なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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お前達の頑張り過ぎだ!我々はこのまま地に落ちて死ぬ!()

 思わず『どういうこっちゃ?』という顔をした私たち。

 そんな私たちを見ながら、ゆかりんは人差し指をピンと立て、順を追って説明を始めていく。

 

 

「そもそもの話、ここにいる人達って誰もが運動が得意、ってわけでもないでしょう?」

「あー、うん。確かに、あからさまにドジって人は少ないけど、それでも長時間動き回るのは難しい……みたいな人は少なくないね」

 

 

 思い起こすのは、ヘスティア様とかエウロペ様とか、そもそも元気に動き回っているのが余り想像できない面々のこと。

 ……いやまぁ、ヘスティア様に関しては意外と動き回りそうだが、エウロペ様に関してはそんなイメージはほぼゼロである。

 基本的には乗騎である牛に任せてのんびり動いている、みたいなイメージがあるというか。

 

 それはまぁ、極端な例ではあるけれども。

 人によってどれくらい動くのか・または動けるのか、というのは大分違ってくるだろう。

 ゆえに、平均値でやると不平等になるし、中央値を取ると両端にとって極端になる、なんてことが起きるわけである。*1

 ……まぁ、その辺りは突き詰めると『平等って結局無理じゃね?』みたいな別の話になるので、この辺で投げとくとして。

 

 

「だからまぁ、私達運営側は考えたのです。結局不満が出るのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()と」

「……あー、だから優勝チームを基準に、って話になると?」

「そーいうこと。まぁ、その部分でも想定外があった、ってわけなんだけどね?」

 

 

 ゆかりんが言いたいのは、次のようなこと。

 平均値も中央値も不平等であるのなら、いっそ更に不平等にしてしまえ、と。

 ……その結果が、優勝チームの運動量を基準にする、というものであった。いやそれ死ぬほどキツいやつぅっ!?

 

 とはいえまぁ、話はわからないでもない。

 実際、これらの試合の中で一番動いたのがどこか?……という話になれば、候補になるのは優勝したチームの中の誰か、ということになるだろう。

 まさか乱数調整でもしたかの如く、その人自身はまったく動かないまま、周りの敵達が勝手に相討ちになり続ける……なんてこともあるまい。……え?同時連載中の作品に居るだろうって?突然メタい話するのやめて貰えませんか?(特大ブーメラン)*2

 

 ……まぁともかく、こっちにTASめいた奴は居ないので、そういう心配は必要ない。

 ならばやはり、これらの試合の中で一番の運動量を誇るのが優勝チームのメンバーにいる、というのは間違いない。

 ゆえに、その人物を基準にして、他の面々の運動量を調整する……というのは、平等かはともかく公平ではあるだろう。

 実際、その人物は既にそれだけの運動を行っているわけなのだし。

 

 

「ただまぁ、そこで問題が出てくるのよねぇ……」

「と、言いますと?」

「そもそもの話、『逆憑依』と言えどあれこれ制限してる現状、算出される最大運動量は一般人のそれからそこまで()()()予定じゃなかったのよ」

「はぁ……?」

 

 

 そこまで話し終えて、ゆかりんはこちらを見ながら一つため息を吐いた。

 ……直前の会話からして、運動量云々の時点で看過できないなにかしらの問題が起きた、ということになるのだろうが……?

 そうして首を捻る私を見ながら、ゆかりんは再度ため息を落とした。

 

 

「……戦力の順次投入は基本愚策とされるけど。それでも、投入する戦力が多ければ多いほど、()()()()いつかは相手を磨り潰せる、というのも間違いではないわ。それこそ、その辺りの考え方は貴方達の方がよく理解してることでしょう?」

「ん?……ああうん、【星の欠片】が勝ちに行くのなら、普通は手数が無限であることを活かすからね」

 

 

 基本的には負ける側である【星の欠片】だが、元々が無限概念であるため、勝とうとすること自体はそう難しいことでもない。

 例え与えるダメージが『1』であれ、『0』ではないのならいつかはたどり着ける、というのが『無限』と言うモノの利点である。

 ゆえに、ひたすら数を使って相手を磨り潰す、という戦術的に愚策であるそれも、私たちにとっては真剣に考慮しうる一手段だと言えるだろう。

 ……まぁ、できなくもないってだけであって、【星の欠片】の本質からすると効率悪いどころの話ではないのだけれど、そこら辺はまたややこしいので脇に置いて。

 

 ともかく、こちらの使える戦力が潤沢にあり、相手が無尽蔵でないのならば耐久戦もそうバカにしたものではない、というのは確かな話である。

 ……では、ここでその話をする意味はというと?

