なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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地球全土がリングみたいなもんだ

「……ええと、下手すると【星の欠片】が大挙するかも、みたいなことを言ってたわよね?」

「うん、そんなことも言ってたね」

「……現れた【星の欠片】は、基本的にその基本原理に従って今の世界を終わらせようとする、ってことも言ってたわよね?」

「……まぁ似たようなことも言ってたね」

「最後に一ついいかしら?──ここ以外の場所で【星の欠片】が現れる確率、一体どれくらいのもの?」

「…………君のような勘のいいスレ主は大好きだよ」

「わァ……ァ……!」

「泣いちゃった」

 

 

 なんか最近このパターン多いな?

 ……的なことを考えつつ、号泣し始めたゆかりんを宥める私である。

 

 そう、【星の欠片】とはなんにでも含まれるもの。それは裏を返すと、他の『逆憑依』みたいに出現範囲が日本に留まっていない、ということでもある。

 いやまぁ、仮に現れるのなら私を灯台(ゆうがとう)代わりにすると思うので、基本的には日本国内・もっと言えばなりきり郷周辺に現れるとは思うのだが。

 

 

「ただこう、本気でこっちの世界を終わらせようと思うのなら、邪魔をしてくるだろう私たちがいるところより、絶対に見付からないような場所に現れる方が確実というか……」

「……見付からないところってどこよぉ……」

「んー、太陽系の外とか?あ、銀河の端とかでも行けるかも?」

「その規模はもう対処のしようがないでしょうがぁ!!」

 

 

 本気でこの世界を終わらせることを目的とするのならば、できうる限り自身の発見を遅らせる、という方向性で動くと思われるので、その場合は地球圏内に留まらず、容易に察知できない銀河の果てとかに現れる可能性も否定はできない。

 少なくとも、この宇宙に広がる法則──現実は同一。そういう意味では、地球の真ん中だろうが銀河の端だろうが、私たち【星の欠片】的には余り大差ないわけだし。

 

 

「ほら、量子もつれってあるじゃない?二つの量子がもつれの関係にある場合、それらの状態はどれほど距離を離そうと瞬時に伝わる、ってやつ。【星の欠片】は全ての粒子に対してもつれの関係だから、銀河の端だろうと普通にこっちに現れることができるわけでね?」*1

「ふざけんなー!!」

「まぁまぁ。代わりに、こっちも向こうが現れたってのはすぐにわかるから」

「……じゃあ遠くに現れる必要なくない?」

「励起直前の状態は流石にわからないからね、私も。だからまぁ、唐突に励起してこっちにどーんって形だと、【星の欠片】としては若輩者の私は対処が遅れるというか……」

「やっぱりダメじゃないのバカーっ!!」

 

 

 なお、全ての構成要素がもつれの状態にある私たち【星の欠片】にとって、距離の長さなど関係あるのか?……みたいな至極真っ当な疑念については、流石に励起前の状態を察知するのは無理があるのでそこを有効活用しようとすると遠い方がいい、という話になったりするのであった。*2

 

 

 

 

 

 

 まぁ、本気でこっちを滅ぼしに掛かるやつは居ないはずだし……とゆかりんを宥めた私。……ユゥイに関しては今のところノーコメント。

 世界云々とは別の目的で動いている気がする彼女については、これからの動向をなるべく注視することにして、改めて今回ここに来た目的について話を戻す私である。

 

 

「……はっ!そういえば、前回の報告が衝撃的すぎて忘れてたけど、今回は【星の欠片】についての対策会議とかが主題じゃなかったのすっかり忘れてたわ……」

「うん、そうだと思ったよ」

 

 

 聞けば聞くだけ危険人物しかいねー、となって警戒度がアップしてしまったのはわからないでもないが、正直相手がその気ならどうしようもないのは変わらないので、気にしない方が精神安定的には正解だろう。……少なくとも、郷にいる分にはキリア()がガードしてくれるわけだし。

 

 また、何度も言うが本気で滅ぼす気なら無茶苦茶するだろうが、【星の欠片】達に()()そのつもりはない。

 誰かに請い願われれば話は別だろうが、そもそもその方向性での彼らの励起はこの世界の人には不可能だろうし。

 

 ……というわけで、今回の話はあくまでも『そういうこともできる』程度で流し、改めて今回のゆかりん案件に話を戻す私であった。

 

 

「えーと……とりあえず『tri-qualia』内の例の親子だけど、いつの間にか忽然と姿を消していた、というのは間違いないみたい」

「んー、ユゥイ達が持っていく理由はなさそうだし、別口でなにかあったとかかなぁ……?」

 

 

 で、議題の一つ目が前回ユゥイが現れたせいで大分有耶無耶になってしまった、『tri-qualia』内に再現された列車・エメとそのオーナー親子の話。

 

 最後に出てきたのがユゥイだったため、彼女達が仕掛けたモノだと思われてそうだが……その実、道満もユゥイも運営側の人間ではなかったことを考慮すると、彼女達は別人が建てた別口の計画に相乗りしただけ、と考えるのが自然となるだろう。

 で、その別口の計画というのが、列車に目を向けさせている間にオーナー達の石像を盗み出す……というものであったと思われるわけである。

 

