なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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はい死んだ!君今死んだよ!慢心で!

 はてさて、これからの戦いが実質的な決勝戦であり、その後の戦いはほぼ無茶苦茶になってあやふやになる……というような警告を述べた私ですが。

 正直そっちに関しては考えるだけ無駄、というの他の人の主張も決して間違いとは言えないため、結局明後日の方向に放り投げることになったのでしたとさ。

 ……まぁほら、準決勝に勝てなかったら結局無意味なんだし、心配しすぎて常のパフォーマンスが出なくても困るし……ね?

 

 そんなわけで、目の前の準決勝のために、あれこれ準備を整えることを優先させる私である。

 

 

「……いつも通り、杞憂が服を着て歩いていたようなもの、ってことでいいのかしら?」

「なにそのスッゴい誤解を招きそうな発言。……いや、欠片も掠りもしない、ってわけじゃないけど」

 

 

 いや、そこは胸を張って否定しときなさいよ……というゆかりんの苦笑混じりの言葉を聞き流しつつ、再度メンバーの確認を済ませる私である。

 

 うむ、途中であれこれと話題が飛んだりしたけれど、今のところうちのメンバーにそれを過剰に思い悩んでいる者は居ない様子。

 ……そこを心配するのなら、端から話題にしなければ良かったのでは?……みたいな声が聞こえてくる気がするが、ここは大胆にスルーする私である。……いやほら、後から事の次第を知って慌てるより、前以て知っておいた方が安全……みたいな?

 

 誰に言い訳してるのよ、などと笑うゆかりんを横目に、決戦のバトルフィールドへと足を踏み入れる私たちなのであった。

 ……そのネーミングだと、なんか人の命が簡単に失われそうで怖いね?*1

 

 

「余計なこと言ってなくていいから、さっさと行きなさいよ」

「へーい」

 

 

 

 

 

 

「レディースエーンドジェントルメーン!!全国のサバゲーファンの皆様、大変長らくお待たせ致しました!これより『なりきり郷主催全員参加型サバゲー大会』、準決勝一回戦目の開幕をお知らせ致します!」

 

 

 ついに始まったのか、という思いを多分に含んだ歓声が、フィールドを熱く揺らす。

 その様子に満足したように小さく頷きながら、司会──榊遊矢は、その熱をさらに盛り上げる為に声をあげた。

 

 

「司会は今までに引き続きまして、希代のエンタメデュエリスト・榊遊矢と!」

「同じく引き続きましてぇ~、貴方のお口の恋人・ロッ○とは清い関係でいたい、皆様ご存じ周央ゴコがお送りするわけなのですが~」

「今回は準決勝ということで、特別ゲストをお迎えしております!それはこの方!私共・なりきり郷とは業務提携のようなものをさせて頂いている『新秩序互助会』のリーダー!」

「見た目のせいで怖いと評判、モモンガさんでーす。皆様拍手~」

「う、うむ。紹介に預かった通り、モモンガだ。これからうちの方でも似たような催しが執り行われる、ということで視察に来たようなもの、ということになるわけなのだが……できれば私の事はあまり気にせず、普段通りに過ごして貰いたい」

 

 

 司会席に侍る影は三つ。

 一つはご存じ榊遊矢であり、その隣はすっかり定番となった周央ゴコが固めている。

 ……そしてその更に隣、普段は誰もいないその席に座っていたのは、なにを隠そう『互助会』のリーダーであるモモンガ氏の姿。

 

 彼は今後互助会の方でも執り行われるだろう健康診断が、どのようにして進行しているのかを確かめる為に単身こちらにまでやって来た、ということになるらしい。

 

 思わぬお偉いさんの登場に、観客達の反応は様々。

 純粋に歓迎するもの、どうせならちょっと参加していかないかと声を挙げるもの、突然の登場にちょっとビビるもの……。

 その反応は多種多様だが、決して彼を拒絶するようなものはなかった。

 

 ……その空気感に、モモンガは僅かに目を細める。

 そも、互助会にいるメンバーというのは、一癖も二癖もあるような曲者ばかり。

 それゆえに、こちらの面々に受け入れられるのかを少しばかり気にしていたようだったのだが……。

 

 

「……まぁ、よくよく考えればキーアが受け入れられている時点で当たり前、か」

「ちょっとー!?聞こえてるからねー!?」

「おおっと、すまんすまん。……ところでこのサバゲー、元が健康診断のためのモノであるがゆえに勝敗を気にする余地がない、とのことだったが……どうだろう?この試合で勝った方に、私からなにかしらお祝いの品を贈る、というのは?」

「おおっとぉー?!突然のモモンガ氏からの賞品提供のお誘いだー!?」

「モノによるけど、いいんじゃなーい?」

「そしてすかさずこっちのトップからのお返事。いや~、いい意味で軽いですね~、うちの組織」

「まぁ、この軽さこそなりきり郷、みたいなところもありますからね。……そういうわけで、選手への火種再投入!あからさまに目の色を変える選手はいませんが、気合いを入れ直す意味では抜群だったようです!!」

 

 

 その辺り、この組織の気質を色濃く示している、とある少女のことを思えばそうおかしなことでもないか……と彼は思い直し、改めてこの試合を楽しんで観戦しようと、心持ちを新たにするのであった。

 

 

 

 

 

 

