なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「んー、問題はいつ使うか、なんだよねー」
「今んところ、俺達みんなバラバラの位置にいるからなー」
森の中を無秩序に逃げ回りながら、かよう達は作戦会議を続けている。
コナンの持つベルトは確かに強力な妨害効果を持つが、それは同時にこちらの行動範囲をも狭める諸刃の剣である。
一応、体の小さいイッスンやたぬきの方のビワならば、ある程度自由に動けるかもしれないが……それ以外のメンバー達はそれなりの行動制限を受けることとなるだろう。
まぁ、相手チームとは違って比較的背の小さいメンバーで揃えられているため、動きにくいといっても向こうほどではないだろうが。
「ただまぁ、その場合でもキーアお姉さんを止めきれないんだよねー」
「そうなると、ベストとしてはキーアを落としたタイミング……ってことか」
ただ、その妨害で動きを確実に止められる中に、向こうで一番危ない相手であるキーアは含まれていない。
流石にコナン君ほどではないものの、彼女の身長はとても低い。小学三年生の平均身長くらいと言えば、彼女の本来の年齢とのギャップがどれほどのものなのか、というのはわかりやすいだろう。
……いやまぁ、それを言うのならコナンの身長も大概おかしい、ということになるのだが。
よく言われる「
ともかく、ここにいるしんのすけやコナンの身長が、アニメにおける縮尺そのままのモノである、ということは事実。
そういう意味では、狭いところでの行動に一日の長があるのはかよう達側、という事実は覆せまい。
本来ならそこら辺を覆せるキーアのモーフィング変形も、今回は禁じられているわけだし。
──そこまで考えて、コナンははたと足を止めた。
「ん?どうしたのコナン君?いきなり立ち止まって」
「いや……なんか見逃してる気がするっつーか……」
「……それは大変だ、ちょっと茂みにでも隠れてシンキングタイムに当てる?」
「……ああ、そうだな。誰かが追ってきてないとも限らない……し……」
なにかを見落としている感覚、とでもいうのか。
いわゆる虫の知らせ的なものにも思えるが、それがこと
ゆえに、彼女は彼を促して物陰に隠れるように指示したのだが……その途中、彼女の言葉に応えるように声を発したコナンは、その声を途中で萎ませていったのであった。
その不自然な様子に、かようは怪訝そうな表情を浮かべながら、「どうしたの?」と彼に問い掛ける。
コナンはそれに答えず、震える指で彼女の背後を指差した。
──そう、彼が見逃していると思ったこと。それは、キーア一人に警戒を割きすぎではないか?……ということ。
確かに、現状他の相手メンバーはそこまで脅威とは言えないだろう。
星晶獣の召喚ができないルリア、強力な近接手段を封じられたアーミヤ、突然の若返りによる突飛さこそあったものの、結局決定打に欠けるオルタ。
強力な攻撃手段を持つ者のほとんどがなんらかの制約を受けており、ゆえにそれをキーアが補助する形で回っているのが現状の向こうチーム。
ゆえに、補助役のキーアをどうにかしてしまえば、残りは烏合の衆のようなもの……というのは、決して間違いではない。
だが一人、忘れていないだろうか?
確かに、彼女もまたその強力な技能──
ゆえに、彼女もまた単純な戦力値としてはガクッと下がっていると言えるだろう。
だがしかし、だがしかしである。
そもそも、彼女のジョブはなんだっただろうか?彼女は
それを思い出すに辺り──見逃していたことが脳裏を過る。
本来、彼のジョブと同名のそれは、
ゆえにそれは、ある種の誤解というか慢心というか……ともかく、意識の隙間に挟まった、ある種の怪異のようなものであった。
かようの背後・頭上の幹に、
「やっべ!?」
「なん、」
「──忍とは、文字通り忍ぶもの。……派手な技ばかりがトレードマーク、というわけではないのですよ」
その手に持った小ビンの蓋を徐に開け、それをかよう達に向かって振り撒いたのだった!
