なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……うん?なんというか普通のお店だね」
「出資者がなりきりやってる人、ってだけの感じの店もあるから。……別に店のご主人が憑依者のお店でも構わないわよ?裸に剥かれたり*1、口からビーム出したり*2、いきなりダルシムにされてもいい*3のなら、だけど」
「……今のテンションでそういうのは勘弁願いたいっす」
「正直で宜しい」
入ったお店は、普通の定食屋っぽいところ。
……気のせいじゃなければサラリーマンっぽい人が多いね、お客さんに。
いやまぁ、普通にご飯食べてる人に何か用事があるわけじゃないんだけどさ。……うん、見間違いじゃなければゴローちゃん*4が二人居ない……?
「実写版と漫画版だね。……よく喧嘩にならないなあの二人」*5
「まぁ、その辺りは大人の余裕と言うことでしょう。店員さーん、すみません注文お願いしまーす」
「はーい、お待たせしましたー」
雑に流されたゴローちゃん達は置いといて、メニュー片手に何を食べようかと選ぼうとして。
「え、えっと。お客様、私の顔に何か……?」
「いや、自分が知らないだけで、実は憑依者だったりしないかとちょっと気が気でなくて」
「……誰も彼も憑依者なわけないでしょう、しっかりしなさいな」
「いや分からないでもないよ?全部の創作を網羅してる人なんて居ないだろうから、超マイナーなやつとかだと紛れ込めちゃうかも知れないしね」*6
「疑いだしたらキリがないでしょ、いいからさっさと選ぶ」
「「はーい」」
店員さんがわりと美人だったので、実は憑依者じゃないだろうな、とちょっと疑ってしまった。*7
……五条さんもノってくれたけど、ゆかりんにやんわり窘められたので仕方なくメニュー選びに戻る。
そんな俺達を見て、楯が小さく笑みを溢していた。
「……えっと、マシュちゃん?何かおかしかったかしら?」
「いえ。お二人の相手をする紫さんが、なんだかお母さんみたいだな……と思ってしまいまして」
「おか……っ!?……ま、まぁ?保護者っぽいことばかりしてきたから、ちょっと気を使う癖がついているような気はするけれど……」
「なんと、ゆかりんが照れてるよ五条さん」
「マシュちゃんは素直だからねぇ。ゆかりんも無下にはできないってわけだ」
「も、もう!からかわないでちょうだい!」
「あ、いえ!私も紫さんを困らせようとして言葉にしたわけではなくてですね!?」
わたわたと顔を赤くする二人は、大変可愛らしゅうございました。*10……他作品間の百合*11って地雷要素かね?*12
「なんか今、セイバーさん*13とメルブラ*14の方のシオンさん*15が、口調被り*16で悩んだ挙げ句に銀さん*17に相談して、結果として語尾に犬語と猫語を付ける*18ことで遠野君*19と衛宮君*20をノックアウトしてた気がするんだけど……」
「……ここ、アーネンエルベ*21だったかしら?」
「お一つ隣の世界だったんじゃない?」
「……いや、居た気がするんだけどなぁ」
千鍵ちゃん*22と会話する銀さんとか言う、ちょっと意味の分からないものが見えた気がするんだけどなぁ……?
うーん、白昼夢だったのかもしれない。いつの間にか居なくなってたし。……居なくなったと言えばゴローちゃんずもいつの間にか居なくなってたな?
「あのお二人なら、お互いにエジソン*23さんとテスラ*24さんのように、視線の火花を散らしながらお帰りになられましたよ」
「……やっぱり仲悪いのかあの二人」
「ふん、つまらないことで喧嘩するのね、人間って」
「つまんないことって言うけど、そういうつまんないことにこだわるのが、ある種人間のいいところでもあるからねぇ」
「そう、その愚かさはいつまで経っても変わらないのね。……まぁ、いいわ。私には関係ない事だから」
「豪気だねぇ、君。……ところで、一ついい?」
「なに、銀髪の。……もしかして私に文句?いい度胸してるじゃない」
「……あ、あれ!?虞美人さん?!なぜここに?!」
「やっと気付いたのね後輩。そうよ、アンタの先輩、虞美人よ。さっきからずっと居たのに、反応の一つも寄越さないとか随分偉くなったものね、マシュ」
「……え、なんで唐突にパイセンがっ!?」
「パイセン言うなっ」
……すっごい自然に会話に入ってきたから気付かなかったけど、なんでここにいるんですか貴方?!
