なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
さて、ここで唐突に今までの展開全部投げ捨てるようなわけのわからん提案が飛んできたわけだが、どうやらゆかりんはふざけているわけではなく、至極真面目にこの提案をしているらしい。
……というか、彼女がこうして私たちに知らせて来ている時点で、実際には提案ではなく確定事項だったりするのだが……ともかく。
「バカなの?アホなの??血の気の多い戦国時代の人物なの???」
「うーんすごい言われよう。でもさっきキーアちゃんが言ってたように、運動量が足りてないのは本当なのよ?」
「あれだけあさひさん達にいじめられてたのに?」
「寧ろいじめられてたから、かしら?ほぼ一方的な殺戮だったから、結局運動量のプラスになってなかったのよね、あれ」
「なんという無駄に洗練された無駄のない無駄なレイドイベント……」
なんで突然そんな今までの話をぶち壊すような話に?
……という思いから漏れた言葉は、なんと想定通りに話が進んでないからという、とても理不尽な返答をぶつけられるはめになったのであった。
……いや、言いたいことはわかるけど……わかるけど……ええ……?
確かに、である。
サバゲーの体裁を取っているものの、この話の主題はどこまでも健康診断。……もっといえば、その体でみんなの身体能力を確かめるための身体測定である。
ゆえに、必要なデータが揃っていないのであれば、追加の運動が発生するのもおかしい話ではない。……というか、最初の方にそんな感じのことを言っていたし。
とはいえ、とはいえである。
それを最終戦前にこちらに告げるというのは、なんというかこう、誠実さがないというか!配慮かなぁ!?配慮が欠けていて残酷です!*1
……ってなわけで、微妙に乗りきれない感があるというか。
「と、言われてもねぇ。元はと言えば、貴方達だって悪いのよ?」
「おおっとここで責任転嫁だ。どうせ私が勝ち側に居るのが良くないとか言い出すんだっ」
「ええそうね。
「……ん?親子?」
そんな感じで言葉を重ねていくも、返ってきたゆかりんの言葉に、思わず嫌な予感がしてくる私。
……いまこの人、『親子』って言わへんかった?
思わず顔を青くする私に、ゆかりんは代わりに手を叩くことで答えとする。その音に誘われ、やって来たのは……。
「──若い人は言いました。負けるのは嫌、負けるのは悲しい、負けるのは悔しいと。……正直、その感覚には迎合できない私なのですが……一時でも
「ぎゃぁーっ!!?
私たち、勝ち越し組の反対側・負け越し組の準決勝グループ。
そのリーダーとして活躍する、負けのプロ──すなわち我が
それを見た私が目ん玉飛び出しそうなほど驚愕するなか、ゆかりんは至って冷静に説明を続けていく。
「そもそもの話、当初の予定だとキーアちゃんが準決勝まで駒を進める……なんてことをまったく想定して無かったのよね。だってほら、【星の欠片】って本来
「あ、なるほど。私達が居たからですね?」
「そういうこと。キーアちゃんってば生来のサポーター気質だから、他に仲間が存在すると素直に負けなくなっちゃうのよねー。……まぁ、他の仲間の強化をするっていうのを『他の人の踏み台になる』という風に解釈すると、仲間内で勝敗を埋められちゃってわざわざ相手に負ける必要がなくなる……みたいな屁理屈の可能性も十二分にあるわけなんだけど」
「はっはっはっ。まさかそんなわけは……ありそうだな、この顔だと」
そのまま彼女の口から語られたのは、私がこうして勝ち越し側のトップランクに収まっているのは想定外、という言葉であった。
……確かに、【星の欠片】の性質を思えば私がここに立っている、というのが大分おかしいのは間違いないだろう。
無論、得てしてそういうものには抜け道というものがあるわけで、今の私もそういうものを使ってここにいるわけなのだが……あーうん、なんというかこう、すっかりゆかりんには読まれてしまっているというか……。
まぁね?私も『私一人きり』のチームならば、潔く負けに負けて逆決勝まっしぐら、とかやってたとは思うんだけども。
……今回こうして新人組を任せられた以上、生半可なことはできないなぁとも思ったわけでして。
というか、その辺りを突っつくのなら、彼女達を私の仲間に組み込んだ運営側──すなわちゆかりん達にも、ひとかど以上の責任が生えているということになるのではないか、と反論をしようとしたのだけれど。
「それに関しては、こう返すことに致しますわ。──こんなサバゲーにマジになっちゃってどうするの、と」*2
「ぐえーっ!!?」
薄々感じていたことを真っ正面から叩き付けられたため、私は無惨にも塵と化したのであった。
……それを言うのは……反則だよ……。
「まぁ、言ってしまうと別に賞金やら景品やらが出るわけでもなく、完全に自己満足の勝負なんだから、どっかでそこら辺割りきって負ける……ってのも、別におかしくはないわな」
「タイミング的には……芹沢さん達との勝負の時、とかでしょうか?」
「あー、実際に
ゆかりんからの解説を受け、次々と『納得した』という感じの言葉を投げてくるチームメイト達。
……なんや!そんなに私をいじめて楽しいのか貴様らっ!?泣くぞ、私は泣いてしまうぞ!?
