なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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ややこしみの塊!

「……というわけで、マシュが休憩を終えて仕事に戻ったわけなんだけど」

「掻き回すだけ掻き回して行ったな、彼女は」

「まぁ、わりとそういう部分もあるってのは知っていましたから、特に驚いてはいませんけど?」

 

 

 苦笑を浮かべるエミヤんと、アヴェンジャーの方でよく見た例の表情*1をする邪んぬに囲まれ、微妙に満身創痍な私である。

 ……流石にあれだけあれこれ言ってれば、他の面々も私とマシュがどういう関係なのか、というのには気付いてしまったようで。……なんともまぁ、生暖かい(ニマニマとした)視線ばかり降ってくるものである。

 

 

「ええと……頑張ってください?」

「ありがとうルリアちゃん、私もこれから頑張っていくから」*2

「……そこで私の台詞を使うのはやめてほしいのだが」

 

 

 とはいえ、流石にエミヤんにその反応をされるのは癪に触るので、盛大に彼の行動を揶揄していく私である。

 ……おおっといいのか、あんまり調子に乗るとフリーザ様を持ち出す女だぜ私は?

 

 

「どんな脅し文句だ、どんな。……全く。とりあえず、君は戻らなくていいのか?」

「んー……とりあえずキリア達でどうにかなりそうだし、そっちに関してはいいかな。……ここをエミヤんに任せられるようなら、社長の確保の方に移ろうかなーとは思うけど」

「……ふむ?」

 

 

 はぁ、とため息を吐いたエミヤんが、私に『会場に戻らなくていいのか?』と問い掛けてくるが──向こうの私に確認したところ、人足も流石に少なくなってきたため、無理に戻らなくても大丈夫だろうとのこと。

 

 なので、こっちとしては向こうよりも別の用事──放っておくとまた逃げ出しそうな、ドクターウェストの確保に移るのがベストだろう、と答えを返しておく。

 そう、今回は確かに発表会の手伝いのために来た、というのが主目的だが……同時に、『tri-qualia』内にて起きた騒動の責任の所在を確認しに来た、という面も大きいのだ。

 

 前回──バレンタインに起きたのは、その前の年のバレンタインに現実で起きたとある事件の再現、みたいなものだった。

 いやまぁ、正確には事件そのものが再現されたわけではなく、その事件によって有耶無耶になってしまった、本来開催されるはずだったイベントの再現だったわけだが。

 ……ともあれ、あれを再現しようとした理由、ないしそれに近しいものを社長が知っている、という可能性は相応に高い。

 

 無論、疑似カーディナルシステムを採用しているあのゲーム(『tri-qualia』)が、勝手にネットなどから情報を集めてあれを再現することに着手した、という可能性もあるが……全く情報が零の状態から、あの事件とその影に消えたイベントを探り当てることができるか?……と問われると、正直首を捻らざるをえない。

 

 ゆえに、外部からなんらかの干渉──具体的には『このイベントとかいいんじゃない?』みたいな感じで、システムに提案をした()()が存在する可能性は非常に高い。

 個人的にはそれが社長、もしくは彼処の職員の誰かだと睨んでいるわけだが……だとすれば、彼らにはあのイベントを遂行する理由があった、ということにも繋がってくる。

 

 その理由というものを確認するためにも、社長ことドクターウェストには神妙にお縄に付いて貰いたいのだが……。

 

 

「一応、このあと発表会の締めに挨拶があるみたいだから、それが終わってから……ってことになるね」

「ふむ、発表会と言えば……今のところ、機械類の発表しかしていないように見受けられたが……」

「うん、だから締めの挨拶が長そうだなって……」

 

 

 流石に、やることが残っている状態で取っ捕まえた日には、こちらが悪人扱いされることは不可避。

 ゆえに、彼を取っ捕まえるなら全てが終わったあと──具体的にはこのイベントが完全に閉幕したタイミング、ということになるのだが。……これがまた、まだまだ先が長いのだ。

 

 エミヤんの言う通り、今回のイベントは本来『新作発表会』である。……この『新作』というのが文字通りの新作なのか、はたまた『tri-qualia』の新たなアップデートなのかは不明だが、なにより現状で一番重要なのは、現在その辺りの話が影も形もないということ。

 そう、ゲームソフトの発表ではなく、()()()()()()()()()しか行われていないのだ、今はまだ。

 

 まぁ、現状の技術ツリーでは本来指先すら届いているか不明な技術である『フルダイブ』形式のゲームハードという時点で、話題性も集客性も抜群であるというのは確かなわけだが……逆に言うと、これだけ盛り上がっておきつつ()()()()()()()()()ということにもなるわけで。

 

 

「なるほど、本命の前の発表の時点で話題をかっ浚ってしまっているうえ、その前座の時点で時間が掛かりすぎている……ということですね?」

「まぁ、そういうことになりますねぇ」

 

 

 アーミヤさんの言う通り、現状本命より前座の方が話題をかっ浚ってしまっているわけで。……それで本命の発表時間がなくなりそう、という辺りになんとも言えない苦笑が浮かんでくるが、とはいえそうやって笑ってばかりもいられない。

 

 

「って言うと?」

「さっきは時間が掛かりすぎて後日になりそうな感じだったけど……体験会の列の捌けが良くなったから、ギリギリ普通に発表できそうな時間に落ち着き始めてるんだよね……」

 

 

