なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
ホワイトデーには間に合わない
「……なるほど、星の砂は星の欠片、ってことなわけね」
「で、ハート型の瓶はそのまま『愛』に纏わるモノである、ということの示し。……つまり居たんだよぉ!ユゥイがァ!!ここにぃ!!!」
思わずワッ、と声をあげる私に、呆れたような疲れたような、そんななんとも言えない表情を返してくるゆかりん。
場所はいつも通りのゆかりんルームなわけだが、今回はこんな感じで既に満身創痍な感じから始まったのであった。
いや、それにしたって……なに?なにしてるのあの子?どういうノリなの?私はこれに対してどういう反応をすればいいの?
……とまぁ、困惑しっぱなしの私である。いやマジで。
「……どうにも話を聞く限り、マシュ達があったのは
「ええと、黒髪ポニーテール、だったかしら?……でも喋り方は敬語だったのよね?」
「ああうん、だから寧ろ混ざってることが明言されたというか」
「あー……」
マシュ達が件の少女と出会ったのは、昼時の忙しいラットハウスでのことだったという。
その姿は黒髪ポニーテールで、口調は敬語。……直接ネット上でのユゥイの姿を視認していた人物がその場にいなかったこともあり、口調が敬語、というだけでは両者を結び付けることはできなかったようだ。
なのでまぁ、この件でマシュを責めることはない、のだけれど……。
「『このマシュ・キリエライト一生の不覚っ!!かくなる上は、お腹を切ってお詫びしましゅ!!』とかなんとか暴走し始めたもんだから、落ち着かせるのに大層時間を消費する羽目に……」
「ああうん、マシュちゃんならそうなっても仕方ないわよねー……」
本人がどう思うか、と言われればそれは別の話。……結果、盾で腹を裂こうとする(!?)マシュをクモコさんと力を合わせて押さえ付ける、という一見して意味のわからない状況が生まれたりしたのだった。
……それがまぁ、大体三日ほど前のこと。
「一応、
「そういえば、夢で『あの人』とやらに合ったとか聞いたけど、なにがあったの?」
一応、彼女の侵入を唯一防げる人物・キリアに頼み込み、郷全体の防衛について対策を施したつもりではあるのだけれど……なんというか、ユゥイ関連の話についてはどうも静観を決め込もうとしているというか、『貴女の問題なんだから頑張ってね♡』みたいな空気を醸し出しているというか……とにかく宛にならないので、一応私自身でも動いてみる所存ではある。
……ただ、その辺りにも幾つか問題があるわけで、それが件の『あの人』との夢での邂逅にあったのだった。
「……以前、キリアの執りなしで私が【星の欠片】として『あの人』に認められた、みたいな話があったじゃない?」
「え?ええと……いつ頃の話だったかしら?」
「一月二月程度昔のことを忘れないでよ……正月の話よ、正月の」
あー、と間抜けな声をあげるゆかりんにため息を返しつつ、改めて思い返すのは今年の頭、正月頃のこと。
そも、【星の欠片】などというあやふやなものを抱える私は、存在として不安定な部分があった。
まぁ、本来なら同一の【星の欠片】が別の存在に宿る、なんてことがあり得ないのだから、寧ろ安定している方がおかしいのだが。実際それで一回消えかけたわけだし、私。
で、そんな私を暫く見ていた『あの人』が、私のことを面白いと評し、結果として私の
今回の夢での邂逅は、それに付随したエピローグ、かつその先の話へのプロローグとなりうるモノである。
「エピローグはわかるけど、プロローグ?」
「以前、私の立ち位置的に先輩なのに部下になる【星の欠片】がいっぱい居る、みたいな話をしたでしょう?」
「あー、言ってたわねー。確か『妹/姉/同僚/後輩/先輩』みたいな雑多な関係の人が現れるかも、みたいな話だったかしら?」
「そうそう、あの時の説明だとはしょってたけど、兄とか弟とか、母とか父とかみたいな関係性の人がいきなり現れてもおかしくない……って続くんだけどね?」
「なにその不審者続出みたいな状況……」
私が新たな【星の欠片】として認められた、というのは先述した通り。
そこまでなら大した問題ではないのだが、そうして新人【星の欠片】として生まれた私に与えられた役職、というものが問題だった。
そう、実質的な
そうなるとどうなるのか?……こっちの知らぬ間に、
……なんか何処からかマシュの抗議の声が聞こえる気がするが、そこはスルーして。*1
ともかく、私が今の状態になったことで、私はこれから起こるだろうトラブルの種を半ば自動的に許容することを強いられた、というわけなのである。
