なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なんでこんなことに……というか、胸囲って測る意味あるんですかぁ!?」
「あはは……」
悔しげにそう述べるルリアちゃんに、思わず乾いた笑いを返してしまう私である。
……まぁうん、胸にコンプレックスがあると胸囲測定とか地獄以外の何物でもないよね。
「だからってわけじゃないけど、今の学校だと『胸囲』の測定は必須じゃないらしいよ?」*1
「ええっ!?そうなんですか?!」
「うむ。どころかさっきやってたののほとんどは必須じゃないです」
「ええーっ!!?」
そんなわけで、ちょっとした助け船を出してあげる私である。
胸囲を測る意味なんてないんじゃ、と言ったルリアちゃんの言葉は実は正しく、学校の身体測定でなにを測るべきなのかを示した『学校保健安全法施行規則』によれば、検査の必要性を示されているのは十一種。
それぞれ『身長・体重』『現在の栄養状態』『脊柱・胸郭の疾病・異常の有無、並びに四肢の状態』『視力・聴力』『目の疾病・異常の有無』『
……見ればわかる話だが、さっき計測していた胸囲や握力、肺活量などは必須の検査項目には含まれていないのである。
まぁ、そう記載された次項の部分で、必要とあればそれ以外の検査項目を追加してもよい、と記載されていたりもするのだが。
とはいえまぁ、学校の身体検査という範囲においては、胸囲だの肺活量だのの検査は省いてもよい、というのは本当の話。
ついでに言うなら『結核に罹患しているか』に関しては小・中学生までは毎年検査が必要だが、高校生以上になると一年の時だけでよい、みたいな例外処理があったりとか。
はたまた、特定の学年の時には検査を省いてもよい項目があったりと、結構柔軟な面も多いようだ。*3
……ともかく。
測らなくてもよいという後ろ楯を得たルリアちゃんが、我が意を得たりとばかりにシャドーボクシングまでし始めた辺りで種明かし?である。
「まぁこれ、あくまでも学生の健康診断に関するあれこれ、なんだけどね」
「へぐっ!?」
「ああ。さっきの座高なんかも、学生自身に強制的に測るように迫るのはアレだが、成人が自分から測る分には特になにもないからな」
「ほげぇっ!!?」
……まぁ、大人の健康診断に関しても、必須項目については指定されているので胸囲を測る必要性はない、というのも間違いではないのだが。*4
とはいえ、今回のこの健康診断は記念すべき一回目。
……言うなれば初診であるため、これから普通に健康診断を行う時の基準値を測っておく必要性があるのも確かな話なわけで。
そういう意味で、今の自分達の身長・体重などが
あとまぁ、『逆憑依』って存在そのものがアレなこともあるので、微細な変化が見逃せないなんて部分もあるかもしれない。
「うう……微細な変化が見逃せないとは……?」
「例えばアーミヤさんとか、元の所では鉱石病の罹患者でしょ?」
「ええと、はい。今は小康状態というか、本当に私は鉱石病だったのかと心配してしまうほどの健康優良児ですけど……」
その例として一番わかりやすいのが、これまたアーミヤさんである。
彼女は本来『鉱石病』という特殊な病に罹患しているのだが、ここにいる彼女にその様子はない。
……これが綺麗さっぱり病気の痕跡がないのであれば問題ないが、潜伏型の病気のように隠れている、というだけの可能性もある。
その場合、原作のように血中の源石密度を測ることでそれを確認する、ということになるわけだが……これは言わば、普通の健康診断における血液検査の延長線上にあるもの、と見なすことができる。*5
要するに、日頃ちゃんと健康診断を行っていれば変化に気付ける、というわけだ。
彼女の場合は隠れているかもしれないものの発見、という面が強いが……他の人の場合も、基本的には似たようなもの。
どこかの世界から
「わりと変な病気が出てくる作品、ってのはそれなりの数があるからね。……まぁ、病気以外にも変な呪いとかもあるわけだけど」
「……ええと、そのお話と胸囲の測定になんの関係があるんでしょう……?」
「おっと、ルリアちゃん知らない?世の中には胸が大きくなる病気とか呪いとかもあるんだぜ?」
「ええっ!?」
とはいえ、どうにもピンと来ていない様子のルリアちゃんである。
なので、ここで直接的な話に移行。
世の中には胸が大きくなる病気や、はたまた胸を大きくするような呪いというものが存在しているのである。……病気に関しては実在したりもしてるし。
それが、乳腺肥大症と呼ばれる病気である。
胸が大きくなる病気とか、夢のような病気では?……と安易に飛び付いてはいけない。
この病気、なんと男性にも発症するものなのである。
