なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
合体事故もいい加減にしろ!
「…………?????」
「マシュが困惑してる!こっちがびっくりするくらいに!!!」
「そういうアンタもおかしくなってるわよ、色々と。……にしても、全部混ぜとは思いきったわね、アイツ」
結局のところ、発表された新作は新作でも、アップデートの方だったわけだが。
いや、なんて?……と思わず聞き返してしまうネーミングのそれは、『浮遊城・アーカムシティ』。*1
……名前から察するに『ソードアート・オンライン』と『クトゥルフ神話』が混じってしまっているわけだが、それだけに飽き足らずそれに挑戦するためのアイテムに『ライダーパス』までくっ付けてくる念の入れようである。
なに?なんなの?人の胃袋を破壊する気満々なの?
……ってなくらいに胃の痛い案件だが、一応デスゲームをモチーフにしてはいるものの、脳がレンチンされる危険性はないとのこと。……ほんとにー?
いやまぁ、その辺りの事情を隠すつもりなら、そもそもこんな名前を付けるわけがないってのもわかるのだが。……世間様からしてみれば、あまりにも縁起が悪すぎる名前なわけだし。
「まず浮遊城って時点で例のデスゲームを思い出すから一アウト。次のアーカムシティは例の神話で何度も出てくるところだからツーアウト。で、最後のライダーパスだけど……これに関してだけは同名のアイテムが
「全部でツーアウト……まぁギリギリシャバにいられるレベルですねぇ」
パイセンが改めて並べてくれたが、目立つ名前に組み合わせられた要素の二つがド級のアウトなのに対し、『ライダーパス』だけちょっと厄物度数が下がっている……というのは確かな話。
いやまぁ、過去への移動に必要だったりライダーへの変身アイテムだったりと、細かく見ていくと『あれ?』とはなるものの、他二つが聞いただけで『アカン』ってなるのに比べれば、遥かにマシなのは間違いないわけでして。
その辺り、設定途中に理性が働いたりしたのだろうか、と思わないでもない私である。
ただまぁ、そのネーミングの不穏さを吹き飛ばすくらい、お出しされたプロモーションムービーの出来映えは凄まじいモノであった。
映像の進化はそろそろ頭打ちで、もう画像の綺麗さを誇るのは無理がある……みたいな論調もあったが、これが中々どうして。
あの映像を見せられてなお、映像技術の進化はもうないと言える人間がどれほど居るだろうか?
……それくらいの迫力を持ったそれは、しかし迫力だけに留まらない。
「……SAOの作中でゲームが出た時みんなが挙ってやった、って話があったけど──うん、それに納得しちゃうようなクオリティだったね」
「現実よりも素晴らしいRPGはない、なんて言葉が有りますが……あれはそれを越えたと言っても過言ではありませんでした」
放心したようにマシュが呟いているが、まさにその通り。
現実を越えたリアリティ、とでも呼ぶべき熱気を持ったそれは、確かに誰もが心奪われても仕方ないと言えてしまうほどのもの。
……まぁ、それを味わうためには現状、あのバカデカイコクーンとかメディキュポイドとかが必要になってしまうわけなのだが。
とはいえ、物の大きさや価格が問題になるのか、と問われると……一度下火になり掛けていた体験会が再燃していることを思えば、なんとも断言し辛いのは確かだろう。
それくらい、さっき私たちが見せられたものは凄まじいモノなのである。それこそ、私たちもちょっと遊ぶ側に回ってみたくなる程度には、だ。
「まぁ、そうなってくると俺達の現状が色々引っ掛かってくるんだがな」
「なんだよねー……」
とはいえ、その熱気のまま行動できない理由、というのも一緒に付いてきている。
そう、先程までの体験会によって『逆憑依』となってしまった人々である。
彼ら彼女らが今のように姿を変ずる理由となったのは、どう考えてもあの筐体達でゲームをしたことにある。
すなわち、例えデスゲームでなくともなにかしらの事件が発生する可能性はある、ということにもなるわけで、ちょっとした躊躇が生まれるのも仕方のない話なのであった。
……まぁ、『逆憑依』の発生理由の一つに思い至れば、その辺りは無用な心配であることも理解できるのだが。
「……そういえばアンタ、さっきもあの偏屈男にそんな感じのこと言ってたみたいだけど?」
「偏屈男?……ってああ、エミヤんですね?ってことはもう一つの方か」
「……?そういえば、その『もう一つ』というのはなんなのですか?」
で、そこに触れた以上、パイセンが耳聡くその辺りを問い質してくるのも予定調和なわけで。
特に隠し立てする必要のある情報、というわけでもないため、あっさりと説明する私に他の面々はというと。
「……ええと、本当に?」
「まぁ、正直これに関しては
思わず、困惑と共に声を上げる始末である。