「いえ別に、キーアさんをいじめてるわけではないのですが……」
「単に事実を述べただけ、ってやつよ。……そもそもの話、『そうしても良かったのに』って疑問を投げただけであって、実際に負けろとはこれっぽっちも言ってないわけだし」
「……と、言うと?」
そうしてバタバタする私に、なんとも言えない曖昧な笑みを浮かべるアーミヤさん。
……その横から、先ほどの発言を翻すような言葉を投げてくる
「当たり前でしょ?なにを好き好んで『負けたい』って思うやつが居るのよ。……いやまぁ、アンタ達が本質的にはそういうものってのはわかったけど、それがチームメイト達にまで伝播する……ってわけでもないでしょう?」
「……まぁ、それは確かに」
「だから、別にそいつの話に沈む必要なんかないのよ。
「……ええともしかして、オルタさん私のこと慰めてます……?……って危なっ!?頬を槍が掠めたっ!!?」
「喧しいわねっ、いいからとっとと立つ!!」
「照れ隠しが強すぎるっ!?……ってうおわっ!?」
「さっさと立てーっ!!!」
どうも彼女、不器用ながらこっちに発破を掛けてくれていたようで。
……彼女にそこまでやって貰った、という事実にちょっと感動しつつ、立ち上がって頬を叩く。
気合を入れ直した私は真っ直ぐと立ち、ゆかりんに視線を投げるのであった。
「……即席のチームにしては、随分と良い関係を築いたものね?」
「まぁ、短いとはいえ寝食を共にすればねー」
「なるほど、それは確かにそうね。……で、続きを話しても?」
「あ、そうだここからやベー話になるんだった。……ふて寝していい?」
「おいィ?」
……まぁ、そうして奮い立たせた闘志は、ここから待ち受ける事実に容易く砕かれることとなったのだが。
いやだって、ねぇ?……傍らにキリアがいる時点でもうやる気ゼロというか。
とはいえここで立ち止まっても仕方ないので、どうにかやる気を再燃させて彼女達に向き直る私である。
「まぁうん、聞く気になったんならいいけど……ええと、どこまで話したのだったかしら?」
「所詮はサバゲーやぞ、ってところまで」
「ああそうだったそうだった。……つまり、運動量が足りてなければ、例えサバゲーそのものの勝敗が決まったとしても、
「ああはい、聞いてます聞いてます」
「軽いわねぇ……まぁ、覚えていたんならいいわ。そこで問題なんだけど……そもそもの話、『運動量が足りない』っていうのは
「……んん?」
そうして、再び話を再開したゆかりんが話題に挙げたのが、『運動量』という曖昧な基準のこと。
……福祉保健局の推奨するデータによれば、人間は一日におよそ一万歩の歩行と、更に週二日・一回につき三十分以上の運動習慣を維持することにより、生活習慣病などの身体的なリスクを軽減することができる、と言われている。
とはいえこれ、あくまでも
更に今回、これらの運動は私たちの身体機能がどれほどのものか、というのを確認するためのデータ取りの面も持ち合わせている。
となれば、必要とされる運動量はかなり多い、ということになると思われるのだが……?
そうして首を捻る私たちに、ゆかりんはさらっとその答えを述べるのであった。
「答えはね、今の貴方達──正確には
「…………は?」
そのわりと問題発言に、私たちは一斉に間抜け面を晒すことになるのであった。
……マジで?