なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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新しい命の創造、それは科学者の夢でもある

「……んで、君は一体どういう感じの子なんです?」

「はい、たまごは『補給軍貫ーたまご型特務艦』を原型とした、いわゆるガイノイドとして製作されました」

 

 

 一頻り騒いだあと、部屋の隅っこでいじけはじめた束さんは放っておくとして、件の人物であるたまごちゃんに声を掛けた私である。

 

 ……見た目としては、普通の白人女性といった風情である。似ているキャラを挙げるのなら、『ブルーアーカイブ』の一之瀬アスナの髪色が完全に金髪になってる感じ、というか?

 まぁ、一部分(胸部装甲)が完全に別物になっているため、雰囲気が似てるという感じの方が強いかもしれないが。*1

 

 ともあれ、件のたまごちゃんはというと、わりと素直な感じのキャラクターとして設計されているようであった。

 

 

「……あのキーアさん、ガイノイドってなんなんです?」

「んー?ガイノイドってのは女性体の人型ロボットのことだね。古代ギリシャ語で女性を意味する『ギュネー(γυνή)』って単語に『似ている・擬き』って意味の接尾辞『オイド(-oid)』がくっついた合成語だね。ちなみにだけど、人型ロボットを意味する『アンドロイド』も、ギリシャ語で男性を意味する『アネール(ἄνηρ)』に接尾辞をくっつけた言葉だね」

「へー……」

 

 

 元々、男性型のロボットも女性型のロボットも、共に男性を意味する単語から生まれた『アンドロイド』という言葉で呼ぶことに意義を訴えた一部の層が生み出したこの言葉は、それゆえにある種の主張を兼ね備えた単語、という風に見ることもできる。

 ……とはいえ、別に気にせず『アンドロイド』と呼んでいる人も多いし、日本人的には『ガイ』という単語が男性的イメージが強いので勘違いを生みやすい、ということもあって『ロボ娘』などと呼ぶ方が多かったりもするわけなのだが。*2

 

 ともあれ、目の前の彼女がロボ系の女性型として生み出された、ということに間違いはあるまい。

 それと同時、端から見ている分には生身の女性にしか見えない……という彼女の造形は、篠ノ之束という存在の確かな技術力の高さを窺わせることだろう。

 

 

「あ、申し訳ありません。この姿になれたのは確かに博士のおかげですが、同時に徹頭徹尾彼女がこの姿を設計したというわけでもないのです」

「……んん?どういうこと?」

「あっ、こらたまごちゃん!?要らんこと説明しなくていいから!?」

 

 

 だが、そうして感心する私たちに対し、たまごちゃんは静かに首を横に振っている。

 どういうことか?と首を傾げる私たちに、束さんが余計なことを説明しなくていいから、と近寄ってくるが……。

 

 

「簡単な話です。博士は最初、あくまでも試作として私を作成するつもりでした」

 

 

 そんな彼女を無視しながら、たまごちゃんが説明したことを再現すると次のようになる。

 

 

「うーむ……勢い余って持ち出したはいいものの、どうやって活用してやろうかな?……んー、見た目的にはなんかのコアに使うのがいい、のかな?」

 

 

 つい魔が差して研究室から持ち出してしまった、件の物体・『汎用顕象封印装置』。

 その見た目は握り拳大の白い球体、といった感じの様相だが、その内部には現人類が持つ技術の粋がこれでもかと詰め込まれている。

 現状の束では、再現しきれないようなものが詰め込まれたそれは、まさに技術の宝箱とでも言うべきモノであった。

 まぁ、複数人の天才達が集まって作り出したモノなのだから、一人の人間に再現されるようでは先が思いやられる、というのも確かな話なのだが。

 

 とはいえ、仮にも彼女も天才の端くれ……というか、原作(IS)であるならば並ぶもの無き生粋の天才である。

 本来の自分であればこれくらい余裕で作れるし、みたいなプライドが彼女に囁いた面も、微妙に否定しきれないだろう。

 

 

「……まっ、なんかいい感じの研究結果提出したら、コハッキーも許してくれるでしょ」

 

 

 ただこれ、別に彼女だけに限った話ではない。

 技術部に集まった変人達は、基本的に元の作品であれば排斥されていてもおかしくないレベルで、隔絶した知識を持つものが大半。

 それがなんの因果か、ちょっと人間性を取り戻した感じでつるんでいる……みたいな感じなので、わりとこういう独断行動は日常茶飯事なのである。

 それこそ、室長である琥珀の時点で大概なので、あとから有益なデータの提出でもしておけばあっさりと許されるのだ。

 ……え?データが取れなかった時?死ぬ気で土下座しよう、丁度あそこでぺこぺこしてるワイリーさんと同じように。*3

 

 まぁそんなわけで、今回の持ち出しについても、そこまで大きな問題になることはないだろうと思われていた。

 そもそも束自体、こちらではわりと優秀な部類で済まされている。

 一度や二度程度のミスや問題行動も、「ま~そういうこともありますよね~☆」で終わることは目に見えていた。

 ……なお、この辺りの話を遠くでたまたま耳にしたゆかりんが、お腹を抑えて踞ってたけど気にしない。

 

 ともあれ、持ち込んだ球体を前に、これからどうしようかと首を捻る束は、鼻と上唇でペンを挟み、頭の後ろで手を組みながら椅子の背もたれに深く体を沈み込ませ、天井を眺め思考することしばし。

