なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……ううーん。正直な話、これといって上手いと言える案が出てこないというか……」
机にぐでっ、と顔を伏せる私。
そのまま顔だけを上にあげ、他の面々を眺めてみるが……まぁ、大体みんな同じ顔。
憔悴こそしていないものの、『
……まぁうん、キリトちゃんとハセヲ君に関しては、相手が一人きりだしすぐに決まるかなー、なんてことを思いながら、気分転換も予て改めて考え直したのだけど……これがどうにも甘かったようで。
「……そもそもの話、チョコのお返しってなにが良いんだ?」
「ん?んー……一応、同じようにお菓子をお返しするのが一般的だと思うんだけど……贈るものによっては意味が違ってくるんだよねー」*1
「……意味?贈るもので意味が変わってくるのか?」
「バラを贈る時に、その本数で花言葉が変わる……という話を聞いたことはありませんかな?それと同じように、贈るお菓子の種類によっては、相手に対してどう思っているのか?……みたいな意味が付随することがあるのですよ」*2
「……いや、当たり前に話題に出されたけど、バラ云々の方も初耳なんだが」
「まぁ、普段は意識しないからねー」
一番簡単そうなキリトちゃんのお返しについて話していた時、話題に上がったのは『お返しする物によって意味が変わる』という話。
……バラの花言葉はわりとややこしく、色や本数だけではなく、その状態によっても変わるのだという。
例えば赤いバラを一本贈るとすると、その花言葉は『赤』と『一本』の花言葉が適用され、『一目惚れをしました、貴方を愛しています』という、一般的にバラを贈る時にすぐ思い浮かぶような意味合いが付与される。
……これが『百八本』のバラならば『結婚してください』というプロポーズの言葉になるし、はたまた青色のバラなら『奇跡』とか『夢は叶う』なんて意味になる。
枯れたバラにも花言葉があったりする辺り、バラというのはとても奥深いものなのだ。
……で、流石にそれには劣るものの、ホワイトデーに贈るお菓子にも、個別に意味というものが付与されているわけで。
例えばよく贈り物にされるクッキーだと、その意味は『貴方とは友達のままで』となる。
クッキーはよく贈り物にされることもあり、特別な日であるホワイトデーにもそれを贈るということは、すなわち相手に
因みに友チョコ交換などもあるチョコレートだが、ホワイトデーに渡してしまうと『貴方の気持ちは受け取れない』なんて恐ろしい意味になるのという。
これは恐らく、扱いとしては
なので、間違ってもホワイトデーにチョコを渡す、なんて暴挙を侵すことだけは止めた方がいい……という話になるのであった。
「……怖っ!?」
「うんうん、怖いよねー。男側はあんまりそういうの気にせず渡しちゃうけど、向こうはその『意識していない』ことを無意識が現れた結果、なんて風に捉えちゃうから要注意だねー」
「この場合ですと……やはりクッキーが当てはまるのでしょうね。相手のことを特段意識せず、とりあえずお返しを渡そう……と思ったのだろうということが、如実に現れているとも言えますし」
なおこのお菓子の意味、バレンタインで渡す時には意味が違うモノと意味が同じモノがあるので、わりと注意が必要である。
具体例をあげるなら、チョコはわかりやすく違い、クッキーは大体同じ……みたいな感じ。
まぁ、バレンタインの場合はチョコクッキーみたいな形になることも多く、そこまで単純に答えられるモノではないのだろうけど。
で、ここまで話題にしたところで、キリトちゃんがすっかりホワイトデー恐怖症になってしまったのである。
……いやまぁ、気持ちはわかる。高々贈り物程度にここまであれこれ意味があるとなると、怖くなってプレゼントしにくくなるっていうのは、ね?
まぁ、そういう人のために店員さんがおすすめを教えてくれたりするわけだし、そもそもここで出たそれぞれの意味にしたって、酷い言い方をすれば世間で勝手に決められたモノなので、気にせず自分が選んだものを渡してもいいとは思うのだけれど。
ほら、渡す時にちゃんと思いを伝えれば、勘違いされずに済むし?