「で、その辺りの詳細な説明のために、今回『あの人』の居城にお呼ばれしたってわけ」
「……行くのあんなに嫌がってた場所に?」
「あんなに嫌がってた場所に。……夢の中とか逃げ場がないんだから止めて欲しいよね……(遠い目)」
「oh……」
で、実はそうして私が【星の欠片】として認められたあと、私がどういう【星の欠片】になったのか、みたいな部分は一切聞かされることがなかったのだ。
キリアに聞いても『いずれわかるわよ、いずれね』とごまかされるものだから、半ば記憶の中から抜けていたわけだが……まぁ今回ああして半ば拉致気味に夢の中でお呼ばれした、というわけである。
……いやまぁ、以前と違って『出会ったら不要なものとして分解される』みたいな恐怖はなかったけど、代わりになに話されるかわかったもんじゃねぇ、的な意味での恐ろしさが凄かったというか。
ともあれ、そうして逃げ場のない状況下で『あの人』から説明されたのが、今の私が置かれている現状の詳細な説明だった、というわけで。
「とりあえず、『虚無』より大きく似たようなもの、ってことで私には『開闢』の称号が与えられたわけなんだけど……分不相応過ぎるというか、なんか別のモノを思い出しそうになるというか……」
「二回攻撃したり相手を除外したり?」
「それだとキリアの方が手札とフィールド全て墓地に送るやつにならない?」
いやまぁ、キリアの無法さはわりとエラッタ前の終焉龍に近いところあるけども。*2
……まぁともかく、私の扱う【星の欠片】が『開闢』で、その運用方法は『虚無』とさほど変わらない、みたいなことを聞いたのち。『あの人』から語られたのは、これから私を襲うであろう様々な困難についての忠告、みたいなものなのだった。
「……忠告?」
「さっき『私の立ち位置が他の【星の欠片】を呼び込む』かも、みたいな話をしたでしょう?実はあれ、どうにも言葉が足りてなかったらしくてね?」
確かに、いきなり自分の上司が増えたうえ、それが本来なら新人という後輩・ないし部下になるはずの人物だった、というのはあれこれ注目される理由としては十分だと言える。
……が、実は事態はもっとややこしいことになっていたようで。
「端的に言うと、私の存在を認めたこと自体が宜しくなかった、みたいな話になるらしくて……」
「……ええと、もしかしてまた消滅の危機?」
「ああいや、そういうことじゃなく」
この場合の宜しくなかった、とは『あの人』にとって宜しくなかったではなく、
……と述べれば、違いがよくわからなかったのか首を傾げるゆかりん。
「確かに『あの人』の性質を思えば、世界の迷惑と『あの人』の迷惑になんの違いが?……って思いそうだけど……ここでいう『世界』っていうのは並行世界全部とかみたいな、広い場所のことじゃなくて……私たちが今こうして生きている世界っていう、ごく狭い場所の話なんだよね」
「……つまり厄災になっちゃったってこと?」
「人聞きが悪いけど、遠い意味としては似たようなものかな」
そう、この場合の『世界』とは、あまねく世界全てを指すのではなく、今こうして私たちが語らっているこの場所を含む世界、すなわち単一の世界のみを指すモノである。
で、私の存在がこの世界にどういう厄ネタをもたらすのか、というと。
「そもそも私って不安定だったわけでしょ?今は安定したけど」
「まぁうん、本当なら『逆憑依』に選ばれるはずもない、みたいなモノなのも含めて、成立してること自体が奇跡みたいなものというか……」
「そうそう、奇跡。……奇跡ってのは普通一瞬のモノで、それが永続的に続くことはないんだよね。というか、いつまでも奇跡が続いていたら、それは最早必然でしょう?」
「……まぁ、そうね?」
「つまり、安定した今の私は必然的なもの、ということ。──これは裏を返すと、本来なら虚構で済んでいたはずの【星の欠片】という概念を、
「……ん?」
端的なことを言えば、私という存在は本来そのうち消えていた。
大本となるキリアに統合されるのが普通であり、その場合彼女を観測していた
所詮は一人が想像した世迷い言であり、それが確たる力を以て成立する余地などないのだ。
──つまり、今の安定してしまった私は、窓でありながら窓の向こう側のモノになってしまった、という風に解釈できてしまうわけで。*3
それがどういう結論を導くのかというと。
「──雑に言うと、ユゥイがこっちに現れたの、私が安定したせいでした、ってことになるのよね」
「……はい?」
私がここに居る限り、ユゥイみたいなのがわんさか湧いてくる可能性が生まれてしまった、ということになるのであった。
ははははー、疫病神だなこれじゃー(ヤケクソ)