そう俺が戦く先では、珍しくちゃんと服を着ている虞美人*25パイセン*26の姿が。……まともな服着てるのもよく分からんし、眼鏡掛けてるのもよくわからんぞこれ?*27
「そこの妖怪に、服くらい着ろって喧しく言われたのよ。別に、項羽*28様以外の人間に幾ら見られたって、何も減るもんじゃないって言ったんだけど」
「貴女が良くても貴女の憑依相手が良くないのよ、痴女呼ばわりとか末代の恥*29でしょうどう考えても!」
「……アンタ、妖怪の癖に随分常識的なのね*30。それともなに、最近の妖怪*31の間ではそういうのが流行ってるの?」
「うわぁ、見事なまでの傍若無人パイセンムーブ……」
「はぁ?あの呑んだくれ女がどうしたってのよ?」*32
「ぐ、虞美人さん!ややこしくなるのでとりあえず一旦落ち着いて下さい!」
「……まぁ、マシュの頼みだと言うのなら、聞くのも吝かじゃないけど」
……めっちゃパイセンである。いや、ほっとくと怪文書ムーブしかねないのでまだ安心はできないけど。*33
視線を横にチラリと向けると、話に取り残された五条さんが、一人寂しくオレンジジュースをストローで飲んでいた。
……ファンには見せられない感じの、何とも言えない哀愁漂う姿であった。
「……いやまぁ、なんとなくは分かるんだよ?虞美人と言えば覇王項羽の伴侶だってことくらい、
「……?……あっ、そっか!パイセン
「……ふむ?お前、呪術師だったのか。だが──随分と、力に枷が掛かっているようだな」
「わお、そこまで見抜かれちゃうと
「ちょちょちょちょーっと!!待った!両者待った!説明!説明するから落ち着いて!!」
五条さんがにこやかなのに目が全然笑ってないのマジで怖いし、パイセンもナチュラルに上から目線だから喧嘩売ってるみたいなもんだし!
これ私がちゃんと仲裁しないとアカンやつ!
「……まぁ、後輩が言うなら、待たなくもないけど」
「じゃあ
「は、ははは。うれしいなー、話をちゃんと聞いてくれる人達で良かったなー!」
「ああ!?せんぱいが何か辛いことを思い出したかのように遠い目を?!」
「……スレ主って大変*35だものね、よくわかるわ」
よーし、キーア頑張って解説すっぞー!ははははー!(ヤケクソ)
「……はぁ、精霊種*37、ねぇ?……そっちのトップって、結構ぶっ飛んでる?*38」
「とりあえず、逸話が少ないならいくらでも盛ってもいい……って思ってる節はあると思う……」
「ふん、他所の世界の呪術師ね。人の分際で無限を使おうなどと言う傲慢、まさに厚顔無恥としか言いようがないけれど──その研鑽には、理解を示さなくもないわ」
「ああ、パイセン的には無限ってところのが引っ掛かるのか……」
かいつまみ・まとめて・可能な限り分かりやすく二人への説明を終えた俺。
……いや、頑張ったと思うよ俺?特にパイセンへの説明。基本的に後輩の言葉は聞いてくれる方の人だけど、それでも認識のズレが結構あるから、言葉選びに苦慮するはめになったし。
「……そういえば、虞美人さんはどうしてここに?私達に何か御用事があったのでしょうか?」
「……ああ、そうだった。そこの妖怪。呼び出しよ、アンタ宛に」
「私に?……あ゛」
「どうしたゆかりん、何時もの貴女らしくないダミ声なんて出しちゃって」
「……ごめんなさいねキーアちゃん。私これから用事があったことをすっかり忘れていたのよ。悪いのだけど、ここで抜けさせて貰うわね?」
「え、あちょっ!?」
「……止める間もなく、下に落ちていってしまいましたね、せんぱい」
ゆかりんが若干顔を青くしつつ、こちらの引き留めもスルリと流してスキマに落ちていくのを、何とも言えない表情で見送った私達。
「じゃ、私の用事はそれだけだから」
「あ、はい虞美人さん。ありがとうございました」
そんな空気を完全に無視して、やることはやったとさっさと帰っていくパイセン。……いや、なんだったんだあの人……?
「さてと。なーんか、また俺達だけになっちゃったねぇ?」
「説明はまぁ、大体終わってるからいいけど。これからどうしたものかねぇ……」
そもそも、この施設の案内の方はろくにして貰ってないので、このお食事処から外に出るのも憚られるわけで。
……ここに入るまえにチラッと見ただけでも、すっごく広い施設なのは分かったし。変に出歩くと、それだけで迷子になりそうだ。
「おや、この辺りでは見ない顔。もしかして、新顔さんですか?」
「あ、はい。最近こちらにお邪魔させていただきました、マシュ・キリエライトです。こちらはせんぱいの、キルフィッシュ・アーティレイヤーさん。……申し訳ありませんが、そちらのお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
そんな風に悩んでいたら、背後から声を掛けられる。
楯がこちらの紹介をしているのを聞きながら、背後に振り向く。
……なんというか、どこかで聞いたことのある声だな、と思ったからだ。具体的には、さっきまで聞いてたものと同じ気がしないでもない*39ような声だったからだ。
そして、俺が振り向いた先に居たのは──。
「これはこれはご丁寧に。申し遅れました。私、
「……ゆかりんじゃねぇか!?」
「は、はい?」
そう、