハート型の瓶と、その中に詰められた星の砂を見付け、私は暫く白目を剥く羽目になったりしたが……それはまた、別の話である。

 

 

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