なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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秘められた力が覚醒する?

 さて、相手側の方が火力的に優位だというのなら、こっちは情報面で優位に立とう……みたいな話だったわけだけど。

 正直、ここまでやっても勝率的には五分かなー、と思っている私なのであった。

 

 

「どうしてですか?『敵を知り~』なんて話もありますよ?」

「知ったからこそ、避けるべき相手だとわかるってこともあるんだよ?」

「あー、戦略やら戦術やらで覆せる力量差にも限度がある……つーことか?」

「まぁ、そういうことになるねぇ」

 

 

 リリィがこちらに不満をぶつけてくるが、この辺りはこっちの引き出しの少なさが原因なのでなんとも……。

 

 最初にも言ったが、この試合において有利なのは『秘められた力がある者』である。……わかる人にわかるように言うのなら、『まだだ!』できる人……みたいな?*1

 まぁ、どっかの格闘家さんの言うように『付け焼き刃なんぞ効かん(突然の覚醒とかないわー)*2みたいなパターンもあるかもしれないが……それが言えるのは、それを言う側の戦力値が隔絶していてこそ。

 

 この試合の場合、相手が覚醒なんぞし始めたらこっちは普通に押し潰されかねないのである。

 現在リリィになってる()にしたって、どちらかと言えば奇抜さで相手の意表を付いただけ、みたいなものに近いし。

 しかもこれ、若返りの薬を使っての疑似【継ぎ接ぎ】なので、効果が抜けるまで元に戻れないって制約付きだし。

 

 ……まぁそんなわけで、現状では圧倒的に不利なのである。

 これが試合形式ではなく、普通の実戦タイプならまだどうにかなったかもしれないが……。

 

 

「その場合はその場合で、四体合体した結果再誕したビーストⅡi・(リバース)なんてものと戦わさせられる羽目になる可能性もあるけどねー」

「どっちにしろ俺らにゃ荷が重ぇなぁ、そりゃ」

「むぅ、戦う前から気持ちで負けててどうするんですかー!絶対勝つ、くらいの気持ちで居てくださいよー!」

「あいてててて、止めてくれ嬢ちゃん、フレンドリーファイアは無しになってるっつっても痛いもんは痛いんだっていてててて」

「あらら……」

 

 

 その場合はその場合で、向こうも使い控えているものを投入してくる可能性が高く、結局大きく勝率が上がったりはしないだろうなぁ、と思う私なのでありましたとさ。

 

 ……え?お前も本気出せばいいんじゃないかって?

 流石に疑似とはいえビースト相手に勝てる出力となると、私がこの世界にとっての脅威になるようなことになるので無理です。

 

 っていうか、みんな忘れてるかもしれないけれど私ってば魔王だからね?【星の欠片】だからね?『あの方』からのご厚意で普通にしてられるけど、本来なら目覚めた時点で世界を臨終させる自滅機構(アポトーシス)だからね?

 ……自分で言っててなんだけど、イキり感凄いなこれ?

 

 まぁともかく、やり過ぎにならないように抑える必要がある上で、獣の相手をさせられるのは普通に拷問級というのは間違いない。

 そういう意味で、どう足掻いてもビースト系の相手をさせられることになるこの試合はまさに鬼門だと言えた。

 流石に【ネガ・シンガー】まで再現できるレベルではないだろうけど……出力に任せてのハイパーボイスは、それだけでも驚異的である。

 

 時間制限があるとのことなので、彼女にそれを使い切らせるまで逃げ回るのが正攻法……ということになるのだろうけど。

 

 

「ここで向こうにコナン君が居るってのが生きてくるんだよなぁ」

「あー、こっちの動きとかを推測される、みたいな?」

「それもあるんだけど、なによりボールがヤバい」

「ボール?……あー」

 

 

 ここで、かようちゃん以外のメンバーが問題になってくる。

 わかりやすく脅威なのはイッスン君で、ここに戦力を割かない場合いつの間にか人数が減らされている、なんてことが罷り通りかねない。

 今のところは、遠距離から牽制できるアーミヤさんに対処を任せているが……近接攻撃を縛られている状態の彼女の場合、一人でも相手側に援軍が来たら押し切られる可能性は高い。

 近接(魔王)モードを早めに切りすぎたのが、ここに来て痛手になってる感があるというか。

 

 その次に危険なのが、なにを隠そうコナン君である。

 さっきはルリアちゃんの隠し玉・爆弾投擲(※あくまで演出です)と相殺したようだが……バレンタイン特急の事件の際、列車を粉々にするほどのシュート技(エクスカリバー)を見せたのは彼である。

 その辺りは既に運営側に知られている&そもそも開発者が琥珀さんということもあり、端からリミッターが掛けられているようだが……最近出来たばかりの新アイテム、()()()()()()()()()()()に関してはその限りではない。

 

 ……うん、超巨大ボール射出ベルト、である。普通のやつじゃない。

 そんな馬鹿な、と思われるかもしれないが、『涅槃寂浄』越しに解析したので間違いない。あれは通常版じゃなくて、映画版の方だった。

 

 つまり、今のコナン君はやろうと思えば、このフィールド全域に近い範囲を巨大ボールで埋めてしまえるのである。

 無論、その場合は向こうも行動範囲が狭くなってしまうため、使うとしても必勝のタイミングを見て……ということになるだろうし。

 そもそも膨らむのを待つ時間があるため、すぐにすぐ会敵(かいてき)ということにはならないだろうけど……ともかく、向こうがフィールドをどうにかできる手段を持ち合わせている、ということは念頭に置いておかなければいけないだろう。

 