 そう、侑子の元にあったはずのオーナー達の石像は、現在その所在がわからなくなってしまっている。

 正確には、侑子が目を離した隙になくなっていた、ということになるのだが……ともかく、これを列車(こっち)にいたユゥイ達がやったとは考え辛い。

 ……いやまぁ、実は別の仲間が居たとかであれば、どちらも彼女達の仕業、とすることも不可能ではなさそうだが……。

 

 

「ユゥイがクモコさんのビースト成分を持っていったのを見るに、寧ろユゥイ達の目的って最初からクモコさんだったような気がするんだよね」

「そうなると、別にビースト案件ではなさそうなオーナー達に関わる意義が薄い、ってことになるわけね?」

「そうそう」

 

 

 痛み分け、と言いつつ素直に下がったこと。それから、あの状況的にはまだ向こうが有利だったことを思えば、端からユゥイが狙ったのはビーストの遺児としてのクモコさんだった、とする方が収まりがいいのは確かな話。

 なので、ビーストとの関わりはなかったオーナー組は、別口の誰かがやったことと考えるのもまた収まりがいい、ということになるのであった。

 ……いやまぁ、道満って意外と機械系にも強そうなイメージがあるので、すーちゃんさーちゃんにアバターを提供したのがアイツ、って可能性もなくはないんだけどね?

 

 

「ただまぁ、術師の仕業ならあの二人がなんにも感じてないのも変かなー、ってなるというか」

「そういう細かい違和感が積み重なった結果が、今の結論だものね」

 

 

 はぁ、とため息を吐きつつ、肘を付いて唸る私。

 単一のグループの仕業とするには、反論となりうる事例が多すぎるため、結果として複数のグループの関与を考慮する必要がある……というのが、とても頭の痛い話。

 というか、仮にオーナー達を連れていくのが目的だとして、それはなんのために?……という部分に答えが出ない辺り、正直考えるだけ無駄なんじゃねーかなー、的な諦めの気持ちも湧いてくる私なのであった。

 

 

「……まぁ、なにかしてくるつもりならまたやってくるでしょう。つーわけで、オーナーの話は一先ず置いとくとして……依頼云々の方は?」

「あーっと、今回のお仕事よね?それについてはこっちを」

「ふむふむ……?」

 

 

 そんなわけで、とりあえず警戒だけはしておく、ということで今回は納得し、二つ目の議題に。

 

 こっちは久方ぶりのゆかりんからのお仕事の依頼、ということになるわけなのだけれど、どうにも変な依頼だとのことで、受けていいものか悩んでいるとのことなのであった。

 変?と聞いていつも変やろ、みたいなことを思われる人も多いかもしれないが、渡された資料を見た私も思わず「んん?」となることになった辺りで察して頂きたい。

 その依頼というのが、

 

 

「……イベントコンパニオンの依頼?」*3

「そうなのよ、いわゆるコスプレイヤー的な起用とでもいうか」

 

 

 今度発表するとある作品の発表会に、イベントのコンパニオンとして人を数名借りれないだろうか?……という依頼なのであった。……確かに、変な話である。

 いやまぁ、コンパニオンという仕事が変ということではなく、それに私たちを選ぶことが変、というべきか。

 

 一般的に思い浮かぶコンパニオンと言えば、レースクイーンやキャンペーンガールなどの、イベント会場で専用の服を着た女性達のことになるだろう。

 考えようによっては、キャビンアテンダントなんかもコンパニオンの一種に見えなくもないかもしれない。

 それらの女性に共通するのは、やって来た人達を持てなす職業である、ということだろう。

 

 

「……不適切では?」

「まぁうん、出来なくもないでしょうけど、我の強い人も多いしね……」

 

 

 雑に言えば『おもてなし』の心を必要とするわけだが……個性の塊な私たちに頼むのは、なにかが違うということにならないだろうか?

 ついでに言うなら、私たちの姿はなにかの作品のキャラクターそのものである。……作品発表会に呼ぶには、ちと見た目が強すぎるのではなかろうか?

 そもそも他所から訴えられない?これ。

 

 そんな疑問はしかし、この依頼が誰から来たものなのか、ということを知ることで氷解したのであった。

 

 

「……帰ってきとるし」

 

 

 そう、そこに書いてあった名前は、この間行き先不明で出会えなかった『tri-qualia』の運営の一人、ドクターウェストのそれなのであった。

 

 

*1
『量子テレポーテーション』とも。三次元的な繋がりではない、現状では解明できない謎の繋がりによって行われる不可思議な現象。もつれ状態にある量子は、片方の変化が瞬時にもう片方にも伝播する。その様がまるでテレポートしているかのように見えるからこう呼ばれるようになったわけだが、よく聞けばわかるように実際に量子がテレポートしているわけではない。その為『量子テレポーテーション』はその語感に対し、実態はかなり違うものになると思われる(転移先で新たに体を構築する形になる)。元義的なワープに近いのは『量子トンネル効果』の方

*2
励起前の状態でも、流石に目の前で見れば『あっ、今出てこようとしてるなこいつ』とはわかるので、そういう意味で『目視を防ぐ』のに遠くで出現するのは有効である

*3
『companion』。仲間・友人などの意味を持つ言葉だが、日本語としては展示場・競技場などにやって来た客を持てなす、そういう職業の女性を示すモノとして使われる

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