なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ええと、自己紹介はこれで全部かな?」
「じゃあー、いい加減にお仕事の話、聞きに行こっか☆」
「さんせーい」
暫くの自己紹介ののち、メンバー同士の親睦も深まった私たちは、早速今日の仕事の内容について、上に確認しに行くことに。
現在時刻は大体十時頃、発表会の開始は一時からとのことなので、本格的な仕事の開始はもう少し先のこととなる。
多分、上の話を聞いたあとは早めの昼御飯のあと、発表会の開演まで待つことになるのだと思われるが……。
いや、思った以上に長丁場だな、これ?
「確かに……深夜帯まで長引く可能性を、予め示唆されていましたからね……」
「寧ろそんなに長い間、一体なにを発表するつもりなんだろう?」
「んー、体験会も混じってる……ってのが有力じゃないか?」
ぞろぞろと移動しながら、あーでもないこーでもないと仕事内容について考察する私たち。……なのだが、正直守秘義務云々で伝えられていないことが多いのもあって、結論を出そうにも出せない状態だったため、途中で切り上げることに。*1
そんな感じでぐだぐだしながら、今日の業務内容を説明してくれる人が待っているはずの広間に向かうと。
「おや、皆様お早いご到着で」
「…………コヤンスカヤ!?」
「はい♡闇の方に御座います♡」
そこでこちらを待っていたのは、いつも通りのタマモキャット……ではなく、敏腕秘書風の服装を来たバニー系狐、闇のコヤンスカヤの方なのであった。*2
……いや、寧ろなんで居んのこの人?!
「なんでもなにも、
「……あーうん、確かにキャットのあのテンションで解説とかされても、正直一割も理解できる気がしないな……」
そんな風に声を挙げる私たちに、コヤンは呆れたような視線をこちらに向けながら、やれやれとため息を吐くのだった。
……彼女の言う通り、キャットの解説というのは、一般的な思考では理解できないタイプのもの。
そもそも意図の理解にも苦労するタイプの人物なので、今回みたいな『詳細な解説を必要とする場面』において不利、というのはわからないでもない。
まぁ、それで代わりに寄越したのがコヤンという事実に関しては、全くこれっぽっちも分からないわけなのだが。
「……!まさかと思うけど、他のタマモナインも在籍してたりするとか……?」*3
「そもそも私がタマモナインではない、というツッコミが必要ですが……ともあれ一応断言しておきますと、あちらに在籍しているのは私とキャットさんのお二人のみですわ」
「……あ、そうなんだ」
実は西博士の周りにタマモの
……ナインじゃないけど、結局仲は悪いんじゃん!
「──そういうわけで御座いまして、今回の発表・及びそれによってもたらされるであろう反響は、恐らくわが社の今後を左右するモノであると言っても過言ではなく。……ゆえに、皆様方にはこの一時とはいえ『わが社の一員である』という誇りと自認を持って頂きたい……と主張する次第で御座いますわ」
「おー……」
その見た目は飾りではない、ということなのか。
キャットの代わりとして現れたコヤンの説明はとてもわかりやすく、私たち一同は今日の仕事がとても重要なモノである、という認識をしっかりと胸の裡に刻むこととなったのであった。
……いやはや、まさか社運を賭けるレベルの発表だったとは。
そりゃまぁ、普通のコスプレイヤーさんではなく私たち『逆憑依』を選ぶわけだわ、うん。
「……では、一先ず事前説明についてはこの程度で。この後は昼食ののち、再度開演前にこの広間に集まって頂き、そこで今日のコスチュームを貸与することになりますわ」
「質問だにぃ☆衣装合わせとかは大丈夫?」
「そちらに付きましては、事前に書類などを確認した上で、かつプログラム上のシミュレーションも行った結果出来上がったモノを用意していますので、今日いきなり身長が伸びた、みたいな珍事がなければ問題はありませんわ」
「なるほど、どうもありがとー☆」
そうして一人頷いていると、左手の時計を確認したコヤンが、これから昼食の時間であることを示唆。
……これに関してはこっちもそうだろう、と思っていたので特に驚くことはないが、それとは別に衣装の貸与があることも合わせて伝えてきたため、気になることができたきらりんが代表して声を挙げることに。
