なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「───遂に決着!あさひ選手が最後まで粘りを見せましたが、勝ったのはクラインジャーチームもとい『ニュービーと魔王』チームだぁーっ!!」
「てごわかった……」*1
「それ、私が無惨なことになるやつじゃないッスか?」
「この状況を見てそれを君が言うの……?」
ああうん、榊君が言うように勝ったのは勝ったんだよ。
でもね?私以外全員やられてる状態は辛勝って言うんだ、少なくとも快勝ではないんだ。 *2
対してあさひさん、確かに設定上の体力は削りきれてるけど、見た目はどこまでもぴんぴんとしてるんだ。……どっちが勝者だかわかんねぇなこれ?
とまぁそんなわけで、微妙に釈然としないものを抱えた上での決着である。
……うん、「こうなったら仕方ないッス、そぉれ十万ボルトー」とかなんとか言いながら、雲もないのに上から赤雷落としてくるあさひさんに「まさか天災なのですか?!」とかアーミヤさんが愉快な勘違い……いや勘違いかこれ?*3
…………ともかく、そんな勘違いと一網打尽を繰り返し、私が無茶苦茶頑張ってあさひさんの体力を削りきったところで、第二回戦の全試合は終了となったのであった。
時間帯的にもそろそろ遅くなってきているので、このまま夕食に移行である。
「……こういう競技系の話で毎回思うけど、もうちょっと休憩期間をあけるべきじゃないかなぁ……この疲労具合、普通なら明日の試合無理だぜ?」
「つってもなぁ、そこら辺のペース配分を考える……ってのも、立派な競技の一部だからなぁ」
「うーん、適当な愚痴だったのに正論で返されてしまった……」
まぁ、あの赤雷も一応は単なる演出ではあったのだが。
……シャナの時も言われていたが、ああいう大規模演出突きの技はエフェクトの時点で精神的圧迫がエグいので、例え肉体的ダメージがなくともキツいことに代わりはないわけで。
そこら辺、多少は愚痴っても仕方ないんじゃないかなぁ、という私のぼやきは、起き上がってきた黒焦げのクラインさんに敢えなく正論で打ち落とされることとなったのであった。
……え?なんで黒焦げなのかって?これもソリッドビジョンシステムのちょっとした応用ですがなにか?
「……そういえば、大陸版の方だとコラボしてるんですよね、私のところ」
「あっちは来てるのリオレウスだっけ?……まぁ、ミラが来て酷い目にあってたドラガリに比べればまだマシなのでは?」*4
「一時期マガラとか来るんじゃ、なんてことも言われてましたね」*5
「テラを滅ぼす気かよ……」
なお帰りすがら、そういえばアークナイツの大陸版だとモンハンコラボしてたなぁ……なんて話になり、そこからモンハン世界のヤバさについての話で盛り上がることになるのでしたとさ。
はてさて、白熱したサバゲーやってたわけだが、忘れてはいけないのはアレが健康診断の延長線上である、ということだろう。
……いやまぁ、肉体的なダメージについては極力及ばないようにしているとはいえ、精神的な負担が結構あるアレを健康診断に組み込んでいいのか?……みたいな疑問はなくもないが、人間って追い込まれた時と平時では思考も動き方も変わるものなので、データを集めるという目的ならある程度は納得できる部分もなくはないというか。
ともかく、重要なのはこれが健康診断である、ということ。
そしてそれを無事遂行するために郷内の全ての人間が、一つの施設に詰め込まれているということだろう。
「まぁ、空間拡張技術のおかげで狭いとかそういうあれは無いんだけどねー」
「代わりにチームで一緒の病室に詰め込まれてるけどな」
患者衣に着替え直した私たちは、夕食を終えた後に割り振られた病室に戻ってきている。
風呂・トイレが完備されている病室ってなんだ?……みたいな気持ちもなくはないが、用意できるなら用意してある方が嬉しいのも確かな話。
大体見知った人とはいえ、共用大浴場だとちょっと気まずい時もあるしねー。
だったら食事も病室で食べればいいのでは?……みたいな声が聞こえて来そうだが、勝手に入ればいい風呂と違い食事を部屋で食べる場合は
……人手が足りないって言ってるのにそんな人員避けるわけもなく、結果として食事だけは大食堂で時間を分けて、という形で落ち着いているのであった。
まぁ、その辺りの話はあくまでついで、なのでここでは掘り下げない。
今回語りたいのは、こうして一つの病室にチームメンバーがまとめて放り込まれていることについてである。
「大丈夫クラインさん?一人だけ男性だから気まずかったりしない?」
「あーうん、気まずいというかなんか寧ろ俺が女の子扱いされてる感があるというか……」
「まぁ、人数比的に部屋を区切ると、そういう風に使った方が効率的ですからね……」
中身と外見の性別が違う、なんてことも頻発する『逆憑依』という存在において、性差を気にすることほど無意味っぽいものも無くはないが……かといって全く気にしないのもどうなのか、というのも確かな話。
その結果が、着替えの時に一人だけベッドの周囲をカーテンで覆う形になっている、紅一点ならぬ黒一点になっているクラインさんなのであった。
……うん、ぶっちゃけ扱い方が逆だよね、っていうか。
普通ならこう、女性側を男性の不躾な視線から守るために仕切りを使う……みたいな感じになるモノだが、ここではクラインさんを周りの視線から守る、みたいな感じになっているわけで。
いやだって、ねぇ?クラインさんって意外とムキムキだから、上半身裸とかだと思わずまじまじと見てしまうわけで。
それでなにか興奮したりするわけじゃないけど、よくよく考えたら失礼なのも確かなので、結果としてこんな感じの対処になったというか。
……うん、普通なら雪泉さんとかまじまじと見つめられる側、なんだけどねぇ?