 

 

「……あ、そうだIS作ろう」

 

 

 ……と、思い付きを口にしたのである。

 

 

「……IS?」

「いや、ホントだよ?束さん最初はIS作ろうと思ったんだよ。……まぁ、人型サイズの存在に無理なく組み込めるブースターとかの製造に手こずりそうだったから、最初はとりあえず単なる鎧的なやつを作ろうとしてたんだけど……」

 

 

 思わずなに言ってるの?……みたいな視線を向けたところ、束さんは焦ったように手を振りながら弁明を開始する。

 曰く、最初はちゃんと装備するためのドレス的なものを作ろうとしたのだと。……ただ、ISは元々宇宙服的な要素を持つマルチフォーム・スーツである。

 それゆえ、必要なシステムは多岐に渡り、それを組み込むためにはその技術を持ってくる必要があるわけで。

 

 ……何度か言う通り、ここにいる技術者達は原作の彼ら彼女らに比べると、遥かにできることが少なくなっている。

 それゆえ、原作ではできたことも、他の人の力を借りなければ無理がある……なんてことは多発しまくるのだ。

 幸いと言えば、周囲のみんなも似たようなモノであること・その中から研鑽を繰り返し、新たな技術に手を伸ばしている室長・琥珀が居るということだろうか。

 

 ……意外と慕われてるんだな、この人……などと視線を向ければ、今回ずっとステッキモードの琥珀さんは、照れたようにその体をくねらせるのだった。やだ気持ち悪い(唐突な暴言)。

 

 

「……ええと、だから単独でブースターは作れないし、仮に誰かが作ってるものを組み込もうにも、その時に自分がやろうとしてることを説明しないといけないから……」

「隠れてやってるのに、そんなことしたら本末転倒でしょ?だからまぁ、最初はスーツとして作ろうとして、失敗したってわけ」

 

 

 灰になった琥珀さんは置いといて、話を戻す私である。

 で、武装だの飛行装置だのは作れずとも、瞬時展開する装甲くらいは作れるんじゃないかなー、と思って開発を開始した結果、早々に失敗したのだとか。

 

 これは、件の球体が封印装置であるということに問題があった。

 ISに使われているコアは成長型のものであり、単純に代用するには性質が違いすぎたのである。

 

 

「中に閉じ込めるためのモノに、外の世界への影響力なんて発揮できるはずがなくてねー。……だからまぁ、趣向を変えてとりあえずロボット作ろうってなったのさ」

「スーツからロボットに路線変更するのは、流石に意味がわからないんだけど?」

「そりゃまぁ、スーツって結局人が着るものってのが問題だと思ったから、って言うか?」

「はぁ?」

 

 

 そこから、彼女は設計路線を大幅に変更した。

 コアとなる装置に人の補助をさせるのではなく、()()()()()()()()()という形式に。

 それが、スーツからロボットへの路線変更である。

 

 

「実際に私が着てみてわかったんだけど、どうも補助として扱うとこっちを浸食しようとしてくるみたいでねー」

「……なにしれっと意味わからんこと言ってるのこの人?」

「科学の発展に犠牲は付き物だよ、キーア君。……まぁ、自分を実験体に使う分には文句言われないから、ね?」

「ね?……じゃないが?」

 

 

 その路線変更には、一先ず形を整えたスーツが、明らかに人の害になることが判明したから……というところも少なからずある様子。

 どうにも着た人間をコアとして取り込もうとする、というあからさまな害があったとのことで、纏うのは諦めたとのこと。

 ……しれっと言っているが、なにやってんのこの人?いやまぁ、どうやら取り込まれない自信があったらしいのだが。

 

 

「と、言うと?」

「この場合の浸食行動って、要するに【兆し】が『逆憑依』になる時のプロセスに近いだろうって思ってたんだよね。だから、既に()()なってる人間なら大丈夫だと思ったってわけ」

「えー……」

 

 

 それが、『逆憑依』に浸食はできないだろう、という予想。

 ……言い換えるなら、この浸食は【継ぎ接ぎ】ではない、という感じだろうか?

 

 実際その読みは当たっていたようで、彼女を呑み込もうとした変異スーツは途中で不自然に動きを止め、そのまま停止したのだという。

 ……これが普通の人なら、それを核にしてなにかの存在に変貌していたかもしれないと言われれば、なんとも言えない気分になってくる私である。

 

 まぁともかく、着込むのが無理なら単体のロボットとして仕上げよう、となった彼女はスーツから四肢を持つ駆体を用意して──、

 

 

「……うん、装置を設置したらもうこうなってたんだよね、マジで」

「……最高傑作って言ったじゃないですかヤダー!!」

 

 

 結果、半ば【顕象】の発生原理に近いような形で、彼女ことたまごちゃんは降臨していたのだった。

 ……全然造ってないじゃんこれ!?

 

 

*1
具体的に言うと、完全にスレンダー。キーアさんも安心()

*2
そういう言葉の聞き慣れなさを逆手に取った作品もあるとのこと

*3
無印『ロックマン』シリーズにおけるよくあること。敵である『Dr.ワイリー』は、ロックマンに負けた後とにかく土下座をしながら許しを請うのである。……なお次回作ではやっぱりやらかすのであった()

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