なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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わりと社会不適応気味な君ら

「うーむ、今まで客商売はそんなにしてこなかった、ってツケが回ってきた感……」

 

 

 はてさて、ラットハウスに小規模の恐慌をもたらしてしまった私たちが、反省のため正座をし始めて暫く。

 とりあえずダメだったところを分析しないと始まらない、というわけで一時ラットハウスを閉店状態にし、席に座り直した私たちは、そこで各々の問題点に向き合うこととなったのだった。

 

 

「まずアスナさん」

「はい?なにかなキーアちゃん?」

「実は良いとこのお嬢様なこともあって、バイトとかした経験が薄いですよねそういえば?」

「んー、そうなのかな?中身的にはそうでもない……とは思うんだけど」

「少なくとも『分身して仕事すればいいや』は、まともな思考から出てくる結論ではないですね……」

 

 

 手始めにアスナさん。

 この人現在的にはわりと良いとこのお嬢様なうえ、そこがそもそも厳格な家であるということもあり、余りバイトとかしているイメージがない。

 

 いやまぁ、作中描写の隅から隅まで知ってるわけでもないので、実はそれなりに経験があるのかもしれないが……それはともかくとして、ここにいる彼女は純粋な『結城明日奈』とも言い辛い。

 

 声繋がりで混じってるっぽい頼光さんの要素を、わりと頻繁に利用する彼女は、そういう意味でもちょっと周囲とずれている部分があるわけで。

 ……このままだと『こんぱにおんなぞこれこの通り』とかなんとか言いながら五人に分裂とかしかねないのだ、効率優先的な意味で。*1

 

 効率がいいのならいいじゃん?……みたいなツッコミに関しては、『お前それ一般人に見せられるのかオラァン?』と返しておこう。

 まぁ要するに、やることが無茶苦茶なわけである。

 

 

「あ、そっちなんだ」

「そりゃまぁ、キリトちゃんに御執心なのは問題ではあるけども。……一応、自分とキリトちゃんが抜けた状態をカバーできるように、って意味も含めた分身なんでしょ?そうなると全体の効率はちゃんと見えてる、ってことになるから突っ込むべきとこが変わるんだよ」

「ふむ、なるほどねー」

 

 

 なお、キリトちゃんと二人でいちゃいちゃしていたことについては、問題にするにはちょっと微妙かなー、と思わないでもない私である。

 いやまぁ、アスナさんを最初っから五人分としてカウントしてたんならアレだけど、実際には精々アスナさんプラスキリトちゃんで二人分だったわけで。……そう考えると、実質的には労働力が二人分増えてることになるから、『仕事をしろ』的なツッコミは『求められてる分はちゃんとしてるよ?』と逃げられてしまうのである。

 じゃあもうそこら辺は抜きにして、『そもそも五人に増えるな』と言い含めるしかないのだ、マジで。

 

 流石のアスナさんも、増えられないのならキリトちゃんにかまけてる暇はないってわけなので、彼女には頼光さんパワーの使用厳禁を言い含め、続いてキリトちゃんへの指導に移る。

 

 

えっ。いやあの、さっきのは寧ろ俺被害者……」

「前々からサークラ的素養を振り撒きすぎ、と私は言っていました」

「そっちぃ!?」

 

 

 そう、キリトちゃんへの注意とは、要するに『調子に乗りすぎ』ということになるのだ。

 

 ハセヲ君やブルーノちゃんへのあれこれは、互いに気安い関係かつ二次創作とかに造詣が深いからこそやれる、ともすれば危うい関係なわけで。

 ……意識して姫プして遊んでる、みたいな感じだから上手く行ってるけど、その感覚が抜けないまま普通の接客なんかしちゃダメだよ、という注意である。

 

 そもそも、アスナさんがここでキリトちゃんを構い始めた一番の理由は、彼女が普通の一般客にガチ恋距離での接客を(意識せず)行っていたから、というところが大きいのだし。