「それが一番難しいと思うんだが……」
「あれー?!」
なお、キリトちゃんからは不評であった。
……あーうん、ここのキリトちゃんはキリトではあるけどキリト
まぁそんなわけで、キリトちゃんの話は一先ず脇に置き、代わりにハセヲ君の話に移ったのだけれど。
「……アレに対してなにを贈ればいいのかわからん」
「あー……」
ノリでエミヤんに師事をお願いして、グリーマ・レーヴ大聖堂チョコケーキでも作れば良いのでは?……なんて言ってしまった私たちだが、実際問題そんなん無理なのはわかりきった話。
いやまぁ、リリィはわりとハイスペックなのでそりゃやれるのだろうが……こっちは素人も素人、ちゃんとしたモノを返せるようになるには、それこそ一月程度では全然足りないことであろう。
そうなると返せるのは来年のホワイトデー、なんてことになりかねないわけで。……まぁ、来年のバレンタインのお返しへ向けて準備をする、というのは悪くないと思うが、その場合今年の分どうすんの?……という問題が返ってくる。
結果、こうしてハセヲ君の贈り物議論が再燃したものの……アレに釣り合うものってなんだよ、と改めて頭を抱えることと相成ったわけである。
いやまぁ、相手がリリィなので三倍返しとか気にしないでもそう問題はないと思う。……返す側のハセヲ君が気に病まないという保証はないが、最悪適当にお返しを用意して渡すだけでも問題はないだろう。
──実のところ本当の問題は、リリィのサイドに居る人物達なのである。
「……オグリとXちゃんとかかぁ」
「鬼門はX殿ですね。坂田さんがやらかしてくれれば目はありますが……」
「あの人はあの人で、決める時は決めるからなぁ」
そう、確かにリリィは一人であのチョコケーキを作り上げたが、誰も見学者が居なかったかと言われればそうではなく。
リリィの親友の一人であるオグリと、同じ顔のよしみで見学に来ていたXちゃんなど、複数の女性陣が
そんな状況下で、生半可な贈り物を渡したハセヲ君はどうなることだろう?……最悪ボロ雑巾、良くて女性陣からの侮蔑の視線である。
少なくとも、アレに見合うモノを渡さなければ「へー、ふーん?」みたいな反応を貰うことは間違いあるまい。
いやまぁ、それにしたってハセヲ君が気にするか、と言われれば微妙なところではある。……あるのだが、周囲がそんな反応をした結果、「やりすぎたかなぁ」なんて風に落ち込むリリィの姿を見た時、ハセヲ君が本当に気にせずに居られるかと言うと……ねぇ?
「あーうん、流石にそれはハセヲも凹む。寧ろ凹まなかったら絶交する」
「……おい」
「いやまぁ、世間一般的にはこうして他の女の子と遊びに来てる時点で、周囲からの視線は
「都合の良い時だけ女面してんじゃねーよてめぇら!?」
「「きゃーっ☆」」
思わずキリトちゃんと一緒に「こわーい」とか言って寄り添ってみたが……まぁうん、ハセヲ君の今の立場がわりと微妙、というのは本当の話で。
付き合うのかなー付き合わねーのかなー、みたいなのは女の子達の大好物。それがリリィやハセヲ君ならばなおのこと。……そういう意味で、周囲からの注目度はとても高いのである。
そんな環境下で下手など打てば、それからの生活に影響することは必至。……それを見て曇るリリィなんて見た日には、ハセヲ君の評価も自身のテンションも乱高下である。
そういう意味で、わりと失敗できない状況に追いやられているのが、現在のハセヲ君ということになるのであった。……世知辛ぇ。
「……最悪、ここは高級店のお菓子を贈る……などしてごまかすのも手ではないかと。とりあえず高いものを渡しておけば、リリィ様はともかく周囲の方々からの評価は下がらないでしょうし」
「高級菓子、ねぇ……」
「渡すものの種類も考えた方がいいねぇ。さっきも言ったけど、下手にクッキーなんか渡すと周囲からの非難の視線からのリリィ曇るルート確定だし」
「めんどくせぇ……」
この話のなんとも言えないところは、現状リリィ側に恋愛感情が全くないことにある。
……いやまぁ、好意という意味では欠片もないわけではなく、それがいつしか恋愛感情になる可能性が一切ない、なんてことは言えないわけなのだが……少なくとも、外野がやいのやいの言うものでは本来ないのは間違いない。
だからといって周囲が止まるか、と言われればそれはノーであり、かつそれによってハセヲが酷い目にあうと合わせてリリィが曇る。
……で、こういう場合彼女が曇ると
そんなわけで、細心の注意を払いつつ親しい友達(恋愛に発展しないとは言っていない)程度の距離を保てる、なんか良い感じの贈り物を探す……などという、難易度インフェルノでは?……みたいなミッションに挑む羽目になったハセヲ君を慰める私たちなのでありましたとさ。
……これ一応私たちの話の合間の気分転換のはずなんだけど、余計に心労溜まってる気がするのはなんでなんだろうね……?