なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
──殺生院キアラ。
初出は『fate/extra_ccc』であり、そこでは当初主人公に味方をする尼僧として彼女は登場した。
聖職者であるにも関わらず、色香を振り撒いてやまないその肢体と言動に、初見のプレイヤー達は大層目を奪われたというが*1……作中的には、彼女の力無くして月の裏側から脱出することは叶わなかっただろうと断言できるほどに、彼女の助力というものは凄まじい。*2
BBの手先──
その効力は
主人公達は彼女からこのプログラムを提供されることにより、初めて強力なAI・BBに対抗する手段を得たのだった……。
……というのはまぁ、あくまで表向きの話。
このプログラムの開発者であるキアラ本人は、そのプログラムの使い方を誰よりも熟知している。
そうして精神に触れる中、自身の古巣たる密教の修法をアレンジして生み出されたのが、かの有名な『万色悠滞』である。
……え?初めて聞いた?じゃあまぁ、とりあえず『相手の心に侵入する』プログラムだと思って貰えれば。*4
いわゆる乙女コースター*5というやつだが、主人公はこのプログラムを利用したキアラの協力により、物理的な破壊手段では決して突破することのできない最後の壁、ヴィーナス・スタチューの心象空間への侵入を可能にしたのだった。*6
……のだが、このプログラムの真価とはこれではない。
このプログラムの本質とは、対象となった相手の精神と魂を読み取り、その全てを受け入れること。
言うなれば究極の
そこに掛かる問題は普通のドラッグと同じであり、かつ普通のドラッグよりも危険性は遥かに高い。
「それを使った彼女は、周囲のあらゆる人々を自身の快楽のために貪り尽くした。……それが本家の彼女だけど、ビーストとなった彼女の『万色悠滞』は更に凶悪化して、ビーストに少しでも心を動かされた場合、たちどころに支配されてしまうなんて状態にまで進化してしまった……」
「──ええ、その通りにございます」
そんな万色悠帯も、FGOに出演した時には更に凶悪なモノに進化してしまっていた。……SAN値が例えに出されるようなそれは、『ビーストを美しいと思ってしまう』というフラグを踏んでしまった場合、問答無用に相手を隷属させる魔性の技。
そこまで至ってしまった彼女は、最早人の世にとって害悪以外の何者でもない存在に成り果ててしまった……はずなのだけれど。
「ええ、あのような末路は私のような女にはお似合いのモノでしょう。それを越えた先にある私は、それを反面教師として正しくあらねばなりません」
「…………誰!?」
「セラピストのキアラさんだにぃ☆キーアちゃん達がわちゃわちゃしてたあと、互助会に来た新人さんなんだにぃ☆」
「セラピストぉ!?」
……なんというかこう、ビーストを前にした時の肌が粟立つ感覚が、一切しないというか?
いやでも、目の前にいるのはいつぞやかに旧互助会の施設を爆砕してまで倒した、あのビーストⅢi/Rである魔性菩薩・殺生院キアラその人にしか見えないんだけど……。
そんな風に首を傾げる私に対し、きらりんが述べた彼女の職業に、色めき立つメンバー。
なにせセラピストである。……セラピストキアラ!?セラピストキアラさんなのこの人?!*7
思わずうっそだぁ、みたいな感じにキアラを見れば、彼女はとても申し訳なさそうに──それでいて蠱惑的に見える表情で、こちらにおずおずと声を掛けてくるのであった。
「──ええ、ご想像の通り。私は
「ところでぇー☆マシュちゃん達はキアラさんとお知り合いなのかなー?」
「ええと、お知り合いと言いますか、一方的に知っているだけと申しますか……」
マシュに色々訪ねているきらりんを横に、急遽キアラさんに話を聞くことになった私たち。
とんでもねー爆弾が放り込まれたことになるため、上には無理を言って時間を取って貰ったわけだが……そこで得られた情報は、とても有益なモノなのであった。
「ええと……じゃあ改めて確認させて貰いますと、今ここに居る貴方は
「ええまぁ、はい。あの獣の亡骸から生まれたモノ。それこそが私に間違いありません」
一つ目に、このキアラさんは
区分的に言うのであれば、ビーストⅡi・初音ミクの後に成立したかよう・れんげペアとか、ビーストⅢi/L・陽蜂の後に生まれたクモコさんとか、はたまたビーストⅣi・少彦名命の後に顕現した一寸法師とか、その辺りに連なるモノというべきか。
