なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
……これ、やっぱり真っ当にリリなの三人娘が揃うわけじゃないな?
みたいな事を、窓から飛び込んできた翼さんを見つつ思う私。
外の剣っぽい建造物は、別に彼女が作り出したものではないらしく。
単にこの登場をするために、彼女が上に登っていた……というだけの事だったらしい。天ノ逆鱗*1で防御する翼さんなんて居なかったんやっ!!……それはそれで外の壁みたいなものはなんなのか、という疑問が残るけど。
それとシンフォギアって、魔法少女区分で良いのだろうか?
「いいんじゃない?変身少女ものの区分で括られてるのだろうし」
「なるほど。……ところで、もしかして貴方が最後の一人だったりしますか?」
「あら、目敏いのね。でもんー……最後の一人、と言うと語弊があるかしら」
なるほど、変身ヒロイン区分なら確かに含まれるのか。
なんて気分と共に、聞こえてきた声にあわせて視線を横に逸らせば。
そこにいるのはあかいあくま、遠坂凛嬢でしたとさ。*2
なんか、イメージしてた彼女よりも、身長ちょっと低い気がしないでもないけど。
「ああそれはね?私の場合
「──
「そう、
こちらの言葉にはぁ、とため息を吐く彼女は──近年の作品だと『S・イシュタル』*4に近い背丈をしている。
コラボ作品にしか出たことのない、特殊なケースを敢えて選んだ、とか。自業自得過ぎるけど、どうにも笑えない。
……というかあっちのりんがベースだとするのなら、一応完全無欠に魔法少女区分なのか。……やっぱり八神さんポジなのかな?
なんて事を問い掛ければ、彼女はにこやかに答えを返してくれた。
「そうよー、それ相応の居候もいっぱいいるしね。えっと、シグナム代わりのラミア*5でしょ?ザフィーラの代わりにアマテラス*6、シャマルはブチ撒けろ繋がりなのか斗貴子さん*7で、ヴィータはまさかのくるみんだし*8」
「すみません、ちょっと待って頂けませんか?言葉の洪水をワッと一気に浴びせかけるのは」*9
全部違うぅっ!?
……基本的には声繋がりだけど、ザフィーラだけ見た目繋がりでキャラ変わってるし、全体的になんかやべーのばっかりだし、なりきり郷での八神家ヤバすぎでは?
……まぁ、お約束通り再現度の壁にぶち当たってるから、性能的にはそんなでもないらしいけども。
「再現度の話をするのであれば、私も引っ掛かっているな。常に防人足らんと心掛けては居るが、どうにも本家本元の志に至るには道半ば、ということか」
「なる、ほど?」
こちらの会話の内容に気付き、近付いてくる翼さん。
……クールな武人、という雰囲気の彼女だが、確か喋りの再現が難しいと言われるキャラだったような気がする。
それでもまぁ、同じ作品のキャラであるクリスちゃんの方が、再現するのが難しいらしいけれども。*10
「そういう意味では、私は再現しやすい方……と見せ掛けて、りんの方はメディア露出が少な過ぎてほとんどオリキャラ、みたいなものなのよね。……刻印精霊せいばー*11とか、知ってる人どれくらい居るのかしら?」
「そのせいというかなんというか、せいばーちゃんは居ないんだよね、りんちゃん?」
「そうね、貴方のコジョピーみたいに代わりの誰か、みたいなのも居なかったし。……まぁ、代わりにここにいる私には、はやてのポジションを押し付けられてるっぽいんだけど」
「その点では、私はまだ自由な方だな。フェイトとしても
「嘘付いちゃダメですよー翼さん。フェイトちゃんだったらおうちの掃除、ちゃんとしてますよ?」
「むっ……」
……ふむ、疑似三人娘の仲は結構いい、と言うことのようで。
しかしまぁ、見事にバラけた人選だこと。
……一つのスレからは原則一人、の基本ルールが破られていない以上、ちゃんとしたメンバーになることはないのだろうと、改めて主張されているような気分になる。
ただ、声繋がりだったり役割繋がりだったり、何かしらの繋がりを元に関係性が寄りやすい、みたいな因果もあるようだけど。
「そういうことになるね。まぁ、私みたいにあちこち引っ張りだこ、みたいな事になる可能性も少なくないわけだが」
「──貴方は」
そうして三人娘が集まってわいわいと話しているのを、少し遠くから眺めていたら。
スッと音もなく近付いてきた誰かに声を掛けられて、そちらに視線を向ける。
……すっごいニヤニヤした表情のライネスさんが、そこに居たわけなのですがそれは。
…………、あー。
りんには型月繋がり、翼さんには
……じゃあヘスティア様でいいじゃん!え、りんに繋がらなくなる?そんなー。
「まぁ、フーカをなのはと繋がっていると言い張るのは、ちょっと無理があるけどね。……そういうわけで、今日の同行者最後の一人、ライネス・エルメロイ・アーチゾルデだ。宜しく頼むよ、
「……はい、宜しくお願いします」
返答が限りなく小さくなりそうになるのを、必死で堪えたことを褒めて欲しい──なんて戯言を脳裏に浮かべつつ、彼女と対峙する私。
絶対気付いてるんですけどこの人。……からかう気満々なんですけどこの人。
───神は死んだっ!!