「……アインズさんまでいらっしゃるんですね」

「所属はうちじゃなくて、他所のところだけどねー。あと、できればアインズじゃなくて()()()()って呼んであげてねー。その辺り、結構気にしてるみたいだから」

「あー、リーダーではあるけど支配者ではない……みたいな?」

「そんな感じ。……『鈴木悟』って名乗るとしまらない、みたいなところもあるみたいだけど」*2

 

 

 あの人も大概大変だなー、などというクラインさんのぼやきを聞き流しつつ、司会席に座る三名を見やる私。

 ……先の二人に加え、モモンガさんがそこに加わっていたわけなのだが。確かに言われてみると、彼が解説役として優れている、というのは疑いようもない。

 

 多種多様な経験に裏打ちされた読みは深く、スペック的には中の上~上の下にも関わらず、トップ層にも負けず劣らずの戦績を誇っていた……という彼のスペックならば、試合を俯瞰してあれこれと解説するのも余裕だろう。

 まぁ、問題があるとすれば、一応彼も『なりきり(逆憑依)』であり、その辺りの読みがどれくらい反映されているかわからない、ということだろうか?

 まぁ、以前五条さんとバリバリにやりあったりしていたし、その辺はそこまで気にする必要性もないかもしれないが。

 

 ……とまぁ、余計なことを考えつつ、最後の準備を終わらせる私である。

 

 遥か前方には、こちらに不敵な笑みを見せ付けるかようちゃん達の姿。……試合形式によるものでもあるのだろうが、それにしたって自信満々な顔である。

 一応、あの子達って戦闘するタイプのキャラばかり、ってわけでもないはずなんだけどなぁ……などとぼやきつつ。

 

 

「それでは、準決勝──スタートです!!」

「よし、行くよ皆っ!」

「「「「「おーっ!!」」」」」

 

 

 司会の合図を受け、私たちは戦場へと飛び出して行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 はてさて、使う得物に特に制限がない場合、基本的に有利なのは遠距離武器ということになる。

 攻撃が届く・届かないというのは戦闘において基本の部分であり、そこを相手より早く整える……ということを素早く行える遠距離干渉手段というのは、例え苦手であれ用意しておくべきものだと言えるだろう。

 

 そういう意味で、わりと不利なのがクラインさんである。

 

 

「マジかよ、俺よりエイム上手くねあっち!?」

「言ってる場合ですか!とにかく走って!できればジグザグに!」

「へいへいっ、と!」

 

 

 彼の原作である『ソードアート・オンライン』において、遠距離武器というのは中々脚光を浴びない存在である。

 タイトルにもなっているSAOは勿論のこと、魔法が使えるようになるALOにおいても、どうにも印象の薄い手段である……という感覚は拭えない。

 

 これは、作中主人公であるキリト君が、生半可な遠距離攻撃だと無効化したりするためだが……それと同じくらい、遠距離攻撃を専門とするヒロインが居るから、みたいな部分も少なくない。

 生半可に手を出すよりも、百発百中の腕前を持つそのヒロインに任せておく方が確実である……みたいな感じというか。

 

 いやまぁ、一応ALOでは弓を装備できたりだとか、ゲーム版では銃弾行き交うGGOにログインしたりすることもあり、彼と遠距離武器が全く関係がないか?……と言われると微妙なところがあるんだけども。

 

 

「とはいえ、ここで重要なのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?ということ。……『逆憑依』は見た目の変化こそ劇的だが、その根底にあるのは()()()()()()()()ことだ。つまり……」

「キャラクターを再現する際、その特徴から外れた物事をやろうとするのは難しい……ということですね?」

「まぁ、そういうわけだ」

 

 

 司会席でモモンガさんが解説するように、『逆憑依』とはそもそも『なりきり』である。

 ……言葉の通り、本人に()()()()モノであるそれは、ある意味でその人の仮面(ペルソナ)を被るようなものであるわけで。

 まぁ雑に言ってしまうと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()可能性が高いのだ。

 

 これがマシュやシャナのような、最早その人物そのものがそこに居るのと大差ない……というようなレベルの存在ならば話は別だが、生憎とクラインさんはそのレベルまで達してはいない。

 ……つまり、そのキャラのイメージから外れた行動をしようとすると、動きの精細を欠く結果になってしまう、というわけだ。

 そういう意味で、慣れない遠距離武器を抱えての行動は、彼に少なくない負担を強いている……ということになるだろう。

 

 

(つまりはそこが隙になる、ということだが……その程度、キーアならば気付いているはず。事実、その辺りを踏まえて第二回戦では作戦を立てていたようだし)

 

 

 ……とかなんとか考えてる顔かな、あれは。

 ちらり、と司会席に視線を投げつつ、手間取っているクラインさんを補助し続ける私。

 他の皆はそれぞれ敵を探しに駆け回っており、現状分かりやすく突出しているのは私と彼、ということになるか。

 

 脳裏に戦場の地図を浮かべつつ、私はこれからの作戦を内心で確認し直すのであった。

 

 

*1
『KBF』。高橋邦子シリーズにおいて、実際に戦闘が行われるフィールド。雑に言うとアドベンチャーパートからアクションパートに移った感じ

*2
作中で『鈴木悟』を名乗る展開があるのは、彼が単身転移してきたIFパターンの時くらいのものである

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