まぁでもうん、気持ちはわかる。この現象にそんな意味が合っただなんて、誰が気が付けるというのか。
実際私も、キリアにたまたま指摘されたからこそ取っ掛かりに気付くことができただけで、自力でそこにたどり着くにはまだまだ時間が足りていなかったことだろうし。
……ともかく、もう一つの理由──【失われる筈のモノの保存】という発生理由に間違いがないのであれば。
彼らがこのゲームを人々に広めようとしているのは、もしかしたらその喪失を招く大きななにかが、近い内にやってくることを察知したから──その厄災に対策をするための隠れ蓑、なんて可能性もあるのかもしれない。
その辺りも含め、社長には是非に話を聞きたいところなのだけれど……。
「……逃げたな」
「はっ?……あっ、マジで居ないじゃないのアイツ!?」
「あっ、コヤンスカヤさんもいつの間にか姿がありません!?」
コンパニオンを雇って案内をさせることにより、自分達が居なくとも体験会を滞りなく進めることができる……。
恐らくそこまで考えて行われたのであろうこの体験会は、いつの間にか主催者不在のまま、客達の熱気を受け止める形となっていたのであった──。
「──まぁ、そういうわけで。責任者も居なくなっちゃったし、行くとこも無さそうだったんで連れてきたのがこの面々ってわけですよゆかりん」
「あーうん。これまたたっぷり追加メンバー引き連れて来たのね貴女……」
はてさて、体験会が大盛況かつ主催者不在のまま終わりを見せたその次の日。
向こうで『逆憑依』になってしまった面々……クラインさんを筆頭にルリアちゃん・雪泉さん・アーミヤさん・ぬの五人をなりきり郷に招待した私は、その足で責任者へのお目通しも済ませるため、遥々ゆかりんルームへと足を運んだわけなのでございます。
あ、因みにだけど会場の片付けに関してはまた別の業者を雇っていたようで、コクーンやメディキュポイドをちょろまか……げふんげふん。
筐体のサンプルデータを取るような暇はなかった、ということを合わせてここに記させて頂きます。
それと、互助会から来るはずだった最後の一人のメンバーも、結局最後まで姿を見せなかったってことも、一応。
「ふぅむ、寝坊かなにかって聞いてたけど……」
「最後まで来なかった辺り、一度眠ると中々起きないタイプの人かなーって予測はできたけど。……誰一人として教えてくれなかったから、結局誰が来るんだったのかは不明なんだよねー」
どうにもスッキリできない結末だが、多分フラグの立て方が甘かったのだろう。
……とはいえこっちに来ている面々も重要であるため、その辺りは一先ず脇に置いておくことにする私である。
「重要と言うと──アーミヤちゃんが一番なのかしら?」
「えっ、ええと……私が、ですか?」
「ええまぁ。『逆憑依』の病気は酷くもならず、かといって介抱にも向かわないっていうのが定説だったけど……適切な
「まぁ、その適切な継ぎ接ぎとやらが全くわからん、ってんでしばらく停滞してたんだけどね」
「あ、なるほど。だから私なんですね」
「そうそう。本来なら発症しているはずの貴女が、何故かこうして健康体と呼んで差し支えない状態になっている。……言い方は悪いけど、サンプルとしてはこの上ない状態よね」
まず、この五人の中で一番優先度が高いのはアーミヤさんである。
本来の彼女達が持っている技能がどこまで使えるのか?という影響規模の話からすれば、一番影響が大きいのは恐らくルリアちゃんと言うことになるのだろうが……そこに関しては五人が協力的であるならば無理をする必要もない、という話にもなっている。
性格的な危険人物というわけでもないのなら、相手に無理強いをする形になる検査は後回しにすべきだろう、ということだ。
とはいえ、それでは済まない重要度の人物、というのも存在している。
それが、アークナイツ出身者の中で現状
本来、一部の特殊な例を除き、アークナイツに出てくるキャラクターのほとんどは『鉱石病』という病に罹患している。
患者が存命の内は他者への接触感染はしない、と言われているそれは、しかしその病の原因となる『源石』の特異性ゆえ、どうにも偏見を呼ぶものとなっている。
そういった視線から彼らを守る意味も含めての隔離処置が施されているのが、ここにいるアークナイツ勢なわけだが……。
アーミヤさんの存在は、その現状を打破するきっかけとなりうる、とても重要な人物なのである。
そう、『鉱石病』の実質的な無効化を達成しているとおぼしき彼女は、まさに感染者達の希望の星と呼ぶべき存在なのだ。
つまり、
「アーミヤ最高!アーミヤ最高!貴方もアーミヤ最高と叫びなさい!」
「えっ、えっ!?」
何故だか胴上げの流れになった結果、アーミヤさんをわっしょいわっしょいと持ち上げる謎の集団が生まれることとなるのであった。
……ははは、たまにはなんにも考えずに適当するのもいいものだな!()