 

 

「……あ、なるほど。今回のサバゲーって制限ありありですから、どれほど強いチームでも()()()()()()()()()()()()()()んですね」

「だから、最初に戦場に投入されているチームは本来、()()()()()()()()()()()()()()……ということですね?」

「まぁ、さっきから何度も言ってるように……ってことね。では問題です。こちらとしてはそうなるように調整していた、ということを前提とすると。その場合、()()()()()()()()()()()()()?」

「……総運動量的には、他とそう変わらないチーム?」

「そういうこと。後から投入されたチームの方が本来有利なんだから、最終的な行動時間──すなわち運動量は、他の敗退したしたチームと大差なくなるはずだったのよね」

 

 

 さっきから何度か触れているように、本来このサバゲーは()()()()()()()()()()()()()

 もっと具体的に言えば、()()()()()()()()()()くらいで丁度よい、くらいに調整されているわけである。

 

 無論、別に負けても良いや、みたいな気持ちで挑めと言われているわけでもないが……逆に、()()()()()()()()()()()()と思われるようにも作られていないのだ。

 ……つまり、二回戦目の私たちとあさひさんのところの試合の時点で、かなり大番狂わせが起きていた、ということである。

 

 なにせあの試合、他の追加投入組を押し切り、なおかつ最後に私とあさひさんだけが残るデッドヒートまで巻き起こしていたのだ。

 この時点で運動量の最大値はおかしなことになっており、急遽その辺りのバランスを取るためにレイドイベントが組み込まれたわけだが……。

 

 

「うん、まさに火に油というか、糠に釘というか、火災にバケツの水というか……今勝ち上がって来てるチームを見る限り、もう修正とか無理よねって言うか?」

「あー……目立つのは俺達だけど、他のチームもわりと大概……ってことか?」

「一番マシなのがかようちゃんのところの『お子さま帝国チーム』かしらね?基本的にあんまり動かず、背後からひっそりとアサシネイトする感じに徹してたから」

 

 

 そもそも、二戦目の時点でわりとオーバーだったのだから、続く三戦目・準決勝……と予測するに辺り、どう足掻いてもバランスを取ることは不可能、と判断されたのだった。

 ……というか、当初の予定を変更するにしても、どこを基準に取るのか?……って時点でもめるというか。

 

 最初の予定通り、優勝チームを基準にするのであれば、他の面々に強いることになる運動量はわりと()()なことになるし、かといって他の基準値を取るには説得力が足りない。

 既に一回、そこら辺のバランスを取るための調整をぶっ込んでいるのだから、今さら『それなし』とも言えないだろう。

 

 ……え?その辺りの話を全部投げればいいんじゃないかって?

 今の時点で無茶苦茶やってるのに、それを全部覆水にしたらそれこそ暴動もんでしょうに。

 あとはまぁ、健康診断の体裁であれこれしてるんだから、後々に残るデータ的にもちゃんとやらない方が不味い、みたいなところもあるというか。

 

 

「そもそも向こう(互助会)の診断が終われば私達も同じ量の運動しないと行けないんだから、その辺りなあなあにはしてられないでしょう……?」

「まぁうん、決まりごとだからって体でやらされてたのに、お前達はやらねぇのかい……ってなったらそれこそ暴動不可避だからね……」

 

 

 あとはまぁ、全部終わった後に自分達に返ってくる制約的に、同じ分だけ運動させられる……という形で終わるだけマシだ、という意味合いもあるとかないとか。

 下手にルールを無下にすると、じゃあお前らも無茶苦茶やらせてやるってなりかねないというか?

 まぁ、今の時点でわりと無茶苦茶だろう、ってのも間違いではないのだけれど。

 なんだろう、ブラック・ジャック先生も戦わされたりするわけだから、るろうに検診とかしだすんだろうか?あさひさん(ドラゴンモード)相手に?

 ……想像しただけでもシュールな絵面だが、それで済むのならまだマシ、というのが哀愁を誘う感じである。

 

 ともかく。

 そうして後々自分達にも返ってくる、みたいな面も踏まえて、そこまでキツい運動にならないようにあれこれ考えていたのが、全部裏目になった……というのが、今の彼らの状況と言うわけである。

 

 

「そこで私達は考えました。優勝チームの運動量を基準にする、というのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということなのだから、いっそのこと全員突っ込んでそこら辺あやふやにしてしまえばいいのだと!」

「バカかな?この人達ってバカなのかな??」

 

 

 そして、追い詰められた彼女達が考え付いたのが、『みんな優勝チームならわざわざ運動量云々の話する必要ないな!ヨシッ!』という、まさに現場猫としか言い様のない解決法だったのであった。

 ……頭のいいバカか貴様らっ!!

 

 

*1
全てのデータを総合した後、データの数で割ったモノが平均値、全てのデータを小さい順に並べ、丁度真ん中に来るのが中央値である。極端なデータが存在する時、平均値はそれに引っ張られてしまうし、データの総数が多い場合、中央値だと両端の数値を無視する形になってしまう。双方欠点がある為、使い分けが重要。これらの数値は『代表値』と呼ばれるが、同じく代表値と呼ばれるモノに『最頻値』(全てのデータの中で、出現頻度が最も高い数)というものがある。こちらは極端な値に数値が左右されない利点があるが、代わりにサンプルデータが少なすぎると数値を算出できなかったり、はたまた何度も出てくる数がない・反対に何度も出てくる数が多い、等の理由から最頻値を一つに定められないことがある

*2
『うちの同居人はTASさんである。』のこと。TASさんモチーフの話

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