なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……ええと、整理すると?つまり、貴女が『開闢』の【星の欠片】として成立したことで、寧ろ『逆憑依』の対象先として貴女の黒歴史が堂々と選択できるようになってしまった、ってこと?」
「そうそう、そういうこと。だからユゥイに関しては、どうも完璧に私のせいってことになるみたいなんだよねー」
本来認められないはずの、【星の欠片】の『逆憑依』。
一欠片でもあれば全力を出せるとはいうが、そもそもに『逆憑依』の対象範囲としては外れているため、私以外の『逆憑依』としての【星の欠片】は成立しないはずだった。
……え?
まぁともかく、私以外には【星の欠片】は居ない、というのが本来の状態で、その私にしてもそのうち消えるのは確定的であり、結果として【星の欠片】は単なる世迷い言として処理されるはずだったのだ。
……だがしかし、私という存在は『あの人』の尽力により、消えるどころか寧ろこの世界に完全に成立してしまった。
それは裏を返せば、この世界に【星の欠片】という法則を刻み込んでしまった、ということに等しいのである。
つまり、これからもし【星の欠片】が現れるのであれば、それは全て私が【星の欠片】として安定・成立してしまったことに原因がある、ということになってしまうのだった。
凄まじいまでのデメリット!
「うーん、確かにややこしいものが増えた、というのは確かだけど……それって今までとなにか違うの?だってほら、向こうの水銀君とか、正確には本人であって本人じゃないけど……想定される迷惑度ってそこまで大差ない気がするのだけれど?」*2
「あー、うん。そういやちゃんと説明したことはなかったっけ……」
「???」
ただ、このデメリットについては、私という考案者以外にはどうにも理解し辛い様子。……よくよく考えたら【星の欠片】の説明をちゃんとした覚えがないので、それも仕方のない話ではあったのだが。
とはいえ……説明していいものかなぁ、とちょっと悩んでしまう私である。
「……なんでそこで、悩む必要が?」
「はっはっはっ。身構えてる辺り、厄介事の匂いは感じてるんでしょう?まさに厄介事だよ、実際ね」
なんか変なポーズで警戒を示すゆかりんに苦笑しつつ、そのまま遠くを見る私。……私が
はてさて、なにはともあれ【星の欠片】について、である。
この技能は何度も言うように、
極めたモノは大なり小なり似たような場所にたどり着くモノ、的な感性で編まれたこの技能は、従来の様々な技能と比べ、それそのものが持つエネルギーはとても小さい。
しかし、半ば概念的な領域に達しているその粒子は、その実
雑に言ってしまえば、
「科学の行き着く先としての最小単位でもあるから、どんなものにも絶対に含まれている、ってことになるんだよね」*3
「ええまぁ、その辺りは何度も聞いてるから流石にわかるけど……」
原子核の中の陽子の数を自由に変えられた場合、それはあらゆる元素を好き勝手に作れるようになることと同じ……みたいな話がある。
まぁ、それを可能とする
とまれ、現行の科学でも『好きな物質を作る方法』というのは、机上の空論であれ定義はされているわけで。──その技術の進みすぎた先に、私たち【星の欠片】は存在している、という風に定義することもできるのだ。
「まぁ、真っ当な手段じゃどう足掻いても触れられないんだけどね。だってほら、普通の科学理論って積み上げるモノだし」
「寧ろなにをどうすれば
ただ、その領域に到達するには、真っ当な研究の仕方では到底不可能である、というのもまた事実。……深掘りなどと述べたがその実、ここでいう深掘りとは本来の言葉通りの意味とはまた違うものである。
本来の深掘りとは『物事を深く詳しく知ろうとする』ことを意味する言葉。その例で言うのなら、この場合求められるのは『物事を悉く忘れようとする』方向性になるのだ。
一つの物事を探求するというのは、その物事について様々な知識を得ようとすることと同じ。……【星の欠片】到達のために求められるのはその逆、一つの物事に纏わるあらゆる全てを忘却していくこと。
ゆえに、今の人類に真っ当な手段でそこに至る手はない、ということになるのである。人は記憶を消すことはできないのだから。
ついでに言うのなら、最初からないのは
「色んなモノを欠けさせて行って、最後に残った一つを掴み取る……というあり方は、ある意味至上の無を目指して修行する、どこぞの宗教に近からず遠からずってやつかもねー」