もうこの時点で嫌な予感がするかもしれないが、もう少し詳しく。
基本、思春期の女性の胸が大きくなるのは、生物学的に見てもおかしくないため問題ではないのだが……時に思春期よりも前の段階で胸が大きくなることや、はたまた思春期の男性の胸が大きくなる、などの異常が発生することがある。
胸が大きくなるのは、基本的に女性ホルモンの働きによるものだが……思春期の女性以外で胸が突然大きくなるなどの異常が起きた場合、それは
で、そういった異常が起こるパターンを探ると……卵巣や精巣などのホルモンバランスを司る部位の異常や、酷い場合だと脳に異常がある、なんてことに繋がるわけである。
「ひえっ」
「だからまぁ、胸囲の測定にも服のサイズを探す以外の意味もある、ってわけだね。……それと現実に起こる病気じゃない、創作由来の病気だとなにが原因かなんてわかったもんじゃなかったりするし」
それこそ呪いパターンだと、謎の土偶に操られて胸が大きくなる、なんてこともあるわけだし。*6
……とまぁ、別に誰かを貶めたり笑ったりしたくて測っているわけではない、というお話なのでしたとさ。
「理由とか理屈とかはわかりましたけど……」
「納得はできないって?まぁ今回は初診だから仕方ないってことで。次回以降は必須項目以外は拒否できるようにするって言ってたし」
「むぅ……」
大して変化しないモノを毎度測ることほど無駄なこともないからな、なんてロー君が言ってたことは口にしない賢いキーアさんである。
……いやまぁ、本人に喧嘩を売ってるつもりはなく、本当にただ単純に『逆憑依』の身体変化なんて微々たるものなんだから、あからさまに変わった時以外は省略しないとやってられない……っていう、人手不足を嘆いただけの言葉なんだろうけども。
それを聞いた周囲がどう思うかってのは、また別の話……ってね?まぁ実際、それを聞いた私も「貴様ーっ!!侮辱するかーっ!!」って殴りそうになったし。
向こうも「へっ?あっ?えっとすまん……?」ってなってたし。
……誰も幸せになってねぇ……。
ともかく、不機嫌そうなルリアちゃんを宥めつつ、次の診断に向かう私たちである。
はてさて、次の検査はっと……。
「おっと、キーア嬢か。ハロウィンぶりかな?」
「おおっとトキさん。……トキさん?」
「そこで首を傾げられても困るわけだが」
そう呟きながらやってきた部屋の中にあったのは、人が一人寝そべられるベッドが一つと、その近くに据え置かれた机に向かう一人の男性。
……まぁ特に捻りもなくトキさんだったわけなのだが、このシチュエーションは一体?正直嫌な予感しかしないんですけど?
こちらの困惑に苦笑を返すトキさんは、「なに、私にできることなどそう多くない」と言葉を返してくる。
「我が北斗真拳は人体を壊すための流派。……それすなわち、人体を癒す術にも優れるということ。そういうわけだから、ここで行われることは単純明快。病気の有無を探るため、ちょっと秘孔を突くための場所だ」
「ちょっとで突いていいもんじゃない気がするんですが!?」
そうして彼から返ってきたのは、ここで行うのはいわゆる足ツボマッサージみたいなものだ、という信じられないような台詞なのであった。
……いやまぁ、できてもおかしくないけどさぁ!?
それ多分痛みを与えないようにするとか変な効果が付与されて、痛いのに顔は笑うとかそんな地獄絵図になるやつですよね?!
そんな私の抗議(?)は華麗にスルーされ、一人一人秘孔マッサージを受ける流れに。
……いやまぁ、うん。血液検査もレントゲン写真も、隠れた病気を絶対に見付けられるものってわけじゃないし、多角的に健康調査をするのは理に叶ってるけどさぁ!?
なにが悲しくて、断頭台に向かう死刑囚みたいな気分にならねばならんのか。
……ほら聞いてみろよ、私より前にトキさんの施術を受けることになった他の面々の悲鳴を。痛いけど気持ちいいみたいなことになってるのか、人に聞かせられないような声になってるんだけど(白目)
「……これ、やってるのがトキさんじゃなかったらいかがわしすぎるだろ……」
「代わりに絵面は凄いことになってそうですね……」
マシュと二人、神妙な面持ちで順番を待つ私。
暫くして、私の番が回ってきたため覚悟を決めて中に入り、トキさんの指示に従ってベッドに寝そべった私は。
「……ん?間違ったかな?」
「ちょっとぉっ!!?」
「ああいやすまない、ちょっと普通の人と骨格が違うようで戸惑ってしまった……ここかな?」
「ひぎぃっ!?」
「あ、すまない」
どうもサウザーさんとかみたいに秘孔の位置が人とは違ったようで、他の人より多めにバキボキにされる羽目にあうのであった。
……あ、いかんこのままだとパイセンみたく爆発する!ほあああああっ!!