「ううっ!!頭がっ!!」
「……とまぁこのように、あんまり雪泉さんとかぬが肌を晒してると、ルリアちゃんが苦しみから
「クラインさんの方が着替えの時間が長くなる始末ですからね……」
「どうしてこうなった……」
うーむ、いわゆる貞操観念逆転世界みたいな感じ?*6……いや、そこまでではないか。
そんな下らない会話をしつつ、私は部屋のテレビの電源を点けるのであった。
「……うーむ、なんもやってないなぁ」
「それは仕方ないでしょう、なんてったって今この場所はもぬけの殻のようなもの。テレビ局の人員も出払っているのですから、放送できるのは予め設定されているプログラムだけなのですし」
「いやまぁ、そうなんだけどねー……」
就寝時間までまだ余裕がある、ということでスイッチを点けたテレビだが、流れているのは毒にも薬にもならないようなモノばかり。
それもそのはず、ぬの言う通り現状郷内はもぬけの殻、テレビ局のスタッフも全員出払っているため、予め録画してあるモノの再放送くらいしかできないのである。
本来ならば、チャンネルを変えれば映る地上波に関しても、地下である郷内にそれを届けるための変換施設が停止している現状、受信は不可能な状態。
結果、仕方ないのでスマブラでもするかー、と例のゲーム機を取り出してきた私である。
「プロコンはないから、ジョイコンで遊んでねー」
「……やり辛くありません?」
「あの値段のものをポンポン買うような金銭感覚は持ってないかなー」
なお、スマブラするには向いてないと散々言われているジョイコンでのゲームプレイに、幾人かから文句の声が上がっていたが……。
二個セットかつ片方でもプレイできるジョイコンと、一つでそれら二つ分より高いプロコンを揃える手間と金額について述べれば、流石にみんな神妙な様子で黙っていたのだった。
……いやまぁうん、金銭的余裕はあるから揃えればいいじゃん、と言われるとちょっと困るのだが、こういう場合人数分プロコンが揃っていないともめるだろう……ってところを思えば、ジョイコンなら三セット分で済むのにプロコンなら六台分になって、結果金額が二倍以上になるのだから、そりゃちょっと躊躇するのも仕方ないというか。
まぁ、ジョイコンだとやり辛いと言われると困るんだけどね、マジで。
「携帯機のボタン部分が分離する、という形ですから小さすぎるんですよね……」
「わりと真面目に『最低限遊べる』ってだけだからなぁ」
ぶつくさ言いながら、キャラクターを選択する面々である。
なお、私はいつものようにピカチュウを選び、他の面々は雪泉さんがアイスクライマー、クラインさんがセフィロス、ルリアちゃんがポケモントレーナー、アーミヤさんがゼルダ姫、ぬがベレス先生を選んでいた。
……概ね、自分に似たキャラ・属性を選んでいるという感じだろうか?
「ってことは……オルタさんが悪いんですか?」*7
「ぶっ、いきなりなに言い出すのよルリア?!」
「あーうん、悪い悪い。ぬはとっても悪い悪い」
「アンタも唐突になに言ってるのよ!?燃やすわよ!?……って、ぬぎゃーっ!!?」
「ふふふ、カチカチに凍らせてしまうのは楽しいですね……ってあーっ!?相棒ー!!?」
「後ろががら空きだぜ……ってうぉわーっ!?」
「はっはっはっ、甘い甘いぜクラインさんと私っ!!」
「足元がお留守ですよ……なんて」
そうして始まった試合は、白熱し過ぎた結果就寝時間をオーバーしてしまい、ベッドをゲーム機に投げ付けようとするナイチンゲールさんを、羽交い締めにして落ち着かせなければいけなくなる……などの二次災害を引き起こすことになるのだが。
その時の私たちはそんな未来など露知らず、みんなでワイワイと楽しんでいたのであったとさ。……修学旅行かな?