「──はぁ、認識の穴……ですか?」
対戦開始前、ブリーフィング。
ある程度の作戦を共有する際、キーアから言われた言葉に雪泉は小さく首を傾げていた。
その姿に満足そうに頷きながら、彼女は二の句を告げるため口を開く。
「そ、認識の穴。先入観、っていう風に言い換えてもいいかも知れないね」
「先入観と言うと……ええと、私が氷を使う忍である、みたいなことですか?」
「んー、惜しい。それだとちょっと足りてないかな。正解は、
「……あー、なるほど。そういやそうだな、忍者って本当は地味なもんのはずなんだよな……」
こちらの会話に混ざってきたクラインの言葉を受け、雪泉は顎に手を置きながら思考に走る。
昨今の創作界隈において、『忍者』という存在のイメージはとかく片寄ってしまっているといえた。
向こうのチームにいるナルトを筆頭に、忍ばないのがデフォルトとでも言わんばかりのキャラクターが、大多数を占めるようになったのである。
言うなれば、欧米的『NINJA』のノリ、というやつだろうか?
「不思議な術を使って敵を撹乱し、時には派手な爆発とか使って相手を抹殺する……うんまぁ、そういう忍者もそれはそれでカッコいいものだけれど、本来の忍者ってそういうものじゃないでしょ?」
「それはまぁ……そうですね……」
例えば、火遁。
これは昨今の忍者スタイルにおいては、基本的に
そもそも、火遁という言葉の『遁』という字は、『なにかに身を隠して逃げる』という意味。
ゆえに、『火遁』とは
本来、忍者とは斥候の一種。
つまり、敵方の情報を敵地に侵入するなどして収集し、本丸に伝えることを主目的としていた。
その中で、例えばくノ一であれば相手に色仕掛けなどをして情報を抜き取る、みたいな術が開発されたりもしたわけだが……ともかく、原則的には忍というものはあまり直接戦闘をしないものなのである。
一部の例外──服部半蔵のような高名な忍者である
ともあれ、基本に立ち返ると忍が戦闘とかちゃんちゃらおかしい、ということで間違いはないだろう。
「まぁ、相手側の備蓄とかにダメージを与える……みたいなのは、陽動の一種として普通にやられてたはずだけどね」
「……ん、もしかして今その話をするってことは……」
「そ、雪泉さんにはそういう方面での忍としての仕事を頼もうかと思ってね?」
彼女曰く。
現代的派手忍者の筆頭的なイメージの強いナルトと同じく、『爆乳ハイパーバトル』だのという頭の痛くなるようなジャンル名を背負った作品出身の雪泉もまた、本来の忍としての活動を行うようなイメージはないだろう、とのこと。
無論、試合が長引けば向こうのブレイン……コナン君辺りが気付いてしまうかもしれないが、それまでは
……とはいえこれは、向こうの同じ立ち位置であるナルトが、斥候としてまったく向いていないということと、それから単に全体の索敵ならば、キーアが全域をカバーできるので一々斥候を別に立てる必要がない
(事実、私もあのボールが完全に起動した状況下では、思うように動けないでしょう)
そう、結局のところはそこに行き着く。
制限を受けている状態では、十全の動きはできない。
……事実、氷系の技能の大半を『やりすぎ』とのことから封じられている今の雪泉では、単に隠れるにしても取れる手段と言うものが随分と限られてしまっていた。
そこまでのスペック低下である以上、司令塔を押さえれば他は有象無象……などと侮られるのもある種仕方のない話なのであった。
(……気に入りませんね)
──そこまで侮られれば、流石の雪泉と言えど少々カチンと来る。
氷さえ使えなければただの良いところの子女、などという風に言われているようなモノなのだから、それも仕方のない話。
ゆえに、彼女は
生身で相手の懐に潜り込み、そして目的を達し離脱するための力。それこそ、
「やられたっ……っていうか、雪泉さんなんなのその
「──人それを、忍の証という……です♪」
「なにそれー!?」
なにやら色々と勘違いした結果生まれた、カシャッと閉まるタイプのマスクなのであった。
……あれは忍者ではないって?多分正義繋がりの方が強いんじゃないんですかね(適当)*4