 

 

「……あ、そっちもバレてたんだ……」

「原作でも似たようなもんだけど、キリト&アスナペアってどっちかというとアスナさん側が騎士(ナイト)役の空気が強いからね、そりゃまぁこうなるだろうなぁ感はあったよ?」

 

 

 GGOのキリト君を見てればわかるが、あの子は意外と吹っ切れる時はおかしな領域まで吹っ切れるタイプの子である。

 それを元にしているキリトちゃんも、女性らしく振る舞うことに特に違和感はなくなっているが、本質的にはまだまだ男性。……ゆえに、異性への距離感がバグったままなのも仕方のない話で。

 

 こうしてみると、そこら辺の問題を認識する前にぶっつけ本番とかにならなくて良かった、と思ってしまう私なのであった。……絶対面倒臭いことになってたよ、これ。

 

 

「なので、キリトちゃんはもう少し大人しくしましょう。貴方の今のやり方は本当にサークラするタイプのあれです」

「ま、マジかー……」

「マジもマジ、大マジじゃいっ」

 

 

 まぁそんなわけで、キリトちゃんには迂闊にお客さんの手をそっと握るとか、それメイド喫茶とかのやり方やで?……みたいな癖を抜いて貰うこととして、続いてのメンバーへの指導に移る私である。

 

 

「次というと……」

「パイセンですね。とりあえずパイセンはなにもしないでください、以上」

「なによ、また虞美人差別!?」

「どうせ項羽様意外にまともに接するつもりないんでしょうが!!だったらもう突っ立ってるだけでええわ!!」

 

「おおぅ、キーアお姉さんがガチギレしてるゾ……」

「いやまぁ、仕方のない話ですよ、あれは。だって虞美人さん、項羽さん相手なら天上の持て成し級のあれそれをしてくださるでしょうけど、それ以外の有象無象にそのレベルを味合わせる必要性を感じてないでしょうし」

 

 

 次はパイセンなわけだけど、彼女に関してはもう(逆に)言うことはない。

 そも彼女のそれは彼女の愛する夫・項羽に対して与えられるモノであり、それ以外の人物に対しては……まぁ、『FGO』の主人公とか蘭陵王とかの一部の交遊関係の相手ならばまだ目はあるだろうが、完全に一期一会の有象無象相手に提供してくれるか?……と問われればノーとしか言いようがなく。

 

 ……いやまぁ、億が一に気に入られでもすれば渋々やってくれるかもしれないが、少なくとも一日だけのイベントの中でそのレベルの出会いがあるか?……と言われればそれこそノーとしか言えないわけで。

 で、そういうやる気のない時の彼女のあれこれが、周囲に混乱を引き起こしてしまうものである……というのは周知の事実。

 ゆえに、現状のパイセンが一番波風立てずに過ごすには、単に突っ立って月下美人として華となるくらいしかないのである。

 壁の華ならぬイベントの華、というか。幸い、彼女の見た目は明確に美人の部類なわけだし。

 

 まぁ、これもこれで下手すると『項羽様以外の人間が、私の肢体を不躾に眺め回したな!?』とかなんとか言いながら爆散しかねない、という落とし穴があるのだが。

 ……やっぱり置いていった方がいいんじゃないかなこの人?もしくはいっそドクターウェストを茅場にして、そのまま生け贄に捧げるとか。

 

 

「……それだとイベントの進行に支障がでないかい?」

「ああうん、茅場さんも別に頭が悪いってわけじゃないけど、流石に全身コンピューターみたいな項羽さんと比べられるのは酷だよね……」

 

 

 一瞬良い案なのでは?……と思ったが、横から飛んできたライネスの指摘により即座に頓挫するのであった。

 一つの異世界に等しいゲームを作るなど、茅場さんの頭脳はまさに人間の最高峰と呼ぶべきモノだが……スパコンがそのまま意思を持って稼働しているような存在である項羽さんと比べるのは、流石に酷を通り越して罪のレベル。

