なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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相手を上回るのに必要なもの、それは

「──うん、やっぱりあのチームの中だと、クラインおじさんが隙になるよね」

 

 

 試合開始前のブリーフィング中、かようはそのような言葉を口にした。

 それに返ってくる反応は、概ね賛成意見。

 ……相手チーム、『ニュービーと魔王』は新参者で固められているため、情報の少ないチームである。

 とはいえ、構成メンバーはわりと知名度の高いキャラが多く、大体なにをやってくるのか?……みたいな予想は立てやすかったりするのだが。

 

 

「強力な分、制限も多いん」

「うん、れんげの言う通りだね。火力の高いメンバーが多いから、必然制限も多くなってる」

 

 

 そして、そうして手の内が知れ渡っている以上に、揃っているメンバーが()()()()()とても強力な人員である、ということも大きなポイントであった。

 星晶獣、という強力な存在を使役するルリアは言わずもがな、忍であるうえに強力な氷の力を持つ雪泉・未だ謎が多いものの、現状判明している能力だけでも強敵だと即断できるアーミヤ、そして世に名高き聖女の反転としての格を持つジャンヌ・オルタ。

 その誰もが、一騎当千級の実力を持ち合わせていると言えるだろう。事実、一回戦目ではほぼほぼ一方的な虐殺展開を繰り広げていた。

 

 ──だが、これは()()()()であり、そしてそれ以前に()()()()である。

 運営側が『新しい可能性を歓迎する』と言っていたように、『秘められた力が~』とか『今までの限界を越えて~』のような事態を認めているものの……これはそうして発現したものを()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 これは正確には『試合の中で新しい力を発現・ないし見せた場合、()()()()()()使用を認める』という条件だというのが正解。

 その次の試合からは、ちゃんと上限値を定められることとなるのだ。

 

 それもそのはず、ここでいう『新しい力』とは、その人が今までに見せたことのないもの。言うなれば、()()()()()()()である。

 それゆえに、必要なデータを取るため()()()全力使用が認められているのだ。

 だから、その試合が終わればその『新しい力』は既知のものとなり、結果他の『今まで持っていた技能』と変わらぬ扱いをされるようになる。

 

 ──つまり、相手より優位に立ち回りたいのであれば、必然毎試合ごとに『新しい力』に目覚める必要がある、ということでもある。

 無論、そんなことは気軽にできたものではない。

 元々の再現度が低く、試合の中でそれが上がってできるようになることが増えていく……みたいなパターンでもない限り、例え最強と目されるような人物でさえ、その上限を()()()()()()()()()()()()()にまで減らされる……というわけだ。

 

 この制限は、なりきり郷を覆う『非殺傷設定』に追加条件として加えられているため、基本的には破ることができない。

 ……そこまで強固な縛りであるがゆえに、その縛りを越えて勝利してしまっているキーア達が問題視されている、ということにも繋がるわけなのだが。

 

 この制限ではスタミナの総量を変動させることはできないが……だからと言って、自身と近い力量に設定された敵役が、波状攻撃のように順次投入される……というような状況を、単なるスタミナの高さのみで攻略できるほど甘くないのも確かな話。

 それゆえ、第二回戦・第三回戦の結果を受け、件のチームへの制限は更に強いものになっている。

 ……決勝戦ではその辺りの縛りは投げ捨てる予定であることを思えば、この準決勝で戦うあのチームは現状今までで一番弱い状態である、ということは間違いないだろう。

 

 無論、手札の多さゆえ先の『新しい力』の制限に引っ掛かり辛いキーアが居る以上、決して侮っていい相手ではないことも確かだが……。

 

 

「実際、今のあのチームはキーアにおんぶにだっこの状態。……他のメンバーはほぼほぼ()()()()()()()()が出尽くしてしまっているから、上手いこと孤立させられれば撃破自体は容易……ってわけか」

「そういうことだね。実際、三回戦目の相手がやる気がなかった……ってだけで、あのチームはそこで負けててもおかしくなかったよ」

 

 

 第二回戦目でやり過ぎたため、あのチームの制限は現状全チームの中でもっとも重いものになっている。

 ……それでいて普段通りに(見掛け上は)動けている辺り、キーアの持つ強化手段の豊富さと優秀さがよくわかるが……同時に、彼女が徹底して補助に回らなければ、彼らは立ち行かないというほどに追い詰められてもいる。

 

 その点、かよう達のチームの方はまだまだ余裕があった。『新しい力』に関しても、幾つかあてがある。

 ……そういう意味で、この試合優位なのは彼女達の方なのであった。

 

 とはいえ、そこで慢心はしない。

 慢心が身を滅ぼす、ということを彼女はよく理解している。ゆえに……薄情かもしれないが、あのチームの弱点を見極め、そこから突き崩して行くことに決めたのだった。

 

 

「それがクラインさん、ってわけか」

「アーミヤさんとルリアさんは、現状できることのリストが出揃っているように見えるけど……その実、今もまだ続いているゲームが原作となっている人だから、追い詰めると変な能力に目覚める……みたいな可能性もなくはない」

「雪泉お姉さんも同じなん。だから、この三人は後回しにした方がいいん」

「それだと、オルタの姉ちゃんも微妙なんじゃねぇか?」

「あの人は派生とかが出てき辛いタイプだから、この中だと脅威度は一つ下がるかな?……水着もサンタも別に存在するから、あそこから『新しい力』が出てくる可能性は低いというか」