まぁ要するに『いつの間に私たちの体型に合う服装を用意したの?』という質問だったわけだが、コヤンからは遠回しに『君ら創作物なんだから、スリーサイズとか公表されてるやろ?』……と、そういえばそうだな……と納得してしまう答えを返されたわけである。
……いきなり身長が伸びたとかでもない限りというように、どうもこの施設に来た時にいつの間にか測っていた、という部分もあるようだが。
服に使える3Dプリンタ的なモノがあるとも聞いたし、それにデータを入れて作ってたとかなのだろう、多分。*4創作物は創作物だけど、個人の妄想の範囲でしかない
ともあれ、食事だというのであれば楽しむのも吝かではない。
多分弁当とか支給されるのだろうから、どんな弁当かを予想する楽しみがあるというものだ……とちょっと呑気にしていた私は。
「……まさか、館内展示の味見役みたいな要素も含まれているとは思わなかった」
「まぁ、私達も気を付けては居るがね。それでも提供する側と提供される側で見えるものというのは違うものだ」
そういうものの是正のためにも、君達にはしっかりと味わって貰いたいモノだね──。
なんてことを言いながらニヒルに笑うのは、なにを隠そう互助会が誇る料理の鉄人・エミヤシロウなのであった。……いや、なんで居るのこの人?
いやまぁ、パンフレットに記載された展示内容に、何故か出店的なモノがあることからなんとなーく予想はしていたんだけどね?
ともあれ、まさかの弁当ではなくエミヤさんの手料理を味わうこととなった、私たち一行。
本来の来賓達に先駆けて、展示物を楽しんでいるような状態になっているが……これも展示物に不備がないかの確認の一環、ということで一応仕事の内訳に入っているというのだから、なんというか色々凄いなー(棒)的な感想しか出てこない私である。
……まぁ、あくまでもエミヤさん一人の屋台なので、そこまで大掛かりなモノは出てこないし、他の作品の料理人キャラも居ないので、目立たないように会場の隅に設営されていたりもしたのだが。
「あくまで発表がメインであり、食事についてはついででしかないということだな。……長時間のイベントとなるに辺り、飲食の提供が必要となった結果の苦肉の策でもあるようだが」
「……苦肉なんです?」
「ああ。何故ならこの屋台、私が急遽投影したモノだからね」
「…………苦肉過ぎでは?」
私もそう思う、と苦笑いをするエミヤさんに別れを述べ、館内の他の展示を確認しに移動することに。
基本的にどの展示も、現状稼働はしていないが……。
「……この卵型の筐体は?」
「子供向けのフルダイブ型筐体『コクーン』ですわね。主なターゲット層は小中学生ということになりますかと」
「こ、コクーンかぁ……」*5
「こっちはもしかして……」
「キリトさんは見覚えがあるかも知れませんわね。こちらはメディキュボイド型のフルダイブマシンですわ。将来的には医療用としての普及を目指していますが、今のところは単なる大型筐体ですわね」
「へ、へー……」*6
……どうにも、どこかで見たことのあるようなマシン達が盛りだくさんである。
どうやら今回の新作発表会、ソフトの発表に合わせてハードのコンセプトの展示も合わせて行われるらしい。
以前バレンタインの時、限定的ながらフルダイブ状態になっていた場所があったが……あれを前宣伝として扱うために、このようなマシーン達が用意されたとかなんとか。
……まぁうん、フルダイブ機能は人類の夢であるが、同時に厄介な技術の発端であることもまた事実。
ゆえに、
……その割に危ないモノがある気がするって?そのほら、技術に善悪は無いから……(震え声)
……なお、お昼ご飯としてエミヤさんから貰ったおかずクレープを頬張りなからの行動である、ということも付け加えておく。
「クレープって、あむ……甘いもののイメージが強いけど……んむ、こういう甘くないのもいいよね」
「甘くないのもありますよ?」
「謎ジャムは止めてくれんか(真顔)」*8
なんで唐突に秋子さんやねん。
……とまぁ、変なことを言うキリトちゃんにツッコミを入れたりしながら、あれこれと見て回った私たち。
そうしてそのまま、開演までの時間を予習に費やしていったのであった……。