なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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歩くのも走るのも人生には必要なこと

 はてさて、一日目が基本的な身体の長さやら重さやらと、ちょっとした身体スペックの計測に時間を費やした(結果私が爆発した())のに対し、二日目はもうちょっと本格的な計測へと移行していくことになる。

 

 

「はひーっ、はひーっ!もうムリッス走れないッスー!!」

「ほらほら、へこたれてる場合じゃないッスよー。ふぁいとおー、れっつごー」

「こ、この人元気有り余り過ぎじゃないッスかぁー!?」

 

「……なにあれ」

「語尾が『~ッス』繋がり同盟?」*1

 

 

 というわけで、みんな大好き()長距離走である。*2

 ……本来互助会側で受けるはずが、たまたまこっちに出てきていたせいで巻き込まれる形となったクモコさん(見た目は響ちゃん)に、がんばれーと気の抜けた応援をするあさひさんの組が見受けられるが、今回はこんな感じに二人一組での長距離走となっている。

 

 無論、これも医者の少なさゆえの節約の結果なわけだが……これ、致命的な欠点が一つあるんだよね。

 ──そう、どっちもゴールできないと記録が『なし』になるという、致命的な欠点が。

 

 

「なんでそんな恐ろしいことに……」

「この歳で今さら『ちゃんと走りましたー』とか言ってどこかで道草食ってる、なんてことする人はいないだろう……っていう信頼感からの放任?……まぁ要するに、ゴールで誰かが待ってる訳じゃなくて、一つの組に二つのストップウォッチを渡して自分等で測らせてるから、ってことになるのかな?」*3

「ええ……」

 

 

 困惑する雪泉さんに答えるのは、今回二人一組になっている理由について。……これ、要するに互いの記録を測りあっている、という建前なんだよね。

 無論、今語ったように『今さら変なごまかしなんぞしないだろう』っていう、ある種の信頼からくる施策でもあるんだけども。

 

 実際、用意するストップウォッチの量が多くなることを除けば、運営側の負担を減らす方法としてはわりと上々なのである。

 長距離走で一番困るのは、最後の人が帰ってこないと次の行動に移れないってとこだからね。……まぁ、実際の体育とかの場合、下手すると最下位の子はほっといて他の子達は次のことをやってる、なんてこともあるんだけども。

 

 ともかく、記録の計測を本人達に任せているため、片方がゴールする……ってだけならばまぁ、先にゴールした方にストップウォッチを任せておけばいいけれども。

 もし仮に、どちらともにゴールできないなんてことになれば……その時は記録なしで終わりという、まさに走り損のくたびれ儲けとなるのである。

 ……え?長距離走って言っても、精々一キロとかその辺りなんだろうからゴールにたどり着けないなんてこと、早々無いんじゃないのかって?

 

 

「甘ぇよ、チョコラテのように甘ぇよ」*4

「……いや、誰に向かって言ってるんです?」

 

 

 その考え、思考が甘味に支配されている!……もとい、チョコラテみたいな考えである。

 冷静に考えて頂きたい。ここに集まっている人達がどういう存在なのかを。……はい、『逆憑依』ですね。じゃあその『逆憑依』ってどんな人ですか?……はい、創作物の登場人物ですね。

 

 ってことは、である。

 ……高々一キロ程度の距離、もはや短距離みたいなものって人も多いのだ。特にウマ娘とかウマ娘とかウマ娘とか。

 そうでなくとも、マシュみたいな『デミ・サーヴァント』とかなのはちゃん達みたいな『魔法少女』とか、普通の人より身体スペック高そうな人達がゴロゴロしてるわけで。

 

 ……え?なのはちゃんは素だとポンコツだろうって?家系的に見たら寧ろ潜在能力バリバリなんだよなぁ……そこら辺自覚してるここのなのはちゃんだと、普通に運動得意だし。*5

 そうでなくとも、魔力とか気とかで強化できる人達は、強化前と強化後の両方の記録を取るように指示されてるし。

 