 

 

 まず、この試合形式において一番警戒するべきなのは、こちらも活用している『新しい力』の可能性だろう。

 これを一番活用しているのは、恐らくボイロ組のチームだろうが……だからといって他のチームの使い方が拙い、というわけでもない。

 そこら辺、防御系の技能は縛りが緩い……ということで、常に全力に近い状態で運用できているマシュ達のチームは怪しいが。

 それ以外のチームは、大なり小なりそれを活用できたからこそ、この準決勝の舞台に立っているのだと言い換えても恐らく間違いではない。

 

 ゆえに、この試合に勝つには『新しい力』への警戒は常にしておかなければならない。

 そういう意味で、原作となる作品が現在進行形で続いているルリアとアーミヤは、特に危険度の高い人物だと言えるだろう。

 彼女達はそもそもに出生やその力などに不明な点が多く、『新しい力』──言い換えれば未知の部分を多分に持ち合わせている、という風にも解釈できる。

 

 そのため、必勝の策なく迂闊に追い詰めた場合、こちらの情報にない謎の力を唐突に発揮し始める、などという悪夢のような展開が待ち受けている可能性があるのだ。

 ゆえに、彼女達はできうる限り一対多で当たれるように調整する必要があると言えるだろう。

 

 次点で脅威となるのは雪泉。

 彼女は大本の原作が普通のゲームであるため、できることの幅というのはおおよそ判明している。

 ……まぁ、ソシャゲの方で新しい姿を見せたりすることもあるが、それも大本のそれから大きく外れたもの、というわけではない。

 そういう意味で、先の二人に比べると脅威度は一段階落ちる、ということになるのであった。

 

 で、そこから更に一段・ないし二段階ほど脅威度が落ちるのがジャンヌ・オルタ、ということになるのであった。

 確かに、ナルトの言う通り彼女の戦闘力には目を見張るモノがある。単純な身体スペックや攻撃力に視点を絞るのなら、あのチームの中でもトップクラスの強敵だと言えるだろう。

 

 ──だが、言ってしまえば()()()()、なのである。

 彼女単体の戦闘能力は、確かに目を見張るモノがあるが……裏を返せば()()()()()()なのだ。

 確かに、彼女も今なお終わらぬ原作を持つ存在ではあるが、その実彼女自身の発展性(未知)というのはそこまで多くない。

 元々サーヴァントという存在自体が、過去の存在を呼び寄せるモノであるために、雑な言い方をすると成長性(未知)がないのだ。

 

 一応、彼女自身は正確には過去の人物、というわけではないものの……これから彼女がなにか別の存在に強化される、みたいな展開が予想できるかと言えば、それはノーだと言えるだろう。

 あのゲームにおける発展性の一つ・水着霊基やサンタ霊基を既に消費している、というのも痛いところか。……いや、サンタは微妙か?*1

 

 ともかく。

 素の力強さは確かに驚異的だが、それが同時に脅威であるとは限らない……というのが、現状のオルタへの評価である。

 新しいことができない以上、現状の実力で戦う必要があるこの試合形式ならではの問題、とでも言うべきか。

 

 

「……まぁ、全く危険性がない、ってわけでもないけど。ともあれ、キーアお姉さんを考慮から外した場合の、他の人の評価はこんな感じかな?」

「……なるほどな、そもそもそこまで強いってわけでもなく、かつここからの発展性(未知)も見込めない……クラインさんの脅威度が低い理由、見えてきたぜ」

「そうなんだよね。……なんかこう、とっても失礼なことを言ってる気分になってくるけど」

 

 

 第二回戦においては、奇抜な作戦ゆえにその起点を務めあげたクラインだが……そもそもが主軸の人物ではないこと、ソードアート・オンライン自体が超人達の戦い、といった風情では(一部を除いて)ないことを考慮する場合、彼の脅威度は底値を叩いてしまう。

 それは言い換えれば、彼があのチームのアキレス腱であるということでもある。

 

 総合的な実力が近くなるように設定されている以上、この試合で重要なのは()()()()()()()()と、そして数による有利ということになる。

 つまり、相手を一人減らすということは、その字面以上に重要なことになっているのだ。

 

 ゆえに、明確に(他と比べて)弱いと判断できる彼から潰すこと──これは、戦略的にも特に意義のある行い、ということになるのであった。

 

 ……そんな試合前の話を思い出しながら、複数人でクラインに向かっていくれんげ達。

 無論、彼がアキレス腱になっていることは、向こうのチームも把握していることだろう。

 チームメイトであるがゆえに、直接指摘するのが躊躇われている可能性こそあるが……それでも、そこになんの対処もなくこの場に現れている、とは思わない。

 

 

「……だから、こっちも本気で行くよ!ビワ・お絹、()()()()!!」*2

「いい゛っ!?」

 

 

 ゆえに、かようはここに来て()()()()()手札を切る。

 目の前で驚愕の声を挙げる相手を見て、彼女はニヤリと笑みを溢して見せるのだった。

 

 

*1
『ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ』のこと。ジャンヌのオルタがサンタを目指した結果小さくなった、の意味。わからん?大丈夫、儂にもわからん()オルタ自体が不安定なこともあり、その不安定なオルタの幼少期、みたいな存在ゆえに彼女に輪をかけて不安定だったりもするサーヴァント

*2
『シャーマンキング』より、持ち霊を自身に憑依させる技術。言うなれば降霊術の一種

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