 首を傾げるクラインさんに説明するのは、予想が外れそうだ、という旨の話。

 

 さっきの食事中の会場の様子だと、どう早く見積もってもまだ二時間ほど掛かりそうな感じだったのだが……体験内容の変更などを行ったのか、一人辺りに掛かる時間が早くなっていたのだ。

 その結果、列の渋滞はすっかり解消し──冒頭に話した通り、キリア混じりでもどうにかなりそうな程度に収まりつつあるわけで。

 

 

「それって悪ぃことなのか?列が捌ける分には、話が早くなりそうなもんだけど」

「これがもうちょっとあとにずれてたらその通りだったんだけどね……なまじ余裕ができちゃったから、後日別動画で発表、とかしなくてよくなったっぽいんだよね……」

 

「……ええと、どういうことなんでしょう、アーミヤさん?」

「ええとですね……残り時間が十分しかないと思って話し始めるのと、残り時間が三十分ある状態で話し始めるの。……どっちが長話になりそうだと思いますか?」

「え?ええと……」

「その例ならば、話をする相手が話好き──朝礼の時の校長みたいなもの、と言う風に定めておくとわかりやすいかもしれないな」

「あ、あー……実際にそこで止めるかどうかはともかくとして、三十分あるなら三十分フルで話しそうな気がしますね……」

 

 

 今みんなが雑に解説してくれたが、制限時間間近で話し始めるのと、制限時間が大幅に残っている状況下で話し始めるの。……どっちが一つの話における情報量が濃くなるだろう、みたいな話というか。

 

 短く簡潔かつ重要な部分はきっちりと、みたいな話し方をするのは、とても難しい。

 相手に伝わりやすくするために例え話を入れると長くなるし、また簡潔に説明しようとすると専門用語による文章の省略が頻発し、却ってわかり辛くなるなんてこともある。

 ……要するに、物事を短く簡潔に伝えられるというのは、ある種の才能が必要とされる仕事なのである。

 

 これを言い換えると、『人は意識して話さないと、基本的に長話になる生き物』ということになる。

 ……で、これをさっきの制限時間云々の話と組み合わせると。

 

 残り時間が短い時、人はその時間内に収まるようにできる限り簡潔に物事を伝えようとする。……とはいえ、あまりに短いと本当に重要な部分しか伝えられない、なんてことも頻発するだろう。

 ──これが、さっきまでの状況。

 時間がないので詳細は後日、という形で一番重要なところだけ伝えておこう、となるパターンである。

 そもそも時間が押しているので、少なくともその日の制限時間を超過することはないだろう、というか。

 ……まぁ、見方を変えると後日発表という形で制限時間を捻り出している、ということにもなるのだが。

 

 対して今の状況。

 時間的な余裕が生まれたため、発表は恐らく予定通りに行われることだろう。

 しかし、よくよく考えてみて貰いたい。──前座の時点でこれだけの盛況である。そんな状況で、本命の紹介など行った日には……。

 

 

「ま、そっちも体験したい……なんて言い出す奴らが大半でしょうね。結果、本来話をするだけなら余裕だった残り時間が……」

「話プラス体験時間になって大幅超過する、と。……なるほど、確かに頭の痛い話だな」

 

 

 とまぁ、そんな感じ。

 

 無論、前座に対して本命が肩透かし、なんてパターンもあるため、一概には言えないわけだが……ここまで隠し立てしている以上、余程自信のある発表が控えている、と考えておいた方がいいだろう。

 

 そういう意味で、ドクターウェストを捕まえるタイミングが難しい、ということになってしまうのだった。

 

 

「え、なんでですか?」

「よく考えて見てください、ルリアちゃん。シルファさんは、そもそもどういう役割の方ですか?」

「……あ、発表会のお手伝いさんです、ね……」

「お仕事延長戦のお知らせでーす。……そういう意味でも今は英気を養いたいというか……」

「あー……そのだな、ピザでも食べるかね?」

「頂きます……」

 

 

 というか、さらに体験会上乗せとなれば、下手すると朝までお仕事コースである。

 ……見えてる地雷、とでもいうべきか。

 思わず深々とため息を吐いてしまう私に、エミヤんは努めて優しい声音でこちらにピザを薦めてくるのであった。

 むぅ、優しさが痛い……。

 

 

 

 

 

 

 そんな感じで、これからの事態に備えていた私だったが。

 そこで明かされた新作は、人々を混迷の渦に巻き込んでいく、とんでもないモノなのであった。

 

 ──曰く、()()()()()()()()()()

 専用アイテムである()()()()()()を持った者のみが挑戦できる、デスゲームをモチーフにした『tri-qualia』のアップデート。

 フルダイブ専用作品であるそれは、驚きと喜びと困惑を以て、人々に迎え入れられるのであった。

 

 ……いや、突っ込んでいい?どっからどう見ても厄ネタじゃねぇか!?*3

 

 

*1
斜め上に視線を飛ばしつつ、口をへしゃげているあの表情

*2
『fate/stay_night』のとあるルートにおけるエミヤの台詞から。満面の笑みを見せるエミヤが見れるのはここだけ!……なお、この笑顔を検索する時に『大丈夫だよ遠坂』というワードを使うと、何故か満面の笑みのフリーザ様が出てくる

*3
「まさに我輩の如き綺羅星の輝きであーる」「うふふ♡地に落ちた星の間違いではありませんこと?」

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