 で、これの一番の問題は『涅槃寂浄』も『虎視眈々』も特に意味がなくなる、ということにある。

 

 

「?なんでですか?」

「フィールドの大半を覆われてしまうから、わざわざ俯瞰して確認する必要性が薄れるし、ターゲットを取り続けるって言ってもそれで本人の動きが良くなるってわけじゃないから、逆に動き辛くなる可能性が高いんだよね」

「はぁ……?」

 

 

 俯瞰して戦場を見る『涅槃寂浄』だが、これは基本的に広いマップを()()()()()()俯瞰して見られる、というところが一番の利点である。

 ……つまり、マップの大半をボール・すなわち移動不能エリアに覆われてしまうと、結果としてマップの把握率が並んでしまうのだ。

 

 

「……???」

「あー、つまりだな?俺らの見える範囲ってのはそこまで広くない。嬢ちゃんの使ってる技は、その範囲を広げるものってことになるわけだが……そりゃ言い換えると、()()()()()()()()()()()()()()ってことになるわけだ」

「……あー、はい。わかりました。……それで?」

「んで、向こうの坊主はマップを塗り潰せる。これを言い換えると、()()()()()()()()()()()()()()()()ってことになる」

「……あっ、わかりました!扱い的にはフィールド破壊になるんですね!」

「そういうこった。誰にも見えなくなるんだから、そこに意識を割く必要がなくなる。これは裏を返すと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことになるわけだな」

 

 

 より簡単に言うのなら──クラインさんの言う通り、リソースの無駄遣いになる……みたいな感じか。

 全体把握の技能である『涅槃寂浄』は、基本的に()()()()()ことを制約としている。

 飛び地のように、「こことここだけ見る」みたいなことはできないというわけだ。

 

 ゆえに、範囲が広ければ広いだけ、視界から入ってくる情報を処理するためのリソースが必要となる。

 ある意味では、湯水のように使って得られる情報が多い(ハイリスク&ハイリターン)からこそ成立する技術、ということか。

 

 どっこい、フィールドの大半をボールという侵入不可領域で埋められてしまうと、得られる情報がガクッと落ちてしまう。

 そのくせ、『涅槃寂浄』の使用のためのリソース量は減らないため、結果として消費と結果が釣り合わなくなる……と。

 さらに、どうやっても見えない場所が増えるということは、()()()()()()()()()()()()()ということでもある。

 結果、消費の多い技をわざわざ使わずとも、得られる視覚情報はこちらと変わらなくなる……と。

 

 こうなるともう、『涅槃寂浄』の利点なんて遠方の仲間の行動を瞬時に把握できる、くらいしかなくなってしまうのだ。

 ……いやまぁ、それでも結構活用法ありそうだけどね?

 

 で、『涅槃寂浄』よりも酷いことになるのが『虎視眈々』である。

 こっちは相手を視ることに特化した技だが、それゆえにある程度広い場所でないと使い辛い、という欠点がある。

 それが何故かというと、こっちも把握率の問題になってくる。

 

 

「俺らの視界はそこまで広くない、ってのはさっきも言ったよな?」

「はい!聞きました!」

「で、『虎視眈々』ってのも、さっきのやつと同じく使用にはそれなりにリソース(集中力)を必要とする。じゃあ、それに見合うリターンってなんだと思う?」

「えーと……あ、わかりました!アキレウスさんみたく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ですね!」

「そういうこった。他には今回のイッスンさんみたく、小さすぎて見えない相手を見失わない……とかだな。じゃあ、これで問題点もわかったよな?」

「……あ、そっか。ここでの見えない範囲って入れない範囲だから、普通に見る分の視界の範囲で十分なんですね」

 

 

 ……なんだかいつの間にか先生と生徒みたいになっているが、二人の会話が答えである。

 見逃さない技能である『虎視眈々』は、そもそも相手が超速移動する場合か、単純に見付けられない場合に効果を発揮する技能である。

 それゆえ、寧ろ相手に()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 スタミナが無尽蔵、なんて生き物は存在しない。ゆえに、こちらの死角を狙う相手に()()()()()()()ということを知らせず、無駄に動き回らせるのがこの技能のもっとも適した使い方である、というわけだ。

 

 あとはまぁ、視界が極端に狭くなるので、大袈裟な回避でもぶつからずにいられるだけの場所を確保しておきたい、みたいな面もあるのだが……サッカーボールによる妨害は、その両方をあっさりと奪っていくのである。

 

 そうでなくとも、相手は稀代の名探偵。

 ……こっちのやって欲しくないことを察する機微とでも言うものは、普通に高い方だろう。

 その辺りも踏まえて、かようちゃんやイッスン君の次に危ない相手、という評になるのがコナン君なのであった。

 

 

「──だから、早めに落としちゃおっか?コナン君」

「……はい?」

 

 

 ()()()

 これから私たちが狙うのはコナン君だと告げれば、二人は不思議そうな顔でこちらを見つめ返してくるのであった。

 

 

*1
『シルヴァリオ』シリーズにおける理不尽の象徴。わかりやすく言うと主人公補正。ピンチになった時、今までの自分を越える力に目覚める『覚醒』などの主人公的展開のことであり、この作品でそれを使うのは基本的に()()である。……主人公を前にした敵役の気分になれると評判()

*2
『ケンガンアシュラ』のキャラクター、黒木玄斎の台詞。正確には『この黒木に付け焼き刃の技など通用せん』。作中主人公が戦いの中で覚醒し、編み出した新必殺技(≒勝利フラグ)を真正面から打ち砕いて勝った時のもの。ともすれば主人公が主人公(笑)になるような展開であるため、おいそれと他の作者が真似できるようなキャラ造形ではない

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