 まぁそんなわけで、ウマ娘組みたいな素のスペックが高い組とか、魔力や気による強化ができる組は今回、フルマラソンとかハーフマラソンとかをやらされるようになっているのである。

 

 で、さっきも言ったが今回の計測は二人一組。

 更に、両者ともゴールできない場合、記録がなしになることについては運営側も認知しており……。

 

 

「……ふ、ふざけんな、よ……げふっ、どう考えても、ひっ、俺が、……ハーフマラソンする必要性……ねぇじゃねえか……」

「ほら銀さん、まだ半分も終わってませんよー、ファイトファイトー!」

「………いやおかしい、絶対に……はぁ、おかしいって。なんでわけーやつに混じって……走んなきゃいけねぇんだよ……げふっ」

「それはもう、基本的に『顔見知りの方が気まずくなくていいですよね☆』という運営側の粋な計らいによるものとしか……」

「そーいうの()って言わねーんだわ、ただの拷問なんだわ……」

「銀ちゃん頑張るのだ、あと半分終わったらゴールなのだ、ご褒美なのだ」

「ご褒美っつっても、ぜぇ、検査中は糖質制限とかなんとか、言って……はぁ、大して甘くもないパフェとか、ひぃ、そんなんばっかじゃねぇか……ふぅ……」

「じゃあいらないのだ?」

「いるに決まってるだろうがァァァァッ!!!」

「おお、ジェットスタートなのだ」

「でもさっきから、急加速からの急停止の繰り返しなんですよねぇ」

「長距離走としては一番やっちゃダメなやつですね」

 

「……なんですかあれ」

「見習っちゃいけない大人達の図」

「うわぁ……」

 

 

 ──こうして、確実にゴールできる人と、できるか微妙な人の組になるように調整しているのである。……地獄かな?

 

 というわけで、あそこに見えるのは余裕側の桃香さんとXちゃん、それから微妙組の銀ちゃんとゴジハム君の組である。

 一応、組み合わせ的には桃香さんと銀ちゃん、Xちゃんとゴジハム君という感じのようだが……結局よろず屋メンバーで固まってる感じになっている、ということだろう。

 なお、ここに居ないモモちゃんに関しては、三人組である魔法少女組に混ぜられることとなったそうな。

 

 

「へぇー、モモタロスさんはプリキュア系なんですねー」

「お、おぅ……(いや、滅茶苦茶気まじぃんだが?)」

「ふーん、元はライダー系なのに、ねぇ?……向こうに混じらなくても良かったの?」

「……あっちは余りが出てねぇって言われた」

「それは……良いこと、なのだろうか?」

 

 

 ……流石に走れない人と走れる人を組み合わせるにしても、片やフルマラソンするような人と、片や一キロすら音をあげるような人では余りに差がありすぎるため、一応ある程度の範囲で組む相手の制限はしているらしい。

 その結果、微妙に居心地の悪いところに加わってしまったモモちゃんに関しては御愁傷様だが、かといってライダー側に混じっていても、悪目立ちしただろうことは確かなのでなんともはや。

 

 で、最初に見てた組であるクモコさんとあさひさんのペアだが、クモコさんが意外と動けるようになってることを考慮した組み合わせのため、ひいこら言いつつもなんとかゴールはしそうな雰囲気であったり。

 ……まぁ、そのあとあさひさん二回目に付き合わされる可能性があることに関しては、まさに御愁傷様としか言いようがないのだが。

 

 

「……なんか寒気がしてきたんスけど、なんでだと思うッスか?」

「そりゃもう、この後追加のフルマラソンが待ってるから、じゃないッスか?」

「ふるまらそん……???」

 

 

 ……あ、クモコさんが真っ白になって、サラサラと風に乗って飛んでいく。

 ──彼女が体よく逃げようとしてるのはわかったため、空間掌握して固め直す私である。

 

 なんてことするんッスかぁ!?という抗議の声があがったが、仮に私がやらんかったら目の前の人に雷落とされてましたよ?