「ええと……そういえば、実際例の人の前に行ったスクナヒコナなんかは、あれこれ削られた結果ああなったんだったかしら?」
「そうそう」
なので、彼がビーストに返り咲くことはないだろう、なんて話にもなるのだが……それはまた別の話なのでここでは割愛。
まぁともかく、【星の欠片】が一種の超科学である、ということは事実。
そしてこれがなにを意味するのかというと、この世界のあらゆる全てに、微細粒子としての【星の欠片】は必ず含まれている、という話に繋がってくる。
「無限分の一、みたいな意味のない数式が意味を持つような位置でしか確認できないほどに小さいけど、ゆえにこそ見えるものの全てにそれこそ無数に含まれている……なんてことになるわけよね」
「原子一つに一つ、みたいな話じゃなくて、無数の概念が挟まり続けるから実際原子一つに無限個、みたいなことになるってことだったわよね?」
「そうそう。で、その一つ一つが連動して動く」
「……改めて聞くとおぞましいわね」
一つの粒子内に特定の【星の欠片】、その中に更にそれより小さい【星の欠片】が複数……みたいな感じで、延々と入れ子構造が続いていく結果、最終的に一つの原子に含まれる『あの人』の【星の欠片】は、それこそ数えるのが無理なラインの量になってしまうわけで。
……で、それらが全て【星の欠片】の共通効果により、やろうと思えば好き勝手に動けるというのだから、【星の欠片】が励起してしまっている世界がどれほど恐ろしいものか、というのはなんとなくわかることだろう。
やろうと思えば敵対者を好き勝手に弄れる、だなんてどう考えても悪役の能力でしかないし。
とはいえ、これだけだと単なるチート級能力。
反論を受けることも想定していた小賢しい当時の私は、この技能に幾つかの枷を設けることとした。
「その一つ目が、原則的に普通の人相手なら絶対負ける、っていう『勝敗固定の原理』」*5
「あー、よく貴女が自分のことを、クソザコ云々言ってるやつの根拠ね」
「そうそう」
そのうちの一つが、対戦形式をとった場合必ず負ける、という『勝敗固定の原理』である。
これは、微細数が本質である【星の欠片】は、その力量的にそもそも一つの生命体として成立している存在に勝てるようなものではない、というある種の決まりごと。
もっと簡単に言えば、現実という【星の欠片】が安定起動している限り、他の【星の欠片】は起動処理すら許されない、ということである。
「【星の欠片】の基本は
「……のわりに、貴女は結構勝ってるわよね」
「そっちは『無限動員による事象のねじ曲げ』っていう別の原理だから、ここでは割愛するね」
なお、私がたまに勝っているのは、正確には『試行回数無限回の中で一回勝った事実をピックアップしている』みたいな感じであり、そもそもこれができる【星の欠片】自体が上澄み……いや下澄み?なので、あまり気にされても困るところがあったり。
まぁともかく、普通は負けるものというのが【星の欠片】なのである。
……ただこれ、無限試行以外の抜け穴というか、ちょっとしたバグ的なものがあってね?
「バグ?」
「以前、キリアが言ってたみたいだけど──
そう、【星の欠片】は極小の世界のモデルケースでもある。
現実という【星の欠片】がその存在を維持できなくなった時、それらは発芽して新たな世界を構築しようと動く。
それは、新人祖となる誰かに、新たな世界の舵取りを任せるため。いわば積極的な自殺・望まれた他殺ということになるわけだが、この『望まれた他殺』というのが厄介なのである。
「要するに、【星の欠片】の行動って基本的に
「…………えーと?」
「単純に言うと、『最終的にそっちが勝つんだから、途中経過の勝ち負けとか些細なことでは?』……みたいな?」
「……なに一つ些細なことじゃないんですけど!?」
そう、最終的にはその身を捧げ、誰かのための世界を作る礎となる【星の欠片】。
それらは本質的に、相手の全てを叶えようとする。──これが意味することは、つまりその時の相手に
いわば無限サンドバッグとしての運用が解禁されてしまう、ということである。無論、その仮定で単に経験値を稼がせるだけだとダメ、と認識されれば
これこそが、【星の欠片】が普通に湧いている場合に厄介な部分。
究極の奉仕として、自らの全てをかけて相手を新世界の王にしようとするその献身は、正直今の世界を維持したいモノからすれば完全な迷惑でしかない、ということになるのだった。
……いやうん、普通なら世界が滅びかけの時に覚醒するんだから、これでも問題ないはずだったんだけどねーなんでかなー(棒)