……いや、獣の時と見た目一緒やんけ、というツッコミが飛んできそうだが、どうやらその辺りにも色々と事情がある様子。
「ええその……元々は私、殺生院キアラのなりきりをしていた者でして……」
「なんという物好き」
「これには虞美人もビックリ……ってなにを言わせんのよっ」
いや勝手に言ったんじゃん……。
というパイセンとのやり取りは置いとくとして、なんとこの人、中身があるタイプ──即ち『逆憑依』なのである。
獣の後に生まれるモノの大半が【顕象】であることを思えば、あまりにも珍しいと言うか。……いやまぁ、そんなことを言ってもサンプルになりそうな例、それこそ片手で数えられるくらいしかいないけど。
まぁともかく、ビーストになりうるような【兆し】、例え形を失ったとて危険なものには変わりなく。……それを埋めるかのように選ばれたのが彼女、ということになるらしい。
「その結果、というわけではないのでしょうが……人間味が戻った?ために、私の元々のキャラクターも、魔性菩薩としてのそれではなく、ただのセラピストとしてのそれに変じていたのでございます」
「……にわかには信じがたいけど、そもそもそうやって騙してなんの得があるんだ、って話だよね……」
で、人ならざる獣の内に『人を入れた』結果、その獣が目覚める前──具体的にはゼパル君に余計なことをされる前の、単なるセラピストであったキアラとしての『逆憑依』になった、ということになるようだ。
無論、獣への道は開いたままなので、迂闊に気を抜くとそっちに引っ張られそうになるらしいが。……いや危ねぇなこの人?!
「ですので、精神修行のため、あれこれと試しているのでございます……」
「キアラちゃんにお話を聞いてもらってー、色々と楽になったって子は多いんだにぃ☆うち自慢のセラピストなんだにぃ☆」
「至らぬ身ではありますが、皆様の助けになれていることは素直に嬉しいですね……」
「……せ、聖女や……モノホンの聖女がおる……!」
こ、これがFGOプレイヤーが待ち望んだセラピストキアラの輝きか……っ!
他人に褒め称えられ、謙遜しながら頬を染めるその姿に、あの魔性菩薩の影はどこにもない。……いやまぁ、影に捕まらないように頑張った結果がこれなので、見えないのは彼女の成果なわけだが。
とはいえ、互助会でできることにもそろそろ限界が見えており、その辺りを突き詰めるために他の世界を見たい、と思ったりもしているようだ。
「そういうわけだからー、キーアちゃんが居たらキアラちゃんを連れてってあげて欲しかったんだけどー、今日は居ないんだねぇ……」
「……あーその、実は私がキーアでね?」
「?背丈とか全然違わないかにぃ?」
「キーアとキリアみたいなもんだと思って?」
「あー、なるほど☆」
そのため、今回彼女をここに連れてきたのは、他者対応が得意な人という面もあるが、それ以上に彼女をなりきり郷に行けるようにする、という意味合いも強いのだそうで。
ただまぁ、それを頼むのならキーアにだろう、と思っていたので、今回その姿が見えないことに意気消沈していたとのこと。
……丁度いいので、いい加減こちらの紹介に移ろうという話になるのだった。
「そういえば、そっちはそれで全員?」
「実はもう一人居るんだけどぉー、ちょっと遅れるって行ってたんだよねぇー」
「なるほど、遅刻かー」
なお、人数的にちょっと少ないような?……と首を傾げたところ、きらりんから返ってきたのは「まだ一人残ってるけど、その子は現在遅刻中」との言葉。
……慌ただしいのか単に寝坊したのか、理由はよく分からないが波乱を巻き起こしそうな感じだな、とだけ記憶しておいて、そのままこっちから来たメンバーの紹介をしていくことに。
いやまぁ、本来そっちのメンバーのはずの人が一部混じっているので、それを除いた面々の紹介ということになるわけだが。
「……アスナちゃん、最近ずっっとそっちに居ない?」
「な、なんのことかしら。おほほほほ……」
「自覚があるのでしたら、たまにはお戻りになられた方が宜しいかと。……お仕事、溜まっていましたよ?」
「わーっ!聞きたくない聞きたくない!書類仕事は真っ平ごめん!」
「……アスナ、俺も手伝うからたまには帰ろう、な?」
「え?キリトちゃんうちの子になるt「それはまた別の話」そんなー」
なお、その一部例外であるアスナさんは、密かにキリトちゃんを互助会の子にしようと、虎視眈々と狙っていたのであった。
……油断も隙もないなこの人……。