 ……と教えてあげれば、流石に震え上がっていたのであった。……まぁ誰だって強制休養所(BC)送りは嫌だよね、うん。*6

 

 そんなわけで、ニコニコ笑いながら赤雷を迸らせるあさひ(ミラルーツ)さんには落ち着いて貰い、改めてマラソンに戻って頂く次第である。

 

 ……あの人、流石に真体そのまんま出てくるのは問題だからって、あさひの姿でメリュジーヌの第三再臨みたいな格好捏造してたけど、スペックも均一なら音速飛行とか普通にするってことにならない?その場合、この競技場バラバラにならない?

 なんて疑問もなくはなかったが、そこは運営も事前に認知しているようで、この辺り一帯には『音と衝撃波の境界』なるものが設置されており、音速を越えた時に発生する衝撃波は全て単なる轟音に変換されるようになってるから安心、とのことであった。

 

 ……気にするべきところはそこかなぁ、というツッコミは無しでお願いしたい。

 

 まぁともかく、マラソンである。

 今日はこれ以外にもまだまだ計測の必要なものが複数待ち受けているため、これだけに(かかずら)っているわけにもいかないので、さっさと終わらせたいところであるわけだが……。

 

 

「……なして私も二回測定組なのか」

「それはまぁ、浮遊移動とかできてしまうキーアさんが悪いとしか……」

「ぐぬぬぬ……能力使わなければわりと普通に幼女スペックなのが仇となったか……っ!!」

 

 

 今回の私、あさひさんとかと一緒で二回計測組なのですぐには終わらないのよね、これが。

 

 ……【星の欠片(虚無)】を使わない場合、わりと見た目相応の身体スペックしかないせいで、能力の有無によるステータスの上下が有りすぎることがその一因なわけだが。

 実際、ちゃんと測ろうとするともっと細分化する必要もなくはないため、二回で済んでる分実はまだマシ、とは口に出さない賢い私なのであった。

 ……ほら、下手すると他形態(キリアとかシルファとか)の記録もいる、なんてことになりかねないし。

 

 ともかく、表面的には悔しそうにしつつ、二回で済んでラッキー!……と内心では考えている、賢いキーアちゃんなのでありましたとさ。

 

 ……え?終わったあとにゆかりんから『じゃああと他の形態分もね?』って言われて無事絶望しましたがなにか?

 はっはっはっ。やっぱりダメだったよ()

 

 

*1
『魔界戦記ディスガイア』シリーズのプリニーなんかも対象

*2
基本的に『単に走るだけ』の為、大体の人が大好き()なモノの一つ。『代わり映えのしない景色に思いを馳せる』だの『ひたすら走るだけの行為から得られる疲労は別格感がある』だの、好評()の声は幾らでも出てくることだろう。……稀に普通に長距離走が好き、という人もいる

*3
グラウンドを走るタイプではない長距離走の場合(例:学校の外に出て特定の道を走ってくるパターン)、スタート直後に隠れて終わり際に素知らぬ顔で最後尾に加わる、などのズルをする人がいたという話

*4
『めだかボックス』のキャラクターである球磨川禊の台詞『甘ぇよ』『…が』『その甘さ』『嫌いじゃあないぜ』及び、『BLEACH』のキャラクターであるドルドーニ・アレッサンドロ・デル・ソカッチオ(通称ドン・パニーニ)が使う『甘さ』のルビとして使われる『チョコラテ』から

*5
初代アニメにおけるなのはさんは、わりと運動音痴だったが、彼女の家系である『高町家』はとある事情から身体能力がとても高い人達ばかりで構成されている。派生作品ではその縁からか、実家の古武術を使う時だけ異様に動けるようになる、なんてパターンも(『魔法少女リリカルなのはINNOCENT』)

*6
『ベースキャンプ』の頭文字。また、ミラルーツの技の一つである『雷槌』が実装当初、受けたハンターが跡形もなく消え去る、というとんでも技だったことからのネタでもある(いわゆる即死技だが、流石に消し炭になるのはあれだと思われたのか、はたまた単なる演出ミスだったのか、暫く経った時には『倒れ伏すハンター』に差し替えられた。……丸呑みされて乙ってBCに戻される(例:辿異種フルフル)こともある辺り、今更のような気もするが)

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