「はーい、じゃあさくっと行くからみんな付いてきてちょうだいね~」
「はーい」
出向先にはるかさんが居るのもあいまって、今回は行きも帰りもスキマで楽ができるらしい。
まぁ、実際は距離が離れすぎると疲れるらしいので、これだけ気軽にスキマを開けるのは日本国内に限る、らしいけど。
……今のところ海外でなりきり勢が見付かった、みたいな話もないのでどうにかしようと焦る必要もなく、基本的にゆかりんはのほほんとしている。
閑話休題。
ゆかりんがスキマを開くのを見ながら、隣に立っているライネスとこそこそと内緒話。
……一時的に変身状態をずらして声だけ元に戻す、という変な小技を駆使しつつ、彼女の現状把握度合いを確認しているわけなのだけれど……。
「──ラットハウス組はココアちゃん以外全員気付いてる、だと……!?」
「まぁ、真っ先にキング君が気付いて、そこから芋づる式に……という感じだけどね」
(ちょっとCP君っ?!)
(あれー?)
まさかの、ほとんどのメンバーに気付かれているという返答に、一瞬目の前が真っ暗になった。……所持金半分になったりしてないだろうな?
というか一番最初に気付いたのがジャックさん?……やっぱりデュエリストは侮れない、ということなのだろうか?
「──いや、その理屈だとココアちゃんが気付いてないのがおかしい。一応あの子もデュエリストだった筈だし」
「ああ、ごめんごめん。言い方に語弊があったかな?正確には、
「……ふむ?」
詳しく聞いたところによると、アニメを見ていて違和感を感じたのはあくまでもジャックさんであり、その後ココアちゃんとマシュを除いた他のメンバー(と言ってもライネスと
……むむむ?なんかおかしいような?
「アニメの図柄という本物とは違うはずのそれから、即座に君にたどり着いたことについて……だろう?それに関しては私達にもさっぱりだね。ただ、違和感をほどいたら即座に君の名前が浮かんだ──という感じでね」
「あ」
「いやちょっと待ちなさいCP君、『あ』ってなによ『あ』って」
ライネスからの説明に、思わず首を捻る私だったが、懐からCP君のやべ、みたいな声が聞こえたことにより、そのまま彼女を問い詰めることに。
「いや、その。……僕の隠蔽技能、仮に破られると自動的に『真名を看破された状態になる』みたいなんだよね、ってことを説明し忘れて……おーいキリア、大丈夫かい?」
「大丈夫ですよCP君。私もこれから、頑張っていきますから」
「その笑顔は多分大丈夫じゃないやつだね?」
ライネスとCP君が一緒になって心配してくるけど、大丈夫大丈夫。元からバレたら死ぬって思ってたのが、『思う』だけじゃなくて確定しただけだから大丈夫大丈夫。
……だから、これからは無事に帰ってくるまでキーアの部分は出さないのでそのつもりで。
「いやまぁ、君がそれでいいのなら構わないけど。……でもいいのかなぁ?ここに一人、そういうことで揺さぶりとか掛けて来ちゃいそうな悪い子がいるわけなんだけど?」
「──いいでしょう、何が望みですか?」
(うーん、完全に手玉に取られている。僕も見習わなくては)
そうして対峙するのは、後ろから悪魔の尻尾が生えているように幻視してしまう、悪ーい笑みを浮かべた
ふっ、だが甘いなライネスよ。
私の意志は堅い、並大抵のことでは微塵とて揺るぎもしないと思い知るがいい!
「いやなに、大したことではないよ。例えば──大の大人が、自分から口にした『もうちょっとラットハウスに顔を出すようにする』、なんて約束を守れていないこととか、ちょっと責っ付こうと思っただけだから」
「──ああ。私の、敗北です」
「負けるの早っ、君幾らなんでももうちょっと耐えなよ?僕びっくりして
「おとなはウソつきではないのです。まちがいをするだけなのです……」
「ふふふ、まぁこれに懲りたら、何でもかんでも安請け合いするのは止めることだね、キリア?」
「……はい、十分承知しております……」
CP君からざーこ煽りされ、ライネスからはもっともすぎるお叱りを受け。
……史上最ざこ魔法少女キリアとなってしまった私は、しょぼしょぼとスキマの中に飛び込むのでしたとさ。
……くやしぃ~。