 

 結果、(項羽さん)でようやく釣り合いが取れてる感のあるパイセンの相手をしながら、他のこと──この場合は新作の説明──を行うのは不可能だろうな、と理解。

 というか、そもそもの話として『あの人気ゲームの開発者に熱愛発覚!?』『相手は痴女だった!歴史上の人物の名を名乗る彼女の正体は?!』とかなんとか週刊紙にあることないこと書かれるのも可哀想、みたいな感情もなくはなく、やっぱり当初の予定通り置物になって貰うのが現状ベストでは?……という話になってしまうのだった。

 

 ……パイセンについてはそのくらいにして、次は桃香さんとXちゃんの二人である。

 

 

「二人はまぁ、流石というかなんというか、大きな問題は無さそうだね」

「ええ、ありがとうございます。あれこれやってた経験が活きましたね」

「私も本来の桃香とは別人みたいなものですので、こういうのは慣れっこですから」

 

 

 この二人に関しては、取り立てて大きな問題はない。

 ……いやまぁ、Xちゃんがほんのりトラウマというか、変なフラグを立てたりはしていたが……言ってしまえばそれくらいのもの。

 二人とも接客業については経験があるようで、特に変な対応もせず、普通に接客ができていたように思う。

 

 なので、今回のお仕事に関しては二人を見本にして貰う、というのが一番楽かもしれない。

 

 

「二人を見本に、かぁ」

「……なんですかアスナ、言いたいことがあるのであれば聞きますが?」

「じゃあ一つだけ。……羞恥心とかないんですか?」

「向こうでなにを出されるかわかったものではないので、現状私の服装の中で一番恥ずかしいだろうモノを持ってきただけですがなにか?」

「……あーうん、水着姿で接客、なんてことが起きないとは限らないのかな……?」

「関係無さそうな顔していらっしゃいますけど、桃香さんも桃香さんですからね?」

「はひ?……ええと、私がなにか……?」

「なんで裏方に逃げてるんですか!これから受ける仕事はコンパニオンなんだから、表に出てくるべきでしょ?!」

「え、ええと……その、あの人(エミヤさん)の影響を受けていますので、こういう場だと料理を作りたい欲が勝ると言いますか……」

 

 

 ただまぁ、二人も完璧に出来ているのか、と言われると微妙なところがある。

 それがXちゃんの場合だと服装になるし、桃香さんの場合は仕事している場所、ということになるのだった。

 

 ……うん、おさわりとか絶対させないだろうけど、衆目を集めるのは間違いないよね、Xちゃんの格好。

 今の彼女は自分で言っていたように、『謎のヒロインXX』の最終再臨の姿をしている。……言ってしまえば『白のビキニ』なわけだが、そんなもん見せられて興奮しない男が居るのか?……感があるというか。

 いやまぁ、彼女の危惧もわかるんだけどね?ゲームキャラの服装とかギリギリに挑戦してなんぼ、みたいなところあるし。

 でも流石にリアルで水着をずっと強要、みたいなことはないんじゃないかなー、ミスコンでもないんだし。

 

 で、彼女とは反対に、姿を見せる気がないのが桃香さんである。

 こっちはすっかり厨房に入り浸ってしまっており、ホールに出てくる気配がない。……構成要素にエミヤさんを含むせいか、どうにもこういう場所だと調理に気が向いてしまうとのこと。

 イベント会場にそういうものは無かったはずだが、ともすれば自分で出店を用意してなにかを売り出し始めかねない彼女は、やっぱり『逆憑依』なんだなという空気を感じさせていることだろう。

 

 そんな感じで、大丈夫そうな二人もちょくちょくツッコミを受けていたのだった。

 

 

*1
頼光さんの宝具ボイス『四天王なぞこれこの通り』から

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