なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「凄く落ち着きました」
「……確かそれ、落ち着いてない人の台詞だったような?」
「あ、バレちゃいましたか?」
あの後散々部屋の中を逃げ回る事になった私とゆかりん。
無駄に体育館みたいに広い場所だったものだから、お互いに息も切れ切れの死に体である。……なんで同じように動いてたはずの琥珀さんが、ピンピンしていらっしゃるんですかね……?
まぁ、その逃走劇の甲斐あってか、今の彼女は冷静そのもの。本来こちらがしたかった話も、今なら切り出すことは十分可能だろう。
なので、息を整えるのもほどほどに、彼女の前に進み出る私。
「それで、詳しく聞きたいんだけど。
元はと言えば、後から人為的に付け加えられるからこそ、驚異的であると思われた
……その認識が微妙に違い、文字通り
でも、恐らくは一番
つまり、
……みたいなことを告げれば、琥珀さんは頭をぽりぽりと掻いたあと、詳しい説明をし始めるのだった。
「まぁ、お察しの通り。基本的に
「……えっと、被験者と憑依者の性格が近似してなきゃダメ、なんだっけ?」
りんちゃんの言葉に、その通りと頷く琥珀さん。
被験者と憑依者。
二者の近似を前提とするが為に、似ても似つかぬような相手を継ぎ足すことはできないというのが、
その為、突飛な性格や行動を取るような相手を、憑依対象に選ぶことはほぼ不可能だと言えた。
……まぁ、琥珀さんのようにたまーに波長があう、俗にいうトンチキ組が現れることもあるらしいのだけれど。
そちらに関しても、素直に条件に合うなりきり組が現れるのを待った方が、遥かに時間的な効率が良いらしく。
結局のところ、あんまりあてにできるものでもない……というのが結論なのだそうだ。
「その制限というか制約というかは、被験者がなりきり組──既に憑依者が存在する場合でも、特に変わらないみたいですね。……この場合ですと、八雲さんがわかりやすいでしょうか?彼女の場合は
「そのまま使い続けると体調を崩したり、能力使用に障害が出たりしたことから察するに、
「
……ふむ。ゆかりんの体調不良は、無理な
もしくはおっきいゆかりんはオーバードウェポン扱い、みたいな?……いや、それだと不明なユニット扱いになるからちょっと違うかな?*1
うーん、結局トランザムみたいなもの、というのが一番近いのかなー。*2
「で、私の場合は──」
「どちらも本来はオリジナルなので親和性はバッチリ、のはずが。……後々に
「……CP君、君のせいじゃんかこのっ、このっ!」
「むぎゅるぷぎゅるぐにゅる、ちょっと落ち着こうキーア、僕ぬいぐるみとかじゃないんで流石にちょっとアレぷぎゅっ」
なんというかこっ恥ずかしい台詞とかになってたのも、元を正せばアニメができてしまったがゆえ。
キリアという別の存在を、文字通り後から
つまり悪いのはCP君!Q.E.D.だド外道ーッ!!*3
……みたいな気分で彼女をぐにぐに捏ねまくる私。
こちらは
まぁ、本当に彼女だけに責任があるとは思っていないので、半分じゃれてるようなものだけれど。
「まぁ、そんな感じですかね。さっきは【複合憑依】の再現もー、みたいな大口を叩きましたが。正直無理なんじゃないかなー、というのもおわかりいただけるのではないかと?」
「両者の近似が大前提、だもんね。……正直【複合憑依】の前例二人も、近似してるかって聞かれると微妙な感じだし」
琥珀さんの言葉に、思い浮かべるのは前例である二人。
要素要素を抜き出すと確かに近い存在にも思えるけれど、実際は根本的なところで水と油なものが混じっている西博士と。
そもそも構成要素の内の一匹が、どう見ても他の二者とは近似にならないであろうCP君。
……うん、この二人を制約の多い
普通の人に
私の思考と言葉の引っ張られ方から見るに、多分
「で、ね。……ゆかりん、ちょっと私から謝罪があります」
「え?なによ藪から棒に。……というか、このタイミングで謝罪?なんの?」
「いやね、
「……はっきりしないわね、一体なによ?」
で、今度はちょっと
……魔法少女関連の話の間、結構な頻度で
微妙に後ろめたい為、どうにも口ごもってしまうのだけれど。……いやまぁ、なんとなーく気付いてしまった以上、口に出さないわけにもいかなくてですね?
……自己弁護してても仕方ないので、思いきってその事を話題にあげる。
「えっと……ほら、五条さん。なんかさ、いきなり元気になったじゃない?」
「え?ええ、貴方が
ゆかりんも気付いたようなので、申し訳なさから思わず顔を覆う私。
いや、その。
……
「……
「それって……」
「……はい、その。……また私が何かやってました……」
原因探しをすると私が原因だったの法則、ここに再び。
……私行動しない方がいいのでは?みたいな懸念がちょっと立ち込めてる感あるなぁ、なんて風にちょっと悲しくなる私なのでした。
「まぁ、とにかく。そんなにポンポン継いで接ぐこともできませんので、あんまり警戒しないで頂けると……」
「ああ、はい。こちらとしても大人になると何故能力利用が上手くなるのか、その理由を知ることができましたし。
自主的に正座して『わたしはダメな魔王です』の石版を持ってる私と、その前でこの話は大事にしないようにしよう、みたいなことを言いあう二人。
まぁ、正直宜しくない方向にしか進まなさそうな話だし、ここで互いの胸に秘めておく、というのも悪くはないだろう。
え、なにが危ないのかって?
ってことは、だ。……
後先考えなければせっちゃん幼少期*4みたいな少年兵大量生産、みたいなこともできかねないわけでね?……少年兵系のキャラ、創作には結構居るしなぁ。
何がアレってそういう少年兵みたいなキャラ、基本的に似通った性格しているから
日本はそういうのあんまりないけど、罷り間違って他所のお国に知られたりしたら、やーもう嫌なことにしかならないよねー、というか。
……うーん黒い黒い。
まぁ、その辺りは責任者二人はよーくわかっているらしく、口に出さずとも理解し合っているみたいだから心配は要らないみたいだけど。というかこの話の早さだと、失敗作として必要以上に喧伝してたりするのかも?
……普通に頭回りそうな感じだしなぁ、琥珀さん。さっきの波長云々も、実際は
魔法少女の研究はしたいけど、争いごととかは勘弁……みたいな感じなのだろう。そういう人が研究のトップで良かった、と言うか。
なーのーでー。
……ここで私が気にしなければいけないのは、たった一つなわけで、ね?
「そーいうことなのでー。……そこでいつの間にか空気に同化しているはるかさん」
「っ、は、はい?なんですかキーアさん。私に何か……」
「お話、しよっか?」
「……っ」
……うん、まぁ彼女の
これ、そっと抜け出して上司の判断を仰ごうとしてた、とかかなー。職務に忠実なのね、嫌いじゃないわ!*6
──まぁ、そんなの神が許しても
……ふふふのふ。
この数ヶ月、はるかさんについてわりと
「知らなかったのか……?大魔王からは逃げられない……!!!」*7
「……くっ、殺せっ!!」*8
そんな感じに彼女へ声を掛けて、掛けて……?
……んん?あれおかしいな、さっきまでシリアスだった気がするのに、なんかいきなりギャグ臭が……?
追い詰められたはるかさんから飛び出した言葉に、思わず魔王な雰囲気が霧散する私。
状況の掴めていない三人娘と、マシュから白い目で見詰められ。
……その弁明を私がする間も、はるかさんは至って真面目に?『くっ殺』し続けていたのでしたとさ。